玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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オーバーマン キングゲイナー 2526 父を越えるよりも、母を捨てる力を手に入れろ!そしてリア充へ

25話 氷の中で
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Brush/8398/king.htm#k25
26話 ゲイン・オーバー
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Brush/8398/king.htm#k26
前回までのあらすじ
コールドゲイナーが「僕はキモヲタだから愛されないし男になりたいけど男になれない。僕は一人でやりたいのにゲインはバカにするし女は僕を守るつもりで何もさせてくれん」って凹んでいたら、ゲインが「バカにしてないし。むしろ男と認めてるし」って教えたら治った。
あと、コールドシンシアが「私は人を傷つける事しかできないし、みんな優しくない」っていうけど「初対面でも友達できた」って思い出したら治った。
コールドサラが「私の愛は男の子を利用するだけで無償の愛じゃないから伝わらない」って凹んでたけど「ゲイナー君はサラに尽くすのが喜びって自分で言ってたし、サラも愛を利用しようっていう気持ち抜きでゲイナーに告られてまんざらでもなかった」って思い出したら治った。
25話 氷の中で

26話 ゲイン・オーバー

あらすじ
OVERMAN KINGGAINER オーバーマンキングゲイナー 25氷の中で 26最終回 ゲインオーバー 感想の枕 - 玖足手帖-アニメ&創作-
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オーバーマンキングゲイナー 2526 ゲインとアスハムとルルーシュとスザクとシャアとアムロとミイヤとイオリア・シュヘンベルグと男と女 - 玖足手帖-アニメ&創作-
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前項で「オーバーフリーズを自ら融かしたキングゲイナーがオーバーデビルを倒したのは言うまでもありません」と、萬画版のウルトラマンのような端折り方をしてしまったが、一応書く。
というか、オーバーデビルは母親の象徴である。
キングゲイナーは少年の象徴(スノーボーダー)だとデザイナーのあきまん氏は言っている。
ママの子宮を引き裂いて生まれた少年少女は、逆にママの子宮にチェーンソーをぶち込んでハッピーエンド。なにこのアニメ。猟奇すぎるだろ。興味深い。
子宮と言うのは、抱かれるものではない!引き裂いて、捨てて、棒を突っ込んで昇天させるものなり!
マッチョすぎる・・・。
オーバーデビルの子宮デザインについてあきまん氏の言

今回もまずでかいものを設定するというセオリーにしたがうことにした

シナリオ設定では氷の神殿にいるらしいので神像仏像などを思わせるものにきめた

三面六臂(顔3個手6本の意)にしたのは興福寺にある国宝阿修羅像からきたもの

そこにチスイコウモリの記号、耳と鼻をつけた

西洋でよく使われる悪魔的表現である
人間のカタチに獣の部分を取り入れるやつね

はえの悪魔ベルゼブブとか山羊顔のサタンとかな

キリスト教圏では神の姿を似せてつくった人間をグラフィック的に冒涜すれば悪魔だから恐れ入るよな

そんなに人間が特別かい
というのはおいといて


腹には卵を思わせる丸をつけ演出でどうとでも使えるように設定
こくぴっとでもむにゅむにゅでも

あとはクリトリスと陰茎陰嚢をつけ淫猥なサブリミナルを喚起する

http://cgi.no-ip.org/akiman/od.html

と。アニメでは、三面六臂というよりは三つ目コウモリっていう風になって、ペニスが外れてワレメになってたな。あきまん版のほうが顔の立体感と模様は好み。アニメにはしにくそうかも知れんが。
とりあえず、アニメ版オーバーデビルは女をしている。
で、キングゲイナーを妊娠したりオーバーマンを出産したり、ゲイナーとシンシアを抱き込んだりする。
世界に関われないって絶望している少年少女を胎内で凍らせることで「なにもしないでも、ダメなあなたを丸ごと受け止めてあげる」っていう母の愛を騙る。「受け入れてあげる代わりに、デビルの望みどおり外の世界を滅ぼしましょう」って命令してくる。
こういう母性の気持ち悪さをラスボスにしてぶっ殺すのは爽快だ。
ゼロ年代前半のキングゲイナーのラスボスは、立ちはだかる父親ではなく母性だった。(ルーザ・ルフトとかが居たわけだが)
宇野氏の言う所の母性のディストピアなのだろーか?母性に捨てられたら引きこもる。母性に認められたら決断主義的に暴走して他人を殺傷する。
2003年に既にゼロ年代の想像力の次の母性のディストピアをやってたんだ。ひゃー。
↓サブテクスト。興味深い。新潮を読む気力は無い。
http://www.nextftp.com/140014daiquiri/html_side/hpfiles/otaken/greatmother.htm
もちろん、ここらへんはVガンダム発祥だったりするのだけど。キングゲイナーになっても、その問題解決から降りたわけではなく、ずっとやってる。
ただ、トミーノはやり口を物凄く先走って変えてくるから、議論が追いついてなかったりするのかも。結果、「富野は古くなった」とかいう印象にもなったリ。
 

