久しぶりの考察だが、頭の中ではできている。富野由悠季監督は誕生日や国境を越えても劇場版を作っている。ならば僕もテレビ版のベルリを解説しようとする。劇場公開に間に合うのか?
今回は第12話「キャピタル・タワー占拠」を考察する。第二部終盤です。
才能がないので、バンダイチャンネルを見ながら順番通りに書く。皆さんも見返しながらこの文章を読んでほしい。
前回11話の殺人考察
nuryouguda.hatenablog.com
放送中に書いた12話の感想
nuryouguda.hatenablog.com
放送中の感想は3回くらいしか見てない状態で書いたので、今見ると間違いも多い。意見が変わった部分もある。でも書き直すのは面倒だし、当時の記録として残す。
とりあえず、ベルリの心情の不安定度合いを画面の斜めの角度の変化で描いていたのではないか、という目の付け所は自分でも悪くないと思っている。
- アサルトパックに対するベルリの心情の揺れ
冒頭、アサルトパックに包まれているのはG-セルフが嫌がっている、とラライヤ・マンディが言う。
それに対して、ベルリは自分もアサルトパックでG-セルフが武装することには反対だ、と平和主義っぽいことを言う。
なのだが、技術士官のハッパ中尉が「次の戦闘は長距離戦になると思う」という話も聞く。
機動戦士ガンダムのアムロとモスク・ハン博士の関係にも似て、富野アニメの主人公は技術に対する興味が強い。∀ガンダムのロランも機械に強かったし。ベルリはキャピタル・ガードのモビルスーツ乗りを目指していたのだし、技術論を大人と話すことは好きな優等生だ。モビルスーツは接近戦用の兵器だけど、それを長距離戦闘に運用することはどうか云々と話し合うことで、ハッパ中尉との心理的な距離が縮まる。
大陸間戦争というGレコの本編では描かれていないが、どうやら大西洋を挟んで十年もアメリアは戦争をゴンドワン大陸としている。それはかなりひどい事のようなのだが、ハッパ中尉はあまり普段は悲壮感を見せない。悲壮感を見せないのだが、やはり正規軍ではなく偽装海賊軍のメガファウナに配属されて、という所に忸怩たる思いはあるようだ。それでも自分の技術を生かして仕事をするし、最新技術には興味がある。
もしかしたら、ハッパさんには第二次世界大戦の時に日本軍のパイロットスーツを作っていた富野監督の亡くなった御父上に対する再評価の気持ちがあるのかもしれない。風立ちぬの影響かもしれない。また、ハッパ中尉はアメリア軍の軍人だが中華系の顔立ちの人種だ(キャラクターデザインワークスにも中国系と明記)。なので宇宙世紀の千年後のアメリア帝国がどの程度白人至上主義なのかは分からないが、生粋のアメリア人ではなく移民で、天才技術者なのに海賊船に配属されて差別されているのかもしれない。
脇役ながら、こう言うちょっと複雑な過去を持ったハッパ中尉だが、独り言の愚痴をベルリに中途半端に聞かれると、
「貴様に守ってもらいたいんだよ!」
とBLみたいなことを言う。
で、ベルリは
「読んでおきます!」
と、ジブリアニメの主人公がすごくやる気を出したときみたいな顔でアサルトパックのマニュアルを熟読してアサルトパックを使いこなすぞ!という意志表示をする。
ベルリはキャピタル「ガード」の候補生なのでとにかく「人を守る」ということに対してモチベーションが高い。
あと、ベルリの母はキャピタル・タワーの運行長官で世界中にフォトン・バッテリーを配給する仕事をしているが、それは完全に非営利。ただひたすら人類を延命させるための公共事業であり、技術を発展させて収益を上げる経済成長はタブーになってきた歴史がある世界。Gレコの劇中世界観ではヘルメスの薔薇の設計図の流出で経済成長が千年間抑えられてきた世界が、急に産業革命を起こして宇宙戦争をやってまで利益を奪い合う戦争を各陣営がやり始めた、って言う背景がある。なので、アメリア軍もキャピタル・アーミィも、そのほかの勢力も自分たちの利益拡大を目指して行動している。
