玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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機動戦士ガンダムAGE第1話 映像の原則1stと比較して地味

地味だったなー。
というのが印象でした。

ファーストの機動戦士ガンダムの第1話はもっとわくわくハラハラした。でも、ガンダムAGEはあんまりワクワクしなかった。ドキドキハラハラしなかった。


って言うのが総評


何で地味なのか、

  • 映像の原則に照らし合わせて考えてみた。

映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)

映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)

この映像の原則という本を書いたのは、機動戦士ガンダムの生みの親、富野由悠季監督です。今回のガンダムAGEの監督は山口晋監督。
とりあえず、映像の原則の基本概念。↓

落ちるアクシズ、右から見るか?左から見るか?<『逆襲のシャア』にみる『映像の原則』>
引用元


(追記:注)あくまで上記の図は基本概念中の基本概念で、上手下手だけが原則ではありません。

上手と下手しか考えていないのは、いくらなんでも片手落ちとしか思えない。
『機動戦士ガンダムAGE』を『映像の原則』と照らし合わせた感想について少し異論 - 法華狼の日記

それ以外の原則は300Pほどの映像の原則の原著玖たくさん書いてあるからそれをじっくり読んで下さいね!あと、モンタージュ理論とか他の理論やカメラマンの本とかも色々あるから!
一枚の概念図だけで説明するのはこのブログのレベルが簡単仕様でガンダムの話だからですよ!
本当の理論を描くなら、こんなブログの記事一枚で済むわけがないです。(追記終わり)


一場面のカットのレイアウトが、基本的に中央に被写体が映るわかりやすい構造の連続で地味。
全体の流れが、主人公が上手側にほとんど立ちっぱなしで、映像の方向性が右から左に流れるばかりで、変化に乏しくて面白くない。


↑この女の子は可愛い!
でも主人公がだいたい右手側にばっかりいて、右手側から左手側を見てるレイアウトが多くて退屈!

敵がだいたい左側に居るっていう構造も、ゲームかよ!ファイナルファンタジーのSFC版かよ!っていう!
ゲームの映像の作り方とアニメの演出は違う!でも、そんな絵が多くて演出が地味。
イナズマイレブンのゲームはやってない。でも、イナズマイレブンのアニメは面白かった。イナズマイレブンはサッカーというイマジナリーラインがあるからレイアウトが切りやすかったのかな)
フリット・アスノが学校に行くシーンとか、基地に行くシーンとか、UEと戦いに行くシーンとか、だいたいカットの方向性が右から左という物ばかりで退屈だった。

あと、この構図みたいに、左右に空白が多いカットが多い。地上デジタルで横長の画面になったのに!
古いテレビ用のレイアウトかよ!!!構図が締まらないなー。

この敵が中央ニュートラルなカメラで待ち伏せしているというホラーな構図は良い。(戦術的に見ると、なんでラーガンだけ狙われていたかわからんが)

でも、ラーガンのジェノアスが撃たれる所はやっぱり、味方が上手よりの中央に居て下手から撃たれるという構図で変化がない。
映像とは変化を求める物である。優位であるべき主人公が常に上手側に立ってるだけではつまらんのである。
ファースト・ガンダムの一話のガンダムもだいたい上手側に立ってるんだけど、緩急が付いてるから面白いの。
ガンダム大地に立つ!!と比較すると。

ザク単独だと中央にニュートラルに映ってるけど、1話のアムロはザクに対して、状況ごとに左右上下に動くんで、面白い。
もう、ファーストガンダムとかと比較しますよ!
「機動戦士ガンダム」 | バンダイチャンネル
最初の機動戦士ガンダムの第1話はバンダイチャンネルのインターネット配信でいつでも無料で見れるよ。


