玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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機動戦士クロスボーン・ガンダムDUST 7 虐殺の始まり

 前回のあらすじ
nuryouguda.hatenablog.com


 一昨日に5,6巻の感想を書いて、それで今日が発売日で欲しいものリストから届けてもらったので読んだ。今回は早めに感想を書くぞ。
機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST (7) (角川コミックス・エース)

  • 首切り王の独立宣言について

 首切り王が富野由悠季監督の皆殺しのメタファーなのじゃないかということは前回の感想で述べた。
「初代ガンダム以降の宇宙世紀は最終戦争(ハルマゲドン)の後の世界」と首切り王が言ってしまったけど、それももっともな事だ。人口がいきなり半減したわけだし。(F91の頃は一時期、フロンティアサイド再建計画とかでちょっと景気が良かったけど・・・)
 だから富野の開幕虐殺の擬人化みたいなキャラクターなんだなあ。
 

 それで、首切り王が略奪を国是とする賛美歌の国を作ることにしたのだが。
「どうせ世界は滅ぶので、生きようとあがくためには他人から奪って殺そう」という宣言をして、愚民どもはそれに乗っかってしまった。

 フォント・ボーはその言葉を「恐ろしい」「お前の言葉は感染する毒だ」と言ったのだが。フォントはまだキゾ中将の弱肉強食理論を恐れているということか。
機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト(12) (角川コミックス・エース)

 しかし、ガンダムで虐殺の文法をやるとは・・・。虐殺器官村瀬修功監督が閃光のハサウェイのアニメ版の監督をすることを知ってか知らずか・・・。
虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)
虐殺器官 [Blu-ray]
ガンダムエース 2019年3月号 No.199



 前回の感想で「長谷川裕一作品の悪役のボスは”諦めちゃった人”だ」と書いた。キゾ中将も普通の軍人であることを諦めたし、自分の思い通りにならない国や世界はいらないと諦めていた。
 で、やはり首切り王も諦めちゃった人だということがより一層わかった。首切り王はニュータイプサイキッカーよりも更に上の「覚醒者」として、センサーを全く積んでいないキチガイMSで無双して戦艦を真っ二つにして殆どの攻撃を受け付けない高機動をするとか、バトルでもすごい。センサーが付いていなくても、戦場の動きをすべて把握できている。
 反面、覚醒者としての能力をおそらく利用して、掘り尽くされたと言われたルナツーの地下の鉱脈を次々と発掘して見捨てられたサイド7に小さな国を作った。その覚醒者としての能力を経営者としてだけ使っていれば宇宙戦国時代の人材として平和のために活躍できたと思う。しかし、彼が覚醒者になったきっかけは世界は救う価値も可能性もないと思った絶望なので、能力を暴力のために使う。


 それで、今までは「諦めちゃった人」の悪役がラスボスくらいだったけども、宇宙の辺境となったルナツーで細々と生きていた愚民どもも世界の復興を諦めている人々だったので、首切り王の虐殺の文法を支持してしまった。
 長谷川裕一作品のスーパーロボット系の作品ではわりと「一般の人の純朴な正義を信じる」という雰囲気があったのだが、宇宙戦国時代の荒廃した世界では虐殺の文法と弱肉強食の力を一般の愚民も信じてしまう。大多数の人が諦めちゃった人になってしまっている世界観なのだろう。(虐殺器官も小型核爆弾による紛争が起きた後の世界だし)




 フォント・ボーはそれを「キゾ中将に連なる”弱肉強食”の”獣”の理論」と言ったのだが、愚民どもは獣となることを支持してしまった。


 ここで、長谷川裕一作品の主人公たちは「諦めない人」だと前回も書いたが、大多数の人はそんなに主人公みたいに強い心を持てないよな、というわけで虐殺の文法は広がってしまう。
 天下三分の計を画策したフォント・ボーは地球とコロニーと木星が利害関係を釣り合わせて、三すくみで決定的な破壊を回避しようとしたが、略奪を賛美する「讃美歌(ヒム)の国」はそれを破壊する。
 今回、主要なキャラクターは首切り王のモビルスーツ、「バロック」に手ひどくやられながらも逃げおおせたが、「讃美歌の国」が本格的に稼働し、宇宙戦国時代に「再投火の日」と刻まれる悪行をしたら、どうなってしまうのだろうか。

