玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト第5巻 ジャブロー陸水空3大バトル!

クロスボーン・ガンダム ゴーストの6巻を買ったのだが、5巻の感想を書いていないことを思い出したので、読み返した。ちょうど精神的に悪化していたので感想を書いていなかった。
で、ストーリー的には大して進展のないバトル展開だけだと舐めていて、6巻の感想を書く前に軽く読み流そうと思ったのだが、これはこれでなかなか。
まず、構成が上手い。
南米ジャブロー基地跡に進行する主人公たちの視点で、陸、空、水中でそれぞれの地形に特化した敵の一機当千機(サウザント・カスタム、サーカス)MSを相手取って、3つのバトルが並行している。
並行しつつ、月刊連載ということでちゃんと1話で1台ずつ敵のモビルスーツを撃破していてエンターテインメント作品としてのバランスが良い。1話で1台ずつライバルを撃破するという事で一つ一つが粒だったバトルとして面白い。
個別のバトルとしても面白いのだが、本来は一まとまりで行動すべき部隊のクロスボーン・ガンダムX0&Vガンダム、ファントムガンダム、デスフィズが敵の攻撃で分断されて三つの視点に分けられた、と言う勢いのある侵攻作戦の全体の流れがあるので、まとまり感もある。
その構成のバランスが良い。そして、大気圏突入を経て宇宙からやってきた主人公のフォント・ボー、カーティス・ロスコ(仮名)たち「蛇の足」部隊がジャブロー跡地で三つのサーカス部隊との戦闘をしながら徐々にジャブローの密林の奥深くに侵攻して行って、5巻のラストでジャブローの爆心地の中心にエンジェル・コールとキゾ中将のゴールド・ビルケナウが現れることで、三つのバトルで分散した視点が中央にぐっとまとまる構成になっていて、これもまた1冊の漫画として読み応えがある。
その構成のバランス感覚は陸のキルジャルグVSクロスボーン・ガンダムゴースト、水中のデスフィズVSカルメロ、空中のファントムVSエスピラル、という陸海空の地形のバランス感覚でもあるし、同時に長谷川裕一先生のガンダム萬画シリーズに共通する「ニュータイプ論」のバランスでもある。
バランスと言うか、バリエーションというか。ニュータイプというのは、言ってしまえばロボットに乗って戦闘しながらライバル同士が会話するアニメ演出のための演出と言う要素もある。つまり、ガンダムに於いてニュータイプの描き方のバリエーションと言うのはコミュニケーションや対話の個性という風にあらわされる。

  • コミュニケーション三者三様

ライオン型に変形するキルジャルグに乗るアニマーレ・ベルヴァ元木星軍少尉は、音声通信回線を開いて、クロスボーン・ガンダムX0(ゴースト)を駆る盲目の戦士、カーティス・ロスコ(仮)と会話しながら戦う。これはアニマーレ・ベルヴァの言葉を通じて、「エリン・シュナイダーは蛇の足とは会わない」という宣言を読者に聞かせたり、サーカス部隊の一部がジャブローにいる説明をするメタ的な意味があるが、作中でも意味がある。カーティス・ロスコ()は盲目のニュータイプ戦士で、モビルスーツのソナーセンサーからの立体音響を耳で聞いて周囲の状況を把握してチャンバラをする、って言う座頭市ガンダムなのだが、その彼に向って音声通信をするというのは耳くらましで攻撃するって言う戦術的意味がある。
電波を阻害するミノフスキー粒子環境下のMS戦闘に於いて敵のMSに向かって音声を届けるというのは自分の居場所を知らせる行為で禁じ手だが、キルジャルグは姿を隠して密林の中を高速で移動する高軌道の四足獣型MSだから、姿を隠して声だけ聞かせる事になり、敵としての恐ろしさを演出している。カーティス・ロスコ()は耳で気配を察するので、それを邪魔する敵の声はさらに脅威だ。また、アニマーレ・ベルヴァは前作、機動戦士クロスボーン・ガンダム鋼鉄の七人(ゴーストの作中の17年前)での神の雷作戦時にかつての主人公、トビア・アロナクスと戦い、個人的に執着している人物なので、会話したがっているという面もある。
だが、それ以上にカーティス・ロスコ()はニュータイプを否定するほど意志の強いニュータイプなので、ニュータイプ(というかサイキッカー)の娘のベルと音声ではないサイキックインプレッションで思惟や感覚を伝達し合う能力を持つ。音声だけではなく、ニュータイプのサイコ・コミュニケーション、サイコミュが出来ているという事で、音声通話で挑発する敵よりもトビアたちがニュータイプ能力が高くて強い、と言う少年漫画としての強さの表現にもなっている。トビア・アロナクスは目と耳を封じられてもサイコミュで娘と会話する余裕もあるのだ、と言うニュータイプとしての強さな。
そして、視覚的に高速で密林に隠れて音声で挑発する敵のキルジャルグが、カーティス・ロスコ()の奇策によって、目に見える地形の意味を読み取れず敗北するので、知略の面でもカーティスが戦士として上手だとアピールしていて、良い。カーティス本人は非常に追い込まれてギリギリの戦いだったと言っているが、漫画的に見るとピンチと逆転の盛り上がりと、その説得力となる強さアピールがとても面白い。
また、それが戦闘だけに留まらず、ベルのニュータイプとしての成長と、それに対するカーティスの見方の心理的変化につながっていって、人間ドラマチックでもある。



