クロスボーン・ガンダムの感想を書く前に準備運動として軽くパチスロとソシャゲについて記事を書いたら午前一時になってしまった。不眠症を治す気がないのか。
すごい虐殺が好きな首切り王と、人口を減らしたいティターンズの後継組織のキュクロープスに狙われているサイド1のスペースコロニーの9000万人(ほとんど1億人)を救わなければならなくなったのだが。
巨悪にバトルで勝つ!というロボット萬画の王道ではなく、いきなり「この先生き残るためのビジネスプレゼン」が始まってびっくりした。
今巻は首切り王が出てこないのでアッシュの計画の下準備のためのビジネスが主に描かれる。
しかし、月刊誌だけど1話が45pあるのでボリューム感がある。刊行速度も早い。全盛期の安彦良和先生のORIGINほどではないが。
無敵運送というワイルドな名前の運商業の社長でモビルスーツの格闘戦術も豪快な主人公の一人のアッシュ・キングが、サイド1の政治家や幹部たちを前にして「宇宙の運送業者だから物理計算もお手の物」という今まであまり出してなかったインテリな部分を出して、CGでパワポプレゼン。
ろくろも回す。
「すごい科学で守ります」(恥ずかしながら未読)の作者の長谷川裕一先生のSFマインドあふれる大作戦が語られる。
(これはプレミアがついてないので意外とAmazonで安いのか。まんだらけでは以前高かったような・・・)
しかし単なるSFアイディアではなく、作中の人物にとっては現実感と切迫感があるビジネス計画のプレゼンテーション。また、会議の流れも主人公のアッシュが一方的に話すだけでなく、まずサイド1のネオ・1バンチの王(行政執行機関代行官)でトップのバンスの興味を引く。
バンス王は個人的にアッシュとも親しく、豪快な性格と体格なので大声で混乱する部下を静めて話を聞かせる。
そんで、アッシュが計画の詳細を話すのだが、問題点を突っ込んでくる人もいる。そこをアッシュの師匠がアイディアを出してフォローしてくれて、別の人が他の案を出したりしていって、最初は荒唐無稽でみんなが無理だって思ったアイディアについて徐々に場の空気が前向きになっていく。
場の空気がアッシュに傾くけど最後にバンス王が引き締めて対案や次善策も出すように部下に指示を飛ばして現実感を出す。
ビジネスだー。ビジネスライクな会話劇だが、計画が成功しないと9000万人が全員殺害されるという大規模な危機に対する話なので、イメージシーンで虐殺とか巨大物体が描かれて迫力がある。ツッコミを入れてくる脇役を次々と説得していくので、テンポが良く、達成感とか面白さも感じる。
首切り王が「100日後に殺しに来る」って宣言したけど、それも「ライバル企業が宣言してくる納期」って感じなので、脅迫だし戦闘だけどビジネスっぽい。
本当にその納期は100日後なのか?ということの検証も敵組織の目的から推測されていって、賢い感じがする。
最初の機動戦士ガンダムでもアムロ・レイがGアーマーについてパワポプレゼンする場面がある。富野作品とは言い難いが、勇者ライディーンの後半の長浜忠夫監督編では敵の怪獣がプレゼンする。
しかし、まあ、あんまり富野作品ではパワポプレゼンは肯定的に描かれない面もある。レビル将軍の前で得意げにプレゼンするアムロに対してカイ・シデンは嫌気を感じてホワイトベースを降りる。そこからミハルとのドラマが始まるのですがー。
富野作品では机上の議論は割と否定的な雰囲気の印象が多いような?キングゲイナーとかだと計画を語るのは悪役で、主人公たちは割と勢いと熱血で突破する感じが多いような・・・。
逆襲のシャアのブライト・ノアのアクシズ分割作戦のプレゼンも感動的な部下との信頼関係が描かれたけど、完璧な作戦にはならなかったし。
ブレンパワードの第14話「魂は孤独?」は中盤の伊佐未勇の長台詞が圧倒的だが、ラストで勇がノヴィス・ノアに対してオルファンの弱点を会議で発表する場面は途中でぶった切られてエンディングテーマが流れる。
富野監督もフリーのオリジナル作品の監督だし、あのバンダイナムコという巨大企業を相手取っているのでビジネス的なプレゼンは仕事でやりまくっているはずなのだが、作中ではそういう段取りの部分は飛ばす。
ダイターン3の最終作戦直前はどうだったっけ?