  • 諦めないレオ

 アッシュは祖父の首と牢獄で対面させられ続けて洗脳されてしまった。それで首切り王の手下になったんだが、首切り王の暴力に敵も味方も敗北することを意識していた時、レオ・テイルだけは諦めずにアッシュを説得し続けた。
 クロスボーン・ガンダムシリーズはガンダムに乗る男の主人公と、女の子の関係性が伝統だったのだが。この、レオの心と眼光で洗脳を解く力は、守られるだけのヒロインというわけでもなく、かと言って男と同じように戦う戦士というわけでもなく、暖かな心の強さだったので、すごいと思った。
 また、萬画の表現としても闇の世界で首を失ったアッシュがレオの呼びかけで正気に戻るビジュアルの表現には工夫と迫力があった。死んだ祖父との心理的な決着をつけるアッシュも格好良かったし、説得力がある描写だった。クロスボーン・ガンダム世界の雰囲気なら、いいことも悪いこともする祖父を許す作風なので、そういう積み重ねが納得の要因。


 僕も身内を死なせているし、僕は精神的に壊れている部分があるので、アッシュほど強くはなれないと思うのだが、逆に自分にはできないことをやるアッシュの精神力とレオたちとの絆はすごいなあと思った。

  • ていうかどうやって会話してるんだ

 富野ガンダム、特にGレコだとミノフスキー粒子による通信遮断がドラマの演出要素の一つになっていたが、覚醒者やニュータイプが多いからか、それとも通信をフルオープンにしているからか、今回の機動戦士クロスボーン・ガンダムDUSTでは敵味方でも、ほとんど会話が成立していた。まあ、バトル物萬画として面白かったのでいいのだけど。
 萬画表現といえば、1ページの中で、そんなにコマ割りは細かくないのに、視点が二転三転して描写するのがうまいと思った。
 心が歪んだ首切り王の来歴を語るフランク・オズの説明セリフと同時に、現在の首切り王との戦いのアクションシーンや別の人物(フォントやルナツーの愚民)から見た首切り王へのリアクションがシームレスに描かれているのだが、読むリズムが崩れないでスルスルと読めたのが熟練の萬画家だなあというかんじだった。

  • テーマ的に救うもの

 2000人の少女を救い、3万3000人のムーン・ムーンを救い、48時間でカーティス・ロスコとテテニス・ドゥガチを救ってきた。
 今回救ったのは、アッシュ自身の心だったのだが、同時に正気に戻ったアッシュは首切り王のバロックに握り殺されそうになっていたジャン・ドーヴァン師匠をも救った。
 それを手伝ったのは手をけがしていたアッシュをサポートしたレオだった。
 この物語はレオがアッシュにモビルスーツに潰されそうなところを救われたところから始まったのだが。今回はアッシュの心と同時に、レオ自身が1巻の冒頭の自分自身と似た状況の人を救った。レオはそこまでモビルスーツの操縦が強いというわけではないのだが、レオも誰かを救えるように成長した、というのを特徴づけるために、過去の自分と似た状況で人を助ける側に成れたという描写がうまいなあ。

  • さて、続きは

 今回は首切り王の強烈なキャラ立てと独立宣言と壮絶なバトルと主人公のアッシュの精神的成長と、レオとの絆の再確認などが描かれたけど、基本的にバトルシーンがメインだった。ガンダムF89は、まあ、その・・・。
 続きでは、木星のカーティス親子が揃ってどうするのかとか、地球連邦軍のキュクロープスと無敵運送の共闘がどうなるのか、とか、今回はバトルシーンがメインでドタバタしていた再会がしっかりとなされて、どういう展開や会話になるのか楽しみ。また、讃美歌の国となったルナツーがどういう組織行動を起こすのか、それも気になる。

  • 話は変わるけど

かっこいいな・・・。足の裏ナイフが再現されてるのがすごくいい。

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 この7巻も発売日に欲しいものリストから届けてもらって助かりました。(アイマス萬画を買いに行かねば・・・)


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