ガンダム Gのレコンギスタの5話が非常に多重的で面白すぎたので、今朝がたはマスクのマスクについて書いたけど、今回はメカ戦闘やSF部分についてだけエントリーを分けます。
ドラマについてはもう少し寝て考えを脳みそで整理してから。
- Bパートの戦闘が面白い!
今回はこれに尽きると思う。とにかく面白いのだ。メカの空中戦闘がとても気持ちいい!
では、その気持ちよさがどこから出るのか、快感を構造解析してみよう。
まず、Aパートの後半でちゃんと敵が来る。
ちゃんとキャピタル・アーミィ部隊が戦闘前に増槽をパージしたり、エフラグから離脱していることで、スカイ・クロラの増槽パージシーンのような抜刀のワクワク感がある。
で、メガファウナ側にもその動きが分かる。ミノフスキー粒子でレーダーは使えないはずだが、なんでメガファウナに敵が攻めてきているのが分かるのか?
それは、キャピタル・アーミィが第一ナットに地上監視装置を配備したのと呼応するように、アメリアにも宇宙艦隊がいて、宇宙からの地上観測データがレーザー通信で送られてきているんだろう、と類推できる。宇宙艦隊はセリフの上でしか出てこないが、Vガンダムのシュラク隊のように序盤では台詞しか出てこないものが後に活躍するというのも富野アニメなので。
「これ、キャピタル・アーミィのコースですねえ」って金髪グラサンピンクシャツの男海賊がアンノウン機を分析しているんで、高空監視システムがあるっぽい。カットシー部隊はデレンセン大尉が前回通ったコースをなぞってきている。まさかミノフスキー粒子を撒かずに接近しているということはないと思うんだけど。(レーダー誘導のミサイルを撃ち込まれたら終わるし)(ミノフスキー粒子下戦闘が前提なのでそもそもそう言うイージス艦ぽい長距離迎撃ミサイルは配備されてない可能性もあるが)
で、正体不明機が来たからアズマッチからの荷揚げは中止だぞ、作戦が繰り上がってしまったぞ。正体不明機の戦力がどうなんだ?アンノウンを叩いた後は次にどんな作戦をするのか?
ということをベルリとクリム・ニック君のゆかいな格闘戦やアイーダ姫のソフト百合シーンや金魚の糞のノレドたちを挟んで、段取り臭くないように愉快な芝居を交えつつ、きちんと戦闘目的や状況を説明している。
非常に丁寧。非情に丁寧だけど説明セリフではなく絵的に楽しいこともしているので、アニメとしての快感が高い。
キャピタルタワー占領と言う言葉に突然興奮したベルリを取り押さえようとして逆に関節技を決められるクリム・ニック君の悶える所が単純に面白いが、同時に「この船を守って見せます!」というベルリ・ゼナム君の決意表明もあって二重に面白い。なかなか、イケメンの髪の毛を引っ張りながらヒロインに「あなたの恋人を殺したのは悪かったので守ります」とか言う主人公はいないなあ。
ていうか、クリムに「いじめられたくありませんから」と言った数十秒後にベルリは関節技だしな。半端ないな。1話のデレンセン教官の鞭よけからの関節技もすごかったけど、ベルリは普通に強いな。
サブミッション系主人公。絆。
でも、天才中尉のクリム・ニックはベルリの能力を認めて我慢して作戦参加を許可する。暴力を振るわれたのに、とても冷静で育ちがいい貴公子っぽい。
同年代の少年パイロット同士のガチンコでの交流と同時に、アイーダ・スルガンと操舵手のステアとの微妙な女子同士の絆も光る。
ステアの横に立ち、互いに頭をくっつけて寄り添うようにしているアイーダ。
しばしそうしたのち、離れるアイーダの尻を軽くたたくようにしたステアだが、これはソフト百合なのか、それとも同年代の女子同士の交流なのか?密談をしていたのかヘッドフォンで音楽を聴いていたのか?