というか、かなりファーストガンダムガンダムAGEは構造が似ている。
日常→敵のコロニー侵入→幼馴染との会話→ガンダムに乗る→戦う→勝つ
っていう。
敵の侵入は

で、下手側から大きく敵が出てるのは怖くて良い。
だけど、ファーストガンダムと違って、主人公がすぐにガンダムの所に行けてしまうのがあんまり怖くない。地味。試練を感じない。(ガンダムがバルガスに移動させられてたって言うのは伏線かなー)
で、直接的に見える被害はラーガンのみなのね。

これ。
ラーガンも死なないし、あんまり怖くない。切迫感が薄い。まあ、知らない人はたくさん死んでるんだけど。
そんで、フリットガンダムに乗ろうとする時の動きが



上手から下手に流れるような感じで、あんまり意志の力を感じない。むしろ、フリットがバルガスやエミリー・アモンドに押されているように見える。主人公なのに脇役より弱そうに見える。敵のUEは下手側に居る意識があるから敵ではあるんだけど、シャッターが閉まってるし音響も聞こえないので怖く感じない。
で、ファースト。

ガンダムに乗る前からアムロは下手から上手側を向いたり振り向いたりとかしてる。
他の避難民の動きからアムロが外れたりとか、いろいろなアムロの行動を見せて、主人公らしい。

幼馴染のフラウの家族が殺されて、その死体の大群は上手側でアムロを圧迫する。危機感を感じますね。が、アムロは下手側から上手のフラウにビンタして、意志を感じさせる。

「走れフラウ!」
で、フラウ・ボゥが下手側に移動して退場して、アムロの方が優位に立つ。

ダメ押しで、小さくフラウが上手から下手に移動する所を小さく映して、アムロの方が強いと暗示してる。


転じてAGE

フリットが弱い方の立場に立っている。小さいし、あんまり主人公らしく感じない。
(法華狼さんの指摘を受けて追記:)
一応上に立っているからえらいという感じではある。だが、カメラが真横から移している平坦な構図なので、インパクトとしては薄い。「単にガンダムが高い所にあるから移動」というだけな気もする。



↑確かに、法華狼さんに指摘してもらった通り、上から見下ろした主人公が強く見えるというカットもある。
(キャプチャを面倒がっていました。すみません)
だから、上から見下ろした主人公が、下手から上手に向かってこうやって「ぼくはガンダムに乗るんだ!」って叫ぶカッコいいシーンもある。下手から上手に向かって意思を向けるのは決意の表れにも見える。
これは映像の原則に合っている。フラウを下手から叱咤するアムロのシーンとも対応している。
ただ、ここでの問題は、フリットが意志を向ける上手側が「女の子とジジイ」なんだよ。「僕はガンダムに乗るんだ!」って叫ぶのはカッコいいんだけど、そこまで強い意志をぶつけるのが「女の子とジジイ」なんだよな。しかも上から目線で。なんか微妙な感じがする。
普通のドラマだと、例えばスポーツドラマなどだとこの構図でも良い。「俺は試合に出るんだ!」って上から目線で下手から上手に→と意志をぶつけるのは意志の強さだから良いのだ。
だが、ガンダムAGEでこの構図が微妙に感じるのは何故かというと、格好を付けているフリットの背後の下手側に「UEの暴れまわっている場所」という「女の子とジジイ」よりももっとヤバいものがあるから。女の子に格好を付けている場合じゃないと思う。敵に背を向けてる構図になってるので、なんだか微妙なのだ。
(ラーガンの出撃のシーンのせいで、下手側にUEの脅威がいるという舞台感覚が場を支配しているのだ。)
ちなみに、アムロが下手側から上手側のフラウをビンタする時、フラウの背後には「母さんとお爺ちゃんと大勢の人の死体」が広がっているのだから、そういう「怖い物」に対してもアムロが意志をぶつける、というシーンにもなっているわけ。
また、アムロがフラウを叱咤したりガンダムに乗りこんだりする時、ザクは縦横無尽に暴れまわっているし、砲撃音は続いているし、アムロガンダムに乗りに行くまでにカメラがアムロを追って、上下左右に動いている。だから、ファーストは不安感とかどこから弾が来るかわからない危険性、その中での勇気も表現されてる。
ガンダムAGEだとフリットは基本的に右から登場して左に在るガンダムに乗って、さらに左のUEと戦う、という単純な演出がなされている。分かりやすいんだけど、高揚感は足りない。
また、ラーガンを襲ったUEがいるのに、シャッターが閉まった後は外の戦場の音が聞こえていないので、ちょっと緊張感が薄れている。下手側に在るべきUEの存在感がもっと脅威としてあってもいいのだが、それが薄れている。
だから、フリットが上から目線で下手から上手の「爺と女の子」に強い意志を発揮しても、なんだかぼんやりした印象がある。