しかし、ベルリだけは違う。ベルリは非営利公共事業でベーシックインカムの電池を世界中に配る母・ウィルミット・ゼナム長官の養子になって、無償の愛情を受けて育った優等生。才能もあるし自信もある。コンプレックスや他人に対する利害の意識も薄い。なので、他人と戦って利益を得ようって言う考えが毛頭ない。スコード教の配給社会で育っているので、現実の視聴者と違って、資本主義という概念を持っていない。(アメリア帝国は資本主義になりつつありそうだけど。トワサンガは貴族社会っぽい)世界一のエリートでベーシックインカム配給事業の長の母親の仕事を助ける良い息子であろうとしているので、彼はどの陣営かどうかにも関係なく、「全人類の福祉に貢献したいし、人類を守りたい」という正義感を持っている。
これはガンダムSEEDのキラ・ヤマトとかともちょっと違って、「親しい人や大切な人を守りたい」ではなく、「とにかく全人類の最大幸福のために守る」という思想。これはFateの衛宮士郎に匹敵するヤバさ。ベルリはエリートなんだけど、パプティマス・シロッコとかとも違って、エリートだから自分の才能で人類を好きにしていい、という独善ではなくて、エリートだから自分の才能を人類のために最大限使うべきだという滅私奉公の公僕官僚としての意識が高すぎる。アルトリア・ペンドラゴンや天草四郎に匹敵するヤバさ。
なので、ベルリは大好きなアイーダさんとノレド・ナグが中途半端に記憶を取り戻したラライヤから宇宙服を脱がせるところでもアサルトパックの説明書を熟読している。ハッパ中尉やメガファウナのみんなを守るためだ。ベルリの行動原理はみんなを守りたい、と同時に「大好きなアイーダさんの尻を追いかけたい」というのがあるんだが、大好きなアイーダさんと同じ部屋にいるのにマニュアルを読んでいるというのは、ベルリが如何にアサルトパックの習得にやる気を持っているかの証拠です。
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だが
「アサルトって暴行って意味もあるんですよ!」と、アサルトパックの強すぎる攻撃力を説明した部分まで読み進めたら、途端にやる気をなくす。ベルリは守るための力にはモチベーションが上がるが、暴行して敵を殺害するという軍事的に当たり前の行為にはやる気をなくす。
ハッパ中尉に「読んでおきます!」とキメ顔で言った後、ここまでわずか20秒。
アサルトは強襲とか暴行とか言う意味があるし、そもそも大砲とミサイルなんだから暴行に決まってるだろ!って視聴者の僕は思うが、ベルリはそういうのが嫌だと思うらしい。ベルリたちはどうやら公用語としては英語を使っているっぽいんだが、「アサルトって暴行って意味もあるんですよ!」って、軍艦の中で言う言葉としては「快速急行列車のRapidってRapeと同じ語源なんですよ!」と同レベルの「今さらそこを突っ込むのかよ」という感じだ。軍艦に乗っていても、デレンセンを殺してもベッカーを殴り飛ばしても、ベルリは自分が殺人兵器に乗っているということをリアルに実感できていない面がある。この時点では。どうもキャピタル・ガード候補生のベルリにとってMSなどの機械とはあくまでバッテリー運送の用途が基本で、兵器という概念をあんまり持っていないように見える。千年間戦争を知らない世代なので。(第1話で溶接機を使って戦ったが、「ビームライフルに転用できる」と裏マニュアルを知っていたルインに対して、ベルリは「溶接機はビームライフルのようなもの」と言っている。この違いは重要なのか?)
