玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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#富野由悠季の世界 の序文を国語的に

 前回の記事でGのレコンギスタの感覚的な距離はガンダムよりキングゲイナーに近いので、あんまりガンダムっぽくない、という怪文書を書いて、長さの割にあんまりアクセスが伸びなかった。



 まあ、それはそれとして、今回はちょっと短い分析として、富野監督の「富野由悠季の世界展」に寄せたコメントをちょっと精査してみる。本来はこのコメントが出た一昨年の段階で考えるべきだったのだが、判断が遅い。

富野由悠季の世界

www.tomino-exhibition.com

 この展覧会の企画について、美術館の学芸員の方々からご提案をいただいたときには、嬉しかった反面、「展示するものなどはないのだからやめたほうがいい」と何度も伝えました。「演出」という仕事は、感覚的な仕事であると同時に、たいへん観念的な作業で、「概念(考え方)を示すことができる仕事」なのです。つまり、この一行半を展示で説明することはできないのです。
(中略)


仕事を成立させるために、先に思い(観念的なこと)を吐き出してしまい、そのあと付けを考えるということを繰り返してきました。それは基礎学力のない情けないキャリアで辟易するのですが、しかしながら、「アニメは映画だ」というコンセプトだけは振り回してきたつもりです。


 僕は悪名高いベネッセの赤ペン先生として、全国統一高校生学力テストの国語の採点官をしていたことがある。なぜ理系なのに国語の採点官をしていたのかと言うと、国語の方が女性の同僚が多くて居心地がいいというスケベ心です。(数学の採点官は理系男子ばっかりなので、オシャレ度が低い)(英語は半々だけど難しい)
 俺は日本人の学力を計ったことがある。


 まあ、なんか理系の就職に挫折してしまい、今ではブロガーとして、割と国語的な行動を多くしているのだが。


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 富野監督の演出についてのインタビューで特徴的なのは
「感覚的(な演出の仕事)」「観念的(思い)」「概念(考え方)」「コンセプト」です。これは似たような言葉なので、あまり区別化しにくい。
 しかし、僕は富野監督のオタクなので、ちょっとこれについて考えてみたい。一応、富野監督は小説家でもあるので、この四つのよく似た単語も使い分けていると思って考えてみる。


 タイピングがめんどくさいのでウェブ辞書のコピペですが。

【感覚的】 の解説
[形動]理性ではなく、感覚に働きかけるさま。「感覚的な表現」



【感覚】 の解説
1 外界からの光・音・におい・味・寒温・触などの刺激を感じる働きと、それによって起こる意識。視覚・聴覚・嗅覚 (きゅうかく) ・味覚・触覚や、温覚・冷覚・痛覚など。「寒さで指の感覚がなくなる」


2 美醜やよしあし、相違などを感じとる心の働き。センス。感受性。「日本人の感覚では理解しにくい」「感覚が鋭い」「新感覚のデザイン」


3 (他の名詞の下に付いて)

㋐それを感じ取る心の働き。「バランス感覚」「金銭感覚」

㋑そういう心構えや雰囲気。気分。「学生のアルバイト感覚でいられては

【観念的】 の解説
[形動]具体的事実に基づかずに頭の中で組み立てられただけで、現実に即していないさま。「観念的でわかりにくい映画」


【観念】 の解説
[名](スル)
1 物事に対してもつ考え。「時間の観念がない」「固定観念」

2 あきらめて、状況を受け入れること。覚悟すること。「もうこれまでと観念する」

3 哲学で、人間が意識の対象についてもつ、主観的な像。表象。心理学的には、具体的なものがなくても、それについて心に残る印象。



【観念小説】 の解説
ある観念の具象化を目的として書かれた小説。特に日清 (にっしん) 戦争直後に現れた、現実社会の矛盾・暗黒面に対する作者の観念を問題意識として提出した小説をさす。泉鏡花の「夜行巡査」「外科室」、川上眉山 (かわかみびざん) の「書記官」「うらおもて」など。
照葉狂言・夜行巡査ほか―泉鏡花〈1〉 (読んでおきたい日本の名作)


【観念形態】 の解説
⇒イデオロギー


イデオロギー【(ドイツ)Ideologie】 の解説
1 政治・道徳・宗教・哲学・芸術などにおける、歴史的、社会的立場に制約された考え方。観念形態。

2 一般に、思想傾向。特に、政治・社会思想。


【観念論】 の解説
1 精神的なものと物質との関係において、精神的なものの側に原理的根源性を置く哲学説。プラトンの客観的観念論、バークリーの主観的観念論、カントの先験的観念論、ヘーゲルの絶対的観念論などがある。アイデアリズム。→実在論 →唯心論 →唯物論