下手をしたら、下手側のUEの圧力に押される形で、上手側の「爺と女の子」に意志をぶつける、という受動的な態度と言う風に見えてしまうかもしれない。これはちょっとハッキリしない演出だったんじゃないかなあ・・・。
また、カット単体のレイアウトで見るとフリットは下手から上手に向いているが、バストアップで中央ポジションに映っていて他の対比になるものがない。そのため、フリットの意思の方向性がぼやけて見える。なんとなく被写体が中央に居る、って言う感じなので、あんまりインパクトがないのだ。(集中線で漫画っぽく迫力を出そうとはしている)
山内重保だったら、もっと叫ぶフリットの顔をドアップにして、下手から上手の角度を強調するんじゃないかな。
山内演出ほど極端じゃなくても、叫ぶフリットの台詞尻の後に短く「フリットの後頭部ナメで上手側の下に居るエミリーを見ている主観カット」を挿入するだけで、フリットの意思を盛り上げる事は出来ると思う。

(追記終わり)


で、決然とガンダムに乗る覚悟を決める所
ファースト

上手から下手に走って、疾走感を出します。でも、この後、アムロの涙のアップがあって、自然に動いているだけではないと示してからの、

イマジナリー・ライン転換!アップの涙の効果で動きの方向性をリセットしたわけ。
「→」の動きは意志を感じるからな。

それで一度アムロが下手から上手に動いた後、またカメラが逆方向に切り替わってアムロが上手から下手に動くように、ごく短い挿入カット。
これでアムロがジグザグに動いて困難に立ち向かっているとか、ガンダムの巨大感とか、カメラを強引に動かすガンダムの存在感とかをアピールするわけ。初めてガンダムの顔がアップになるし。それが逆さまというのがまた凝ったレイアウトでカッコいいじゃないですか。


転じてAGE

フリットもここで1回だけイマジナリーライン転換して下手から上手に移動して、意志を感じさせます。(バルガスとエミリーに振りむいたのは移動ではない)
でも、ジグザグ移動ではないので、演出はガンダムよりフラットな印象。



ガンダムに取りつく所を比べると、下手から上手にガンダムに上がるという構図自体は似ている。
ただ、アムロはここで横においてある説明書を取るというワンアクションがあるので、またジグザグ移動感がある。アムロは戦闘でテンションがおかしくなって興奮しているので、説明書を忘れたりとかもたついているんだな。そして、視聴者はもたついているアムロを見て、ハラハラするのだ。
フリットの方がスムーズにガンダムに乗れている。敵が攻めてきているのに、スムーズに乗るのはあまり緊迫感を感じないが、フリットは開発者だから良いのかなあ。


で、乗ります。


ここでちょい下手向きのスタンダードな正面ポジションの構図でガンダムを起動させるのはファーストもAGEも同じ。
AGEはここで、ガンダムのスイッチを入れて、基地の司令と通話するシーンがある。「ガンダム出れるか?」「いけます」「行け」という。ちょっと味方とここでコンタクトができるというのは、安心感があってしまって初戦闘としてはどうかなー。
アムロガンダムに乗っても安心ができません。アムロガンダムのスイッチを入れてモニターを映して「間に合うか?」というと、画面にいきなり映るのは上手から下手にガンダムを無視して飛ぶザク。


そして砲撃。全然間に合えてないアムロ!こ、これはハラハラする!