アサルトパックは大砲とミサイルの塊なので、見た目からして兵器そのものなんだけど、ベルリは自分が兵器を扱うって言うことを考えたくないのか、兵器のイメージがあんまりない文化で育ったからなのか。
で、ベルリはアサルトパックのマニュアルを最後まで読まないで出撃することになる。
ベルリはアサルトパックでハッパ中尉やメガファウナの顔見知りのみんなを守るって言うことにはやる気を出すが、敵を武器で暴行して殺して勝つって言うことにはやる気をなくす。拳銃よりもはるかに強い軍事兵器のモビルスーツに乗っているからには敵をぶち殺す覚悟を持ってないとダメなんだけど、ベルリにはそれがない。
「みんなが幸せになるように頑張りたいなー」って気持ちはあるけど、そのために暴行するのは嫌がる。なので、ハッパ中尉に「読んでおきます!」って宣言したのに、「この武装は暴行用です」って書いてあると、一気にやる気をなくす。気まぐれすぎだろ…。
「女子かよ」
また、ここで、ベルリがマニュアルを最後まで読んでなくても何となく何とかなるだろーっていう戦場をナメた態度がほんと、飛び級生の傲慢で独裁者な楽観主義って感じですね。で、そうやって放り投げたマニュアルが壁で跳ね返って顔に当たって痛い目を見るって言うのも、ベルリの人生の縮図になっている。細かいギャグシーンに見えるんだけど、ベルリの人となりを非常によく表している。自信と楽観と人間に対する信頼から「まあ、何とかなるだろ」って行動して、結局痛い目を見るというベルリ。
僕個人としては富野由悠季監督は笑わせるギャグの演出は下手な人だと思っているんだけど、こういう風にユーモアに寓意を含ませてキャラクターの性格を描写するのはとんでもなく上手いと思っている。しかし、まあ、Gレコはスピード感が早すぎる。
ベルリがアサルトパックの強化武装に最初は反対だったけどハッパ中尉と話してやる気を出す、が、暴行って言葉に気づいてやる気をなくして、マニュアルを読み終えないで出撃する。
このアサルトパックに対するモチベーションの激しい上下がわずか1分足らずの描写で済まされる。しかも、ロボットアニメなのに戦闘やロボットのシーンではなく会話の流れで。これは、アニメファンでも気づきにくい。実際僕も放送当時は気付かなかった。「はー、たしかにアサルトって暴行だよなー」って思ったくらいで。
でも、この殺人考察をして注意深く見ていくと、ベルリは「殺人はしたくないけど守りたい」「人類を守りたいので人類がひどいことをすると思いたくない」という気持ちを持っていると気付いた。で、そういうベルリの感情の縮図がアサルトパックのマニュアルに対する態度の変化一つをとっても濃密に表されていると思う。が、やっぱりテレビアニメでこのスピード感で主人公の戦闘のモチベーションのアップダウンを描くのは視聴者に気づいてもらえないのは仕方ないだろって思うし、それを強行した富野監督はもちろん、僕は尊敬しているんだけど、でも、この作り方で一般受けは無理でしょ…とも思う。
で、この稿は「ベルリの」殺人考察なので、ベルリとハッパ中尉のやり取りの直後に挟まるクリム・ニックのザンクト・ポルト占領作戦のアイディアやサラマンドラの兵士に対する演説のシーンは煩雑になるのでカットするが。しかし、アメリア軍正規部隊から偶然海賊船に配属されたことに愚痴るハッパ中尉をベルリが守ろうと思った直後に、サラマンドラの兵士が軍事教練しているシーンを挟むのは富野監督の皮肉だろうか。
ベルリは同じ釜の飯を食っていて自分のマシーンの整備をしてくれているハッパ中尉のことは何となく善人だと思ってしまうけど、ハッパ中尉と同じアメリア軍人は戦争や人殺しを乗り越えてきているんだよなあ。どっちも人殺しの軍隊なんだよね。同時に、アメリア軍人もスコード教の信者としてはベルリと同じであるという場面も挿入される。
第9話のマスクに対するベルリの「人を見ちゃったら撃てないでしょー!」にも象徴されるのだけど、ベルリは戦争とか暴力には反対でアーミーは嫌いだけど、人類自体は好きだし守りたいと思っているので、なんとなく目の前の人には優しさを持ってしまう。それは彼の美徳でもあるんだけど、戦士としてのアンバランスさでもある。もちろん、ベルリはこの時点でもまだ自分が戦士ではなくキャピタル・ガードの候補生という自覚をしているのだが。
知人になって個人としてはいい人に見えるハッパ中尉と、知らない軍人との差は何だろうか?そういうことを突き詰めて考えないままなんとなく最強のガンダムに乗って戦えてしまうのがベルリ少年なのだ。こういうことは現代っ子向けアニメとしても、身内に感謝して自民党を支持するし韓国アイドルTTは好きだけど、右傾化して北朝鮮をネタにしている若者に対する時事ネタの暗示かもしれない。
