冒険の始まり!
と言った感じの1巻。
まだ始まったばかりだ!
でも、アニメ換算の序盤1話〜4話でやるべきことはやってて、主人公の立場、時代、土地の明示、ヒロインの登場、謎の敵の襲来、カッコいい味方の登場、カッコいいガンダムの登場!!!、主人公が未熟ながらも才能を発揮、中ボスとの戦い、一息ついた所でお姫様が登場して、次のステージへ。
と、わかりやすいジュブナイル冒険アドベンチャーとしてすごく読みやすい。
ドラクエかよ、ってほどわかりやすい。しかもファースト・クロスボーン・ガンダムと相似形でもある。
ガンダムエースは創刊号から切り抜いて保存していた機動戦士ガンダム THE ORIGIN (絵が綺麗だよね)が終わり、富野由悠季対談集が単行本化された昨年以降、あまりにも僕の収入が少ないので定期購読をやめて、機動武闘伝Gガンダムだけ単行本で買っていたのだが。
久しぶりに出た正統派ガンダムですね。
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しかも、宇宙海賊。
機動戦士クロスボーンガンダム ゴーストは
宇宙×戦国×海賊×機動戦士×ガンダム×ザク×冒険×お姫様×ロリコン×初音ミク×主人公がオタク×サイバー×SF
うむ、外す要素が一つもない!むしろブームの最前線じゃないですかーっ!!!!
宇宙
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時代のブームですよ!
ていうか、1993年に「宇宙戦国時代!」というこんなにワクワクする設定を富野監督が用意していたのに、それが20年も放置されていたっていう日本ガンダム界が残念だな!
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でも長谷川先生がやっと宇宙世紀153年以降を描いてくれそうなので期待したい。すごく大変だとは思うけど応援したい。
以下、ネタバレっぽい。(やはりガンダムの新作と言う事で、長く書きすぎた・・・)
- やはり、長谷川裕一先生はアクションが上手いよなー。
MSの戦闘というのは、もう、初代ガンダムからものすごーく使い古されてきた題材なんだけど、変化球を織り交ぜることで戦闘のワクワク感を高めている。展開自体はすごく王道ジュブナイルなので、戦闘が変化球でもバランスが取れている。
最初の敵がサンドージュで、主人公が最初に乗り込むのが戦争博物館のザクで、15m級小型モビルスーツとの異種格闘技戦を行うっていうのが、いい変化球の使い方だよなあ。アイディアが良い!
単に「新型だ!」
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まあ、初代機動戦士クロスボーンガンダムでも、主人公の少年のトビア・アロナクスがガンダムに乗るのは結構あとで、敵から盗んだ魚型モビルスーツのベス・バタラに乗るという変化球だったんだけども。そこら辺の持ち球の多さも、長谷川先生の上手い所だよねえ。うんうん。
しかし、単なる変化球ではなく、「戦場にいきなりザクが出ると、敵のモビルスーツのコンピューターのCGデータバンクが小型モビルスーツと誤認してバグを起こす」っていうSF的な面白さとか、富野のガンダム小説(あと逆シャア〜F91以降)のMSCG説をさりげなく取り入れてる感じで、富野ファンにも美味しい。
機動戦士ガンダムハイ・ストリーマー〈1〉アムロ篇 (徳間デュアル文庫)
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まあ、冷静に考えるとコンピューターのバグだけでMSがそんなミスをするのはおかしいんだけどね。距離感だけの問題なら、レーザーセンサーとかあるわけだし。レーザー測定はミノフスキー粒子関係ないし。