ちなみに、この頭ごっつんこの前にアイーダが「その正体不明機をたたいて、メガファウナが囮になれば、カーヒル大尉が計画した作戦はできるのですね?」とドニエル・トス艦長に聞いた時、ステアは操舵しながらちらっとアイーダの方を見たんですよ。ごっつんこもいいけど、死んだ恋人が計画した作戦について声に出すアイーダの声色を聞き分けてちらっと心配して見るステアのさりげない芝居が、彼女たちが通じ合っている雰囲気を出しているし、海賊軍は脇役でもキャラが立っている感じ。こういう「どう通じ合うか?」というコミュニケーション論はGレコのテーマっぽい。(前回、ベルリがデレンセン大尉との接触回線をクリムに妨害されたところとか、強調されている)
ステアは片言っぽい人なので、言葉でいろいろ言うよりも肩を寄せ合うことでアイーダを元気づけようとしたのかもしれない。(あんまりスパイとかは考えたくない)(むしろアイーダ姫様がスパイのような複雑なことを海賊部隊の中でやるとは考えにくいし)
で、ステアに送られてアイーダは「着替えます!」って言うので。女の子にとって着替えは気持ちをリセットする感じなので、アイーダはステアの体温で気持ちを切り替える元気をもらったのかもしれない。
まあ、僕は男なのであんまり女の子同士のスキンシップやベタベタしている交流は体験したことが無いんだが。まあ、そんな感じだ。
クリムとベルリのガチンコ喧嘩の友情とちょっと対になっているのかもしれない。
ちなみに、片言のステアが言ったセリフはよく聞くと
「フィン オール 展張、あります!!」
「総員、フィン、展張する!以下、ミノフスキー・フライト!」
らしい。
ステアの中の人のミシェル・ユミコ・ペインさんは日本人とのハーフの人らしい。なんで片言なんだ?というのは次回の人間関係編の感想で書く。
これはラストカットだが、メガファウナのミノフスキーフライトのフィンは∀ガンダムのジャンダルムの羽衣と、クロスボーン・ガンダムのマザー・バンガードの光の帆に繋がっているようで面白い。
こういう風に光の翼を広げて臨戦態勢になって音楽も盛り上がるのがおもしろい。
ミック・ジャックのヘカテーが高空監視して攻め手の部隊編成の詳細を伝えてくる。しかし戦闘前にミック・ジャックからの通信は切れる。
ミック・ジャックがまだ運搬作業中にキャピタル・アーミィの接近警報が鳴ったので、ミック・ジャックが見つけたのではなく、やはり宇宙艦隊からの監視で見つけたように思う。(じゃあ、なんで前回はデレンセン大尉の接近を許したのか?)(あるいは今回はビクエスト島を撤収するにあたり、キャピタル・アーミィが来そうなところに監視装置か斥候を置いていたのか?描写されてないけど)
- で、Bパート
ガンダムファンとしても有名で本作のガンダムデザインに関わっているあきまん安田朗氏によると「ベルリが最強パイロットで、G-セルフが最強メカなので、この二つが合体するとすぐに話が終わるので、なかなか合体しないようにします」「マジンガーZとかだと主人公が上達したりするけど、ベルリは最初から最強なので」とのこと。
なので、Bパートはいかにしてコア・ファイターがドッキングするのか?
というのが見せ場になるわけだが。
メカマンのハッパが本体側、ベルリがコア・ファイター側の「ドッキングセンサー」を調整する。
エルガイムかよ!
今回のコアファイターはかなり小型なので、ガンダムのコア・ファイターというよりはエルガイムのスパイラルフローに近い。(G-セルフの内壁モニターとコア・ファイターの間に隙間があるというのもエルガイムっぽい)
で、メガファウナが機首を上げて全体的に斜めになっているので、なかなかコア・ファイターが発進できないぞ!と言うピンチ感。で、わたわたとクリム・ニックのモンテーロを筆頭にグリモア部隊が発艦する。が、アイーダ姫様がクリム・ニックの指示に逆らってG-アルケインで出撃しようとして制止しようとするアダム・スミスが斜めになる。
ラライヤも斜めになってる。
海賊部隊はちょっと混乱している、って言うのが斜め構図とか引力とか風圧で示される。
あと、アイーダ姫様は射撃がルナマリア並にポンコツな癖に好戦的過ぎるので、時々これだから・・・。
対して、攻め手のマスクのエルフ・ブルックを中心にしたカットシーの編隊は綺麗に並んで飛んでくる。
すごく綺麗に直線で1機目を盾にして接近するジェットストリームアタック。1機目はシールドを破壊されて翼を撃たれてフェードアウトするが、哀れ。
で、編隊のすれ違いざまに一機のグリモアが撃破される。グリモアがカットシーに落とされることは初めてなので、クリム・ニックは驚く。
さらに、エルフ・ブルックが変形をしてモンテーロに立ちふさがる!
