玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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オーバーマン キングゲイナー21オーバーマンの闇

脚本/高橋哲子

コンテ/斧谷稔

演出/五十嵐達也

作監/下井草伊井乃弼

やはり、富野コンテはおもしろい。
戦い、回想、会話、暴走動物、戦い、発動、っていうテンポが活劇だ。
悪名高い下井草作画監督だが、以前ほどはひどくないように見えた。まあ、煽りの顔の角度が一本調子過ぎたのはちょっとどうかと思ったが。シンシア・レーンが聖戦士ショウ・ザマみたいな涙の流し方をした。


シンシアはゲーム脳というよりは、誰かによって現実をゲームのようにデザインされて育てられたんじゃないか、と前回書いたが、ゲイナー君もそういうことはちゃんとわかっていて、「だれかがシンシアをそういう風に育てたんだよ。お助けせねば!」と飛び出していく。
か、かっこよすぎる!っていうか、ゲイナー君は腹を縫われたところをフェレットに踏みつけられて、オーバーデビルの悪夢を見て、その上でシンシアを助けに行くとか、強すぎだろ。
「僕の怪我は大した事なかった!平気だ!」元気な声だ。あれ、50ccくらいコートににじんでると思うんだけど。うーん。出産よりは少ないからいいのか。でもコートの下とか。まー、寒さで血も止まったか?
まあ、大丈夫なんだろ。ブリュンヒルデと出あった時にキンゲもオーバーデビルの歌を聴いたりしたんだっけ?そういうキンゲに乗り続けていたせいでゲイナーの体質も強化されたとか?普通に筋トレの成果?
しかし、「怪我したからゲインさん行ってください」じゃなくて自分で飛び出すのがゲイナー・サンガの自己顕示欲か?キングゲイナーを運転してドミネーターと渡り合えるのは自分だけ。
と、いうよりはシンシアを本気で助けてやろうと思うのは自分だけという実感のほうが大きいか。
愛とか下心、相手が美少女だからっていうだけではなくひきこもり期に唯一友達でいてくれたシンシアを助けてやらないといけないという、仁義というのが恋愛アニメとは一線を画すロボットアニメだ。だからこそ、サラ・コダマも友人としていっしょにシンシアを助けに行く。
ゲイナーはゲイン・ビジョウに対して序盤のヘッポコな頃に「借りは返す!」と言い放つので、もともと責任感が強い男のようだ。だから親が殺されたことよりも親を殺した犯人を捜せないことを苦にして引きこもったわけだ。超主人公性格。
で、親を殺したガウリを見つけても恨みをぶつけるというよりは、生きて責任を取れ、必死こいて働け、という風なスタンスを取るという流れか?ヒューズ・ガウリとの決着に関しては描写不足なので半分脳内補完だが。
そんなふうに最近、次々といろんな人の面倒を見ていたゲイナーが前回怪我をして、いったん凹むかと思ったら、「シンシアを迎えに行かなくっちゃ」だからなー。へこたれねー。要するに余裕なんやろうな。
しかし、ネットで付き合ってた人が困っていたら大怪我をしていても面倒を見なければいけないというのは、すごい覚悟だな。普通「いや、君とはネットだけのゆるいつながりだから」ってなりそうなものだが。ネットネイティブのゲイナー君にとってはネットもリアルも人間がいる限り同じって言うことか?えらいなあ。それだけシンシアとの日々が輝かしかったのか。それはシンシアも同じらしいが。
人生のどん底のときにシンシアがネットの女友達でいてくれたっていうのはゲイナー君みたいな少年には自信になっただろうし、それでキングになってネットで自己実現したから学校にも復学できた。(アデットにつかまったけど)ほんで、いろいろあってサラに告白して公認の仲になれたんだが、自信の源の最初はシンシアだったりもする。三角関係的にも面白いな。
まー、高校生だから「今はいいお友達でいましょう」エンドだがな。高校生のうちにあれこれ白黒はっきりさせなくってもよいな。恋愛ドラマでもないし。キンゲってテキトーさがテーマだったりするし。


シンシアはキッズ・ムントにオーバーデビルの巫女として選抜されたっぽい。しかも、レーン家の女たち皆がキッズに庇護されていたかも知れないと言う。1世代だけのカリスマとか言うより、もう地縁レベルの束縛。
それはオーバーデビルの眷属であるキングゲイナーも同じだが、ゲイナーはそのどちらも断ち切る少年勇者なんだよな。サラに対しても「エクソダスがすべてじゃない」って言う。ゲイナーはもともとエクソダス賛成派ではないので、「エクソダスに賛成とか反対とか、ヤーパンが先祖の土地だからとかそういう理由で俺はここにいるのではない。親が殺されたことを気にして行動しなくてはいけないということもない。俺は好きなナオンと楽しく暮らすためにここにいるのだ!シンシアも俺と一緒に旅をしようぜ!」っていう自己責任というか自由個人主義個人主義だが女は誘う。
すっげえ!
白富野だからか、いや、トリトンの頃から芽はあったか?主人公は因縁を断って新しい地平に行ける。
かっこよすぎるなあ。
因縁とか恩讐といったイデオロギー的な理由付けで行動を操作するのではなく、ただただ、人間同士として「一緒に行こうぜ!」って、ゲイナーはいい男!
シンシアもキッズにしか愛されなかったって思いこんでいるが、ずっと一緒にゲームしてくれたゲイナーに心の底ではぞっこんですよ!なんか変な会議でもったいづけたり写真を恩着せがましく渡すキッズよりも、損得抜きで遊んでばっかりのゲイナーの方が本気ですよ。
やっぱ富野アニメは主人公がかっこよすぎる。比較的地味なエイサップ・鈴木ですらめっちゃキスされてたしな。


毛長象は保護動物なのか、腹が減ったら食ってもいい動物なのか。シベ鉄の目があるところでは撃てないということか?密猟ならオッケー。
ゲイナー君もオーバーマンでやさしく子供の象を抱き上げて「落ちたら怪我をするよ」って言いながら食う。生き抜くセンスがあるわぁ〜。
リザードの中、毛長象にまたがって、群れを走らせながらオーバーマン・エンペランザに乗っているゲインと普通に会話ができるアスハムの肺活量や体力がすごすぎる。妹を寝取られた恨みか、それとも子安武人御大将力か?富野アニメだからなあ〜。


キングゲイナーVSブラックドミの戦いと同時平行して、ゲイン・アデット・ガウリ隊VSドーベック部隊&チェルノボーグの戦闘が交錯するのもトミノっぽくて楽しい。
アデット隊は?見せ場なのに!もったいない!


あと、今回、キンゲの発動でシルエットエンジンが全部停止したけど、最終回とかは割りと普通だったような?シルエットエンジン停止は、オーバーマンの初期設定がUFOみたいに文明を停止させるふしぎメカというものから来ている。一話でアデットが「起動干渉に気をつけろ」って言ってたけど、生かされてなかった設定である。後半の発動に生かされたのはグッド。
でも、アスハムがシルエットエンジンを停止させただけで「キッズもゲインも棺おけに片足突っ込んでる!」って言うのは?次回どうなるんだっけ?
アガトの結晶はでかい。