あー、久しぶりのブログ更新です。
前回のあらすじ
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アニメ萬画オタクの感想ブロガーなんだけど、母親が自殺したり精神病が悪化したりして感想を書く以前に感動すること自体がしんどい……という鬱病になってしまって感想を諦めていた。
そこに夢使い1部からの15年来のファンの植芝理一先生の最新作です。
公式サイト
afternoon.moae.jp
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第1話はウェブで無料で読める!(スマホでも読める)
みんなのネタバレを含む感想
bookmeter.com
あらすじ
僕(主人公・鈴木実)には時々、あるものが見えるんだ。
それは、母さん(鈴木綾、職業、萬画家37歳)の高校時代(を見ている、当時彼女と付き合っていた実の父親・治(故人)の記憶)——!
JKと母親——幻覚と現実の狭間で生まれる
やり場のないこの感情はなんなんだ!?
そして僕は、母さんに恋してる。
地雷
吐くほど読むか迷った。
何しろ、僕は母親が自殺している自死遺族なのである。自分が親の期待に沿って国立大学を卒業して、スクフェスのKLab株式会社を過労で退職して精神障碍者になって、僕の学費とか土地の転売とか遺産相続とか介護で親が借金に苦しんで母親が自殺しているので、俺は親殺しなのである。
っていうか、僕も創作をしますけど、池田理代子とか萩尾望都とか竹宮惠子とか、心を揺さぶる残酷な人間関係の少女漫画を描く萬画家って本人はすごい図太いですからね。まあ、論理的に考えてみれば当たり前で、心を揺さぶられたぐらいで死ぬ人は心を揺さぶる作品を描いたり読んだりすると死ぬので、そういうのを描く人は心が揺さぶられたくらいではびくともしない強い人間なのだ。生存バイアス。
マンガ家になって何が大変だったかというと、編集とのバトルでもないし、アイディアが出ないことでもなく、とにかく親との関係が非常に大変でした。
女子美術大学特別公開講座「仕事を決める、選ぶ、続ける」レポート - ニュース:萩尾望都作品目録
萩尾先生は苦労したらしいけど、僕も苦労したので萩尾先生の親との確執を描いた萬画を読むと本気で気分が悪くなります。ネオ寄生獣とかきつかった。まあ、寄生獣自体が親との関係できついんですけど。
あと、親とか友人が自殺する少女萬画原作の「おにいさまへ…」という出崎統監督の名作アニメがある。
僕は富野由悠季監督と並んで故・出崎統監督のアニメの感想を書いているくらい好きなのである。(精神を病んでからは頻度が落ちたけど)
僕の母親は結婚前に沢田研二のレコードのジャケットのイラストレーションをしていた人なので萬画にも興味があり、おにいさまへ…もベルサイユのばらも当時から読んでたらしい。
なので、僕がおにいさまへ・・・のアニメを見て感想ブログを書きつつ座右に原作本を置いていた時、母親に「池田理代子が変なマンガを描いていたやつやん」と話しかけられた。僕は親にオタクを禁止されたガリ勉だったくせに結局オタクを辞められなかったクズなので、オタク活動をしているときに親に話しかけられると鬱陶しいなあって思ってしまったのです。母親は東京の芸能界に居たので、萬画家とかイラストレーターのワナビを見てきたので、逆に僕がオタクをしていると怒ってガンプラとか何回も壊されたし、エヴァンゲリオンのCDも気持ち悪いって言われて割られた。そこで俺がオタクを辞めて京都大学をストレートで卒業して真面目にサラリーマンをやっていれば親は経済的にも精神的にも満たされて死ななかったかもしれない。でも俺は親を殺してまでアニメを見ていたのです。
その数日後に親が自殺しました。
自殺がテーマの一つのアニメを見てる期間にリアルで親が自殺するとか、本当につらい。
これが母親が自殺した一週間後に書いたブログです
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いや、炎上ブログとかプライベートをネタにしているとか言うんじゃなくて、他人になんて悪口を言われようが、一緒に同人誌を書こうと企画を進めていた途中でメンヘラはるしにゃんに自殺されて企画が頓挫されたことがきっかけで、はるしにゃんを監視していた2ちゃんねらーに監視スレを立てられようが、グダちんは自分で自分に対するにくすみの炎が強い。
なので、話を戻して、「大蜘蛛ちゃんフラッシュバック」は母親・親の死・オタク活動とか、地雷じゃん…。絶対つらくなる奴だ…。って思って買うのを迷った。
実際、ひとりぼっちの地球侵略のレベルでの家族の描写でも気分を悪くする。テレビの家族に乾杯とかきつくて見れないし、普通の人の日常を見たくないし、家族を連想させる正月とかクリスマスとか運動会の季節はガチで体調を崩す。
しかし、植芝理一先生の萬画はずっと好きだったし(CGイロハのイも含めて著書は全巻持ってるし)、親が死んだくらいでオタク活動を辞めるのも負ける感じだしな…っていう気持ちも有り。
それに、植芝理一先生はこれまでも近親相姦とか同性愛とかタブーに挑戦してる変態性欲を書いていたし、僕は自分で創作した(というか世界線を越えて出会った)脳内妹と婚約するくらい近親相姦大好きのロリコンのシスコンです。 夢使いの父親と息子、娘との近親相姦の描写も萌えて消費していたし。
娘や妹との近親相姦は好きなのに、母親との近親相姦に苦手意識を持つのはどうなんだ?
とか、色々と読む前から設定で迷いながら購入したのだが…。
おもしろかった!たのしかった!