ブレンパワードの小説版のあとがきの福井晴敏さんの言葉でも似たようなことがあるが、富野アニメは小説版で補完されてきた面がある。ここでもしもGレコの小説版があったとして、「ベルリには温和そうなハッパ中尉と、大陸間戦争を遂行しているアメリア軍を結びつけることができなかった」というような一文があれば分かりやすくなったであろうと思うのだが。しかし、説明のために小説を書くというのも変な作業だ。なんとか劇場版Gレコでは理解しやすいアニメになってほしいが、それはどうしたらいいのかはなかなか難しい。しかし、ベルリのアサルトパックへの気持ちの変化の描写のとっかかりはこのように、テレビ版でもちゃんと描いてはある。ただ、スピードが速すぎるのとさりげなさ過ぎるので視聴者が取りこぼしやすい。そこで視聴者に賢くなれ、って言うのもアニメという媒体にしては偉そうすぎる…。富野監督は文芸をやりたい気持ちと啓蒙したい気持ちと子供向けにしたい気持ちが混在していて、難しい所だ。
富野監督はGのレコンギスタで「全体主義を描く」と言った。しかし、全体主義と言ってみんなが容易に連想するジオンやナチスのようなアイコンは描かれなかった。ハンナ・アーレントを参考にしたらしい。ハンナ・アーレントはホロコーストのユダヤ人運行責任者であったナチスのアイヒマンを「凡庸な悪」と評した。そして、ベルリ・ゼナムは運行長官の息子の官僚候補生だ。マスクにしてみれば、彼は独裁者になるような血筋のもの。ナチスではなく、狂気でもなく、「目の前の人や規則を大事にして、知らない他人を攻撃する」そういう主人公のベルリが、もしかしたら全体主義の象徴かもしれない。そういう恐ろしさはGレコにはある。まあ、僕もGレコのどこが全体主義だったのかはいまいちよく分かってないんだが。(そもそも富野監督自体が個人主義的な色合いが強い作風の人だ)(あんまりみんなのためって感じの話は少ない)
話は飛ぶが、パーフェクトパックは白、カバカーリーは黒。ジョジョの奇妙な冒険のジョースターさんは白。第5部のラスボス「自分が悪だと気づいていない最もドス黒い悪」のスタンドはホワイト・スネイクだった。ベルリの素朴な平和主義や規範意識、そしてマシーンを使った戦争が凡庸な悪に通じる、という見方もできるのだ。善悪の相対化は富野監督の得意技だし。
- アイーダとクリムの勢力争い?
前回、アイーダ・スルガンは「アメリア軍を自分のものだと思っているような青年にサラマンドラを任せられますか?」「サラマンドラの動きを止めましょう!」とドニエル艦長に主張した。
ここで、グシオン・スルガン総監親子派閥とズッキーニ・ニッキーニ大統領親子派閥がメガファウナとサラマンドラで不協和音を起こしている。のだが、メガファウナのドニエル・トス艦長は「大統領の息子にはそういう所がありますけど…」と言うだけで、表立ってサラマンドラを討伐しようとはしていない。
では、サラマンドラのクリムはどうなのだ?
クリムはかなり厳しい語気と表情でメガファウナから出たモビルスーツ(アサルトパックG-セルフと随伴のG-アルケイン)についての情報を要求している。クリムは天才であり、モビルスーツの操縦だけでなく指揮官としての才覚も表している。なので、アイーダが自分に反感を持っているだろう、ということは察しているのだろう。登録上は同じアメリア軍なのに、メガファウナをこういう風に警戒しているクリムにはどういう意図があるのだろうか。
第三話、第四話でアイーダに「クリムは自分を利用しようとしている青年」と言われ、クリムは「姫様!」と呼びかけ、この二人の身分の上下関係はいまいちよく分からんのだが。(大統領の息子と軍総監の娘はどちらが上なのか?)で、前回はクリムはアイーダではなくミック・ジャックを終戦後の世界の女王にすると兵に宣言したのだが。
ここもよく分からない…。アメリア軍の組織にメガファウナもサラマンドラも一応所属している。しかし、アイーダはクリムに反感を持っているしキャピタル・タワー占領作戦をやる意味はなくなったと言っている。クリムはアイーダではなくミックを女王にすると言いつつキャピタル・タワー占拠を狙う。
