玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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新たな進化の可能性 けものフレンズの最終回で泣いた話

 10年もブログをやってたらいつの間にか女子大生に富野ブロガー最大手と言われるようになったので高尚な考察とかしなきゃなーって思ったけど、よく考えたらここは俺のチラシの裏なので思いつくまま日記を書く。
 楽しいアニメを見たよー!けものフレンズの最終回たーのしー!そして泣けた!
 ネタバレはしていくスタイル



  • バトル

 けものフレンズのバトルのテンポがいい所はサクサク進むところです。前回のサーバルちゃんの救出の後、今回の冒頭ですぐにサーバルちゃんの記憶があるのが分かったり、かばんちゃんの記憶があるかどうかも割とすぐにわかるので、無駄に引っ張って視聴者を煽らないのでサクサク見れて楽しー!
 サクサク進むけど、「記憶があるのか」ではなく「最初に話したこと覚えてる?」っていう言葉遣いをする脚本の一ひねりがいい。そして「たべないよ!」の繰り返しで泣くって言う。
 前後するけど、大黒セルリアンとのバトルの段階の踏み方がいい。
 ハンター3人とサーバル、ボスの5人でピンチだった時、セルリアン打倒のために冷静に動くヒグマと、かばんちゃんを取り戻すことにこだわるサーバルちゃんの涙もそれぞれ尊いし。そこにはかせと助手が来るだけでも熱い!でも、まだ勝てない!

 そこにフレンズが大集合してさあカメラが下からぐいっとパンしてタイトルロゴがドーン!泣く。てさぐれ部活もの難民救済。
 王道すぎる…。Gガンダムうしおととらリアルタイム世代なのでラストバトルに全員集合は燃える!

 しかもただ全員集合しただけでなく、個々の特性を生かして組織戦闘をしてるのが滾る!これまでの旅路でフレンズたちの特徴が思い出される!泣ける。
 フレンズによって得意なことは違うから!みんな自分の得意なことで頑張ってる!うーん。けものフレンズっていうか動物はすっごーい!
 と、同時に、今までほぼ1種類1人で微妙に距離感を保っていたフレンズが「群れ」としての強さを発揮してるってのがすごい。
 前に書いたけものフレンズの感想で、「ホモサピエンスがネアンデルタール人を圧倒できたのは、他の霊長類と違って他の動物(狩猟用の犬とか食料と動力源の牛とか馬とか)を家畜化してフレンズにして利用したから」って歴史を述べたけども。
けものフレンズ第1話のサーバルちゃんのすごーい!ビジネスコミュ術100点!! - 玖足手帖-アニメブログ-
 動物はある一定の範囲での2、3種間の共生はあるけど、自覚的な他の動物の利用をできるのはヒトだけなのだけど。フレンズが互いに助け合うと無限のシナジー効果を発揮する新しい群れになるじゃん!
 すげえよ・・・。泣ける…。


①今までのヒトと動物
  ヒト
  利用
 ↗  ↑ ↖
牛  犬  鶏 
 ヒトが一方的に、集約的に他の動物を利用している。ヒトは発展するけど、家畜になれなかった動物は絶滅したりする。


けものフレンズ


 かばんちゃんが中心にいるけど、他のフレンズ同士も助け合い補い合って、フラクタルの渦のような銀河のような相互作用と無限のシナジー効果を!
 これはもう新しい社会だ!
 けものフレンズはかばんちゃんとサーバルの冒険がメインの筋だけど、1話からヒトの持久力を強調したり、その後も人類の英知とか器用さとかメンタリティとかをアピールしてホモサピエンスの発達の歴史を裏テーマとして描いていた。
 で、人間の発達のほぼ最終段階が「クニ造り」とか「社会化」なのだが、それがここで実現したって言う。
 一応分業はビーバーとプレーリーの5話でやってて、ライオンとヘラジカの群れが戦う6話のスポーツ回でも社会化の下地はしてたのだけど。
 じゃぱりとしょかん以降の8話以降は、実は動物の特性よりも個人の性格が強調されていた。(ペンギンアイドルの内面の悩み解決の話とか、ほぼ同種のギンギツネとキタキツネの話とか、推理もののろっじの回とか)
 で、1種1個体が原則のフレンズがここにきて個人個人となって、最終回に再び個人同士の自覚的な結びつきである社会構築、すなわち群れになるのがすごい。
 違う種類の生き物なので微妙に距離を置いて暮らしていたっぽいフレンズたちが、かばんちゃんとの触れ合いによって仲間意識を持つのがすごい。動物が他の多種多様な動物に共感して仲間意識を持つのは、ヒトだけが他の動物を飼いならしている現在の地球よりも乗算的に可能性があって高まる!

