玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。


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リーンの翼新装版4巻 第九章「再帰還・爆縮」

いえ、7月末までには読み終わっていたのですが、批評系同人誌アニメルカ富野由悠季論を書いたり、病気をこじらせたり、サンライズフェスティバルに行ったり、自分の小説を再開させたりなどしていたので、感想が延び延びになっておりました。
とりあえず、さらりとキャラ毎にネタばれ。
基本的にはアニメと同じですが、後出しじゃんけんでもありますし、尺を気にしない小説(2段組み400頁超え)なので、書き変え掘り下げがあります。
そういう意識変化を列挙しますか。id:kaito2198さんがすでにやってるかな?

地の文がたまにひどい。

つぎにキントキのブリッジに爆撃の衝撃がひびく。
それはアプロゲネから砲撃された火球弾が炸裂したのか、そうではなく、海兵隊攻撃ヘリのミサイルが炸裂して、艦そのものが痙攣したのかもしれない。

うん、これは何人称小説なのかな?今回はミ・フェラリオが語る物語と言うわけでもない。
大体ライトノベルだと、スレイヤーズとか主人公の一人称、独白型小説が多いんだけど。マリア様がみてるとかは視点人物からみた1.5人称小説。
福井晴敏先生は若手作家だった頃、富野小説の影響を受けて書いていたら「これは誰からみた話なんだい?」とダメ出しをされたらしい。それで、「小説版ガンダムイデオンは”神の視点”で書かれていますよね」って宇宙世紀ナイトかイデオンナイトのトークショーで言ってた。
しかし、リーンの翼は地の文の書き手が神というより、演出家の絵コンテの書き込みみたいです。「このセリフは削除されるであろう」とか。
神の視点とか客観的事実ではなく、なんかぼかしてるんだなー。「かもしれない」ってなんだよ。明記しろよ。
というか、やっぱり富野監督は何を書いても富野監督なんだなあ。
まあ、それもそれとして、原因がわからない砲撃状態の混乱ぶりを地の文でも表してるのかなー。余計な説明や段取りを省いて疾走させる効果もある。
でも、最近はあんまりない文体。読みにくいって言われるのもこのあたりなのかな。僕は肌になじむんだけど。
一文が読点で連結されて長いのもそうだし。
むしろ大正や戦前あたりの幻想小説や伝奇小説に近い気がするなあ。富野監督が親父の本棚から読んだ小説が元体験でそのまま70手前か。

  • ジャック・ダニエル

アニメ版1話に登場した米軍戦闘機パイロットの青年。キャラクターデザイン設定が上がらなかったのか、マスクを付けたまま一度も素顔も声も出す事もなくオーラバトルシップに体当たりして死亡した。名前もテキトーだし。
だが、小説では、エメリス・マキャベルの思想に心酔する描写でゴッドマザーハンド計画に側面から光を当てつつ、志とロマンと愛とエリート意識を持った一本義な軍人として、性格が掘り下げられている。
アイルランド出身者らしく、オーラロードを貫いてきたバイストン・ウェルの戦艦をケルト神話の悪魔のように感じ、死する時に女の名を呼びながら、ケルトのアルスターの最大の戦士クーフリンを幻視するなどした。バイストン・ウェルは人類のこれまでの想念、創造力、それらすべてから生まれ、また、それを生む物と言うことをある意味体現した人物。
これは、新装版2巻に登場したスウェーデンの軍事技術者、グーベルゲン・ニーベルがバイストン・ウェル北欧神話になぞらえたのに似ている。同時に、ジャックは20世紀初頭の人物のグーベルゲンとは違い、21世紀の映像文化の中で育った青年でもあるので、フィクションのアニメ映画のような空中戦艦が登場した事に怒って核攻撃を仕掛けてしまった。(まあ、実際はアニメなんですけどねー)
神話の世界に飛び込んだグーベルゲン・ニーベルがその中で自分をラグナレク神話に加担するものと自称して異世界を武装化させていったのと、似ているようで違う時代性と人のあり様を書いていて、面白い。
富野監督がリーンの翼マンガ一巻で、「バイストン・ウェルでは指輪物語の焼き直しのようなよくある中世ヨーロッパ風の狭いファンタジーだけではなく、アメリカとかイスラム、アジアの文化圏を含めて取り込む、次のジャンルの手がかりみたいなものを見つけてみたいと思います。僕のこれはそれこそ野心だよね」って言ったのを、脇役で表現か。
彼の死の直前、ジャックの上司であり共にF-35で並行飛行していたゲス・ガンズ大尉(祖先がルワンダツチ族で、白人政策を糾すために核戦争秘密計画に参加した米軍人)がジャックの恋人のネイリィの名を聞いたのは、オーラフィールドによるもの!アベニールをさがしてとか、機動戦士ガンダム00みたいなテレパシーフィールドですね。
アニメの1話を見た時、中盤でジャックが黒騎士に生まれ変わってライバルになるかなーって思ったけど、成りませんでしたね。ふつーに死んでた。機動戦士ガンダムUCのリディ・マーセナスが黒いユニコーンに乗るライバルになるとは一話では思いませんでしたね。
ていうか、脇役なのにやたらカッコイイぞ。

