玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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輪るピングドラム小説(上)読了

7月6日に届いて、15日に読み終わったのは、僕としては早い方。(電車で)10日か・・・。
これは1章がアニメの1話に対応していて、9話分まで収録されています。(上中下巻)で、9話に当たるラスト10ページで泣いてしまった。
ヤバい。この物語、好き。



何でこれを買ったのかと言うと、輪るピングドラムのUSTでこの本が紹介されてて、「装丁が綺麗だから、女の子にあげたらモテそう」ってコメントしたら、著者の高橋慶さんに「女の子が好きそうな感じだし、スタッフも女性が多いし、モテるよ」って言われたから。
USTREAM: こっそりピングドラム: 『輪るピングドラム』ってなに? こっそり語る番組です。毎週、木曜日の夜に放送(あくまで予定)。MCは声優の小泉豊&脚スタント岩崎愛 ゲストはこっそり関係者出たり出なかったり。大きな心で観てください。全ての謎はここに…。もしかしたら、あの人も登場するかも? http:...
そして、内容が妹を溺愛する二人の兄が妹のために命を賭ける話だから。
僕は脳内妹がいるので、脳内妹にモテたくて買いました。他の女は知らん。


では、詳細はネタバレを含む以下です。
しかし、あれだ。原作小説が出てるし、公式ガイドブックでも結構詳しく描かれてるのに、「考察」とか「展開予想」とか「あれはナニを象徴して」とか「ゼロ年代社会学が」とか喧々諤々しちゃうアニメブロガーってナンチューカ、ッテユーカ、いたたたたたたた。
だと思います。
いや、ネタバレとかじゃねーし。普通に売ってるだけだし。
原作を読まないなら、別に考察とか深読みとか妙なハズレ球を撃つより、アニメ単体でダラダラ楽しめばいいと思うなー。
僕は僕で、割と萬画原作つきアニメの原作を読んだ事はないなあ。(夢喰いメリーはアニメに似てる前半を読んだ。残りは今度金が入ったら読む)逆に読んでる萬画がアニメになってもアニメを見てなかったりARMSとか。
蟲師は両方よかった。実写は見てない。NHKにようこそ!は全部見た。ちょびっツ最終兵器彼女は両方見た世代か。実写は知らん。
とか、他の作品に話が逸れたが。
とりあえず、みんな素直に見ればいいと思う。


輪るピングドラム 上

輪るピングドラム 上

で、読んだ。
高倉兄妹の高倉陽毬ちゃんが可愛かったです。とってもとってもかわいかったです。
アニメではカットされているシーンでも、陽毬ちゃんが少女趣味を炸裂させていて、耽美で可愛かったです。
僕はあまり読書をする方ではないのですが、森茉莉の甘い蜜の部屋を脳内妹耽美小説の資料で読んで、結構気に入っていました。甘い蜜の部屋は妹ではなく、父と娘の近親愛だったんですがね。(あ、森のBL小説はあまり好みではない。俺は男だからな。)
で、甘い蜜の部屋のモイラは戦前の金持ちの美少女だが、高倉陽毬ちゃんは貧乏で、しかも難病ですぐ死ぬ。だけど、冠葉と晶馬の二人の兄が必死こいて生活を維持して、陽毬ちゃんを溺愛して、(なぜか明かされていないが)両親がいない家で3人で陽毬ちゃんの好きな小物を集めさせたりした小さなおもちゃ箱のような家を作って住んでる。かわいい。
陽毬ちゃんは入院したり退院したりを繰り返して、中学生くらいだけど学校に入っていない。そのかわり、家で可愛い小物を作ったり、自分の小さな部屋の小さなお城の天蓋付きのベッドやカーテンに刺繍をしたり、不思議の国のアリスの洋書など、可愛い物を集めていて耽美。
かわいい。
耽美小説だこれ。
男性の幾原邦彦監督と女性の高橋慶さんの共著(多分、原作、原案がイクニで文章執筆が高橋さんで、またイクニ監修だと思われる)ですが、女性的な耽美的感覚や繊細なファッション描写が丁寧でいいです。
女の子ではない二十代後半男性の僕にドキドキ感覚をくれます。ときめきました。
ああ、女性には普通に日常的に見えると思いますよ。知らんけど。
甘い蜜の部屋は森茉莉の自伝的な小説で、偉大な父への娘の愛と、他の男の愛をむさぼる下衆女の不幸な結婚の両面性が描かれているんだけども、ちょっとエゴイスティックかつ、無自覚で、ちょっと気に入らなかった部分もある。
輪るピングドラムは女にもてることが生きがいの男性監督と女性スタッフの色んな目を通して描かれているので、耽美小説だけど美少女礼賛だけになっておらず勢いよく事件が輪るのが良い。