あぁ そっか。あれはアニメ作品のタイトルロゴというよりは「今ここにいる、こいつら、みんな"けものフレンズ"だ」っていう、紹介字幕みたいなもんなのか。新しい動物が出る度に名前出てたもんね。

 そういう意味があるんだよなあ…。
 動物がフレンズ化した、動物の擬人化っていうのを一段超えて、「けものフレンズ」という新しい種が誕生した!!!!っていう。新種発生は熱い!進化だよ!
 で、大黒セルリアンと戦う時に攻撃部隊だけでなくて攪乱するマーゲイとか工兵のプレーリーとビーバーとか化学部隊ツチノコとか、分業して戦闘行動してて、これ、シン・ゴジラの顔を隠した自衛隊よりも、個人が個人として独立しつつ協力する美しさがあるんじゃないかなーって。
 そして、群れとしての強さを発揮するけものフレンズの戦いの最後に、かばんちゃんに教えてもらった紙飛行機と火を使うサーバルちゃんで、群れを強調する流れの中で再び二人の関係、友情が高まる!
 そしてボス撃沈!ラッキービーストというロボットの群れの中にいた「あのボス」が個性を獲得するのも攻殻機動隊コラボも相まって泣ける…。群れとしての集団もいいんだけど、個人の旅路の経験とか思い出が魂を作るっていうのも泣ける…。


 これ、なにがすごいって、個人と社会の関係性のバランスがすごい。最近はワンピースとか「仲間」を強調するアニメが流行ったり、教育勅語民族主義が復活しそうな雰囲気だったりしてる。まあ、90年代の個人主義ホリエモンあたりの自己責任主義の反動でもあるのだが。
 テレビのドキュメンタリー動物番組は基本「家族」とか「群れ」、あと狩りと子育てが強調されるがけものフレンズはその1種1体の特徴からそこら辺ができなくて苦労した、というプロデューサーの話を聞いたわけだが。
 従来の動物は「同じ種類だから助け合う」とか「違う種類は食べる」とか、「同じ種類でも求愛のために蹴落とす」とか生存戦略をしてきたのだが。なぜ群れるのかっていう理由は遺伝子が似てるからとか生まれや性質が共通してるからという先天的な理由だった。
 けものフレンズはけものでありながら、「フレンズによって得意なことは違うから」「だから引かれあうの」と、個性を発揮しつつ群れとしての強さを発揮した。すごい。
 仲間だからとか同じ民族だから国のため、と思考停止して協力しているのではなく、個人個人がそれぞれ「かばんちゃんはともだちなんだよなー」という自由意思とかこれまでの後天的な経験、人生の積み重ねで、自覚的に「けものフレンズ」という新たな種を名乗るに至ったけものフレンズの進化尊い…。
 単に「けものが擬人化したキャラ」じゃなくて「けものが助け合うフレンズ」という概念で、今までの種の垣根を越えて発揮される友愛…。しかもその輪に人工知能ロボットも入る…。風の谷のナウシカ並に泣ける…。そりゃあ星野源も泣くわ。だって新しい種、人類の次の文明の担い手であるマン・アフター・マンの発生宣言だもん。泣くよ。


アフターマン 人類滅亡後の地球を支配する動物世界



 また、僕はガンダムオタクなんだけど、特に富野監督の本流のガンダム長谷川裕一先生のクロスボーン・ガンダムシリーズが好きなのだが、ニュータイプとかムタチオンとか、人の進化を描いてきたのガンダム
 ですが、進化と同時にヒトの限界や駄目さを突き付けられるのもガンダム。そして、人類はどうもこれ以上賢くなりにくいんじゃないか?増え過ぎた愚民が資源を食いつぶすんじゃないか?というのもガンダム
 そこで、いったん人類が滅んでやりなおすガンダムXとか∀ガンダムとかGのレコンギスタとかがあるわけだが。
 けものフレンズはそこで、新たな概念を提示したのがすごい。
 「ぶっちゃけ、人類が滅んだ後に地球を支配するのは別に人類じゃなくてもいいじゃん?」というのと、「でも、人類の積み上げてきた文明とか知恵とか成果は無くしたくない」という気持ちを合わせて、「滅んだパークの動物に滅んだヒトの特性を与えてフレンズにして未来を託す」っていう。
 ヒトが地球に生きて金属を製錬したり核物質を濃縮したり機械や設計図を作ったり文化を作ったことは無駄じゃなかった…。ヒトが滅んでも、太古の森や恐竜が化石燃料になったように新たな進化の礎になれるんだ…。(少女革命ウテナ根室教授並感想)
 火の鳥未来編並みに泣ける。