上手から下手にザクが砲撃すると、最下手側の一番弱い立場の人たちの避難民がもっと下手側のホワイトベースに逃げるシーンが挿入。守るべき人たちが、今まさにピンチ!アムロ急げ!
ホワイトベースのパオロ艦長のシーン(パオロ艦長がホワイトベースの窓越しに小さく見えていろんな人と通話している)が挿入されるが、人員が足りないという。超ピンチ。
富野絵コンテは基本的に芝居などが安定した決まり切ったポーズじゃなくて、不安定なんだよなー特に戦闘シーン。
AGEの基地の司令官は大きく映っているし、戦場から遠い所からモニターで見ていて、もうちょっと落ち着いている印象がある。

この構図は落ち着いている。分かりやすい←向きだし。


AGEで、フリットが守るべき相手は、エミリーなんだと思う。ガンダムユニコーンほど、同級生などの死が描かれてないし。

その幼馴染のエミリーは、UEから離れるようにガンダムを挟んだ安全な上手側に行きます。
「燃えてるコロニー ←UE→ ←ガンダム エミリー」という構図。エミリーが一番安全。あんまり、守るべきものをガンダムで守ろうという切迫感はない。ガンダムが少女よりも下手に立って背中を見せるというのは、ガンダムが弱く見える。
ファーストは
ホワイトベース ←避難民(フラウ) ←ザク ←ガンダム」という、ガンダムが一番急がないとダメっぽいピンチ構図。同時に、ガンダムが強く見える。
ただ、AGEでここでエミリーがこの位置で、上手に行こうとしていったん下手に振りむいてガンダムを見るというのは、演出意図としては一定の効果はある。それは、エミリーの主観映像の回想である。エミリーの主観だからエミリーは上手から下手向きって言うスタンダードな顔の向きの方が分かりやすい。

エミリーの可愛い恋心と共に、フリットが猛勉強してUEと戦おうとしてきたという過去が描かれるわけ。


ここで、アムロフリットの戦う動機づけが全く違うということが明らかになったと思う。
アムロは、「今、そこにある戦場被害」をどうにかしようというモチベーションで動いているけど、フリットは「エミリーが見てきたような過去の勉強」「14年前にUEに襲われた事」という過去をモチベーションにして動いているわけ。だから、今回のUEが下手側で暴れまわっていても、その被害とか切迫感よりも、上手側でガンダムの背中を後押しするエミリーの過去の想いでの方が、ガンダムを動かすエネルギーになる、って言う構図ね。(女に後押しされるような印象は、主人公としては主体性を感じないが・・・)
ファーストのアムロは一刻も早く下手側で暴れているザクを撃破して、避難民を助けに行かないといけないというベクトル。
フリットは既に過去に失われた母が動機になっているので、今現在の被害はあまり描かれていない。母親の呪縛が大きいという風に思えますね。


で、立つ

ファーストで主観画像で立ち上がる途中のガンダムを見るのは、ジーン。
ジーンからはガンダムは下手に見えている。ガンダムが怪しい存在に見えている。でも、ガンダムは寝ているせいでパースがついて煽りの構図になっているので、強く見える。
(追記:シーン全体としては俯瞰でガンダムを見下ろしているが、ガンダムをジーンが足元から見ているのでガンダムの体はパースペクティブによって煽りの構図に見えるような、映像トリックが使われているって事)
AGEのガンダム

若干俯瞰気味だから弱く見える。背中を曝しているし。
(追記:シーン全体としては煽りでガンダムを見上げているが、トレーラーで起き上がるガンダムの体はパースペクティブによって頭が映っている。ここがファーストと逆)
でも、ガンダムが立ち上がる所はだいたい同じ。上手から下手に進むイメージ。上手のガンダムは強い。



ファーストの方が、下手に向かっている角度が強いので、よりザクへの対決姿勢が明確。AGEは正面なので、ガンダムのカッコよさの説明だろうか。やはりフラット。


ですが。

シャッターを開けて出ていったら敵がガンダムに背を向けているのが、緊迫感がない!燃えるコロニーという説明はあるんだが、「守るべきものを早く守らならなくては」という切迫感ではなく「もうコロニーは燃えてしまった」という説明感。横パンがまた説明っぽい。
っていうか、さっきはラーガンを待ち伏せしていたのに、何でこのUEのガフランはガンダムをいきなり撃たないのか!ビックリしないだろ!戦闘シーンなんだからびっくりさせなきゃ!

