玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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ヤダモンDVD最終巻〜滅びゆく魔女として生まれた魔法少女

小学生の時、アニメージュを毎月図書館で読むようなアニヲタ予備軍だったので、アニメージュ風の谷のナウシカと同時期に連載されていたヤダモンは好きでした。が、ヤダモンの最終回は実は見ていなかったのです。
確か春休みのアニメ大好き!でルパン三世風魔一族の陰謀か燃えよ斬鉄剣か何かをうっかり見てたから、ヤダモンを見るのを忘れてたのだ。10歳の不覚。
で、この期に及んで現世に悔いを残さぬために見た。SUEZEN萬画版は復刻版を買って読みました。AM文庫のヤダモン小説は買ったけど積んでる・・・。社会人ってね・・・。そういう雑な所が有るのよ・・・。子供時代のノスタルジーに浸る癖にさ・・・。



それにしても良いアニメだったなあ・・・。うん。見直して良かった。
しかし、10歳の時に見たつもりでも、やはり細かい所は忘れてたなー。前の巻も見るか?

いや、最近の、魔法少女まどか☆マギカ批評の文脈でミンキー・モモやセーラームーンの名前はよく見たけど、意外と出てこないヤダモンであった。オトナアニメ魔法少女特集でもピックアップされたという話は聞かないね。
でも、今回見直したところ、結構、魔まマに近いテーマを扱ってて面白かった。
滅びゆく世界のために、他の世界の種族を犠牲にしようとするキラがキュゥべえに似てたし、魔法の元は闇の力だって言うのも。ヤダモンは陰陽和合説もやってたけどねー。
あと、ヤダモンが居候をするルブラン一家のジャンの両親は、二人とも科学者だけど、父がぼんやりしてて母がキャリア志向って言うのも、まどかマギカぽくもある。


それと、ヤダモンが面白いのは、「大人になって夢を叶える魔女っ子」でもなく「魔法少女に変身して願望を実現する少女」でもなく、スタジオジブリ的な「純粋さの象徴としての少女」ですらなく、「単に魔法がちょっと使えるけどそれも下手なクソガキ」として描かれていた所ですねー。すっごい子供っぽい。優しさとか素直さとかよりも、子供の無軌道ぶりがすごい。5歳。かないみか。パンツが見えても色気も糞もない。
宮崎駿系というよりは高畑勲系なのかな。
脚本の大井みなみ、外山草氏はアニメ系というよりは実写よりな気がするけどなー。キャリアとか。あ、ジャンがナードで、ジャイアンにいじめられるけど、美人の彼女を作るってのも、なんか外国ドラマの定型っぽい。ドラえもんというより。最近はHEROMANとか?
ラスト近くの暗黒魔女キラの花は非常にビオランテでした。
頭が蝶になったり花になったりするデザインは綺麗だったなー。アニメ雑誌に載ってたSUEZENのイラストも良かった。


んで、ヤダモンが最終的に物凄い魔法(これはブログには書けないほど)を使うのだが、これがまあ、時を操る妖精タイモンと無敵の魔女となったヤダモンのコンビが非常にまどかマギカに近いコンビネーションですごかったです。まどマギだなー。
でも、ヤダモンが勝った理由はヤダモンが正しいとか、愛の力とか、プリキュアみたいに明言されず、ただひたすらヤダモンが頑丈なだけだと言うのがまた無敵ですごかったです。スーパー女の子ですね。聖フェアリーストーンへの扱いとか、真なるタイモン王子への反応とか酷いよ。
まあ、ヤダモンがめちゃくちゃ強くなったのは、キラも含めて他の人との交流で心が強くなったから、とも見えるけど、単に最初から最期まで我を押し通しただけという気がする。そういう強引で言い訳しない女の子は大好きです。
ヤダモンは「純粋に強い魔女の子供」という怪獣的魅力がありまして、人間が変身する魔法少女とは一線を画しているのかも。
あー、僕の脳内妹アーキタイプとして、このヤダモンは有ると思います。SUEZENの萬画バージョンではジャンに対して「あたしはジャンの妹だからわがままで良いんだもん」っていう爽快な台詞が有りましたね。

