いろんな立場の人が「天皇はすごいものだ」という架空のルールに基づいて行動しているのが、シチュエーションコメディーとして笑えました。
天皇が普通のオッサンなのに、みんな天皇というルールに振り回されてて奇妙で面白かった。
コメディーの笑いには、「緊張の緩和による笑い」という種類があるが、
「天皇は超偉い」という思想とか「戦争で人が死にまくってる」「責任を取って天皇は殺されるかもしれん」という緊張するシチュエーションが、「天皇が普通のオッサンっぽい行動をする」ということで緩和されて、笑いに繋がっていて面白かった。ダウンタウンのコントでも普通のオッサン役がおもしろかったりするし。
でも、笑えることがあっても、その時は人が滅茶苦茶死んでる戦争中だ、という人類の愚かさが怖い。だが、人が滅茶苦茶死ぬようなことをやりながら、普通に生きている人間の愚かさと言うのも、また喜劇的だ。天皇とチャップリンを重ねたりね。
悲劇と喜劇は紙一重。
そして、ラストシーンで天皇という偶像のために人が死ぬ。
だが、天皇役をしているイッセー尾形と言うオッサンは普通に桃井かおりと一緒に退場して、特になんのオチもなく終わる。
その、ドラマ性の無いラストの日常感覚こそが、天皇と言うルールのバカバカしさを醸し出していて面白かった。
だが、天皇や君主と言うルール、大衆が殺し合う戦争の責任を最高指揮官役の誰かが負うという幻想にすがりついて死んでいく人々もいて、そういう人類のダメな所も、笑える。
というわけで、大抵の映画を見ると「やっぱり人間はダメだな」って思う僕でした。
「女の子がかわいいなー」って思う映画もあるけどね。この映画に女の子は出ない。
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天皇が敗戦を夢で見る所の演出がおもしろかった。まさに夢って感じだった。