そんな荒唐無稽な展開を(少なくとも読んでいる間は)楽しく、ぐいぐいと引きこんで読ませるのは、展開が上手いからだ。カーティスという盲目のガンダムパイロット(一体何者なんだ?)が音と記憶だけで戦う描写を先に出して、「ベテランパイロットも記憶で戦うのだから、コンピューターも記録に左右されるかもしれない」と、読者に思わせる展開である。大きな嘘の前に、小さなウソをついて、説得力を増して行く脚本演出構成。
こういう教科書的な上手い脚本って、やっぱり王道だと思っていてもやっぱり面白いんだよなー。王道でベタな戦いなんだけど初見ではそれが面白いと思わせてくれるのは、やっぱり上手さだよなあ。コマ割りとかテンポのセンスもあるし。
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なにしろ、カテジナ・ルースは一般市民のお嬢さんで何の訓練もしてなかったのに、半年程度で歴戦の女戦士のシュラク隊のパイロットたちを何人も殺すラスボスにまで進化したニュータイプなのである。(小説版富野Vガンダムでは強化人間にされたらしいけどね)
機動戦士Vガンダム〈5〉エンジェル・ハィロゥ (角川文庫―スニーカー文庫)
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もう、カテジナさんは乞食をしながらヨーロッパを旅して、持ち前の美貌を餌に野盗とか野武士に強姦されると思わせて、逆に斬って奪うとか、そういう事をするね。絶対。カテ公だし。
「メクラだと思ってお友達になりに来たのかい?アハッ!」とか言う。
そういうカテジナさんのオルタナティブとして、カーティスが配置されているのは、上手いなーって思う。偶然だと思うけどね。クロスボーンは鋼鉄の七人で終わるってのは当時から言ってたし。
機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人 (3) (角川コミックス・エース 2-16)
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- 見立ての面白さ
カテジナさんやファラ・グリフォンにダブらせるっていうのも見立ての面白さなんだけど、「あのズム・シティのアレ」がガンダムにアレされる構図と言うのは、もう、ガノタとしてはすごく興奮する場面ですよね!
7機の一騎当千の敵モビルスーツ、サーカス部隊のサウザンド・カスタムって言うのも、鋼鉄の7人のセルフオマージュだよね。敵の数を最初から出してしまうのは、ジャンプ萬画だと打ち切られた時に悲惨になるんで、12人の黄金聖闘士は人気が出るまで出ないのが正解なんだが。今回の場合は鋼鉄の7人と言う先例があるので出してもよいのだろう。
また、宇宙世紀153年という時代も見逃せない。
なぜなら、宇宙世紀153年は宇宙世紀の中で一番未来であり、当然一番強い機体を出さなくてはいけないのである。そこで、どう強さをアピールするかと言う事です。何でかと言うと、強くないと読者がワクワクしないからです。かといって、未来過ぎるデビルガンダムや∀ガンダムほどのチート機体ではいけないわけです。
そうすると、論理的にクロスボーンガンダム鋼鉄の七人と∀ガンダムの間の強さの新型を出すという解が導かれる。
そこで、∀ガンダムのように「無限の再生能力と補給能力を持ち、あらゆる戦場に対応し、たった一機で戦局を左右し、地球を滅ぼす」という化け物じみた性能を縮小して「一機で千機を相手にする一機当千」というキイワードで敵の強さを評価するのが妥当なのです。
こうやって、読者の側で解説するのは簡単だけど、なかなか出せるアイディアではない。
「バリアーを張る」
MG 1/100 RX-0 フルアーマーユニコーンガンダム Ver.ka (機動戦士ガンダムUC)
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しかも、です。