じゃあ、決定的に敵味方になったのか、殺意があるのか、というと、そこまで激しく敵対してもいない。また、メガファウナのドニエル艦長はアイーダほどクリムを警戒していない。ここら辺の温度差が統一されていなくて個々人と組織の動きがはっきりしてないのも、Gレコが分かりにくいアニメと言われる所以でもある。同じグループでも意思統一ができてないし、コミュニケーションも断片的!これが現実の人間に近いから、というGレコの評価もあるが、アニメならではの表現もGレコにはあるわけで、なかなか両方のいいとこどりは難しいのだ。
また、メガファウナがアメリア軍から離反したのかどうかもはっきりしない。というか、離反していないようだ。
ガランデンにマスク大尉がいるって言うことをクリムがなぜか知っている。前回、クリムがキャピタル・タワーを攻撃している間にマスクがメガファウナを攻撃して、ベルリにマスクの顔を晒した。マスク大尉というコードネームはまだ伝えてないが、ベルリはマスクをマスクと呼んだ。そのメガファウナからの情報がクリムに共有されたのか、それとも描かれていないところでクリムはマスクを見たのか?第5話でエルフ・ブルックにモンテーロの頭をもがれたり、第7話でマスク部隊の攻撃を受けたが、パイロットがマスクだとクリムが見る機会はなかったような…?(キャラやロボットの多いアニメや小説で、そいつの名前をだれがどこで知っているかってのは結構難しい)
メガファウナのドニエル艦長は普通に通信でラトルパイソンやガビアルやグシオン総監の動きの情報を得ている。(ミノフスキー粒子が散布されてないときは普通に通信できてるっぽい)サラマンドラを止めたいってアイーダは言っているが、ドニエル艦長はアメリア軍に所属している意識だ。
かと言って、アメリア軍も一枚岩ではない。
はしゃぎ症のクリムが暴走しているだけでなく、サラマンドラの艦長もはしゃいでいる。
サラマンドラはラトルパイソンよりも先にザンクト・ポルトに入ろうとしていて、グシオン総監の権威があんまり尊重されていない。
では、クリムはグシオンの娘のアイーダをどう思っているのだろうか?大統領と対立する派閥の娘として邪魔に思っているのだろうか?
(どうでもいいけど、このジャハナムの中のクリムから見たヘカテーのパース、巨大感があってかっこいいな)
この流れのクリムの感情がよく分からん。G-アルケインが出たことにはうれしいという顔をする。しかし、アイーダと一緒に戦えるから嬉しいんでしょ、と言われると、クリムは否定する。G-アルケインの戦力にも期待していない。
ミック・ジャックはクリムの愛人としてクリムを試そうとしているっぽいんだが。じゃあ、ミックはクリムのどういう気持ちを察してからかっているんだろうか。
変にうがった見方をすると、クリムはG-アルケインで出撃したアイーダが名誉の戦死することを期待している、という可能性もある。そうしたらスルガン総監派閥は弱まるし、ミックが女王になりやすくなる。
それとも、純粋にメガファウナから出たG-アルケインが自分の増援をしてくれて、従ってくれてうれしいという気持ちだが、ミックにからかわれて照れ隠しに「当てにするな!」と言っただけなのか。
クリムはカーヒルとべたべたしていたアイーダを見てイラついていた様子でもあるので、クリムがアイーダに恋心を持っているということはないだろう。第8話のラストでアイーダの前でもクリムはミックと親しげにしていたので。クリムは女の子に褒められ慣れているので、カーヒルを崇拝するような恋愛をするアイーダみたいな女の子は恋人にするタイプじゃない性格なんじゃないかなあ。(利用はする)
ただ、やっぱり富野作品の雰囲気として男心をもてあそぶお姉さんのミックとか、背の高い恋人を持っているクリムのプライドとか、そういう男女の会話はオブラートに包んではっきりさせないところがあるよね。多分この時点で何回かクリムとミックは寝ていると思うんだけど、一回やっただけで恋人面しないで、やっぱり戦いながら互いに相手を試したり、繋ぎとめるために格好つけたり、クリムとミックの恋愛の段取りは結構リアルな職場恋愛。(いや、僕は彼女いたことないんですけど。オタクだし)
アサルトパックG-セルフとG-アルケインで出撃したベルリとアイーダの会話の間にクリムの出撃シーンが挟まったので話は前後するが、この段落でまとめる。
サラマンドラを止めたいというアイーダ、戦争は辞めてほしいベルリ。アメリア軍のメガファウナとしてはキャピタル・アーミィと戦うサラマンドラの援護をすべき。微妙に齟齬がある状態でのベルリとアイーダの会話を分析する。