ところで、僕はシャクティ地母神かと言われると、やっぱり小娘だと思うし、ウッソは軍隊で自己実現するよりはブタを潰す方が真っ当だと思う。小説版はウッソとシャクティとカルルだけだが、アニメでは地域共同体だったし。その中でシャクティ地母神ぶったら逆に浮いて振られるかもしれん。
ウッソを軍人に仕立てた(理想の父親像を投影した)のはニュータイプ思想のミューラ・ミゲルで、ハンゲルグは自分の戦争好きを自覚するからこそ戦闘よりは物の見方や生活スキルをウッソに教えたし木星帝国との戦いにはウッソを使わなかった。と言う風に思う。
これは僕が女嫌いだから、そう思うだけかもしれないけど・・・。
ちなみに、ハンゲルグ・エヴィンが、自分が居なくてもウッソ・エヴィンは大丈夫だと思って去ったのはシャクティの愛があったから、ではなく「ガンダム」の加護があったからです。
モビルスーツはただの道具だが、ガンダムという主役マシーンは何かを超越している。ロボットアニメで人間関係に注目した場合、ロボットはただのアクション小道具として解釈してしまいがちだが、ガンダムは最強なのでガンダムがテーマ的にも力を発揮するとした方が自然。
ちなみに、エヴァンゲリオン初号機は母親である碇ユイそのものだったので、少年と共に寄り添う事はできなかった。エヴァ初号機リリスを砕いたのは、少年の力が母を卒業したのではなく、母親が新しい体に脱皮するようなもの。おもいでエマノンです。男はその触媒に過ぎない。碇シンジは息子でありながら母親の新生のための精子として利用されたのだよな。ひどい。
アスカに向かい合ったのも、シンジが自分で他人を選んだって言うよりは、碇ユイがアスカをあてがったよーに見える。シンジが他人であるアスカと向き合って生きていくのは映画版よりもむしろ、ファンサブで描かれたものだったし。
コードギアスルルーシュが母を捨てたのも、自分に構ってくれないと言う事を認識したし、ママンがあからさまにキモかったからっていう理由っぽいしなあ。(ルルーシュも充分キモイから血は争えないが)マリアンヌがブイツーみたいな狂人に襲われなかったり、もっと巧妙にルルーシュを応援したりしたら話は違ったかも。


まあ、エヴァは別にいいや。キンゲキンゲ
キングゲイナーガンダムと同じく、スーパー主役ロボです。
安田朗氏も「少年って言うのは、自分では大人だと思ってるし、まっとうな考えも持っているんだけど、子どもだから周りが言う事を聞いてくれない。だから、そういう願望をかなえるのがロボット」と、言ってる。ロボット=ギアス=願い。
同時に、キングゲイナー自体も少年属性を持ってるんだな。最初のakimanデザインモチーフが「スノーボーダー少年」+「雪山怪獣ウー」だし。
(ウーは母親なんだが。)
で、キングゲイナーはオーバーデビルの眷属です。じゃあ、どういう眷属なのかと言うと、オーバーデビルの息子なんじゃないだろうか。
つまり、オーバーデビルの機能をダウンサイジングして洗練したのが、キングゲイナーというかオーバーマンXANなんじゃないかなー。


ここで、NHKスペシャル女と男を引用しますけど、女と言うのは関係性の維持の方向に働くわけです。何千万年でも女だけで生殖できる。
でも、それだといろいろヤバイことが起きた場合に適応できないから、男って言うなんかフラフラ出かけていって、淘汰されたり変化したり新しいものを拾ってきたりする機能を持ったモノが生み出されたわけですな。
で、オーバーデビルにとってキングゲイナーと言うのは、デビル自身の外部で人生経験を積んで成長して、それをオーバーデビル自身に再び戻したり、強いオーバーセンスを持つものを呼び寄せてデビルに捧げる子悪魔のようなモノっぽい。
実際にキングゲイナーを取り込んだ後のオーバーデビルは機能が増幅されたし。
だから、エヴァンゲリオン初号機とリリスキングゲイナーとオーバーデビルの関係はすごい似てる。で、最終的にエヴァンゲリオンリリスと同化した碇ユイの魂を持って飛翔し、キングゲイナーは自分と一緒に戦ってきた少年に味方をして母を裏切って殺した。
まあ、エヴァの主役はユイで、ゲンドウもシンジもレイも道具だし。っていう風に見たら別にいいんだけど。キンゲの主役はゲイナー君ですな。