クリムはエルフ・ブルックが素手だと思ってグレネードとビームライフルを撃つ。
映像の原則的に、画面左に居るクリム・ニックのモンテーロにマスクのエルフ・ブルックが強烈に立ちふさがる感じ。
この本能的に押さえつけられるプレッシャーがマスクの顔芸と相まってとても面白い感覚を喚起している。
で、ライフルの直撃を受けたクリムは押し返される!
不安定に斜めっているメガファウナとか、下手に押し返されるモンテーロに対して、整然とした隊列のカットシー編隊と上手にでーんと居座る強大なエルフ・ブルックという構図になることで、本能的に海賊部隊が劣勢でエルフ・ブルックがすごいぞ!と感じさせられる。
- 作者: 富野由悠季
- 出版社/メーカー: キネマ旬報社
- 発売日: 2011/08/29
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今までやられ役だったキャピタルガードのカットシーがアーミィとして整然と機動攻撃をしてくるって言う逆転も驚き体験。
で、とどめの一撃のような指ビームをエルフ・ブルックが出すが!
モンテーロは画面左下から上に飛んで!ジャベリン!
即死ではないがコックピットの近くに重大なダメージ!
天才・クリム・ニック君の大逆転!実戦経験の差!この逆転の構図が映像の快感となる!ジャベリンはまだある!(何本あるかは謎)
で、ウワー!クリム・ニック凄いなー!と、思わせておいて、二人の決着を見せるのではなく、カメラがパッと引いて対空機銃掃射をするメガファウナを映していったん気分をリセットするのが上手い。一騎打ちだけではないぞ!と言う戦場全体の説明にもなっている。
で、全体の説明を一瞬入れてからメガファウナの内部にカメラを回して、ラライヤの不安定さを見せつつも、ノレドがベルリに「なにやってんの!メガファウナを守るんじゃなかったの!」って上手の上の方から言って、叱咤激励。
「ベルリ・ゼナムくん!それをG-セルフの後ろに付けるんだ!」
「そんなこといわれ、いわれたってこいつは!」
ここら辺からドラムのBGMが盛り上がって・・・
「姫様!ベルリ少年をG-セルフに突っ込んでやって下さい!」
「それは無理ですよ!無理!」
って、G-アルケインの美少女ロボっぽいアップとオッサンの顔のアップで口論!で、BGMも最初のイメージPVでも使われた盛り上がるテーマ!
で、「コア・ファイターが勝手に動き回っているんです!!!」
身震いするようにコア・ファイターから翼が生えて、飛び出して、G-アルケインの足をすり抜けて、飛んじゃって―――ッ!
で、一気に画面の下から左手の上方にすっぽ抜けるコア・ファイターだが、その向こうに、
天才さんのモンテーロ!
コア・ファイターがすっぽ抜けてるんだが、その動きを受ける感じでモンテーロのビームワイヤーが張っていてエルフ・ブルックと対戦している。いつの間にかモンテーロが上手になってエルフ・ブルックに対して優勢になって見えているのも映像のマジック。
エルフ・ブルックとモンテーロの間をすっぽ抜けたコア・ファイターを目で追うマスク。
で、コア・ファイターは旋回。
この、コの字型の動きと「回転」は1話でも繰り返されたアクションワークだ。
Gのレコンギスタ第1話「謎のモビルスーツ」の絵コンテに見る黄金の長方形 - 玖足手帖-アニメ&創作-
この黄金の回転に沿うようにコア・ファイターが回転できるのか?というのがアクションの一つのテーマ。で、その回転のスケールに成るような黄金長方形の辺とか戦場の枠組みとしてモンテーロとぶつかったり、あるいは回転を邪魔する銃撃をかわしたりする。
「バカめが!中身だけ見せてもどうしようもないだろうが!」というクリムの目線も映像演出のスケールとかガイドに成る。
コア・ファイターがフライスコップと衝突しそうになって旋回するのも「長方形に沿って回転する」という感じのガイド感をだしてる。
で、ベルリが戦場の上空で旋回してくるくる回っていると、モンテーロの頭がエルフ・ブルックにもがれる。
「それはダメでしょ!」「水の玉だ!」投擲!