ラーガンを待ち伏せしていた時は面白かったのに!なんで主役相手に手を抜くのか!!!



ファーストガンダムはいきなり撃たれるけど、全然ライフルを受け付けないで、そのままジーンをボコボコにします。
キャプチャしてないけど、ここのジーンの表情が絶妙だよね!
で、ジーンのザクが逃げるのだけど、アムロは追い打ちです。

逃がすものか!

ここで、デニムのザクを追い越してジーンに迫るガンダムが強そう!そして、戦闘が一対一ではないので、立体感がある!

斬る!ここで、ガンダムビームサーベルが上手上方の最強の位置、ザクを挟んでガンダムが下手下方の最弱の位置、というのも立体的。ビームサーベルの恐ろしさの表現ですかね。

で、振りぬく。
上手から下手まで降りぬいて止まったという表現ですね。奥の方にデニムのザクがいて、真中にジーンのザクが真っ二つになって浮いていて、下手の手前にガンダムがいるのが、立体的な放物線を感じさせますね。
躍動感!

で、爆発でドアップ。これはショッキング。爆発が上から来てガンダムが押されるのは、核爆発の脅威を描いている。

で、テム・レイが宇宙に投げ出されるというショッキングシーンもはさんで、そのショックで、

イマジナリー・ラインが変わってアムロが下手に。宇宙に投げ出される、という事が強力なファクターなので、穴は上手。

と、思ったら正面ポジションでデニムのザクが襲ってくる。正面ポジションだから、イマジナリー・ラインがまた転換するんだな。まあ、さっき飛び越したってのもあるけど。

ここで、ザクが上手から飛びつくのは、ザクが強いというより「エンジンを爆発させるとヤバい」という圧力の表現。ザクが「倒すべき敵」から「爆発物」に意味合いが変わっているんだな。
で、ガンダムがザクを刺している止め絵が続いて、ザクを爆発させないで済むかどうかという緊迫感がある。で、数秒間止め絵を見てドキドキした後、

ザクが死んで下の方に寝転んで、ガンダムがその上に中央正面に近いポーズで安定して立つことで、ほっとする。


転じてガンダムAGE

これなー。
ガンダムが下手側に移動するんだけど、それはファーストガンダムが敵を追撃して下手に移動した、って言うんじゃなくて、「やられたジェノアスの銃を拾うために下手に移動した」っていう表現だから、弱く見えるんだよなー。ガンダムなのに俯瞰で見降ろされてるから弱そうだし。
あと、左右の空白がやっぱりダサい。

で、下手側からガンダムビームサーベルで突くんだけど、真横からカメラの高さも同じで見てる構図だからあまり面白みはない。
突いてる場所はUEのガフランの腹のビーム射出口で、ビームを出そうとした時に刺して誘爆させて勝った、という事だから、ガンダムが圧倒的に勝ったというわけではない。

で、ガフランが腹から誘爆してるけどジーンのザクの爆発のように真上から襲うのではなく、モニター越しの俯瞰なので、迫力がない。実際に爆発でコロニーを破壊していないし。
アムロは2機のザクを相手にして、違う戦い方を瞬時に行ったけど、AGEのガンダムは3機のガフランが相手なのに1機しか相手にしていない。これはあんまり立体的ではない。
ただし、ガフラン同士の共食いというのはショッキングで面白かったかも。でも、ガフランの方がガンダムよりショッキングな事をするっていうのは、うーん。

やられたガフランを消滅させるガフランが、ガンダムをナメた奥側に居て、ガンダムと位置が被っているので、ちょっと何をしているのかよくわからない。インパクトのあるシーンなのだけど、ちょっと残酷さを薄れさせているのか、同士討ちをするというすごく重大な芝居を隠しているのはもったいなく思う。ガンダムと位置が被っているのも、レイアウト論としてガンダムと処理役のガフランが同列に見えてしまう。むしろ処理役のガフランの方が上位に居るので、ガフランが場を支配するように見える。
(現時点でUEの方が謎の存在だからガンダムより上位に立つという見せ方の理屈は通っているが。別カットでも良かったのでは?)