 そういうわけでセルリアンをやっつけるわけだが。溶岩セルリアンは新しい土地になる。古事記にもそう書いてある。


 そして遊園地で祭りが執り行われる。祭りは完全に文明だし社会運営の要だと富野監督も言っている。
 そこで繰り広げられる新たな出会い、新しい料理、漫画。クニウミの神話だったのだな。

  • 感情の流れ

・シリアスになりすぎない
 みんなの力で敵をやっつけたとか、自己犠牲とか、わりと泣けるんだけどキッズ目線ではちょっと道徳の授業の教科書みたいで真面目すぎるかも。そこで、あえてボスを投げる。泣かせるムードだけど、ふざける。
 観覧車は落ちる。
 ジャパリパークはなんだかんだ言って野生なので死と隣り合わせだし、これまでもサーバルは何回も落ちたり撥ねられたりして死にかけてきた。死で笑いを取ってくるスタイルはけものフレンズ特有。実際不謹慎なんだけど、復活の物語なので、「いつ死ぬかわからないし、実際既に大勢死んでるけど、生きているフレンズはたのしく笑い合おう」という、モンスーン気候的な楽観の哲学があるのかも。
 あと、僕もクレヨンしんちゃんとかおぼっちゃまくんとかを楽しんできた世代だけど、子供は「怒られそうな危ないことで笑う」のが好きだったりする。なので、泣きそうな場面でボスを投げたり観覧車がぶっ壊れて死にかけたりするとマジメモードが適度に緩和されてたーのしーって成る。僕も35歳になりましたけど、3話の時点で既にサーバルちゃんがはねられる所を何度もループ再生してゲラゲラ笑っていましたからね。(現実のサーバルは普通に轢殺されます。動物のいる地域ではヘッドライトをつけて前方に注意だよ)
 だから、けものフレンズは子供に見せたいアニメというか、子供の頃に見てたらハマっただろうな、って感じです。まあ、僕の子供の頃は宇宙船サジタリウスとか小公女セーラとかトランスフォーマーとかメモルとかVガンダムとかバーチャル3部作があったので、それなりに楽しかったのだが。
(そういえば、今思い出したけど、Vガンダムが放送開始になった時は小学6年生病だったので「リアルロボットのガンダムトランスフォーマーみたいな子供向け番組を真似てVとか言うのはふざけている!コスモバビロニア戦争をちゃんと完結させろ!」って怒る痛いファンだった。もちろん中一のGガンダムの放送開始の時も「戦場のリアルを描いたVガンダムの後でストIIのパクリをしやがって!」とキレていた。三つ子の魂百までなので、これからも子供のようにガンダムやアニメを見ていきます)


・信頼、愛
 ジャパリパークの施設が朽ちていたり、B-2爆撃機が無慈悲に墜落していたり、砲弾が転がっていたり、けものフレンズのこれまでの流れでは「パークを亡ぼしたりセルリアンを呼び込んだのは人間なのでは…」という文明への不信感や原罪みたいなのもあった。
 でも、人が積極的にセルリアン対策をしてくれてた、と事実はともかく認識では、フレンズが思ってくれて、フレンズが人を憎からず思ってくれてよかった。
 ミライさんの生存の可能性もあって安心した。
 人が絶滅したのではなくてあえて干渉してないだけという可能性もあってよかった。
 よかったよーーーーー!
 突然の死で笑いを取りに行くスタイルもけものフレンズのたのしいところだが、じわじわと忍び寄っていた死や不幸の匂いを信頼と性善で安心に変えてくれる最終回は泣ける…。よかった…。
 ヒトがそんなに悪い動物じゃないと思ってもらえてよかった…。(セルリアンとサンドスター発生の謎はあるものの、まあ、そこはそれ、ファンタジーだから。大事なのは感情の流れと落ち着きどころだから)
 「けものフレンズ」という新しい種の中でも「ヒトのフレンズ」は他のけもののフレンズと同じく大事に思ってもらえてよかった…。