ジャイロ・ツェペリかよ・・・。黄金の回転による球の投擲!
モンテーロのジャベリンにやられたところから水が入ってきたんだと思うが、スゴイ圧縮された水圧にやられてエルフ・ブルックが水没。そして、カメラにも水滴がかかったっぽいような演出と、アナログっぽい水の作画がすごい!
また、映像の原則的にも、ベルリが「上を取った」って言うのがBGMも相まってすごく格好良く見える。
で、BGMと対空砲が盛り上がる中、G-セルフを押し出してくれる。
頭を取られても「行け!」と言うクリムもベルリを押し出している感じ。だが、対空攻撃をやっている中をすり抜けろって言うの???と言うわけで、また一回すっぽ抜ける。
盛り上げBGMも終わる。あれ?失敗?と思わせておいて、もう一回転して戻ってきて、BGMなしの状態でオートでドッキング!
成功するっぽい勇ましいBGMが鳴りやんでいるので失敗したか?と思わせておいて、逆に無音でコアファイターが落ちる感じで絶叫マシーンのようにG-セルフとドッキングすることで予定調和ではないドキドキハラハラ感が生まれる!ガンダムではお約束になっているコアファイタードッキングだが、お約束に乗っからずに丁寧にスリルを演出するのが上手い。
また、ここでベルリが自分でドッキングせずに半ばオートドッキングプログラムのなすがままに成っているのもベルリの伸びしろと、G-セルフの不気味なブラックボックスを感じさせる。
で、再びカッコいいBGMが成ってガンダムが立つ!
すごいかっこいい!で、やってやるぜ!!!って思うと、すごい顔でハッパさんがいる…。
で、初見ではハッパさんが潰されるかな?って思ったけど、ハッパさんはお腹の側にいたから大丈夫だったっぽい。
で、腹部のハッチが閉じるのに合わせて、コア・ファイターとコックピット内壁の隙間に潜り込んだっぽい。神業かよ。3話では4人乗ってたから微妙な広さがあるっぽい。
これはまだ5話のベルリが一方的に神ガンダムで無敵っぽく発進するのにブレーキをかける効果もあるし、ミノフスキー粒子散布下で無線が使えないというのが前回のテーマだったので、逆に「同乗したおっさんがいろいろ隣で解説してくる」というミノフスキー粒子の通信妨害を逆手に取った印象です。また、アニメにおいて「武器の説明をしてくる人」って言うキャラは割とパターン化しているんだが、その説明シーンを単なる意味の薄い説明ではなく、それ自体を「面白シーン」としてサービスする演出の心意気が良い。
で、対戦!
直上からモンテーロを振り切ってG-セルフを狙うマスク!
苛烈なビーム!
が、
ビームサーベルを網にして防ぐ!直線のビームにはもっと強力な「回転」ビームをぶつける!
「回転」!
で、
「守るだけでは勝てないから!」
「キャピタル・アーミィがそんなものつかっちゃいけないんですよ!」
と、回転するビームサーベルの伸びる斬撃!!!
(ついでにベルリを映すカメラも回転している)(ここぞという所でアブノーマルカラーのBGでカメラをPANで回転させるのはVガンダムなどの富野作品でもよく使われた手法)
しかし、ここでベルリが言ってることも微妙に矛盾してて、ベルリは専守防衛のキャピタルガードの志を持っていてキャピタルアーミィの軍拡に反対しているのに、自分は「守るだけでは勝てないから!」と武器を振るってしまう。
ここではBGMも相まって格好良く勝ったように見えるが、紙一重っぽさはある。
ハッパが潰されなかったのも、マスクのコックピットにジャベリンが当たらなかったのも、モンテーロの頭がもがれてもクリムが生きていたのも、G-セルフがドッキングできたのも、わりと偶々できちゃった紙一重の偶然って感じだ。戦場での生き死には運任せ、と言うのが富野アニメのドライな所でもある。(まあ、その運を演出するのは劇作家の都合なんだけどさ)
今回は運よくベルリは達成感を味わえたけど、果たして次回は???