で、戦闘後。

小さく脚元に居るブライトが「ガンダムになんとかしてもらわなくては」って下手から言って見上げると、ガンダムが上手の強い位置にたたずんでいる。ガンダムすごいなーって思う。

ガンダムより大きく映っている女の子が上手に立っていて、下手の隅っこにガンダムがいるっていうのは、ガンダムが弱そうに見える。せっかく勝ったのに。
ガンダムのラストの立ち位置が一番下手かよ。弱そうだ。
上手下手を抜きにしても、戦いを終えたガンダムが隅っこに追いやられて、女の子の方が大きく映っているというのは、ガンダムが凡庸な存在に見えてしまう。
(狙っている演出だとしたら、親子三代のガンダムパイロットを産む母になるエミリーの母性を大きく取り扱っているのかもしれない。母の歴史でもあるのかも)
父ではなく、母の継いできたガンダムだしなあ。親子三代のガンダムパイロットはガンダムを操縦する手駒でしかなく、主導権は女の方に在るのかもしれんな・・・。(カガチっぽい声で)
三代のパイロットはその時々のパイロットでしかなく、大河ドラマ的な語り部はグレートマザーになるであろうエミリーなのかもしれん。


ともかく、こういう絵の対比で、ガンダムAGEのガンダムファーストガンダムに比べてあんまり強そうに見えないんだよなー。って、分かる。
そして、ファーストガンダムは実に強いし、いろんな工夫が絵コンテに在るのだと分かりますね!
新作ガンダムをきっかけにファースト・ガンダムを見るとガンダムの魅力が再発見できるから良いですね!
ただ、比較をきっかけにガンダムAGE独自のファーストガンダムとは違う部分も再発見できる。(母のクローズアップなど、ファーストには無かった部分)


あ、でも、こういう風に倒れている母親が下手側の上側に居て、フリットに母の圧力をかけるカットは好き。
死に際に「この中にあなたのやるべき事が入っている!」ってガンダムの設計図を渡してフリットの人生を束縛するとか、この母親マリナ・アスノはマジやばい。

中央の主人公が下手の母の圧力と上手奥のUEの圧力に挟まれる所はいいよねー。フリットくんは重圧をかけられまくってる人だと思う。代々モビルスーツを作ってきた伝統を持つアスノ家の因縁とかもあるし。そこら辺の表現は良かった。
っていうか、ファーストガンダムのオマージュ的なシーンや、パターン的な戦闘のシーンは全体的にオリジナリティが薄くて退屈だけど、オリジナルのドラマのシーンは割と上手かったと思う。
オマージュや段取りはやっぱりチェックや考察が浅くなりがち。だけど、ファーストガンダムと違う所はちゃんと意味があるように描かれている。

上に置いた、このカットを良く見たら、フリットが中央に居て、上手側に守るべき人がいて、下手側に脅威である戦場とガンダムがいるので、フリットが「守るべき人」と「ガンダムとUE」の板挟みになっている、とも見れるか。つまり、ガンダムも味方ではなくてフリットに重圧をかけるものなのかも。と。
中央にフリットがいるのが多いのは退屈だけど「板挟み感」の表現だとすると面白いかもしれんか?
因縁に板挟みにされている、って言うのはアムロにはなくてフリットにはある物だよなー。