ここで、アイーダは「サラマンドラをクリムが好き勝手に動かすのは止めたいが、サラマンドラの艦隊自体は父が指揮するアメリア軍の持ち物なので破壊されたら困る」という、微妙な立場になっていると分かる。ベルリはベルリでそういうアイーダの気持ちを察している。サラマンドラがアメリア軍を利用してキャピタル・タワーに侵略をしているからと言って、アイーダもベルリもそれを撃滅しようとはしてない。ロボット戦闘アニメなんだけど、Gレコは敵意や殺意が複雑。「敵だから悪だからやっつける!」という簡単なアニメとは一線を画している。
で、ベルリは「マスク部隊の攻撃を止めりゃあいいんです」と言う。この時点のベルリにとって、距離感が一番遠い、共感していないのがマスク部隊だからである。戦闘行動をしているというレベルではマスク部隊もサラマンドラ艦隊も大差ないのだが、アメリア軍総監の娘のアイーダに恋しているベルリとしてはサラマンドラではなく、マスク部隊を止める方を選ぶ。
で、アイーダはベルリの自分に対する恋心をあまり分かっていないので、ベルリがアイーダに肩入れしてサラマンドラへの攻撃を止めている、ということを理解していない。むしろ、アイーダから見てベルリはキャピタル・ガード出身の高校生にしか見えないので、(恋心を分かってくれていないので)「キャピタル・アーミィと敵対してくれてありがとう」と言う。ベルリはアイーダが好きすぎて自分の恋心が伝わっていないとは思いたくないので、「仕方ないじゃないですか!」と、キメ顔で虚勢を張って言う。ここら辺の二人の間の温度差が本当にひどい。アイーダもカーヒルに一方的に崇拝するような恋をしていたんだが、ベルリも弟だからか?自分の気持ちが相手にどう思われているのかあんまり自覚してない…。
この時点のベルリはそんなに深く考えてなくて「アイーダさんのためならマスク部隊を叩くのは当然」って思ってるのに、その当のアイーダはベルリのそういう気持ちをあんまりわかってない。
で、サラマンドラとマスク部隊の描写を挟んで
ベルリ。
アサルトパックのフォトン・アイの照準装置とミサイルと長距離ビーム砲を使うのだが、「マスク部隊を殲滅する、皆殺しにする」のではなく「攻撃を止めさせる」と事実を都合よく願望とすり替えている。リギルドセンチュリー1014年で、千年戦争をしていなかった地域で育ったベルリがどの程度戦争をイメージしているのかは分かりにくいが、ミサイルと大砲の塊のガンダムに乗って「狙い撃ちをして殺すんじゃなくて、攻撃をやめさせるだけだから。自衛だから」って思ってるの、キャピタル・ガードは自衛の組織だって言う理念に凝り固まっているな。単純に素直に見ればミサイルを撃ったら人は死ぬんだが。
しかも、アイーダが「フォトン・アイは信用できるの?」と言うと、ベルリは「ハッパさんのメンテナンスは信じます!」と言う。
アイーダの考えているようにアサルトパックのフォトン・アイが長距離攻撃の性能を発揮できることと、ベルリの考えている「相手を殺さないように攻撃だけをやめさせる」目的を成功させることは、微妙にずれているのだが、ベルリは「ハッパさんは(いい人そうだし、彼のメンテナンスしたマシーンが僕の期待に外れることはないと)信じます!」と、機械の性能の善し悪しを人間関係の好感度とすり替えて認識してしまっている。
ここら辺の軍事兵器に対する批評性、昨今の北朝鮮のミサイルの恐怖に対して自衛隊と日米同盟の強化に期待する若者にも通じるような。
最近の若者は右傾化していて親に感謝して地域が好きでマイルドヤンキーらしい。僕は氷河期世代のロストジェネレーションだし、ここで長文ブログを書くようなオタクなってしまうくらい社会とは離れた人間だが(オウムの息子の伊佐未勇や、ひきこもりのゲイナー君世代)。ベルリは僕より年下の最近の若者を参考に性格を作ってあるように見える。ゆとり世代の後のさとり世代の後のスマホ世代のような、なんとなく「自分は機械を上手に使えるし、社会もうまくいくし、仲がいい人が作った機械なら自分の理想を叶えてくれるっしょ」みたいな妙な安心感を持っているインスタグラム世代みたいな感じの世の中をナメた所がある。こういう風に若者世代のダメな部分も含めて当事者世代以上にリアリティを持って描いてくる富野由悠季と言う老人は非常に才能があると思う。
ただ、ベルリも単に世の中をナメている楽観主義者と言うわけでもない。自分が何でもかんでも成功させられるとは思っていない。
「モビルスーツは沈められなくても!」と言うのはベルリが「モビルスーツは殺したくないけど、撃ち合っているミサイルの攻撃を止めたい」と思っている願望の言い換えだと思うのだが。
「後は大変かもしれない」という彼の懸念が注目ポイント。何が大変なのか?