甘い蜜の部屋 (ちくま文庫)

甘い蜜の部屋 (ちくま文庫)


あ、あと、僕は脳内妹がいるくらいのシスコン、俗に言う妹萌え、(基底現実世界では妹はいないらしい)なんですが、この、妹を慈しむ二人の兄の視線がとてもリアルでいいです。妹を可愛がる兄の眼を通して、余計妹の可愛さが引き立ちますね!
プレイボーイで肉食系で女を捨てまくるけど妹の陽毬だけには何故か特別な感情を抱いてしまう(でも家を支えていた強い父親の幼少期の影響もある)冠葉の視線と、家族を愛していて高校生兼主夫で比較的常識人で誰にでも優しい晶馬の視線と、二つの目線で陽毬の可愛さを表現しているのが立体的でグッド。
それもただし・・・。ってのが面白かったけど。


と、同時に難病で命が危うい陽毬ちゃん命を不思議なペンギンの妖精のような物によって引き延ばされているという幻想的な内容でもある。
そして、その怪異に二人の兄が翻弄され、ペンギンの姫・プリンセス・オブ・ザ・クリスタルにピングドラムを手に入れろ!と命令されて探しまわって、その中で様々な男女と関わっていく、と言うのが大まかなストーリー。
と、同時に地味に、家族を守るために冠葉がサスペンスでデンジャラスな闇の世界に足を踏み入れて行っていたり、友達を守るために晶馬がとばっちりを食ったりって言う、男の戦い的な部分もあり、続きが楽しみだ。


で、そこにはまた陽毬ちゃんとは違う意味で、自らの強固な美意識を持った人々が出る。
野鳥マニアの多蕗圭樹(石田彰)、「ファビュラスマックス!(すごくワンダホー)」が口癖の完璧美人女優時籠ゆり(能登麻美子)、謎の道具を操る謎の女子高生夏芽真砂子(堀江由衣)、冠葉の元カノ達、なぞのピンク男など、さまざまな人間が出てくる。それぞれに情熱的な信念と美学と思いこみと行動原理を持っているのだ。


そして、もう一人のメインヒロイン、と言ってもいいであろう分量で出てくる荻野目苹果ちゃんである。
彼女はプリンセス・オブ・ザ・クリスタルをもドン引きさせる意志の力を持った変態少女で、「運命が嫌いだ」という冠葉とは逆に「私は運命を信じてる」と、過去に書かれた日記帳を自力で無理やり実現させて「デスティニー!」と叫ぶ少女だ。ものすごい美学だ。そのためなら社会のモラルも自分の体も暴力も何もかも無視して行動する。
苹果ちゃんエロい!エロいよ!
すごく薄い本が出そうだよ!狭い空間で薄い服とかだったりするよ!女の子だよ!


そんな彼女と、なんとなく行動を共にすることが多くなってしまう双子の弟の方の晶馬のモラルや優しさと言う美学とぶつかって、ドラマが輪る!激しく!激しく!
そして、たくさんの美少女達が現れては消えて行く、まだまだ活躍しそうでしてない美少女もいる!しかもまだ物語は始まったばかり。24話の内、1/3程度なのです。STAR DRIVER 輝きのタクトのようにおそらく新キャラもたくさん出てくるのだろう。ああ、楽しみ。


人々の美学それぞれがピンボールのようにぶつかり合いながら、火花を散らすんだ!
謎のピングドラムや謎の空間にある謎の構造物など、現実世界とは異なる謎も多くあるが、結構、現実的な金や家族の問題や、日常の中に在る喜びや美しさも描かれている。ファンタジー小説と現代小説のバランスが結構いいと思う。まあ、現代アニメって大体そんなものかもしれないけど。でも、ロボットや超能力や敵の怪獣も登場しないけど、アヴァンギャルドな雰囲気って言うのはファビュラスで素敵。


そして、上巻の後半で、強引なそぶりだった苹果の繊細な内面がとある事件と人間関係のもつれをきっかけに炸裂し、また、明るく可愛い妹である陽毬の兄たちも知らない深層意識や序盤の謎の一端が噴出します。
そこで、僕は泣いた。
ああ、女の子って可愛さの中に色々と溜めこんでるんだよな、と。
男も優しさの中に溜めるけど。
でも、同時に陽毬ちゃんが薄幸の美少女で、可愛いだけじゃなくて、病気や不幸を超えた所に、人間としての業や、ドロドロの女っぽい情念を持っていて、それを心の底で溜めて溜めて溜めて、ものすごい勢いで生存戦略!ってなっちゃってるパワーに萌えたりもした。
うおおおおおおお!
きっと何物にもなれないお前たち!下僕ども!
妹女王様アああああああ!