ところで、一つ、疑問が在る。
なぜ、キングゲイナーはオーバーデビルを倒す事が出来たんだろうか?
だって、おかしくね?
1回はオーバーデビルの子宮に取り込まれて、ゲインのエンペランザのブリュンヒルデパンチやオーバーフリーズ解凍で脱出できたのに、再び自分から子宮に戻って中から破壊したんですよ。子宮にまた飲み込まれてしまうかもしれないじゃん。
でも、そういう風にはならない。
ここら辺が、トミノ最終回発動の「理屈は通らないけど、見てたらそれしかないような気がする」マジックですね。常識的に考えたら命が宇宙を支える力と言うのは電波なんだけど、見てる刻は騙されても説得力がある。


もちろん、それなりの理由があるから説得力があるわけで、それは何かと言うと、テンションが上がってるから。
勝ったも同然!という気分を主人公も視聴者も共有する事で、どんな強敵でも余裕で勝つ。
それが即ち「フリーズにはフリーズでは対抗できない。オーバーヒート・・・!」
ああ、そうか、フリーズをヒートで中和したら良いのか、っていう気にはなるんだけど、お前、いつオーバーヒートなんかつかえる設定になったんでしたっけ?
まー、キンゲは徹頭徹尾、なんだかわからんオーバースキルを出してきたので何をしてもおかしくはないんだが。じゃあ、なんであの最後のタイミングでオーバーヒートになったのか?
というと、もう、それはゲイナー君がオーバーヒートしていたからとしか言えん。テンション気力がマックス。
たしかに、今までもキングゲイナーってゲイナー君のテンションの高まりにあわせてオーバースキルが出るって言うスパロボ設定だった。で、その使うオーバースキルと言うのは「加減速」がメインなんだが、要するに「ゲイナー君のやりたいことをやる」です。
それこそが少年の願いな。
「やりたいことをやる」


はい、ここでやっとこさ、オーバースキルの話題と、母親と少年の話題が合流です。
母親は「あなたが何にもしなくても、お母さんが守ってあげる。お母さんが何でもあげる。お母さんが愛しているからあなたのために他人を壊して良い」という
で、ゲイナー君はサラの「愛してる、愛してるから」にもシンシアの「ゲイナーをいじめるな」にも、ご立腹してゲインとガチンコをしたがった少年です。
ゲイナー君は弱いけど異常に我が強い。親が殺された事よりも「犯人を探しもしなかった自分」に腹を立てて引きこもるくらい。
「自分でやりたい事をやるんだ!」
これがゲイナー君の本質。
というか、もう、ゲイナーという名前自体が「獲得者・勝利者」だからね。
ただ、同時にゲイナー君は「人が死ぬのは嫌だけど自分なんか死んでも構わないから英雄になる」っていうこじれた部分も持っている。それはゲイナー君が勝手にやってることで人に認められたがる(キングの称号にこだわる)自己顕示欲なのだが。
それで認められるにつれて皆がゲイナーを当てにして「ヤーパンのために勝つ」となると「サラは僕を良いように使っている」と、キレる。それで「皆が欲しいのは僕じゃなくてキングゲイナーなんだろ!」ってなる。
もう、メガネ男子めんどくせえな。


だが、オーバーデビルに対してゲイナーだけでなく、他の仲間達やシベ鉄たちも自分に出来ることを必死にやっているのが見えて、同時にその輪の中心にゲイナー君の役割があるとわかれば、オーバーヒートできる。


ただ、単にゲイナーが最強の力を手にしてオーバーヒートした、と言う風になってないのが面白いところで、オーバーフリーズから解けたサラはゲイナーに「シンシアを取りだしなさい! ゲイナー!」 と、やっぱり母親ぶって命令してくる。正直、イラッとした。おまえ、反省しないな。
だが、ゲイナーは「そのつもりだ! シンシア! サラ! 僕が!」と言い放った!か、かっこいい!
言ってみたいですね「そのつもりだ!」
どんな命令をされても「そのつもりだ!」っと言ったら主体性を確保できるって言う。
これで、ゲイナーはサラを越えた。