2 現実に基づかず、頭の中だけで作り出した考え。


【絶対的観念論】 の解説
《(ドイツ)absoluter Idealismus》カントの批判哲学を主観的観念論と評したヘーゲルが、自己の哲学的立場に与えた名称。絶対的理念の弁証法的発展の過程のうちにとりこまれる。


【主観的観念論】 の解説
哲学で、世界ないし一切の事物の客観的な存在を否定し、それらを個人的主観の意識内容もしくは自我の働きの所産と考える立場。バークリーやフィヒテなどに代表される。


【客観的観念論】 の解説
哲学で、精神的・観念的なものを主観的意識から独立した客観的原理として立て、世界をそのあらわれとする立場。プラトン・ヘーゲルらに代表される。
超解読! はじめてのヘーゲル『法の哲学』 (講談社現代新書)

【概念】 の解説
1 物事の概括的な意味内容。「概念をつかむ」「文学という概念から外れる」

2 《concept》形式論理学で、事物の本質をとらえる思考の形式。個々に共通な特徴が抽象によって抽出され、それ以外の性質は捨象されて構成される。内包と外延をもち、言語によって表される。



【概括】
[名](スル)

1 内容のあらましをまとめること。「意見を概括する」

2 論理学で、さまざまな事物に共通する性質を抽象し、その性質を一つの概念にまとめること。一般化。



コンセプチュアル‐アート【conceptual art】 の解説
概念芸術。1960年代以降に現れた現代美術の一傾向。作品よりも作品制作の根底をなす芸術の概念自体を問題とし、図表・文字・写真・パフォーマンスなどを媒体として多様な表現がなされる。


【概念実在論】 の解説
普遍的概念を実体的なものととらえ、それを実在的な本質とする考え方。中世スコラ学でいう実念論はその一例。


【実念論】 の解説
中世スコラ学における実在論。カトリック教会の要求に合致した観念論で、プラトンのイデア論を継承し、普遍は個物に先立って実在すると考える立場。リアリズム。
プラトン (岩波新書)

コンセプト【concept】 の解説
1 概念。観念。

2 創造された作品や商品の全体につらぬかれた、骨格となる発想や観点。「コンセプトのある広告」


 うん、わからん!



 ちょっとうつ病が悪化してこれ以上は長く書けないので、雑に言い換えをします。

「演出」という仕事は、感覚的な仕事であると同時に、たいへん観念的な作業で、「概念(考え方)を示すことができる仕事」なのです。つまり、この一行半を展示で説明することはできないのです。


仕事を成立させるために、先に思い(観念的なこと)を吐き出してしまい、そのあと付けを考えるということを繰り返してきました。それは基礎学力のない情けないキャリアで辟易するのですが、しかしながら、「アニメは映画だ」というコンセプトだけは振り回してきたつもりです。



「演出」という仕事は、感覚的な(理性ではなく視覚や聴覚や動的感覚に訴えかけて、美醜や快不快などを調節する、センスが必要とされる)仕事であると同時に、たいへん観念的な(具体像ではなく精神的な面で、印象や哲学や思想をも提示する)作業で、「概念(考え方)(作品内に描かれた物事の意味や、込められた抽象的で本質的な性質を包括的に考察する世界観)を示すことができる仕事」なのです。つまり、この一行半を展示で説明することはできないのです。


仕事を成立させるために、先に思い(観念的なこと)(現実に基づかず、頭の中だけで作り出した考えや思想の方向性)を吐き出してしまい、そのあと付け(ロボットアニメとしての設定など)を考えるということを繰り返してきました。それは基礎学力のない情けないキャリアで辟易するのですが、しかしながら、「アニメは映画だ」というコンセプト(骨格となる観点)だけは振り回してきたつもりです。

 まあ、みんなだいたいニュアンスで分かってると思うけど、日本語には文章になってない部分の枝葉の意味合いがあるし、観念や感覚は似たような言葉だけど微妙に違うので。野暮だけど国語辞典的な注釈をつけました。
 たしかに富野由悠季の世界展での企画書や小説の地の文など、富野監督の思想が見える部分がある。
 と、同時に、動画である映画の娯楽性として、感覚的なエンターテインメント性も演出の仕事で意識されている。


 映画作りにおいて、メッセージの思想性と演出のセンスが重要、なんてことはわざわざ説明する必要もなく、みんなわかっているだろうし、僕は無駄なことをしたのかもしれないが。



 富野監督にとってアニメは映画なので、映画であるという観点を重視する富野監督としては、設定を云々したり場面写真の抜き出しの展示で断片的に説明されるより、結局全体的に観念や思想をリズミカルに包括した映像作品全体を見ることでメッセージを理解して欲しい、(そしてブルーレイディスクを買って欲しい)というお気持ちがあるのではないかと思う。



 まあ、それはそれとして、やっぱり富野由悠季の世界の展示で生原画をたくさん見れたのは楽しいとは思う。
 


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