玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。


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リーンの翼新装版1巻。読了

著者:富野由悠季
ジャンル:異世界冒険ファンタジー小説
あらすじ:太平洋戦争末期、特攻隊員、迫水真次郎は沖縄海上で桜花ごと撃墜された衝撃で現世とあの世の間にある世界、バイストン・ウェルへと飛ばされた。その世界は地上の現世での戦争の拡大と地上界の戦争技術の流入によって剣と呪法と機関銃とモンスターがひしめく戦乱の世であった。
国のため死に切れず、そこに投げ出された、外国人のような異世界人よりは貧弱な日本軍人、19歳の迫水真次郎は己が幼少時に習った直心影流と克己心のみを頼りに、戦い生きていく事を決意する。
迫水を取り巻くのは国取りを狙う偉丈夫アマルガン・ルドルや彼に与する傭兵や海賊など荒くれの者たち、そして迫水を召還した妖精で淫蕩なフェラリオのハロウ・ロイ、素直で女らしいが生きる力を持ったゲリィ・ステンディという少女、……迫水に救い出された高貴で聡明な亡国の姫君リンレイ・メラディ、リンレイに使える女武者アンマ・ガルレアなどなど。
異世界の男たち、女たちの群れの中で生きるために認められるため、必死に戦う迫水。深まる絆、不意に訪れる出会いと別れ。
戦い続ける中で、迫水は徐々に不思議なる力を発現させていく。闇夜の中で矢を打ち払う目、磨かれる剣技。そして遂に彼はバイストン・ウェルに伝わる伝説の勇者の証、リーンの翼をその足から発動させ、天に舞う!
勇者となった迫水は異世界の若者たちを束ね率いて戦場を駆け、1巻のラストではリンレイの父の残した財宝を見つけ、そこに襲いかかる怪獣軍団を勇者の力と知恵と技で打ち払うというスペクタクルシーンを以って続く。
うーん。
冒険活劇小説ですなあ。
  
 
1巻の切れ目を、旧文庫版の4巻途中の怪獣戦闘に持ってきたのは、単巻ごとでの充実感を持たせ、映画化も視野に入れた感じがした。
ミン・シャオの怪など要所要所にボス戦闘を入れて、最後に強獣軍団との戦い、というのは映画っぽい盛り上げ方。
恋愛描写や濡れ場も、唐突なようで、でもその、唐突な所がまた肉欲の本質の様な、というかサービスシーンというような活劇小説。
迫水は英雄だし80年代の野生時代に連載されていたのだから、とにかく戦いとかエロスとか菊池秀行なアダルトなサービスシーンがあるわけですな。モテモテ。
しかし、迫水は女性に認められたいという男性的な気概もありながら、男同士で認められなくては生きられないし、認められたいという自意識もかなりある。そこがまた、いいんですね!
旧版と新装版を1章ごとに交互に読んでいくという読み方をしています。
旧版では迫水はアマルガンに対して最初からタメ口だったのだが、新装版では19歳の貧弱な日本人の迫水が、でかい刀と大軍を軽々と操る勇者アマルガン・ルドルに対して敬語というのが良い。異世界でなにもわからない少年が知恵と力のある男に惹かれて頼って素直に教えを乞う。いいなあ。
そして、迫水が勇者となってまるでベルセルクの鷹の団の斬り込み隊のような迫水隊の隊長となって(ベルセルクの方が少し後の作品だが)荒くれ者の若者たちを束ねて、迫水隊だけで城を落した後、アマルガンにタメ口を利くようになる。
こういう男っぽさと言うか、任侠は良いなあ。うん。すごくいい。
富野小説はガイア・ギアとか閃光のハサウェイや他のバイストン・ウェル物語でも荒れた若者達と内省的な主人公との付き合いとか群像劇がある。これは高校生くらいが主人公である事が多い富野アニメではあまり見られない。小説はちょっと対象年齢や主人公年齢が上になっている
ので、男同士の手柄の認め合い等が描かれて、結構体育会系。というか、日本大学執行部?
その中でもリーンの翼は処女作ながら、迫水にかかわる脇役たちが生き生きとそれぞれの個性を発揮して闘ったり恋をしたり役に立ったり死んだりして、群像劇が良い。それぞれに好感を持てるなあ。
迫水隊では血気盛んな少年兵ベラ・ドラと陰のある長身の若者クロス・レットの出番が割と多い。弓使いのテラビィ・ザムや、どもり癖のあったミグニ・キャバンもいい。そして、一巻最後でのある意味感情的な句読点を打つ武将ダーナ・ガハラマの心境の変化も良い。
巻末の富野監督直筆のキャラクターデザインメモも脇役たちを生き生きと想像させてくれて楽しい。
というか、初回特典についていた富野監督によるリーンの翼のイメージ・ボードなど、微妙に私の敬愛するヘンリー・ダーガーに似た絵柄なのですが。技巧としてはあまり上手くはない。でも、ほとばしるイメージの力。と、いうと両者に失礼かもしれないが…。
 
 
…。
3月27日発売だったわけですが、引っ越したりなんなりで、全然落ち着きが無く、まだ1巻しか読み終わっておりません。
富野信者失格であります。
機動戦士ガンダムユニコーンはちょっと最終巻途中で読むのを止め、こちらを読んでいます。
リーンの翼2巻の帯にコメントを寄せてくださった福井晴敏先生の機動戦士ガンダムUCよりは一文一文が簡潔で僕の性には合っています。
 