ビームローターサーベルのサーカス機デスフィズのジャック・フライデイと、水上型サーカス部隊モビルスーツカルメロのマーメイド・ヌブラードも無線音声で通話する。これは二人がもともと恋人同士と言う因縁があるからマーメイドが会話したかった、という理由づけ。
ジャックとマーメイドはあまりニュータイプでテレパシーと言う感じはない。だからこそ、ニュータイプのようにお互いの気持ちが分からないで、敵同士になってしまった恋人のすれ違いの口喧嘩であり、ニュータイプ会話の多いガンダムの中でオールドタイプの人間ドラマと言う感じで面白い。
その音声の口喧嘩を無線通信でフォント・ボーに盗聴されて、フォントからの逆通信の叫びを聞いてジャックがマーメイドを殺さない、というのもテレパシー会話ではない声のコミュニケーションを強調していて、個性的だ。また、ジャックがあんまり頭がよくなくて、自分の気持ちもはっきりわかってないオールドタイプの戦士というのも、それはそれで、ニュータイプに対抗する人間臭さをテーマとしている長谷川裕一先生のクロスボーン・ガンダムのテーマに沿ってる感じがして面白い。



クロスボーン・ガンダム ゴーストの主人公であるフォントの乗る光の翼を持つ高機動高出力MSファントムガンダムと、6本のジェットエンジンとビーム砲を持つ高速飛行型MSエスピラルのディーヴァ・ダッダもニュータイプのコミュニケーションとして個性的だ。
ディーヴァ・ダッダは複数のエンジンと多数のビーム砲を同時に操り、空中でも地中でも超高速戦闘ができるニュータイプだ。操作の際に手足を使わず、脳波コントロールしているようなニュータイプで強化修練を積んだパイロットだ。そんなディーヴァは、自分が乗るはずだったファントムには執着しているが、乗り手のフォントには興味が無いので会話せず、独り言を叫び続けるだけだ。フォント・ボーも高速で戦いながら、盗聴しているジャックと、同乗のトレスのことも気にしているのでディーヴァと話す余裕はない。
相手を気に掛ける余裕が無いという事で、戦闘に緊迫感を持たせている。
だが、超高速機動モードになったファントムがエスピラルの速度を上回りギリギリ勝利する瞬間、「目の前の兵士にも好きな人はいたのだろうか?」とフォントがブラックアウトで意識を失いながら思う事で、「コミュニケーションを拒絶するサイキッカーのことを気に掛ける主人公」というドラマ性が発生して、それもそれでガンダム哀・戦士らしい面がある。


ガンダムニュータイプの描写は会話したりしなかったり、心が通じ合ったりすれ違ったり、という色んなバリエーションがあって、それが単なるロボットでの殺し合いを超えた人間ドラマの作劇につながっていて、いいですねえ。


サーカス部隊のMSは異常に特殊戦闘に特化した変態MSで一見ガンダムらしさが無いんだが、長谷川裕一先生はガンダムについて本当に熟知していて、素晴らしい。
80年代からガンダム漫画を描いていて、唯一富野由悠季監督とタッグを組んで萬画を描いた漫画家だ。ガンダムについて熟知している。

ガンダムの旧作に似たセリフやシチュエーションをネタとして扱うのはガンダムビルドファイターズが出る前からの長谷川裕一先生の作風だが。
クロスボーン・ガンダムゴーストは女の情念がめんどくさすぎたVガンダムと同じ時代だが、少年漫画っぽく女性のめんどくささが無かった。だが、5巻になってカテジナ・ルースウッソ・エヴィンと同じように、恋人だったジャック・フライデイとマーメイドが戦って「二度と目の前に現れるな」「あんたが勝手に現れたんだろ」というやり取りをしたりナイフで刺されたりするの、Vガンダムの要素を取り入れてますねー。しかもそれが浮いたパロディではなく、ちゃんとジャックとマーメイドのドラマとしてアレンジされていてゴーストという作品のドラマの一部としてちゃんと生きている。
女を膝に乗せたまま高速機動の慣性で気絶する主人公、と言うのも小説版 機動戦士ガンダムF91のアレンジだ。
ベルやリア・シュラク隊の女性らしさも活きてきている。
と、同時に、アニメ版Vガンダムでは弱い男ばかりだったザンスカール帝国において、男らしい野望や荒々しさを見せまくるキゾ中将の6巻での活躍が期待される。(Vガンダムコミックボンボン萬画版では敵も味方も男臭いキャラが多かったけど)


また、ムラマサ・ブラスターがピーコックスマッシャーに変形したり、クロスボーン・ガンダムシリーズ自体からの引用もある。
ベルのニュータイプへの覚醒に対して意見するカーティスは、トビア・アロナクスのニュータイプへの覚醒に対して意見したシェリンドン・ロナの対照的なリフレインでもある。
長谷川裕一先生のクロスボーン・ガンダムZガンダムハーフで表現された「地球の臭い」というのも繰り返されている。
クロスボーン・ガンダムシリーズ自体が、機動戦士ガンダムF91からゴーストまで数えると30年の作中時間であり、連載開始から19年のシリーズで、アムロとシャアのガンダムシリーズ前編に並ぶサーガになっているので、こういう引用もできるんですね。
やっぱり、クロスボーン・ガンダムは良い作品だ。

  • 寝ます

というわけで、今日中に6巻も読んで感想を書いてしまおうと思ったけど、5巻も読み返すといろいろとガノタのめんどくさいニュータイプ論の感想が湧き上がってしまったので、また今度読みます。(買ってある)
読者募集のオリジナルMSの感想はできなかったな…。ライオンであり猛獣使いって言うサーカスのキルジャルグとか、仏像っぽいエスピラルとかカリメロみたいなカルメロとかいろいろメカも面白かったです。
タイヤより獣とか、Vガンダムネタもあるし。


あと、地味にシドニアの騎士もアニメ前に全巻買ってあるし、謎の彼女Xも買ったけど、Gレコ前だしガンダムに集中したいし、なかなか感想を書きまくれないですね。不眠症の治療のために寝ないといけないし。