玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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思いは同じだが言語基体が違う

主にマンガやアニメに関するメモ様http://d.hatena.ne.jp/anteros/20080411
で、言及をいただいて、久々に外でコメントをしたのでので、引用して自分の所にもまとめておく。(仕事をサボっているわけではなく、歯を磨きながらコピペ)

ぼくがこの『マクロス7』を見て感じたファーストシリーズとの一番大きな違いは、前者に至ってネゴシエーションがなくなったな、ということだ。バサラが「何でわかりやがらねえんだ」というとき、歌と歌に込められた想いのようなものの一対一の対応を前提としている。だから歌を歌えばわかるはずだという確信がバサラに生まれるのだ。これは言い換えればネゴシエーションの不必要性を示している。ネゴシエーションとは言葉と言葉に込められた意図やら意味づけやらがわからないから行われなければならないことがらであり、異なる利害をもつがゆえに必要な擦り合わせだ。こういった両者の間のズレと表現するものとそれによって表現されるべきものとのズレがあるがゆえに対話が成り立つのではないだろうか。言い換えれば、極端な言い方をすれば「伝わった」ということをもって対話というのではなくて、「伝わらなかった」ということをもって対話というのではないだろうか。あるいは「伝わらなかった」にもかかわらず起こりうる出来事を対話というのかなとか思う。id:nuryougudaさんはトラックバックで『マクロス7』における対話について語っておられるが、むしろこの作品で示されているのは対話の欠如なのではないかと思う。


河森的問いを突き詰めると対話を必要としなくなるのではないか。そしてその前提には対話をするとされる人々がみな共有しているはずであるある種の目的というか、「善きもの」への信頼があるように思える。このことが彼にとってはエコ的なものと結びついているのだろう。そしてその限りにおいて敵はいない。なぜなら一方にとっての「善きもの」は他方にとってもそうだからだ。戦おうとする者は「悪い」からではなくて、理解が足りないからだ。逆に言えばそういった自分たちも共有しているはずの「善きもの」を理解すれば、戦う必要などないということがわかるはずだと。だからバサラは「なんでわかりやがらねえんだ」と嘆く。


こういった問いが『マクロスF』ではどう展開されるのかというのが興味の中心かな。



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nuryouguda 2008/04/11 17:27


http://d.hatena.ne.jp/nuryouguda/20080209/1202568090
での、ことですねー。


そーですねー。バサラとギギルは情報交換の対話っていうよりは「わかった」って言う感じですね。
しかも女を間に挟んでますし。言葉だけの事じゃなくって、そう言う欲求や愛憎も絡んだ気分的な何かですかね?
バサラは会話はそんなに上手じゃないですからね。
実際にネゴシエーションの部分では結構レイに押し切られてたりしますし。
でも、それはレイがバサラの気分をわかってるからで、分かりやがらない奴の言う事は全然聞いてませんけど。


僕もこないだイデオンを見終わったばかりなので、善きものについては考えたいと思います。


anteros 2008/04/11 19:53
コメントありがとうございます。
多分河森的にいうと、言語の彼岸にあるような「真実」が重要であって、そういった真実はアプリオリによいものであるというある種ナイーヴな確信があるのだと思います。それを露骨に出すと『アルジュナ』とか『マクロスゼロ』とかになってしまうんですが、『マクロス7』が面白いのはそれらの作品のようにエコエコしてないというか、いってみれば戦争をしないことが当為として示されていないということなのかなと思います。やはりそれはバサラのキャラクターによるところがおおきくて、「わかった」という感じをおっしゃるような欲求や愛憎も絡んだ気分的なものと結びけられていることで説教臭くなくなっているのかなと思います。

nuryouguda 2008/04/12 06:20
「戦争をしないのが当為」って考えるバサラだけが正しい、という風に描かずに、「戦争をしたほうがいい」「とりあえず生き延びるためには洗脳されてる人も撃つ」というガムリンや統合軍にもしっかりした人格を与えて描いているのも、説教臭さが薄い一因でしょうね。
で、バサラも怒ってミサイルを撃ってしまったり、ガムリンが歌の良さを分かってきたり、キャラクターの基本設定がドラマの進行と共に人間臭く揺らいでいくのは面白さの一因だと思います。

と、このやりとりで、僕とanteros氏の間にも「アニメを面白がりたい」という思いは共通しつつも「対話」という言葉に対する脳内辞書の違い(人生経験とも言う)があって、それが面白いなーと思いました。
まー、「なんで分かりやがらねーんだ!」
とは思いませんが。
そりゃー、脳が違うんだから違いますよ。
(テレパシーで同じ記憶を持つ脳内妹でさえ、解釈の違いから大喧嘩になることがあります)
って、ここで脳内妹などという特殊な存在をアプリオリに出してくるのも、また僕の個性であり、エゴなんですよねー。(笑)


マクロスFでは敵がレギオンみたいな意思疎通できなさそうな虫っぽいので、どうやるんでしょうかね?
イデオンでは、結局一番の敵は人類同士だったわけで、危険な宇宙生物は環境の一部として描かれていたわけですが。