前述の通りU.C.0153年は宇宙世紀最後の時代なのですが、そこに一騎当千が出るというのが重要。なぜなら、最初のモビルスーツ・ザクこそが1機で千機の戦車や戦闘機を蹂躙する戦闘機械というコンセプトで出されたスーパーロボット兵器だからです。(ファーストガンダム「時間よ、止まれ」では、最前線の基地ではザク1機と歩兵と車両のみで戦線を維持するジオン軍が描かれた)と、すると、モビルスーツが戦車や戦闘機と同じくらい普及したUC0153において、パラダイムシフトを起こす兵器と言えば、一騎当千と言うのが需要として妥当な描写なのです。
もともとのモビルスーツの開発理由にもマッチして、兵器の進化としてもわかりやすい。また、一貫してガンダム作品で人と兵器と文化の進歩と進化を描いてきた長谷川先生の思想的なメッセージも隠し味として忍ばされている感じがして、非常にナイス。
これも見立てだよねえ。
氷川竜介先生は富野監督の持ち味として「車両合体ロボットを伝説巨神にするなどの”見立て”の面白さがある」と評したのだが、そういう所がある。見立てと言うのは、簡単に言うとロボットの玩具でごっこ遊びをする時の子供のようなメタファーです。暗喩です。
サーカス部隊のMS・デスフィズのデザインもクロスボーンガンダムとエヴァンゲリオンとヴェイガンを足した感じで、非常にカッコいい。口が開くのは良いよね。ちなみに、クロスボーン・ガンダムと新世紀エヴァンゲリオンは少年エースで同時期1994年に連載開始。
あと、宇宙生命体とかねー。出していいのかね。ガンダム00は割と最初から「来るべき対話!」って言ってたからまだしも、クロボンで出るとは全く思ってなかったので、非常にビビったわー。マジで。ガンダムなのに地球外生命体。ヤバい。
- 人間関係が面白い
ちょっとロボットの話ばかりしてしまったが。
人間の描き方も大らかで明るいのが長谷川先生の持ち味。
中年を迎えたテテニス・ドゥガチを支える謎の成人男性カーティス(一体何者なんだ・・・)の雰囲気が良いね。
なんというか、娘のベルとカーティスのやり取りが「よつばと!」を思わせる。ベルは小岩井よつばよりは年上だが、世間知らずの子供だ。それを保護者として面倒をみているカーティスが「よつばと!」のとーちゃんに似てるんだよな。同じ角川書店の萬画だし。
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ここら辺はジオンの残党のいつまでも兵隊をしている横井庄一っぽさや、「世間に圧迫された貧相な中年」とかとは違うしなやかな歳の取り方で、30代のガンダムファンである僕にも好感と共感が持てる。いや、おれはガンダムのパイロットほど強くもないしカッコよくもないんだけど。
40代の福井晴敏さんが「これが大人のガンダムだ!」って気おった感じの機動戦士ガンダムユニコーンとも違う、中年男性の自然な描き方だと思う。
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そういえば、30代を迎えたガンダムパイロットってアムロ・レイ以来か?富野監督は政治の方に行っちゃう傾向があるので、アムロとシャアとハサウェイの父は、長谷川裕一先生の描くカーティスのようなしなやかな歳の取り方はしなかったんだが。Vガンダム外伝の木星じいさんも初登場の時は地球を脱出する政治家として登場したもんな。ギガンティスのジュドーはしなやかだったけど。
絶賛放送中の機動戦士ガンダムAGEのフリット・アスノの中年時代はだいぶ精神的に歪んだ歳の取り方だったしね。こういう明るい歳の取り方をしたニュータイプのガンダムパイロットと言うのは非常に珍しいのではないか?
もちろん、それは木星じいさんや、ドゥガチやバーンズ大尉やキンケドゥさんやウモン・サモン爺さんたちを見てきて、人が世代を重ねる事を受け継いで、人間の生き様と言うのを体感してきた「彼」ならではの生き方なんだとは思う。ここら辺の世代交代感覚はガンダムAGEよりも上手いのではないでしょうか?!AGEは復讐が軸なので、人の生き様と言う点ではちょっと変化球と言うか、ダース・ヴェイダーだよね。
良いよね、「彼」は。視力を失っても、名前や正義を失っても、決してめげないで生きている限り前を向いて歩いていく。良いよね。感動!