これは彼の性格をかなりはっきりと表している。と言うのは、富野作品、ミノフスキー粒子下でのMSの運用の戦術を考えればわかる。
つまり、西部劇やスナイパー映画と同じで「撃てば相手に自分の場所が知られて反撃される」と言うことです。レーダーを無効化したミノフスキー粒子散布環境下でビームの狙撃をするということは、光っている自分のビームの座標に向けて反撃されるということです。これはVガンダムでも描かれていた。
ベルリは人を殺したくない。敵の部隊を殲滅するのではなく攻撃だけをやめさせたい。今回はたまたまマスク部隊も同時にフォトンアイミサイルを使ってくれたので、それを横合いから撃ち落とす形になって攻撃の妨害行動は出来た。
それでは、ベルリが何が大変だと思っていたのかと言うと、もちろん「自分の位置がバレて、反撃する敵に狙い撃ちされて、それを回避したり迎撃すること」が大変だと思っていたわけです。
キングゲイナーのブラックメール作戦みたいな。
ベルリは天才だし最強の能力と機体を持っているので、自分がダメージを負うことはあまり問題視していない。また、他人に奉仕するのが好きな性格で他人を殺すことが嫌いなので、自分が反撃されて大変になるかもしれないという予想はできても、それは許容範囲内になるわけです。自分は最強のガンダムで何とかなると思っている。(これは終盤でラライヤに突っ込まれる)
まあ、ここらへんの自分が攻撃されることをリアルにイメージできない痛みを知らない若者としてのベルリの自己犠牲、奉仕の精神はキャピタル・タワー運行長官の養子としては我欲の無い美しい姿かもしれない。天才パイロットとしては敵を殺さずに自分を攻撃させる戦い方は、自信と実力を伴った高貴な騎士道精神かもしれない。
しかし、現実の戦闘はベルが予想したようにはならないのです。では、戦場はどう推移するのか?
Bパートに続く!
つづく!
- あとがき
そう、続くのです。
第12話の殺人考察を一本で書き上げたかったんですが、2週間かかってもAパートしか批評できなかった…。申し訳ない…。
というか、よく考えたらこのブログは画像も多いし、文字も長いし、アクセス解析を見たらスマホで読んでる読者も多いし、一編にアップロードしたら、逆に読みにくいかもしれないですよね?最近はパソ・コンの長文ブログよりもサクッとスマホで隙間時間で読める記事が好まれる傾向があるようですし。カジュアルインターネッツですし。
ユーザビリティを考えたらブログは長さよりも更新頻度とサプライズがロコナイズなのです!
べ、別に最近は日照時間が減って鬱病が悪化して毎日半日は寝込んでいる上にデレステをやっているから富野作品に対するブログを書く時間がないってわけじゃないですよ!
イベント「Trinity Field」開始です!
— スターライトステージ (@imascg_stage) 2017年11月19日
メンバーが活躍する限定ストーリーを楽しんでくださいね!
<イベント限定アイドル>
北条加蓮(Sレア)
神谷奈緒(Sレア)#デレステ pic.twitter.com/zNTl9BUZse
俺達の課金でステージがまた新たな段階へ進化を遂げましたね。素直に土下座です pic.twitter.com/LYTEtMgFQy
— 翔はアイカツ5thフェス初日で延命した (@sho_jinsei) 2017年11月19日
しかし、 アイドルマスターシンデレラガールズスターライトステージ トライアド・プリムス 新曲「Trinity Field」
うたTriad Primus 渋谷凛(CV:福原綾香)・北条加蓮(CV:渕上舞)・神谷奈緒(CV:松井恵理子)
作詞:奥井雅美/作曲:上松範康(Elements Garden)/編曲:藤永龍太郎(Elements Garden).