あと、子供(子供時代)や家族って純粋で大事そうに見えてすごく脆くて、酷い覚悟が必要で、時に残酷さと紙一重なんだよな、ってそういう不安感とか。
そんな気持ちになって泣けた。


と言う訳で、この小説は、耽美な美少女と、美少女に「頭の中の幸せ」な幻想を抱いているダメなお兄ちゃんの糞豚どもにお勧めです!


生存戦略ーッ!



あと、この小説がすごくよかったので、衝動的に輪るピングドラム試運転マニュアル公式スターティングガイドも衝動買いした。

輪るピングドラム―試運転マニュアル公式スターティングガイド

輪るピングドラム―試運転マニュアル公式スターティングガイド

アニメのムック本を買うのとか、25を過ぎてから久しぶりだわ。新訳Zガンダム以来?
80Pで1500円だから薄くて高い本と言えばそうなんだけど、結構声優インタビューとかスタッフインタビューが充実してたし、公式サイトで情報が出てない分、こっちで金を払って人物相関図などを見るというのもありかもね。
しかし、幾原邦彦監督のネタにされっぷりがすごい。スタッフインタビューでも「今後気になる事はなんですか?」「監督」という回答がすごく多いwww。
あと「女性スタッフが多い」って。
佐藤順一監督も「幾原君はモテたりチヤホヤされたいためにアニメやってるっぽい」とか。
www.
星野リリィ先生とイクニの対談で、結構失礼な事を無意識に幾原監督が言ってるのも、富野由悠季監督といのまたむつみさんのブレンパワードの時のやりとりみたいで笑えた。
天才なんだなー。
いや、結構真剣にテレビアニメをする意味などを語ってる部分もあるんですがね。作品が出来上がるまでは上手くはぐらかすのもイクニらしいなーと。


生存戦略しましょうか!の一連のシーンの絵コンテも乗ってた。幾原邦彦監督の。幾原監督は絵コンテで、冠葉と晶馬はざっと書いてるのに、陽毬のプリンセス・オブ・ザ・クリスタルと熊(テディ・ドラム)は非常に細かく書き込んでるのがフェティッシュ。陽毬って胸は小さいけど、骨盤は丸くて女らしいんだなー。って、イクニ絵で確認。結構テレビの画面も絵コンテのままの絵柄だったり。
光とかメカのディテールやピクとグラムは演出や作画段階で乗ってきたみたい。
あと、挿入歌のROCK OVER JAPANは絵コンテでは厳密には指示されてないのね。
他の挿入歌の投入も楽しみです。
あとさー、テディドラムの檻に繋がれた双子が入れられてる円筒形て、さりげなく螺旋模様が描かれてるんだね。DNAの塩基の二重らせんを分解したのが、この二人って言うメタファーなのかしらん?
ま、宮崎賢治とかあんまり知らなくても(知ってても)楽しめるんで「なんとなくエロいな」、くらいの印象で深く考えなくてもいい気がするけどね。


そして、声優インタビューでの14才でジャイアンでデビューした木村昴さんが冠葉役で脱ジャイアンの苦労をしたりしてたけど、すごい21歳のガチムチイケメン役者になっててカッコ良かったです。
荒川美穂さんと三宅麻理恵さんは役柄みたいな服と髪型でかわいいです。すごく。
夏芽真砂子樹璃先輩がほっちゃんほぁー! 能登かわいいよ能登
石田彰は僕が唯一男の娘で大好きなフィッシュ・アイよりは老けた。


そんな感じで、ウテナを真面目に見てない俺にとっては、セーラームーンSS以来の幾原作品はとてもおもしろそうだということですね。

ROCK OVER JAPAN(紙ジャケット仕様)

ROCK OVER JAPAN(紙ジャケット仕様)