玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年9月 第9話 第1節

サブタイトル:第9話 [家庭教師VSニンフェット!頭令兄妹誕生の秘密です!!]
この物語は、人類を超越した一人の超美少女が、その思いの力で奇跡を起こすまでを描いた現代の病理である。
第1節

  • ソレイユ病院第11セクション第011科11号室(No.1101111)(エリア1)

 白塗りの鉄骨が絡み合い支え合い、巨大な巻貝のような円錐形を成す、神話の中の同じ名を持つ月の白亜の城のごとき象牙の塔、名門私立ソレイユ病院の第11セクション、入院病棟の中腹にある第011科(脳神経外科)特別長期入院患者用の11号室が、頭令倶雫(ずりょう ぐだ)の新しい居室となった。同時に、その部屋を作る素粒子の間隙には以前「イの1号室」と呼ばれた宇宙人国家も移住し、頭令倶雫の守りを続けている。ここが頭令兄妹の新しい巣穴となる。
  
  
そら「お兄ちゃん、ごめんね、あたしの都合で転院になっちゃって。でもさ、10階ともなるとなかなか眺めが良いじゃない!それに風も気持ちいい!周りが森や湖!自然に囲まれているのよね。建物の周りの花園も迷路みたいで綺麗だったし。いつかお兄ちゃんと一緒に歩きたいなー。
 その上、屋上にはヘリポートとかあって、高速道路も近くて、救急医療と最先端医学に特化した名門病院なんだって!だから、きっとお兄ちゃんもすぐに気に入ると思うよ!」

 人間三人分の高い天井までの広い窓の下半分の引き戸を開け、ヴェランダの向こうの山々と青空に振り向いて、妹である頭令そらは自分の椅子の前で横になる兄に語りかける。兄は以前の病院にいた時と同様、全身の角質レセプターにチューブを繋ぎ、顔全体を覆う人工呼吸マスクをし、高機能ベッドに揺られて眠っている。
そら「設備も良くなったし、11号室の宇宙人たちも居るし、あたし、前の病院みたく看護婦さんはやらないつもり。姫草ローラに変身して、結構長く務めて、介護とか体の事は勉強できたけど、お兄ちゃん、目を覚まさなかったもんね……」
 ベッド脇の椅子に腰かけたまま、掛け布団に顔をうずめて、兄の胸の上で頭を転がして、そらは拗ねたような声になってしまう。
そら「他の事、勉強した方がいいのかなぁ……って」
 「いや!でも!お兄ちゃんとの時間が減るのはあたしも嫌なのよ!やっぱりずっと看護してた方が一緒に居られるわけだし!」
 ぱっと起き上がり、腰までの長い桃色の髪を咲かす勢いで弁解する妹の頬は、桜色に変わっている。二人きりの部屋で恋心を隠そうとしない妹は、物言わぬ兄の前で少女じみた百面相で話をしているし、妹にとっては、それが一番自然な会話なのだ。
そら「だけどなんか最近ややこしくなってきて、変な奴も周りに増えちゃったの。だから引っ越したりしてさ、困っちゃうの。ねえ、お兄ちゃん、お兄ちゃんはどう思う?」
 そして、妹は兄の首筋に両の掌を当て、その皮膚を通して彼の終わらない夢の中に、意識を滑らせて添い寝をする。


Jack IN
   
   
  
2003/09/02

2003/09/03

 
  
  
Jack OUT

そら「うふふ、おもしろいね。お兄ちゃん」
 数秒か数時間か、日によって違うが、妹の頭令そらは兄の頭令倶雫と接触テレパスで毎日、同じ夢を見ている。脈絡のない兄の夢でも、それが無表情な植物人間の兄が生きている唯一の証拠であれば、昼寝から醒めた妹は笑顔になる。これだけが妹に真実ぬくもりと言う物を感じさせるものであるのだから。だが、この兄との間の夢の交感だけが妹の唯一のぬくもりなら、それをぬくもりだと、妹は認識できるかどうか、それは怪しいものだ。ただ、この9年間欠かさず、兄の夢を覗く時に、妹は体中の血や水がよどみなく脈打つような、そんなすがすがしさを覚え続けている。だから、生きがい。
そら「私の話もいつか聞いて……。いや、聞こえてるよね。ただ、お兄ちゃんは眠ってるから。上手くわからないんだよね。だからさ、私もお兄ちゃんが目覚めるように頑張るから。それまで、お兄ちゃんはずっと元気でいてね!」
 一人勝手にしゃべって笑う妹は勝手だろうか?にこやかに手を振って病室から出る妹を、執事に扮した宇宙人のレイが迎えている。新しい病室の自動ドアが閉まる。妹は新しい自宅に帰るのだろう。