  • 余談、と今後の予想

あ、幼馴染で金髪でロリピンク服のエミリーちゃんは可愛かったです。
あと、敵のUEがやられたUEの残骸を自分で処理して機密を保持した時に人の悲鳴っぽいのが聞こえたのが、機動戦艦ナデシコ木星トカゲみたいだなーって思いました。
ちょっとグロ展開もあるのかもしれん。
UEが地球連邦に14年間も本格的に攻め込まないでいたのも、ノーラに攻め込んだ時にノーラの人があんまり慌ててない様子だったのも、UEと地球連邦側に密約があるという、黒い伏線があったからなのかもしれん。
でも、そういう「味方の陣営でも大人が悪くて子供や大衆を殺す」「謎の敵も実は人間と同じ」っていうのはエヴァンゲリオン以降〜リヴァイアスラーゼフォン蒼穹のファフナーでやったからなー。そう言うバトルロワイヤル的な箱庭戦争はゼロ年代で終わってて欲しい所。ギスギスするし。まあ、ヱヴァンゲリヲンも新劇場版になったし、90年代末を知らない小中学生がメインターゲットなら、そう言う展開もマーケティングとしてはアリかな。
でも、「謎の敵の襲撃も仕組まれたものだったのだ」っていうのは、出来レースっぽいしあんまり盛り上がらないと思う。だからこの予想は外れてほしい。何が起こるかわからないハラハラ感が足りなくなるし。でも、分かりやすさを追求して読めやすい展開を描くというのも大衆向けとしてはアリなのかもしれん。
イナズマイレブンは分かりやすかったし、演技のテンションとか、ベタな人情ドラマが盛り上がった。
そこら辺に期待。あんまりバトル・ロワイヤルとか仕組まれたシナリオとか陰謀という日野晃博陰謀論をメインストーリーにすると、逆にチープなシナリオになって敵がしょぼく見えるし、戦闘ドラマの流動性やドキドキ感が減ると思う。変にリアルを気取って陰謀論をするより、ベタな人情ドラマの方が面白いと思う。


っていうか、14年間も謎の圧倒的な存在のUEに断続的に攻撃されているのに、スペースコロニーのノーラの人たちが呑気すぎるとか、ノーラにUEが侵入した時に軍人があんまり慌てていない(だらだらとラーガンを救助したり)っていうのは本気じゃない気がした。ラーガンが出撃しようとした時に、ハッチの向こうが焼け野原だという事が分かっているはずなのに、他のスタッフが敵を警戒したりする描写がないのも本気じゃない気がした。戦闘の緊迫感が足りない。
町が燃えているのに、死体が映らないし。でも、死体が画面に映らなくても「死体がある」という緊迫感や「自分が死ぬかもしれない」という切迫感を芝居のレベルで描く事は出来たと思うのだが・・・。
スペース・コロニーのノーラにあるアリンストン基地でガンダムが作られていて、そこにUEが攻め込んでくるって言うのも出来レースっぽいなー。まあ、そういう黒幕がいるっていうシナリオ自体は悪くないのだけど。
むしろ、アリンストン基地の人が落ち着きすぎているのが問題。「想定されていないUEの侵攻」「3体のUEにノーラの街が一方的に蹂躙されている」という状況なのに。あんなにキチンと席に座って、エヴァンゲリオンみたいに基地のモニターでゆったりと観戦したり、戦闘の実況をする余裕ってあるのかなー。ファーストガンダムの1話ならそんな余裕はなかった。
新世紀エヴァンゲリオンは全体的に出来レースの茶番だけど、それが分からないような芝居をしたり、アクションアニメーションをしっかりする、っていう方向性が面白かった。
まー、ガンダムAGE出来レースなのかどうかはまだわからんのだが。
出来レースだと落ち着きすぎて面白くないし、出来レースじゃなくてガチの戦争だとしたら一人一人のキャラが本気で戦っていないように見える。もっと自分のできる事を探してあがいて戦えよ。もっと回りこんだりしろよぉ!
もし、作り手側が「戦闘シーンでは、軍人は指揮所から実況するに決まっている」「ロボットものの1話では謎の敵と戦って勝てばいい」と、惰性で作っているのなら、それは怠惰であり、面白くないと思う。また、そうやって「こうすると決まっているからこうする」と作るのは一見王道に見えるが、実は自分で考えていないので、面白くするポイントでの重みの乗せ方が決まらないし、それまでに作られた過去の遺物に捕らわれて独自性が失われたり、テーマがバラけたりするので面白くないと思う。
コピーをすることや、型にはめる事は、芸術の基本だからそれ自体は良いのだけど、コピーするならするで、それがどういうものか分かった上で自分なりに消化して再構成してほしいな。
これも映像の原則に書いてあるシナリオの基本ね。
ガンダムシリーズは「ガンダムっぽい物」を作るという物だし「バンダイのロボット商売をつづけるビジネスコンテンツ」という側面もあるから「ガンダムのルックス」をコピーするという作業は必然的に発生すると思う。だが、ルックスだけコピーしていくだけだと、地味な劣化コピーになって行くと思う。
そもそも最初のガンダムは「既存のロボットアニメではない物を作る」という反骨の精神があった物だし、富野ガンダムはいつもそれまでのガンダム像を破壊しようとしてきたからね。その破壊こそがガンダムのマインド。
ガンダムのルックス」をコピーするということは「ガンダムのマインド」を劣化させるということなんだよなあ。