腰の羽根で飛べるG-アルケインのアイーダが落ちそうなG-セルフのベルリに接触回線で「増援も来てくれています!頑張ってください!」
って言ってからハッパが「あっアルケインも来てくれている!」と叫ぶのは、彼が近眼だからなのか。というか、アイーダの接触回線での音声はベルリにだけ聞こえて、ガラス越しのハッパはベルリとアイーダの会話は聞こえてない、聞こえていないがベルリがアルケインに気づかないとハッパがヤバいのでベルリに向かって一方的に声を張り上げてる、と言うサインの演出だろう。
ミノフスキー粒子を利用して、「誰と誰の会話がつながるのか?」「ガラス一枚、壁一枚でも人は繋がれなくなる」「繋がれなくても大声を張り上げるしかない」という情報化社会やネット文化の現代に意識的で批評的な演出かもしれない。
クラウズ論壇アニメ?
ガンダムのニュータイプも通信論の側面はあるしなあ。
- 戦闘終了
そう言うわけで、映像の原則の枠組みと、その中での回転運動とカメラワークで戦闘画面の面白さを演出していたんだなあ…。と、わかる。
STEEL BALL RUN スティール・ボール・ラン 24 (ジャンプコミックス)
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面白いアニメを見るのも面白いけど、面白いアニメがなんで面白いのか、どこが面白かったのか反芻するのも面白いな…。
アイーダさんの涙はメカ戦闘を語る本稿では延べない。
とりあえず、船は弾道飛行に移行する。
宇宙艦隊も弾道飛行軌道にいるらしいが?宇宙に飛んだ先に何があるのか???
(ちなみに、G-セルフの中で眼鏡を紛失したようなハッパ中尉は、モンテーロの頭を付けるところで眼鏡をかけていて、その後にG-セルフに宇宙用バックパックを付けるところで眼鏡を再発見したような動きをしている。作画ミスなのか?)
その他のメカニック的見どころ。
- 空気と水の玉と成形ラバー
Gレコの先行上映で販売された第1話の絵コンテによると、空気と水の玉と成形ラバーはリギルドセンチュリーにおける大発明らしい。宇宙世紀の技術を発展させてはいけないというリギルドセンチュリーのタブーがあるが、これは過去の宇宙世紀ガンダムにはなかった発明だ。あきまん氏のtweetによると、「空気と水の玉には大量の空気と水が圧縮されていて、これがなければ宇宙では暮らせない」という富野監督のアイディアがあるらしい。なので、キャピタルタワーが千年前に創立(あるいは宇宙世紀の終盤の名残から再建)されたころにできた発明が空気と水の玉と成型ラバーらしい。
なので、金魚のチュチュミィも酸欠にならない。(エサ用の栄養も溶解している?)