  • フレンズとヒトの交換

 前回、かばんちゃんが木登りを成し遂げたわけだが。今回の最終回ではサーバルちゃんが火と紙飛行機を使った。
 動物がヒトの特性を得たのがフレンズなのだが。ヒトの頭脳をけものと合わせたときに新しい進化が発生するというマジンガーZやゲッター線みたいなものだが。
 かばんちゃん、セルリアンから出てきた後、ヒト化したというよりフレンズ化してるよね。靴下や手袋が自己再生しているとか、明らかに衣服じゃなくてフレンズの毛皮の再生だし。キノヴォリやジャンプ力ぅ…も明らかに人間のレベルを超えている。
 まあ、フレンズは野生開放したら謎の光とパワーが出るけど、ヒトのフレンズのかばんちゃんも普通のヒトよりも強くなってる。フレンズはヒトの特性を得たけど、かばんちゃんもフレンズの特性を得ている。
 これは普通のヒトである僕から見るとかばんちゃんが遠くに行ってしまったみたいでちょっと寂しい。
 しかし、ヒトが万物の霊長として一方的に動物に叡智や能力を与えるのではなく、ヒトも動物から得るものがある、という平等性とか、けものの輪の中に人間もいることの象徴的な描写だと思っておきたい。ヒトが一方的に動物を利用するだけではなく、動物とヒトがフレンズとして何かを交換し合えて影響し合えたらさらにすっごーいことができそうかも!テラフォーマーズ並みに強い。(実際の進化でもウィルスによってDNAの断片を他の種が交換することで変異する説がある※遺伝子の水平伝播を参照)


 対してサーバルちゃんたちがかばんちゃんの手助け無しにバスを水上船に作り替えるのも、けものがヒトの知恵を得たことなので。情報の共有と新たな価値の創造。シリコンバレー並みに知の集積クラウズがあって見習いたい。
 だからヒトと動物のどっちが偉いとかじゃなくてやっぱりみんなフレンズなんだよ!


 そして新たな海の向こうでも楽しいことやおいしいものがあって、新しい友達と出会って進化は続いていくんだ…というスタートレック並みのフロンティア精神!
 ラスト1秒まで完璧に「出会い」と「生物の進化」というテーマを描き切っている…。
 しかも続けようと思ったらいくらでも続けられるしな。動物、実際たくさんいるし。ポケモンも20年やってるし。
 まあ、でも、実際続くかどうかはともかく、「けものフレンズ」というアニメはこういう「なかよし」「協力」「交換」、そして「進化」という、行き詰った人類文明の社会や現実を見るだけではなかなか難しい「希望」を動物の力を借りて描いて、すごく爽やかでおおらかな満足感が味わえる作品だった。すっごーい!
 「現実なんてこんなもんだよ」ってついつい大人は言ってしまいますが、そんなのもヒトという一種類の動物の社会の記録の一部分を見てるだけじゃん!この星にはいろんな動物がいて、助け合ったらもっといろいろ新発見ができるかもしれないじゃん!だから前を見ていつまでもどこまでも走るよ!
 っていう友愛と希望な。泣ける…。いい…。

ぼくのフレンド

ぼくのフレンド

  • まとめ

けものフレンズ」を新たな種の名前として見た場合、僕は進化の概念にパラダイムシフトを起こした。
けものフレンズ」のフレンズは単に「動物女の子」の言い換えに過ぎないかと思っていたのだが、「友情による新たな種や社会の構築」とか「他種の交換による相互進化」という壮大なテーマを内包したいい言葉だなーって思った。


 けもの・・・マイフレンズ・・・

  • アニメの最終回として

 全員集合からのタイトルロゴと主題歌のバトルを8分で終わらせて、エピローグのパーティーをやった後に、新たな旅立ちと泣けるED2番と突然の死ギャグと再会と新たな出会いを盛り込むスケジュールコントロールがすごい。
 エピローグをナレーションで済ませることが多いアニメが目立つ昨今。
 いやー、やっぱりアニメの最終回は燃えと安心と友情と勝利と努力の成果と新たなる希望が盛り込んでこそやで!うーん!いいアニメを見たなーっ!
 サーバルちゃんがバスに轢かれる時からこのアニメを今期1応援してたけど、まさかこんなに流行るとは…。でも僕は別に流行ってるから見たわけではなく、面白いものを面白いというだけだ。本当は他のアニメも(ACCAとか落語心中とか)面白いものについて書きたいけど、書いてると寝る時間が無くなるのでけもフレについて今日は3時間書いた。


 まあ、新作の情報もあるものの、たつき監督以下スタッフの人は激務で放送を見ることもできなかったらしいので、今はとりあえず売れたお金でゆっくり休んで豊かになっておいしいものをたくさん食べてほしい。

ようこそジャパリパークへ(PPP ver.)

ようこそジャパリパークへ(PPP ver.)

ようこそジャパリパークへ

ようこそジャパリパークへ