が、ゲイナーはシンシアの手をつかむ事は出来ず、
シンシア「何してんだ!?」ゲイナー「落ち てるぅーーーーーーーー!!」
わははははははは!なんて格好の悪いヒーローだ!
ここで、ゲイナー君の英雄願望を相対化してぶっ殺して成仏させるわけです。あと、25話の冒頭でゲイナー君は「シンシアを助ける王子になる」という願望に舞い上がってオーバーデビルに取り込まれたシンシアをいっぱい殴って、それがシンシアをさらに絶望させたって言うことがあったんですけど。
だから、ここではシンシアをゲイナーが一方的に王子様っぽく助けたら、シンシアの物語の強度が薄れるんですな。あと、富野って男女平等主義フェミニストではない。
ゲイナー君が「メンヘルの女の子を助ける俺、カッコいい!」っていうレントンみたいな感じになるんじゃねーよ。バーカ。という優しさですね。
で、シンシアも王子様を待つだけの女の子ではなく、「何してんだ!」と言いながらゲイナーを逆に助けようとして、自分で一歩を踏み出して絶望を卒業する。
シンシアは「自分は人を傷つけて、誰も助けてくれない」というのが絶望だったので、ゲインのプラネッタのテレパシーで「友達ができた思い出」を思い出した後は、もう一度自分で自覚して人を助けること(ゲイナーを守るために人を傷つけるとかじゃなくて)をやるという通過儀礼が必要だったんですね。
シンシアも主人公なんだなー。
いや、よくできてる。バランスが。


キングゲイナー千と千尋の神隠しにも似た所があるらしいが、千もハクを助けようとして逆に助けられるんでしたっけ?見てないので良く分かりませんが。


で、シンシアに助けられたゲイナーは、命が助かる代わりにメガネを落としてしまいます。
そのせいで

ゲイナー「フリーズにフリーズでは対抗できない。 オーバーヒート!」
シンシア「正面、46度上、左2度!」
ゲイナー「了解!」
ゲイナー「オーバーヒートは!」
シンシア「そう! 正面!」

と、自分ひとりで成し遂げる事が出来ず、シンシアに方向の指示をして貰わないといけなくなる。
って、どんだけ目が悪いんだゲイナーは。
だが、シンシアに対してもゲイナーは、もう、「とどめは僕にやらせてくれ!」と反論したりはしない。「了解!」と叫んで、二人でオーバーヒート!
このときのシンシアとゲイナーの目の輝いた感じがすばらしいな!
もう、ゲイナーは「自分ひとりでやらなくちゃ!」とつっぱらず、目的のためには人の助けを借りる事ができる。人の助けを借りても自分の主体性を見失わない自分を取り戻したんだ。
す、素晴らしい・・・。
これ、エヴァンゲリオンだったら碇ユイに「自分で考えるのよ」って言葉で説明された展開なんだが。
ゲイナー君は一言「そのつもりだ!」「了解!」
かっこよすぎるみゃーーーーーっ!


そー言えば、この間のNHKの児童虐待番組で、身寄りの無い若者と共同生活しているというおっさんが
「自立と依存って言うのは反対じゃなくて、車の両輪なんですよ。頼るべき時に依存できるようにならないと、本当には自立できませんよ。自分ひとりだけで何でもしようって言うのは、自立じゃなくて孤立です」ってゆってた。
もう、キングゲイナーってそういう基本的な感覚も内包してんだなあ。しかも、それを言葉で全く説明しないでドラマだけでガンガン見せてる。
そのせいで、まあ、6年くらい経たないと内容が咀嚼できないと言う僕のような視聴者もいるわけですが(笑)


で、ゲイナー・サンガとシンシア・レーン、それとオーバーデビルを怖れずに戦ったサラ・コダマたち皆は「自分の必要なものを自分で手に入れられる」境地にエクソダスした。
そんな彼らにとって、もはや、オーバーデビルのようなグレートマザーの承認は必要ない。大きな存在に許されなくても、自分で手に入れられるんだ。
アスハムは「悪魔は自分の欲望のために、人間の欲望を利用する。だが、私は自分自身の王となるためにお前を利用する」と言いながらオーバーデビルに使われたんだが。
ゲイナー君たちにとって、オーバーデビルは何の利用価値もないし、欲しくもない。欲しがられない悪魔には、何の力もないって言うわけ。
アデットにデビルは「ワイヤーをフリーズするならしろってんだ!」と言われる始末。
絶望した悪魔の自縄自縛の暗喩?おおー、寓話的じゃないですか。
そんなわけで、オーバーデビルはヘナヘナになってやられましたとさ。
キンゲを初見で見た時はオーバーデビルの存在感がラスボスにしては軽く感じられて、ちょっと不満だったんだが。むしろ、存在感なんか最初からない、影みたいなものだったのかも。やすらぎを得たいとか、自分以上の力を欲しいと言う欲望の作り出した影。
同時に、オーバーデビル自身も人の世の熱を欲しがって愛されたいと思っていた愛を乞う餓鬼だったかもしれない。
だから、そういう欲望を越えたゲイナー君たちに「要らない」って言われて消えるしかないんだなあー。
いや、オーバーデビルのボディは爆発したり消滅したんじゃなくて、キッズ・ムントのレリーフと共に落下しただけなので、よくわからんが。もう、抜け殻なんだろうか?