富野アニメの作戦は事前にはあまり説明せず、現場でやっていくアクション感で少しずつ全容を見せていくのが多いような・・・・。
うーん。ここは動画と声であるアニメと、文字と絵で図解が使いやすい萬画とのメディアの違いだろうか?富野監督は資本主義者を割と批判している発言が多いので、ビジネスが嫌いなのかな?性格的に。
クロスボーン・ガンダムシリーズは富野監督の原作から長谷川裕一先生主導に枝分かれしたものだが、作家性の違いみたいなのはやっぱり出てくる。ネームを切るのとコンテを切るのはやっぱり違うのか、みたいな。
ともあれ、アッシュ・キングのビジネスマンとしての一面がキメ顔の表情で描かれるのだが、もうひとりの主人公である少女のレオ・テイルが大作戦を「DUST計画」と命名することで、彼女のダブル主人公としての「格」もちゃんと用意されている。
そもそもアッシュがずっと大作戦をネオ・1バンチの王や幹部の前でキメ顔で説明し続けられたのも、その前に彼の「ココロ」であるレオ・テイルに計画を承認されて覚悟が決まったからなので。
頭が切れて戦闘も強いアッシュ・キングだが幼少期のトラウマから精神面の脆さも抱えている。それに対して、か弱い女性だし、筋は良くてもMS戦闘の経験も少ないけどメンタルがアッシュよりも前作主人公のフォント・ボーよりも強いレオ・テイルが支えているというのがある。
ビジネスの基本として、映像研に手を出すな!みたいにアッシュが「仕事の質を保証するために金銭を要求する」って展開もあるけど、実はそれはレオだけが知っている嘘で、本当は仕事じゃなくて「大きな流れに負けたくねえ」って気持ちなんだよなあ。ビジネスっぽいけど熱血でもある。
で、ついに今巻ではレオ・テイル専用モビルスーツが表紙でバーン!と出るし後半では宇宙をかける白い獅子というすごい性能を発揮する。無印クロスボーン・ガンダムで「俺のX3」が出たような感じで、後輩キャラにやっと専用機がつくのはクロスボーン・ガンダムシリーズのお約束でもあるか。
しかもそれが獅子の心をビジュアルで体現しているので、王星ともいわれる獅子座のレグルスみたいであり、様々な王が出てくるDUSTシリーズの中で、レオ・テイルもやっと王の格を手にしたという風に見える。天文部だった僕としても獅子の尻尾からレグルスに格上げされるのはグッとくる。名は体を表すというのがビジュアルで出されるとやはり面白い。(そういえば、トビア・アロナクスのクロスボーン・ガンダムX3は特に説明もなく額に蛇が描いてあったけど、その後、ゴーストでカーティスは蛇の足を名乗るようになるんだなあ)
長谷川裕一ガンダムは「少女を守る少年のマッチョイズム」とか評論家から語られることも多いが、レオ・テイルが最新型のガンダムタイプ(?)の専用機を手にすることで、そういう評論からもレベルアップしていく感じだが。
しかし、少女も戦うためにロボットに乗るしかないのか?というふうなエヴァンゲリオン的な戦闘美少女ともちょっと違う。レオ・テイルは「白い獅子号」を見て「戦うための機械じゃないみたい」とブレンパワードの宇都宮比瑪みたいな第一印象を述べる。で、実際に戦闘でも敵を殺すのではなく、その威光を以って払うので「獅子王」という印象がさらに強まる。
白髪になったアッシュ・キングがFate/stay nightのアーチャーの逆輸入とも言われるのだが、今FGOで復刻されている水着獅子王とかも取り入れているんだろうか?(笑)
しかし、アッシュとレオが相互補完的関係のコンビになっているのだが、それを前作でやっていたフォント・ボーは「危険だから」と少女パートナーのベルと離れる。まあ、ドラマの運び方としてベルがアッシュと組むことでスムーズになる面もあるのだが。キュクロープスという組織の中で一人になったフォントは危険度が上がる。(美少女AIのハロロはいるものの)
同時に、アッシュも大作戦をすすめる中で「本当に生きてるって感じだ」と言うのだが、酒飲み牧師のジャックからタロットの占いの相が悪いって言われるので。Fateの赤アーチャーみたいな破滅フラグが立っているのだろうか。
- ソシャゲっぽい英雄たち
しかし、アッシュ・キングの計画には人材が足りないので、アッシュ・キングは様々なコロニーを巡って特技を持っている野盗や武芸者や盗賊をスカウトしに行く。
そこで戦ったら仲間になって「GET」って書き文字が出るので、ポケモンGOかよ!
真面目なビジネスマンとしての一面が描かれたアッシュだが、次話でワイルドにキャタピラ付きのロボット(ここではあえてコン・バトラーVやゲッター3に敬意を評してロボットという)で格闘して、戦って仲間を増やすという!ゲーム感覚!