 
が、いかんせん、私の私生活であまり読書をしていない自己責任で、もうみんな読み終わってるのに、全然富野クラスタのネットでの話題についていけない信者ライフです。
感想も、1巻ごとに書こうと思っているんですけど、なにぶん長い小説(1冊が2段組み400ページ)ですし、ダラダラしていたしツイッターでヘタに吐き出したので、やる気のない感想になってしまっちゃってますね。
 
 
文章の話に戻しますと、僕は福井晴敏先生の妙に長くて修飾が多い文はテンポがつかめないというか、途中で読むのを飽きてしまうというダメな読者なのですが。
うーん。福井先生は富野監督の一番弟子と帯に書いてあったんですけど、文体は全然違うね…。福井先生は考え方は富野で、文章はむしろ高村薫先生の影響下にあるとおっしゃっていただろうか?
いや、富野監督の文は伊集院光深夜の馬鹿力で言う所の「脳から直接書いてる」という感じ。なんか、ノリで書いてる。id:kaito2198さんが「福井さんのガンダムユニコーンは一文の中で視点が変化しすぎ」って書いてたけど、うん、リーンの翼はそれ以上に文法無視なんだ…。一文の中で自問自答が繰り返されて、予想される文末とは違う事を文法をかなり無視して書いている文もあるのではないのか?一文の書き始めと書き終わりで気分が変化してしまっている。
つまり、私のブログの様な。
その割に一文一文が講談調でテンポよく、言葉選びも鋭敏に突き入れてくるような所があり、脳から直接書いている勢いがすごい。あまり精緻な文ではない。だから、読み手を選ぶというか、読み手も富野脳のリズムに乗れるかどうかという所が勝負だったりする。
で、あるが、決して適当に描いているかと言うとそうでもなく、全体的な構成や場面転換は非常に練り込まれているような感触がして、なかなか始末に負えない。
まあ、好きです。と、しか信者には言えないかなあ。
 
 
旧版と新版を読み比べてみると、大きな描写の変化から、かなり細かいところまで推敲されている。だから、決して適当ではなく、かなり本気の富野作品だ。
迫水の性格変化とか、雰囲気作りの大作感を出そうという風な変更がされている印象。でも、小生には意味がつかめない変化もあり、富野は不思議だ。
旧版の野生時代らしいエログロ描写が減っているような気もするが、やはりあの蛇とか、あるものはある。が、若干の意味合いの変化もあり、そこがまた、富野さんの中で意味があるものなのだろう。
しかし、旧版と新版を同時に読んでみると、どうも、「新装版は旧版よりも良くなった」とは言えないような気がするのだ。では「新装版は旧版より劣っている」と、いうとそういうわけでもない。文章としても旧版の方がちゃんとした文章で説明されていて、新装版はそこをテンポのためか富野の文体変化のためか、ザクっとすっ飛ばしている所もある。
リーンの翼富野由悠季が「異世界に飛ばされた特攻隊員が逆に日本の行く末を冷静に感じる事が出来る」という歴史批評小説的な部分もある。ゼロの使い魔みたいな設定のラノベ(笑)のくせに、司馬遼太郎を意識したような部分もある。
というわけで随所に政治理論が入っている。
富野小説ではいつもある事だが、これが取ってつけたものではなく登場人物がいかにも考えそ
うな事に昇華してあり、登場人物の肉づけになっているのが富野小説の好きな所です。しかも、その政治理論が一定の意見に偏っているわけでもなく、わりと淡々と事実を並べつつ、しかし言葉としてとがった部分もあり、独特なのです。単にアニメ屋だから見識が浅いだけかもしれないけど…。僕もきちんと歴史を勉強したわけではないアニメオタクだし…。
んで!
その富野の政治理論や、登場人物の考え、感傷、そして事件の描写が旧版から二十年以上経って変化している。それには演出理論もあるだろうし、の、だが、どちらがどちらというわけでもなく、並行して読むことでなにか、一つの事象を二つの視点から三次元的に感じられ、二つのリーンの翼が互いを補い合い、バイストン・ウェルの意思の深さを感じさせるような……そんな感じがします。カットされた部分も、追加された部分も、それぞれの美しさがある。とても楽しい読み方。
機動戦士ZガンダムのTV版と劇場版の関係に似ていて、やはりどちらも嫌いになれないし、補い合って好きです。
 
 
ちなみに、旧版を読んでいてあきらかに「あ、ここは連載の締め切りに間に合わなかったか、アクションシーンを細かく描写するのを面倒くさがったか、飽きたかでやる気がなくて省略しやがったな(笑)」という部分が新装版ではきちんと描写されなおしているのは、良かったです。
怪獣軍団との迫水隊の一大戦闘はロード・オブ・ザ・リングの戦闘シーンにも劣らない迫力でした。
それに、迫水が迫水隊とだんだん仲良くなっていくのは、やっぱり読んでてうれしいなあ。
 
 
さて、2巻ではそんな迫水真次郎が国取りの戦いの中でどのような末路を迎え、戦後編の3巻へ向かうのか?たまらんな!


楽しみ!

リーンの翼 1

リーンの翼 1