  • コミック版ヤダモンとの違い

ヤダモン (CR COMICS)

ヤダモン (CR COMICS)

アニメ版ラストは勢いが有って泣けたし良かった。
けど、若干駆け足で、ヤダモンが急に賢くなってしまった感が有り、魔女の森の女王が無力感を感じる所もあった。もちろん、ヤダモンが活躍するための蓄積として女王や他の人たちとの交流や、他の人たちが状況を少しずつ作る(キングゲイナーの最終回的みたいに)っていうのがあったので、ヤダモン個人の手柄ではないんだけど。
ただ、SUEZEN版はヤダモンを最後まで子供として扱って、キラとの決着はヤダモンの母でありキラの親友であった女王が付けてた。SUEZEN先生はヤダモンの「子供性」を重視したんだなー。アニメもマンガもどちらもヤダモンが聞かん坊の子どもだっていうことが重要なんですが。
帯アニメと月刊誌の違いもありますしね。アニメ版は群像脇役とヤダモンの交流と、派手なアクションを描いて、マンガ版は光と闇の哲学やら母性やら女王とキラとの因縁を文芸的に描いたという感じだろうか。萬画版ラストのジャンの抒情的な雰囲気は良いな。アニメ版のラストの絵も良かったわけだが。うむ。
ヤダモンの母はベルサイユのばらのオスカルがそのまま母親になったような美しさと強さを持ってる感じで、非常に好きです。母親キャラは基本的に苦手なんですが。魔女の森は女しかいないから、ママモンは父性も持ってるのかな。
ラストではそれが変わって雌雄和合したのだが・・・。

やっぱりエロゲーライターのウロブチの描いたまどかマギカは魔法だの宇宙だの言ってもレギュラーキャラの閉じた関係でドラマをやってて、ほむらが自衛隊を単なる武器庫扱いをしていて、ドラマが作れてないなあ。
ヤダモンは最初はチンピラとして出てきたブッチ&エンリコ兄弟がいつの間にか仲間になってたり、ハンナも怪獣にやられて怪我した動物の手当てをしてたり、一人一人が頑張ってて、広いドラマだなーって思った。まさか全人類が出るとはなー。
帯番組と深夜1クールの違いもあるが。やっぱりそういう脇役ドラマの拾い方は、1クールや超長期シリーズだと難しいよね。3,4クールだと脇役のドラマも書きつつ、全体として収集を付けられるんだけど。


それと、まどかマギカは魔法みたいに奇跡が起こらない、って言う所がリアルに見えるように描かれているけど、脇役の拾い方が作為的だったり、モブ(群衆:人格を持たない者)を小道具としてしか描いてないのが、まどかをわざと追い込むシナリオであって、まどかや周りの人の生きてる人生って感じがしない。作為が見えると、逆にリアルじゃないのだ。
ここら辺は機動戦士Zガンダムカミーユの追い込み方(&映画でのリメイクの仕方)にも共通してて、結構見せ方が難しいのだが。まどかマギカは最終回で追い込まれたまどかがまだ何をするかわからないんですけどねー。最終回に期待。


ただ、ハッピーエンドの魔法少女と、バッドエンドの魔法少女のどちらがリアルか?って言う話ですよ。
まどかマギカはまどかとほむらを追い込むために、脇役の人間を追い込むための道具として描いていて、ヤダモンに比べるとあんまり彼らの人生って感じがしないんだよなー。
社会が描けてないっていうか。
あと、リアルとファンタジーでいうと、ミヒャエル・エンデか、もしかしたらアーシュラ・K・ル=グウィンあたりがどこかで「子供たちは、大人になるにつれて、成功や幸福は嘘で、失敗と不幸だけが本物だと言うニヒリズムに陥っていく」って述べていたような気がする。ソースは失念。
まあ、物理的には成功も失敗も現象としてはないんだけどね。客観的には。強いて言えば、縁が有るかどうか。それが六道。