  • リュクス・サコミズ

新装版3巻で半世紀に渡ってホウジョウの国興しと、文化や情勢の変化に応じて政治経済を運営して行く描写がなされた迫水真次郎が必ずしも暴君や専制君主ではなく、周りの人に都合よく祭り上げられた全体主義の国体の象徴という印象になっている。
新装版1,2巻からの続きであり、清廉で克己心と向学心を忘れない迫水もそれを自覚して勤めつつ、アニメ版の印象よりも自制して暴君にならないように努める王になっている。男としても、それぞれの妻や娘に愛情を持っている。
だから、リュクスもちょっと丸くなって、海上自衛隊の海楽一尉の頭をガラスに押しつけるなどの暴力的で高慢な姫な振る舞いは辞めて、海楽に対してもキチンと敬語で応対して、リーンの翼に畏敬の念を払おうとする姫になっている。これはいい変更点。
また、リーンの翼でエイサップを抱きながら空を飛ぶ時も「父様!リーンの翼が、父様のお国で、私を飛ばしてくれています!」とエイサップを無視して喜ぶロマンティック・プリンセスになっていて、迫水家の血が濃くてすごい!やっぱ、富野監督の女系家族のお家事情が影響しているのかなあ…。孫も生まれたし。
「これは夢だ!」ってアニメ版一話と同じ事を言うエイサップを「夢ではありません」「リーンの翼の靴は父のものなのですから」ってたしなめるリュクスは姫っぷりがアップしてる。というか迫水力がアップしてる。

  • エイサップ・鈴木

アニメ版よりもさらにヘタレた。
海楽が「戦艦が空を飛ぶだと?」って驚いた時に、「象のダンボは空を飛びますよ」って空気の読めない幼稚な事を言って「ふざけるな!」と海上自衛隊の鉄拳制裁をくらって吹き飛んだ。
一応、主人公。ラノベのヘタレ主人公は数あれど、自衛隊員の鉄拳をこんなに無意味に喰らう人も珍しいな。まあ、ライトノベルかませ犬でも手本でもない、普通の他人の大人の男が出てくる事自体が最近少ないんですが。
アニメではリーンの翼で空を飛んだ時に、もっとしっかりリュクスを抱いていた気がするが、小説では「オーラロードではリュクスにしがみつかなければ死ぬのだから、情けないと感じる余裕もない」。女体を感じる余裕もないんだなー。ここら辺の身体的実感はアニメより小説が得意な領分だ。宮崎駿なら描けるけど。
迫水=富野監督と考えた場合、婿に対する複雑な感覚が…。いや、アベニールのオノレも混血で、最初のロボット操縦では女にしがみついて失禁していたんだから、富野小説ではこんなものか?
さて、どういう成長を見せてくれますかねー。
  
  
まあ、最後まで読んでるから……まあ、大学生の数カ月で成長とか……難しいってことはわかってるけど……。

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