うーん。重い題材だし、倫理とか変態性とかあるんだけど、楽しく読めてしまったぞう。なんでだろう…。これが、プロの萬画家のパワーなのか…。
葬式のシーンとか故人の思い出を刺激するところとか、「つらくなりそう」な場面はあるんだけど、読後感は悪くないし、悲しい感じと楽しい感じとエッチな感じとオタクな感じのリズム感のバランスでの感情の流れが実に爽やか。近親相姦願望で変態で若干オカルトなんだけども、奇跡的なほどに暗い感じが無くて、主人公の実君が煩悶するシーンも楽しく笑って読めた。
不思議だ…。
演出が上手いのかなあ。
あと、家族をテーマにした作品に触れる時、どうしても自分の壊れた家族と関連付けて辛くなる傾向があるのだが、この作品は「自分とは違う家族」として受容できた。他人だなーって。しかし遠いという感じではなく、「まあ、広い世界にはこういう家族もあるかもしれないね」という肯定的な受け止め方ができた。これは非常に珍しい。「おにいさまへ…」のアニメ版の自殺じゃなかった話とか原作版の宮さまがさらに美しくなった話とか、若干被害者意識を感じて辛くなったのだが。
大蜘蛛ちゃんが僕の母親よりも圧倒的に可愛いからでもあろう。これは僕の母親ではないです。
あえて変なことを言うと、社会が描かれてないからなんだろうね。
結局タブーとか近親相姦ダメとか倫理とか青少年の健全な発育とか有害図書とかイエの家父長制とか資本主義とか、結局のところ社会の都合、世間の目が問題なんです。実害以上に。
そこが、この作品は「母さんに恋をしている」という主人公の少年の「大事にしたい気持ち」をほぼ中心に描かれていて、「母さんに恋しているのがバレたら社会的抑圧される」「親に怒られる」という他人におびえる感覚がない。
母さんに欲情して煩悶する実君は社会的倫理観で「こんなことを考えてはいけない」と思っているのではなく、「母さんを大事にしたいのに欲情して困る」と、前作の謎の彼女Xで卜部を大事にしたいのに欲情して困ってなかなかキスもできなかった椿君の純情と大差ないように描かれている。そういう気持ちの純度の高さの点では、「純」愛ものなのかなあ。
ただ、まったく社会性がない母子カプセルかというとそうでもなく、母親の綾は萬画家として編集者の友人とも明るく仕事をしているし、実君には学校に可愛い女の子の友人がいる。実は綾の仕事や家事を手伝ってもいる。
そういう風に外に向かう雰囲気があるのはいいことだと思う。
また、父親の記憶がフラッシュバックするのは気持ち悪いとかオカルトっていう面もあるんだが、どちらかというと実は「死んだ父親との絆」、「ちょっと変わったコミュニケーション」として、あまり深刻に嫌がっているようでもないのも楽しく読める匙加減だ。(むしろ困るのは37歳の母親とのラッキースケベ)
15年くらい前に僕はここらへんのダメなオタクの引きこもりと同年代だった。
もちろんモテなかったのだが、同年代の女性は若かった。
げんしけんの女子部員も同世代だった。
しかし、僕もオッサンになると同時に周りの女のオタクもおばさんになった。
それで、二次元ではいつまでも若いアイドルマスターやプリキュアとかアイカツ!とかを見ている。
それでいいのか?もっと同年代の女性と向き合うべきでは?とか思う点もある。しかし、貧乏なオタクだと出会いがない。っていうか、大抵の知人女性は普通に結婚しているので僕の相手をする場合ではない。
そこで、大蜘蛛ちゃん37歳。萬画家。ほぼ同世代。
あれ?かわいいぞ?
JK時代もかわいいけど、むちむち経産婦ボディーのお尻でジーンズいいよね…。しかもお酒の飲みっぷりもいいし、性格もかわいい。(書いてる萬画は植芝理一先生の過去作なので、女体化した植芝先生かもしれないんだが)
同世代の女性として、普通に、性欲の対象としてアリだと思います。
それと、好きなアニメの趣味も近いので親近感。
魅力的なキャラクターの見せ方だ。
イデオン好きらしいし。親子でイデオン見るのいいよね…。
っていうか、僕も真面目に人生をしていたら高校生とは言わないまでも小学生くらいの子供がいる年代なんだよなあ…。というちょっとした反省もある。まあ、子供にとって見たら親が僕って言うのは先天性の障害だと思うので子供は作りたくないけど。
あと、リアルに20年前の漫画研究会の部室にエヴァンゲリオンのフィギュアが飾ってあって、自分の青春時代がついにノスタルジーの対象になってしまったんだなー。という感慨もある。
そういう点では、僕が20年もダラダラ思春期をこじらせたエヴァンゲリオンとかの時点で成長が止まったオタクをやっている間に、子育てをして萬画もちゃんと書いている鈴木綾さんは尊敬できる同年代の女性だと思う。こんな魅力的なヒロインがいれば、母親とか言うのは些細な問題かも。
ただ、エヴァよりももっと古いうる星のポスターとか孔子暗黒伝とかも書きこんであって、全体的にオタクのおもちゃ箱みたいな雰囲気がある。
そういう小ネタを見つける楽しみもある。
ちょうど大蜘蛛ちゃんが高校生だった20年前が僕の高校生だったころと丸被りなので、その当時のオタク事情の描写なども、いろいろと親近感やドキドキを刺激される。
あと、僕も実は希少名字フェチで、進研ゼミの赤ペン先生をしていた時に珍しい名字の人を集めていたことがあるんだな…。
フラッシュバックの原因は解き明かされるのか謎だけど、謎の彼女Xの1話の声は最後までスルーされたね…。
とりあえず、不安もあったけど楽しめた一冊でした。続きも楽しみです。
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