少女革命ウテナへの助走という名目で、ベルサイユのばらを見終わってから見る、と言う風にDVDをとっておいたのだが。
(初期テレビシリーズは金銭的に入手が困難)
数年前の上戸彩さん主演のドラマ版や各種アニメ雑誌の記事などでざっくりと話は知っていた。
しかし、やはりもっと若いうちに自分の目で確かめておきたかった、と、そう思います。
細かい感想はいつかテレビシリーズを見る時に書こうと思うのですが。(2と新のDVDは持っている)
まさか、これが90分間の映画だったとは信じられないのですが事実なのですごい。
印象に残った所。
有名な緑川蘭子にヘリコプターで勝つ所の省略ですが、むしろその後の合宿でしれーっと緑川とも岡ひろみがいつの間にか仲良くなっている所がすごかったです。
お蝶夫人との最後の決戦は有名なシーンですが、こんなに鬼気迫る池田昌子さんの叫び声はほぼ初めて聞いた気が。カメラワークと画面分割のリズム感や髪の毛のなびきの作画と色の使い方も壮絶。
ラスト1セットはほとんどセリフが無いし。動画と音楽だけで攻めて行っているのが本当にヤバい。
そして、岡ひろみの天才性。
劇中何度も岡ひろみは「テニス辞めたい」とか「こんなことできません」とか言うんだが、ネガティブなことを言いつつ行動としては割とあんまり考えないで自然と練習している。5キロ走れって言われたら普通に走る。代表選抜とかお蝶夫人とのダブルスとか、そう言う人間関係が絡むところでの宗方仁コーチの命令は嫌がるけど、体を動かすこと自体は自然にやるし、それで練習していってメキメキと上達し、勝つ。
エースをねらえ!を参考にしたトップをねらえ!では主人公のタカヤ・ノリコはお姉様の鉄下駄の練習シーンを見てやる気を出したり、あるいは愛川マキなどを参考にしたキルラキルでは父の敵と言うモチベーションがあるんだが、エースをねらえ!の岡ひろみには戦う理由とかきっかけとか理由づけが無い。無いゆえに、生まれついての天才という感じがある。
電話がすごく強調された映画だったけど、本気で「辞めたい」って思って宗方コーチに電話したのに、何となく流れで「ベストを尽くします!」って言っちゃうところの何となくの流れの何となくっぽさがすごい本能的だし言葉では言い表せない感情の交流というかなんというか、すごい。
スポ根要素もあるし特訓もきついので努力してる感じなんだが、割と芯の部分では「らららー」って歌っている体の中の本能的なリズムというものをもっている、という野生の本能的な所がある。
それを劇中で一切説明しないで雰囲気と流れだけで見せていくのがすごい。ドラマツルギーとして切っ掛けとか理由づけとかフラグが立つようなイベントの具体性を極力排しているのに、説得力だけは持たせるという有機的な構成がすごく人間的ですごい。
そして、宗方仁コーチの凡庸さ。
鬼コーチの代名詞として名高いキャラクターだし、野沢那智の声も恰好いい。宗方自身も実力があるし組織の中で立ち回るのが上手く頭も切れる。
しかし、岡を見いだした理由があまりにも個人的だった。
て、寺山修司の生い立ち・・・。
そして、それを蘭子に告白した時、すでに岡ひろみはコーチの手を離れて世界に飛び立っているという。そして、「岡 エースをねらえ!!」という手紙は届くのか、どうか…。
この凡人が天才を育てて、そして手を離れるというのが、また選手とコーチと同時に人間同士の命と人生のすれ違いのドラマにもなっていて、スポーツドラマって言うのを超えた壮大さを感じさせる。
で、そんな壮大な人間賛歌にも肉薄しているんだが、あくまで高校生活の一ページであるという面もあり、ラストのエンディングテーマの「青春〜〜〜♪」という歌を聞かされて「あー爽やかな青春映画だったなー」という気分にさせられてしまうというのもなんかすごいね。
かなりヤバいものを見せられた気がするんだが、「ヒット漫画のメジャーな映画ですよー」という娯楽映画の体裁もちゃんと作っている。
しかし、これが90分とかすごいなー。
あと、妹萌えとしてはやはり緑川蘭子がすごくかわいい。
ライバルとして登場したわりに、しれーっと面倒見のいい姉御キャラにいつの間にか収まってしまうという流れがすごい。トップをねらえ!の校長よりしれーっとポジションが変化するのが人間がキャラクターではないって言うか多重性というか。良い奴ですよね、緑川蘭子。
百合的にもおいしい。
あと、男子テニス部の藤堂さんも、まあ、地味なんだが宗方コーチと男同士の関係を岡の知らない所で作っていて、ドラマを引き締めている。
そして、1979年の映画とは思えないくらい、妙に丁寧に作画された自転車とバイク。
あと、先日見終わったベルサイユのばらと効果音やBGMがかなり共通に流用されていて、お蝶夫人がまるでマリー・アントワネットのように見える。舞台がベルばらの1789年から1979年に200年飛んだだけで同じ物を描いているような雰囲気にも聞こえてしまうのがヤバいなー。
- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 2005/05/27
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