って、強すぎるだろ…。潔くかっこよく生きていく水樹奈々っぽい蒼の三角形って最高過ぎるだろ…。
25000ポイントは走りたい…。
Gレコに対してのやる気がなくなったわけではないし、頭の中に理論は出来てる。富野監督が劇場版を出すまでにはテレビシリーズのベルリの全発砲に対しての殺人考察を書き上げたい…。
っていうか、ベルリの台詞や発砲の一個一個に対して、赤ペン先生とか編集者みたいに注釈をつけてるブログを書いてるのって俺だけだしね?世界に一つだけの高貴なブログだしね!私の処女にどれだけの政治的価値があるとヒギィだしね!
どいつもこいつも「Gレコやベルリは分かりにくい」とか軽く言いやがってーっ!だったらお前らは分かろうとしたのかよ?
短文のツイッターとか津田レベルでさあ!クソッテキストサイトの矜持はどうした!
というわけで、僕は僕で軽い気持ちでベルリの全ての戦闘行動の意図を読み解こうとしていたんですが。まあ、ざっくりした論旨はトミノアニメブロガーナイトで口頭で発表したんですが。
ブログで画像と文章でまとめようとすると、かなりの精神エネルギーと飲酒とペプシコーラとカフェインと時間が必要になるぞ…。富野監督も1分以内に3つ4つの伏線を仕込んであってスピード感と密度を解きほぐすのが大変。
よく考えたら、他のアクション映画とかでも「この主人公はパンチの一発や発砲の一発ごとにどんな気持ちでやっていたのか」って細かく見ている批評家は少ないし、もし、マッドマックスとかランボーでそれをやっている批評家がいたとしたら、僕は僕で「うゎっ、この長文、自己流解説、気持ちわるっ」って思うかもしれない。
今回の「ベルリはこの立場からこう言っていて、アイーダは別の立場なので」と台詞をいちいち推理小説で証言を照査するように分析するのも、まあ、ちょっとオタクっぽいし気持ち悪いよね…。ごめんね。気持ち悪いオタクのおじさんで…。もっとコスプレとかきれいなイラストで華やか~なレコ活できたらよかったんだけど・・・。おじさんはおじさんだから・・・。
でもさあ!
分かりやすいアニメをぼんやり見て、正しい価値観とか巨匠の権威に従っているだけのアニメファンで良いのかよ!アニメでさ!
だから僕はGレコの解説をする!徹底的にな!テレビの情報バラエティのコメンテーターとか深夜ラジオのパーソナリティーになってギャラを貰っているような野郎には負けるつもりはない!
クソが!
世相なんかどうでもいいだろ!アニメだよ!アニメ!
母性とかディストピアなんか周回遅れなんだよ!戦後サブカルチャーなんか知ったことか!
本文、本編、本論の理解を深めることこそがオタクだよ!だからコマ送りしながらセリフ一つ一つの間の係り結びを考える…
(とかえらそーなことを言いつつ、実はまだシンデレラガールズのアニメの花言葉の解説もあんまり理解してないし、サイドMは「男性アイドルのアニメの割にけっこうディフォルメ表現が多くて、かっこいいって言うよりはかわいい系に寄せてきたなー」くらいの感想しかないですし、今期は魔法使いの嫁のパパ活ぶりと宝石の国かなー、くらいのざっくりした感じで、あんまり富野アニメ以外に言及する余力がなくてすまない・・・。ラブライブ!がなんで売れてるのか全く理解できてなくてすまない…)
- 次回の殺人考察
nuryouguda.hatenablog.com
nuryouguda.hatenablog.com
- Gレコ感想目次
nuryouguda.hatenablog.com
nuryouguda.hatenablog.com
- 懇願
そんなギリギリの状態でGレコのクッソややこしいキャラクターの気持ちの読解と言うことを誰にも頼まれていないしどこからもギャラが出ないのにやっているアニメ海賊の僕を応援する人はいるかな?
(この間は牛丼が30箱送られてきました。年末までは毎日牛丼です)
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ガンプラや食べ物や書籍やオナホールを送ってグダちんを君好みに育成しよう!
でも一番欲しいのは睡眠時間!!!!!!!
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