あと、富野アニメには珍しく、主役メカが壊れない。
ブレンパワードはメカではない。
うーん。やっぱり、キングゲイナーとゲイナー・サンガが道具と人を超えて一体に成ったから、キングゲイナーは壊れないのか?
キングゲイナー自身も、ゲイナーと一緒にオーバーデビルという(近親相姦を強いる)母親を乗り越えたんだ!ということか。オペラでのジークフリートブリュンヒルデの近親相姦的な恋は悲劇に終わるが、キングゲイナーは勝つ。
あと、畑仕事に使うし。


それから、キングゲイナーとオーバーデビルの親子関係はそれとして、ゲイナー君自身の親は物語の始まる前に死んでいるわけだが。
これは、ハロルデン・サンガという父親も社会の中では圧殺される小さな人間に過ぎない、という現実認知だろうか?
マリアチ・サンガを出さなかったのは、母親の人物個人の問題ではなく、母親的な性質という概念を乗り越えなくてはいけなかったからだろう。
(つまり、母親がめんどくさい、ではなく、カマリア・レイ個人の問題、と言う風に解釈されるのを避ける)
そして、ゲイナー君はサラ、シンシア、アデット、オーバーデビル、と言うような擬似的な母親関係を繰り返して、その度にイラついて、最後には、母親的な女というかサラは特に自分の行いを反省して変えてくれないけど、ゲイナー君はそれに怒らないで自分の主体性を確保できるように成った、って言う部分が成長なんだろうか。


あと、シンシアは父親のふりをしたキッズ・ムントを殺害して女の家系の因縁を払い、オーバーデビルと一体化してゲイナーの母親に成るのも辞めて、一緒にチェンガン入刀できるパートナーになった、と。


あれ、そしたら、やっぱりヒロインってサラじゃなくてシンシア?


いやいや、サラだってゲイナーの手柄を自分の手柄にするような母親っぽさを卒業して、ジンバの腕が伸びないとか、シンシアやゲイナーほどの力がないハンデを我慢して、最後まで自分の力で戦うように成ったし。
アデットに「お前には(自分がガウリにするように、ゲイナーを正気に戻す事が)無理だ!」と言われて、アデットに張り合ってゲイナーにキスをして失敗したけど、それを気にすることなくアデットに受け止めてもらったり(尻を顔面で)、って言う成長があったかなあ。
ゲイナーにゲインがいたように、サラにとってのライバル兼師匠はアデットだったのかも?
サラはスクールカースト上位のチアリーダーだったけど、女教師はそれよりも上の存在だからなー。そういう面でアデットが先生になったのは意味があったんだローか?で、サラはアデットとケンカしながら女道を勉強中か。


てな感じで、ゲイナー君は母親の幻想を振り切って、女の子達も母親の真似事をして男の子と付き合おうとするのを卒業したと言う事で、第二ラウンドと言う事です。ラブバトルが!
父親や母親の幻想じゃなくて、対等な男女として、そして友人として付き合えるように成ったって事だねー。
ゲイナー君はシンシアの後でサラと手を繋いでるし、それを指摘するシンシアの水城レナさんの芝居が、虚勢が解けて柔らかいかわいらしい、ちょっと高い声にさりげなーくなってて、シンシアが戦闘美少女から女の子に成ったんだよーって言う雰囲気が出てて、こういう高校生がすごく好感が持てる。
で、その三角関係を後からゲインやアナ姫が見守ってるし、その先にはヤーパンが在る。
若者の門出ですねー。いいよいいよー。



あとは、ヤーパンの天井に見る、ゼロ年代決断主義相克の構造を書いたら、やっとキングゲイナー最終回感想は終わる。一ヶ月以上かかった。寝る。