また、大量の水が圧縮されている割に片手で持てるくらい重くないらしい。ミノフスキー物理学だと分子間の圧縮はやってやれないことはなさそうだけど、重量と言うより観測質量をごかましているとか…。こんな小さなバレーボール大の分かりやすいボールなのに、ものすごい超技術を感じる。
ちなみに、私はかつて京都大学基礎物理学研究所で働いていたこともあるのでちょっと調べてたんですが。実は物体の質量って言うのは絶対に一定ではない。
2年くらい前のヒッグス粒子ブームの時に調べた人も多いかもしれませんが、質量と言うのは固定された値ではなく、「ヒッグス場における動きにくさ」らしい。(僕もそんなに真面目に物理学は履修してないし数式を読むのが下手なダメ学生だったので、真面目な議論はできないが)なので、水の玉はミノフスキー粒子格子場を使ってヒッグス場に干渉しているのかもしれない。
が、ミノフスキー粒子を散布したりミノフスキー核融合炉がない静的な感じで普通の水槽のように扱われているのを見ると、機械的な動きが無く安定したシステムのように見える。球の内側にミノフスキー場を定常状態に展開しているのかもしれない。
また、エネルギー (E) = 質量 (m) × 光速度 (c) の 2 乗というアインシュタインの有名な方程式を知っている人は多いと思うが、質量は素粒子物理学の世界では絶対に決まっているものではない。
wikiにも載っているけど
クォークの質量
カレントクォーク1個の質量は、例えばアップクォーク (u) は電子の10倍、ダウンクォーク (d) は20倍程度だが、これらが集まると質量は普通とは違った結果になる。例えば、
uudの組み合わせは陽子を構成するが、質量は10+10+20=40とはならず電子の1836倍程度
uddでは中性子だが、10+20+20=50とはならず1839倍程度
となる。これは強い相互作用の結合エネルギーによるものである。
クォーク - Wikipedia
なので、水分子を形成する水素原子2個(陽子と電子2個ずつ)と酸素原子を結合させずクォークの状態で安定させる場を作れば、理論上は水を1/1800の重さにすることは可能。まあ、そういう場は原子がプラズマよりもさらに細かく分かれた状態なので超高エネルギーか超希薄状態だと思うのだが、そこはミノフスキー物理学というファンタジーを使ってるんだろう。中で金魚を飼育できるくらい安定している!
ていうか、3リットルくらいの水の玉が解放されたら明らかに1836倍=約6000リットル=6トン=6立方メートルよりも大量の水が出ているので、とにかくスゴイ技術なんです!
(ていうか、クオーク状態で保存されていたのが破裂したら水が噴き出るくらいでは済まない被害が出そう)
まあ、ニュートン力学レベルでの質量保存の法則はあるけど、量子力学的な作用を使えば軽くすることもできなくなくはないということ。
同時に、それくらいの超技術を使って大量の水を軽く運搬できないと宇宙交通技術なんかできないって、富野監督は宇宙エレベーター学会を遠回しに批判している風刺でもある。
あと、富野監督はONEPEACEとかを読んでいた時に語っていたけど「GレコはSFじゃなくてファンタジーなんです!」と言っていたので。理屈は深く追求する必要はない。富野監督もリアルロボットアニメと言う呪縛から解放されて吹っ切れて摩訶不思議アドベンチャーを書くようになったっぽい。
でも、その摩訶不思議な技術が魔法とか奇蹟じゃなくて生活に密着したインフラになってると描くのがガンダムらしさと言えば、ガンダムらしさ。ドラゴンボールのポイポイカプセルぽくもある。
「年代物だから使えるか試していたんだ」ってアダム・スミスが言っていたので、水の玉の維持に電力が必要と言うわけでもなく、保存も効くようだ。すごいな・・・。
で、ナット1クール分の水の玉は割と貴重ですごいって描いておいて、戦いを止めさせるために爆弾の代わりに水の玉を非殺傷兵器として使うベルリ・ゼナムの機転と価値観と言うのも描いていて、ナイスな演出です。
で、毎回のOPのG-セルフのドッキングシーンでも描かれている「成形ラバーの上から離床するコア・ファイター」だが。
成形ラバーも大発明らしい。単なるマットに見えるが。1話で海賊のアイーダが乗ってきたG-セルフのコックピットに密着して宇宙空間での気密を保持したのが成形ラバー。
富野監督の1話の絵コンテによると「相手方の型に合わせて密着させることのできるものです」とのこと。
とにかくそう言う凄い素材が無いと宇宙開発なんかできないんだぞ!という富野監督の宇宙技術への知見が見える。Gレコでは「ユニバーサルスタンダード」が強調されているので、ソユーズとスペースシャトルのランデブーに感動した世代としては、そういう国際基準の宇宙開発はすごいと思う。が、同時に規格外の物でも強引にドッキングする「成形ラバー」というものをわざわざ出すという所で、富野監督の宇宙技術への態度が感じられますね。
また、このシーンですごいのは、成形ラバーの上でコア・ファイターがブースターを噴射している所。
成形ラバーの耐熱性がすごいのか?それとも噴射剤が水の玉を使っている水だから熱くないのか?