しかも最初に仲間にする盗賊団の首領の顔が銭ゲバのパロディ。銭ゲバ出すのかよ!まあ、ビジネス的なヘッドハンティングと同時にワイルドなアウトロー感を出すために銭ゲバをサイサリスのカスタム機に乗せて出すというのは論理的か…。
しかも最初に仲間にした銭ゲバ(マック・ストーム)の助言で次の英雄のヒートサーベルの達人の元に向かうというのもゲームっぽい。そして、爆弾銭ゲバとの戦い以降にゲットするキャラとの戦闘はどんどん短くなる。テンポ感。
それで、仲間にした(アッシュがイケメンなので惚れさせたってのもある)女怪盗とその一味の協力でまた新型モビルスーツを盗んだりする。Fate/GOの水着剣豪七色勝負の水着カーミラが怪盗になってるのに似ている…。長谷川裕一先生もソシャゲをするんだろうか…。漫画家としてはベテランの部類になった長谷川裕一先生だがガンダムエースの読者に対して「宇宙世紀の正当な続編」みたいなオッサン向けっぽさはあんまり出さないで、ソシャゲやRPGみたいな「特技を持っている奴を仲間にするとシナリオが進む」みたいなラノベ、というかゲーム文庫みたいな若々しい軽妙さを取り入れている感じもする。
ガンダムのファンの高齢化は深刻だし、クロスボーン・ガンダムもエヴァンゲリオンと同じ少年エースで始まったので25周年である四半世紀である。俺もおじさんになった。
まー、特技を持っている奴を仲間にするとシナリオが進むってのはTRPG的でもあるし、もっと古い映画の七人の侍の侍集め編とかでもある要素なので。ソシャゲのシナリオも意外と普遍的な要素で出来ているのかもしれない。(グラブルとかFate/GOも古典的な神話の英雄たちのエピソードのパッチワークだしね)
また、それぞれの英雄と戦っている時と、仲間になってから仕事をする時では微妙に働き方が違っていて、「ここの役割にこいつを当てはめるのかー」というゲーム的な采配の面白さがある。
まー、DUSTはガンダムの過去のモビルスーツの部品を継ぎ接ぎしてミキシングビルドされている怪ロボット軍団が出てくるので、ガンダムブレイカーみたいなゲームっぽさは最初からある。しかし10巻にもなると、もはや元の部品が何かわからんようなレベルで怪ロボット度が上がってるなー。袖付きの部品を手足に付けた小型高性能MSがアッグガイの顔を盾にして、ドムの顔を剣にするとかそんなんわからんやろ。なぜR・ジャジャの肩が足についているのか・・・。(スケール感とか、長谷川裕一先生のスタジオの人が実際にプラモをいじって考えたのかあ)
んで、ザンスカール帝国やクロスボーン・バンガードの戦艦の部品とグワジン型の戦艦を組み合わせたような怪巨大戦艦に乗っているフロンティアIVの地方領主という、ものすごい金持ちのガンダムオタクのミリオ・ビリオンという変なやつが出る。
変なやつなのだが、「本人はそんなにMSの操縦がうまくないし弱いのだが、くっそ目立つゴージャスガンダム(顔はジェガン)というMSで敵の目を引いて、部下にやっつけさせる」という戦法を取る。前線に出る領主というのは、コスモ貴族主義では?フロンティアIVだし。でもコスモ・バビロニア帝国を名乗らず「地方領主」という微妙な貴族のポジションに自分をおいているのは、なかなか自分の分をわきまえている。過去のコスモ貴族主義者はだいたいエゴが暴走して選民主義とか人工削減に行っていたのだが。ベラ・ロナがザビーネ・シャルを認めさせたのは貴族的な前に出るノブレス・オブリージュだけでなくニュータイプ的なMSの才能って面もあったので。「MSの才能は低いけど前線に出る」というのは、むしろコスモ貴族主義の指導者の思想としてはクロスボーン・バンガード以上の胆力かもしれない。
ミリオ・ビリオンは見た目も変なやつなのだが、アッシュは評価しているし、「ちゃんと民を統治していく気持ちがあるコスモ貴族主義者」というある種の可能性を体現した人物なのかもしれない。今後に期待。
また、戦闘に長けた英雄だけでなく、ノーマルスーツ職人も仲間になる。ここらへんはGレコの裁縫係のアネッテ・ソラとかの影響も出てるのかも。Gレコのモビルスーツも過去のデータから復元したレプリカなので、ゲーム的なFate/GOっぽさがある。
※追記、そういえば、FGOの水着剣豪七色勝負でも怪盗を助けるためにヴラド三世が裁縫してたね。
- X BORN
あと、今まであんまり書かないようにしていたけど、荒廃した戦後の世界でミキシングビルドというのとか、ビームをあんまり使わないとか、主人公たちが軍人ではなく仕事人だとか、過去の権威で無理やり統治しているティターンズの後継組織を主力にしている地球連邦軍とか、鉄血のオルフェンズですよね。
10巻では最初の方で助けた2000人の幼女のために将来の婿が必要って話も出て、女性を産む役割にしているオルフェンズの要素も拾っている気がする。
黒人系のアッシュが白髪になることでオルガっぽさも出てきている。
アッシュに惚れたノーマルスーツ職人の女はなぜアッシュの新ノーマルスーツに謎の角をつけたのか・・・。絶対邪魔やろ…。でもランバ・ラルや黒い三連星とかが90年後も語り継がれている世界なので、黒い三連星の謎角のリスペクトなのか。ノーマルスーツが変わるのは霊基再臨っぽいレベルアップ感はあるけど…。
鉄華団は仕事を大きくしていくうちにヤクザになって破滅への道を走っていって、でも何となく世界が良くなったっぽいエンドだったが。クロスボーン・ガンダムDUSTはむしろ宇宙世紀自体が破滅フラグしかない世界って富野監督の原作で決められている中でキャラクターが破滅を回避していこうという作品なので、似ているようで逆なのか?