でも、まあ、ガンダムはだいたい1話では判定できないので、やっぱり様子見しようと思います。

  • 今までのTVガンダムの1話の地味ポイント

1stガンダム。ファッションセンスが地味。
Zガンダム。本格的に戦争が勃発する前の話から描いているのが地味。
ガンダムZZ。クイズをするのが地味。
Vガンダム。本当は4話だからファーストコンタクトが描かれていなかったのがよくわからないしインパクトに乏しい。影がない作画が地味。カテジナさんがまだ本気を出していない。
Gガンダム。格闘戦という割には成人の主人公と中年の刑事のアダルトで地味な1話だったし。東方不敗が出るまでは地味だった。
ガンダムW。リーオーが地味。主役ガンダムが初戦で撃墜されて川に落ちるのが地味。キャラはアレ。
ガンダムX。ナレーションの多用が地味。ファッションセンスが地味。っていうかガロードが電機系アキバ系
∀。ガンダムが出ない。
SEED。ガンダムがあんまりちゃんと動かなくて盗まれる。
00。模擬戦。あと、ソレスタルビーイングが茶番。出来レース

  • ガンダムAGE1話で独自性があると思った所

バルガス・ダイソンがガンダムの腕だけを試験的に運用していた時に、フリットとぶつかりそうになる所がビックリして面白かった。
あそこはガンダムの腕だけが下手側に映っていて、ガンダムの不思議感が出ていて面白かった。
主人公にぶつかりそうになるっていうのも面白い。
パーツごとに試験するっていうのも、AGEシステムという分離合体おもちゃを見せる段取りだけど、リアルなロボットっぽくて面白い。今までにパーツごとで動かすのはあんまりなかったな。Vガンダムはやってたけど、あれは実験自体を実戦でやってたから、またちょっと開発とは違うんだよなー。


一子相伝とか伝説の救世主のガンダムって言う設定は中二病を刺激して面白かった。
∀ガンダムみたいに歴史を感じさせるのが良いね。まあ、∀ガンダム黒歴史が本格的に暴かれるのはマニューピチ編以降か、月に到着した後なので、1話からガンダムが神話化しているAGEは面白い。


コロニーのデザインは面白かったけど、ファーストガンダムの方がコロニー感を見せて行こうという意欲があったかもしれん。まあ、時代的に1979年はコロニーという設定が新しかったんだけど。でも、AGEの方が背景の作画は綺麗。



設定とか、デザインとか、3代のガンダムの若者が出て、フリットが老人になるまでを描くという大河ドラマ構成予定は面白そうだから、じんわりと見るぜ。演出はもうちょっと盛り上げてくれー!