富野監督曰く、Gのレコンギスタの世界では光子を圧縮した謎技術のフォトンバッテリーが主要な動力源で、原子力技術は使われていないらしい。
なので、熱核融合炉なしでミノフスキー粒子を運用するファンタジックな技術が出来ているらしいのだが、燃焼や高熱気体の噴射と言うジェットやロケットではなく、ミノフスキー物理学のIフィールドだかミノフスキーマグネットレイフィールドで水を飛ばしてその反発力で推進しているのか?
飛行機のジェットが熱くなくても構わないというのは論理としてはそうだけど、こういう風に絵として見せられると面白いなあ。ていうか、この距離で高熱を噴射するとハッパさんは死ぬし。
機動戦士ガンダム00のティエレンの宇宙推進剤が水って言うのもかなりSF的に面白かったけど、Gレコはさらに「水も光も圧縮している」って謎技術をさりげなく繰り出していて面白い。
また、富野監督が対談した野口宇宙飛行士によると、宇宙では空冷放熱ができないので、関節の摩擦熱が部品にたまって破損することがあるそうだ。なので、「熱くない噴射剤」とかを出してきたのかなあ…?
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- パイロットスーツ
トイレもできるパイロットスーツにダメ押しでチンポジの調整も入れて、うんこネタやちんちんネタは子供が大好きなので、お子たちに受けそうですね!
だけど、「ラライヤはトワサンガから来たんだ」「ラライヤはこういう姿に驚いたりしていないじゃないか」と言ってラライヤの正体の伏線も張っているし、そう言うことを洞察し推理する主人公だ、と頭の良さをアピールしている。
宇宙服なのに妙にかわいいうさぎのマークはノレドの手造り刺繍かと思ったら、そんなことはなく、アネッテ・ソラという裁縫係のお姉さんがつけてくれたようだ。
まさか、クロスアンジュみたいに「死んだ奴が遺したパイロットスーツ」というネタは仕込んでないと思うが…。
- キャピタル・アーミィのエルフ・ブルックの飛行
クラウンがアーミィカラーに塗られ、エルフ・ブルックがキャピタル・アーミィの基地(というかテント?)に運搬されてお披露目してから出撃
この、エルフ・ブルックのコックピットが開く時に円形のパーツがくるくるくるっとロックを解除するのがとてもメカニカルでかっこいい。
エルフ・ブルックとカットシーの編隊が上空をパスした後に地上に風が吹くのも物理学描写が丁寧。(ソニックブームほどではなさそうだけど)
- G-アルケイン
クワトロ大尉からの伝統で、対艦ライフルは撫でるだけ。
Gの姉は挿入補助ができる。
顔は小顔でかわいい。
頭部だけでも飛行機っぽいんだけど、角がティアラっぽくて後ろの羽根が髪の毛っぽいのでかわいい。Gセルフも喋るが、G-アルケインも「オジ様―」とか言うんだろうか。(それはモビルスーツではなくオービタルフレーム)
- アメリア軍のヘカテー
今回、アメリア軍からの補給物資を海賊部隊のメガファウナに届けたミック・ジャックの乗るヘカテー。
思いっきりドム。ミック・ジャックは補給部隊の女性なのでファーストガンダムのマチルダさんっぽいんだが、ドムみたいなのに乗っている。
うーん。
HG 1/144 宇宙用ジャハナム(量産型) (ガンダム Gのレコンギスタ)
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(ヘルメスの薔薇の設計図からコピーしているのか、過去のデータ遺物から試行錯誤して昔のモビルスーツの技術をパッチワークして作っているのか?)
ミック・ジャックは金髪でエルガイムのフル・フラットのような美人だからクリム・ニックの恋人のような女性パイロットかと思っていたけど、年上のお姉さんとして「クリム中尉のお手並み拝見といこうか」と言って高みの見物(もちろん自分の補給艦の守備を優先したんだろうが)をしていたので、恋人じゃなさそう。クリム・ニック君は美形だし育ちもいいし血筋もいい天才なのでもっとモテてもいいと思うんだけど「目がきれい」っていつも言われているのでプレイボーイ過ぎて特定の恋人は持たない主義なのかなーどうだろ。