玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。


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リーンの翼新装版3巻 第三章「新国家に生きる」

また、バイストン・ウェルでの迫水真次郎たちの話。
迫水は地上人と連携して異世界で技術革新を起こしたり、隣国との貿易や通商妨害や戦争の準備をしたりする。
うわっ。なんか「軍事技術と国力を高めるために家電製品を作って売ろう」とか。剣と魔法の世界でいきなり商売をする地上人たち。中世からいきなり高度経済成長期に突入です。無茶苦茶だ。
これさー、もう、ファンタジーとかそういうレベルじゃない。ガンダムは既にロボットものではなくて、ガンダムと言うジャンルになってるけど、バイストン・ウェル物語もファンタジーじゃなくてバイストン・ウェル物語っていうジャンルだわ。無茶苦茶過ぎるもん。
『魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」』はバイストン・ウェル物語みたいな異世界に文明を持ち込む話だから、ちまちま読んでたんだけど、魔王がちまちまと天然痘対策とか馬鈴薯生産とか宗教改革とかしているのに、迫水王たちはいきなり「ロボットを作るのにお金が要るから、自転車とかラジオとかトースターとか家電製品を作って輸出しようぜ」とか。さらっと流している。スピード感すげえwwwwwwwww
っていうか、第二次世界大戦前後の死霊たちのような人がバイストン・ウェルに来たとたん、バイオテクノロジーと化学と生理学と電気工学と航空力学と精神エネルギーを融合させたオーラバトラーを作るとか、どんだけオーバーテクノロジーやねん!
迫水が剣と爆薬でシッキェの国を再興させてから8年くらいしか経ってないのに、もうバイオロイド製作ですよ。人工臓器を作るとか言ってるwwwしかも空を飛ぶ。
いや、バイストン・ウェルに生息する怪獣の死体を利用する技術の蓄積と、地上人の工学センスが融合した時に技術的爆発が発想レベルで出来たという事だろうが、無茶苦茶だ…。超興奮する。
なんか、地上でろくな死に方をしなかった人たちが、再び地上に帰るために、バイストン・ウェルで失われた青春を取り戻すかのように国造りやロボット製作や超時空戦艦建造や戦争に打ち込むのって、マジAngel Beats!だな。富野はこれを5年もかけて書いてたのか。未来に生きてるな。
迫水王も「まおゆう」の魔王のように、人殺しに飽きて戦争のない世の中を作るために行動してるけど、迫水は義務教育より先に豊穣の国という名前を国の目標にするって言うイデオロギー政策も行う。あー、迫水スゲー。マジスゲー。
でもなんかいつの間にか農協とか漁協、小中学校も出来てる。迫水すげえ。
 
 
迫水が部族の娘のアピアと結婚して、迫水が部族連合国家の暫定的な王様になり、ホウジョウ国を建国する。
ここら辺の迫水が部族のかすがいとなるのは文中で本人が言っていたが天皇機関説だなー。イギリス公爵に「私は人種的偏見を持っているから日本人の君を君主として崇めるつもりはない。地上に帰るための方法論に過ぎない」とか言われる。うわー。ひでえ。でも、最初の天皇もそんなものだったのかもしれん。
天皇機関説について、迫水に解説してくれる年上の蓼科中尉が冷静な大人の魅力にあふれていて萌えまくる。でも、酔うとちょっと興奮する。かわいい。
ガンダムSEEDとかガンダム00の美少年には全然反応しないんだが、富野小説はどこか普通にホモ萌えするなあ。
 
 
ま、萌え要素を抜きにしても、22歳で剣と魔法を極めた迫水真次郎と言う勇者が、世界各地の戦争で死んだ外国人たちと、死後の世界のようなバイストン・ウェルで話し合い、教えを乞うというのは素直に感心する。
英語も覚えるし、こつこつノートを作ってるし。色んなイデオロギーや地上での話を聞いたりする。ここら辺は富野監督がガンダムエースで各界の技術者や思想家や実業家と対談している「教えてください。富野です」で語られたような言葉が散見されて「教えてください。迫水です」という感じだ。迫水はすごい勇者なのに謙虚に人の話を聞くという所もあって偉いなあ。仁義礼智信忠孝悌。
 
 
かといって、説明文的なだけになっていないのは、戯曲として描かれてもいるからであろう。
迫水が色んな外国人と出会って(ちなみに異世界は死後の世界なのでテレパシーで言葉が通じる)地上では朝鮮戦争後の冷戦が始まっているとの話を大学院生に聞いたり、いろんな対話が描かれているが、どうも芝居がかっている。
嘘くさいというより、対話劇風なのだな。
迫水の職場や家に相手が来たり、あるいは旅の途中で出会ったりという構造。主に迫水が諸国の人に話を聞くと言う舞台設定は古代ギリシャ演劇風でもあり、新派の芝居のようでもある。読んでいて、迫水と言う登場人物の前に色んな人が現れては入れ替わるというのが、とても舞台劇のように思い浮かべられた。
また、ソクラテス的対話という哲学風でもある。
ちょっとググったらソクラテス的対話は20世紀ドイツ哲学者・教育学者レオナルド・ネルゾンとグスタフ・ヘックマンによってグループワークのプロトコルとしてまとめられてたりもするらしい。
・対話メンバーの自由で平等な発言
・具体的で結果のある話題が望ましい
など。
で、それは地上では敵性国家同士でイデオロギーの違いで争っていたヨーロッパ人や日本人が、バイストン・ウェルから地上に帰るためのオーラシップ建造のために知恵を出し合う場での会話での、とりあえずの平等性のある会話シーンの面白さになっている。互いの国のイデオロギーや民族性に対して差別発言をしまくりだが、地上では一度死んだ身であり、今は異世界で生きているから、皮肉にはなっても本気の喧嘩にはならない。バイストン・ウェルは魂が平等になる天国だ。
まさに、ヴァルハラで死んだ戦士たちの語らいと言う感じだ。ただし、彼らは地上においては死者であるが、バイストン・ウェルの現実では生きて戦わなければいけない同志と言う二重構造ともなっていて、それもまた芝居として面白い。
突然、迫水が長々と大日本帝国軍人の腐敗についてものすごく長く、ものすごい大声で怒りのセリフを吐くのも、とても演劇的だ。
そのような古典から続いている演劇作法をいくつも織り交ぜて使って、迫水が見識を広める様を描いている。うむ。面白い。
 
 

あと、迫水の嫁のアピアさんは最初は活発な女性として登場したけど、結婚したら迫水が仕事や勉強や国務に励んでいるのであまり表に出ないし、セリフも減る。夫を立てる女性だろうか?迫水はアピアの実家の商店に入り婿状態というすごく庶民的な王様だが、空軍将軍として新しいオーラバトラーのテストパイロットをしていて出張が多い。
妊娠前は迫水と一緒に出張する事もあったし、仕事の面でも支えていたが。
でも、ちらっと迫水の友人に手料理を振る舞うなど、普通に幸せな家庭を作ってくれる奥さんと言う感じで良いな。
 
 
そして、迫水とアピアの結婚の祝辞を述べた名門氏族の10歳の金髪幼女が将来の迫水の第三の妻、コドールの母になるらしい。
萌えるけど、民族の側室争いは風雲だ!そして迫水はとても絶倫だ。