ゲームっぽい作風だし、富野ガンダムのオタクから見ると宇宙世紀自体が破滅フラグしかない仮想世界なのだが、中のキャラクターにとっては異世界でもゲームの中でもない命がけの現実なので、塵芥として破滅させられるのに命を主張して、あらがって生きていこうとしている。どうなるのか。
そういうわけで、ミキシングビルドMSってだけでなく、Gレコとかアナザーガンダム(まあ、Gレコも富野監督が作ったアナザーガンダムかもしれないのだが)や最近流行りのゲームや古典的な長浜忠夫ロボアニメの要素もクロスさせてBORNと生み出していこうというのが、海賊のクロスボーンとは違うタイトルの意気込み。
まあ、ファーストガンダムからガンダムワールド映画版とか小説版でパラレル要素があるし、逆襲のギガンティスを描いたような長谷川裕一先生なので富野監督の原作で決められている世界線とは違って破滅フラグを回避したエンディングに行けるのかいけないのか、そもそも首切り王が本当にラスボスでそこで終わるのか?
11巻を買っているのに読んでいないまま感想を書いたが…。(発売から5か月経っているのでライブ感もないのだが)
DUST計画もアッシュの最初のプレゼンから色んな人の手が入ってクロスされて変わって行くようだし、どうなるのか。
2千人、3万人と救う数がだんだん増えていって、今は9000万人を救う計画だが、10のくらいに行くのかどうか。
早急に11巻を読むべきだが富野監督のロングインタビューがあるらしいので久しぶりにガンダムエースを買いに行くべきかもしれない。
その前に寝なくてはいけない。FGOは、まあ、去年やったし裏水着剣豪はいいかな。水着新選組とアロハ円卓でそこそこ笑えたし。素材は手に入ったし。グラブルのフードファイトは…。まだシナリオを最初しか読んでないが。グラブルはゲームを始める前のシナリオがなげーんだよなあ。ぷちデレラは文章を書くとサボってしまう…。というかソシャゲやりすぎじゃろ、無職のワシ・・・。
- 小ネタ
やっぱりミノフスキードライブ搭載MSは月で作るよね、とか。
キュクロープスで作ったらティターンズの後継組織なのでバーザムっぽくなるとか。最終決戦兵器がバーザム…。いや、物語の後半に突っ込まれる高性能量産機といえばバーザムなのか?
そういうガンダムのオタクを刺激する要素もある。ガンダムのオタクなので・・・。
- つづく
ゼロ時過ぎから夜中に2時間もガンダムの萬画について書いてしまった。不眠症を治す気がないのか。ガンダムへの執着が強すぎるんじゃ。本当に寝て起きたら外出できるのか?まあ、Gレコに執着してクロスボーンが疎かになっていたのだが…。うーん。
Gレコは2万文字を超えることが多いけど今回は8千文字なのでなんとか?
とりあえず風邪を引かないようにしていこう。風邪引いたらソシャゲもあんまりできんからな。新型コロナウィルス感染症に負けず、いろんな映画が封切られているが、映画館に行くと新型コロナウィルスの流行前から僕は風邪を移されがちなんだよなあ…。閃光のハサウェイもGレコみたいに配信してくれんもんか。エヴァはなあ・・・。Qと同タイミングでの親の縊死を経て苦手になってしまった。うーん。やっていくしかない。
- 目次
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