  • アニメブームの谷の時期としてのヤダモン

90年代初頭の庵野秀明に「今はおにいさまへ・・・とVガンダムしか面白いアニメがない」とか言われたり(逆襲のシャア友の会だったかな)、アニメ様や氷川竜介先生に「90年代初頭からエヴァ攻殻機動隊?)までは、80年代アニメブームが終息してたオリジナルアニメ冬の時代」って言われてましたけども。
ヤダモン、天才テレビくん勇者シリーズエルドランシリーズ、ムサシロード、アイアンリーガー赤ずきんチャチャ、とか、そこら辺で育ってきた世代の私としては、あまり子供向けを無視されるのも悲しい事と思います。ジーンダイバーとか子供心に「このSFは子供は理解できないだろうが、本格的で面白いな」って思って見てた。ていうかティル・ニー・ノグがかわいかった。ケモナー萌え。
というか、アニメの歴史って、アニメ評論家やアニメファンの年齢や社会情勢に依存してる部分もあるのかもねー。60年代生まれで、70年代〜80年代のファンジンから評論活動を始めてた人は90年代初頭にはちょっと仕事が忙しくてアニメから遠ざかってた人が多い。
まあ、それは他人さまの事情だから、別に俺は気にしねーけど。



しかし、ヤダモンってアニメージュに連載が有った関係もあるし、今思えば結構特集記事も充実してたと思うなー。
パソコン通信もあまりメジャーで無かったし、あの頃は読者投稿欄で「魔女の宅急便とヤダモンの文化的考察」などの議論が交わされていたなあ・・・(遠い眼)。
データ原口さんのアニメのはらわたの、ヤダモン放送リストはそういえば妙に細かかったらしい・・・。ていうかデータ原口さんはヤバい。マジで。ロマンアルバムも出てたな。
今はそこら辺はおじゃる丸忍たまファンクラスタになってるのかな。


とりあえず、当時のヤダモンは一部に妙な濃いファンを産んで、僕のようなアニヲタをそだてて29にもなって見逃した回をDVDレンタルを探してうろうろしたりするオッサンにするようなアニメだったわけだよ。
NHKだし、脚本とかスタッフの一部はふしぎの海のナディアにも参加してる人だったりして、そこらへんもエヴァブームに繋がる熟成の一部だったかもしれん。
ナディアやアニメ三銃士やアニメひみつの花園のプロデューサーも務めた久保田弘氏は各作品ごとに「ジャン」という名のキャラクターを出すこだわりがあったらしい。あー。子供の時はプロデューサーまで意識して見てなかったですが、この作品群は好きでしたね。

  • 他の後のアニメへのヤダモン

キラが最後に片目を失って、大張正己のアニメみたいなBL影顔になってしまったり、ビームエフェクトで吹き飛んだりするのがオーバリズムを感じた。
全170話だけど、167話の「聖(セント)フェアリーストーン」はヘリコプターやレーザーガンのアクションがガンダムっぽかったし、上下影のレイアウトの付け方や画面分割がが出崎統っぽいと思ったら、ガンダムW前の池田成さんが絵コンテ演出だった。そういう系譜が・・・。
wikiを見ると、結構、偽名で色んな人が参加してるよーな・・・。大地丙太郎もいるし。


あと、キラの使う闇の魔法の黒いゲル状の影って、おジャ魔女どれみシリーズの悪い魔法とか、千と千尋の神隠しカオナシ等にも影響してたと思うけど、金田系アニメーターのOVA幻魔大戦から続いてるよくある手法なのかなー。


つまり結論として何が言いたいのかというと、アニメブームの牽引役になった作品や、スタジオジブリ等の世界的、社会的に評価された作品以外にも、良いアニメはたくさんあるので、もっともっとアニメを見ようと言う事だ。特に子供!
まあ、欲張りすぎても死ににくくなるので、そこら辺は財布や地下資源とも相談だ。

ヤダモン DVD-BOX 2

ヤダモン DVD-BOX 2



あと、出崎統が死んでやる気をなくしたので、もう記事はここまでです。
宝島を見ます。