誰のための『ガンダムAGE』――ガノタを軽視した作風を眺めながら - シロクマの屑籠
『ガンダムAGE』は男の世代交代を描けるか - シロクマの屑籠
ガンダムAGE 26話のウルフについて - シロクマの屑籠
世代交代って死んで押しつけるっていうもんじゃないよなあ。少年とともに生きてこそ、中年の役割があるわけです。
しかし、宇宙世紀133年の機動戦士クロスボーン・ガンダム開始から作品の中で20年たって、現実でも1994年から18年経って、彼が子持ちの30代になっているっていうのは、すごく感慨深い。僕も1982年生まれでトビア・アロナクスと同年代の少年だったわけで。三十歳ですよ!
うわー、こういう大人になりたかったよー。
っていうか、碇シンジ君は未だに連載が続いていて、アニメも新作映画が製作中とか、どれだけ永遠の14歳なんだよ!!!!
新世紀エヴァンゲリオン (13) 【プレミアム限定版】 (カドカワコミックス・エース)
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- 戦略も面白い
あ、あと、サイド3とザンスカール帝国と木星共和国タカ派と、木星共和国の秘密エージェント部隊”蛇の足(セルピエンテ・タコーン)”(覚えにくい)が入り乱れる開戦を、サイド3のニュースが「ザンスカール製のモビルワーカーサンドージュのプログラムエラーでした」と報じるのが、非常に政治的駆け引きで面白い。Zガンダムのライラ・ミラ・ライラがアーガマを臨検して宣戦布告して、なし崩し的に開戦するのを思い出した。
また、敵を騙すにはまず味方から、と言う感じで兵隊を集めるテテニス・ドゥガチの演説も、政治的だ。
ここらへんの駆け引きが、宇宙”戦国”時代って感じを醸し出してて、好きだなあ。こういう化かし合いが戦国の奇策の面白さなんだけど、戦国無双や戦国BASARA系の戦国ブームものって、そういう面白さを出してこなかったよネ?武将のカッコよさが主で。
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いいよね。。。
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- あとは
あとは、まだ序盤なのでよくわからないです。
木星とコロニー国家の勢力図は?
木星じいさんとの関係は?
フォント・ボー少年って名前がすごくパン屋っぽいけど、あの伝説のパン屋はどうなっているのか?(ガンダムにおいてパン屋は非常に重要な職業である。キースとか)
サナリィのあの人たちは?
その他の元海賊たちは?
宇宙生物は兵器以上の意味を持つのか?
主人公のハッキング能力と機転と閃きはニュータイプの新たなる目覚めなのか?ファイ・ブレインなのか???
Vガンダム最終回以降のハンゲルグ・エヴィンを描いた「ジン・ジャハナムは二度死ぬ」っていう感じのスパイアクション政治劇を見たい。
- 小ネタ集
・「イデの逆襲」ってザクの肩に書いてあるのは逆襲のギガンティスかwww
・登場人コマ目で既に破壊されている安定のビルケナウ!出る!
ここら辺の長谷川裕一先生のオタク心のくすぐり方が長谷川先生自身もオタクって感じで分かっているなーって感じ。
- コラム
幼稚園の頃から25年以上もガノタをやっていると、飽きるほど読みこんだモビルスーツの開発の歴史だが、こういう風にまとめられると分かりやすい。
また、MS-06ザクからF97クロスボーン・ガンダム、ザンスカール帝国のゾロアット、さらに新型のモビルスーツが出る、という展開の萬画なので、モビルスーツ図鑑が載っていると新しくガンダムを見る新世代の子供にも親切だと思う。
これもガンダムAGEよりも子供向けで良い構成。子供に配慮する大人の描写が作品の中でもあったし。
今年の秋からはクロスボーン・ガンダムをテレビアニメでやりませんかねー???角川さーん???
機動戦士クロスボーン・ガンダム (1) (角川コミックス・エース 2-17)
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富野監督は長谷川裕一さんくらいの若手に負けないようにGレコでもキャピタルGでもいいから書いて下さいね。