この物語は、最近インターネットで人気の我が脳内妹、頭令そらの本当の生態を明らかにする暴露本である。
暴露した結果、妹がみんなに嫌われ、そして僕の胸の中に収まるッてぇ寸法だよっ!
Jack IN
2003/04/16
2003/04/17
2003/04/21
2003/04/23
2003/04/25
2003/04/26
Jack OUT
- イの一号室
今日も今日とて、頭令そらは兄のベッドに押しかけて、あまったるい猫なで声で頭をなで、
「おにいちゃん、ほら、春だよー。ねぇー起きて起きてー」
頭令そらの兄、頭令倶雫は植物人間である。たとえ11歳の美少女妹が体をゆすろうとも微動だにせず。
「ねぇー。お兄ちゃん、起きて起きて起きてぇ〜。お兄ちゃんも、もうすぐ21歳だよー。もうちょっとしっかりしなきゃいけないんじゃないっ?だから起きて起きて起きて起きて起きて起きてッ!」
兄の頭を撫でていたそらの指は、いつのまにか髪を引っつかみ、兄の頭部を一秒間に2.3回のペースで平均8センチ間隔の上下動を加えた。ギッギッギッギギギギギシッギシッギシッッ。ベッド内部の寝返り用支柱がきしんだ。ボスッ
「……あーあ。つかれた」
そらが手を離せば、消防官のつけるマスクに似た防毒バイザーで顔と耳を覆った兄の頭がコロンと枕に転がった。そらのてのひらに、兄の髪の毛が7本抜けて、指にからんでいた。
「お兄ちゃん、髪、伸びたね。お外で散髪しよっか?」
- 入院病棟ナースステーション
姫草「おはようございまーす」
看護士長「あら、姫草さん、早いわね」
シフトより3時間早く出勤してきた、ピンク色のナース服の姫草ローラ(ひめくさ ろーら)はゆるふわにカールした肩までの金髪。ハーフらしい。4年前に他県の看護学校を卒業してから、さして有名ともいえない地方都市の総合病院にパートタイムで就職した彼女の、働きぶりは上司の目からも優秀であると言えた。
新人の頃から物覚えの良かった姫草だが、なによりも疲れた顔を見たものがいないといわれるほどの輝かしさを見るのが、患者だけで無く同僚にも魅力であった。なのだが正看護婦にならず、私生活を大事にしたいという割に、金を持った若い入院患者の誘いにも乗らない。何かの合い間に問うた所、実家は代々診療所をやっており、そちらの手伝いをしながら総合病院で勉強をしたいという。近頃珍しいお嬢さんなのだ。
姫草「えっへっへ。そりゃー、元気やる気お仕事大好きっの姫草ローラですからッ。
あ、そうそう、さっき通りがかったんですけど、頭令さんのお兄さんに車イスを、って。そらちゃんが。
ちょっと行ってきますね」
士長「もうすぐ熊井さんが戻って来るから、手伝ってもらって」
全く原因不明の昏睡状態にあり、各種計測機器と生命維持装置につながれた植物人間を電動車椅子に接続しなおすのは、多少の力を要する。書類を整理しながら看護士長はそう提案した。が、
姫草「宍戸さんがいるんで、大丈夫でーす」
士長「…あの人でもそれくらいはいいかしら」
パソコンの備品管理に手早く入力し、早速車イスを取りに行く姫草を見送りながら、士長は自分の考えが差別的かな?と感じたが、頭令兄妹の面倒を見ている壮年男性、宍戸隷司(ししどれいじ)にも若干の知的障害があるという事は、彼等を見ている人には当たり前の事だ。
そのような男を雇い、兄妹を引き取った頭令礼一郎という老人は金もあるが、慈善家なのだろうな、と病院の職員は話し合っていた。いや、その割には5年以上も顔を見せていないのは金持ちの酔狂でしかないのかもしれない、という声もある。しかし入院費用がきちんきちんと振り込まれている限りは問題にはならない。
- 病院と駐車場の間にある、並木
そら「髪の毛もさっぱりしたし、気持ちイイねー」
遊歩道脇の芝生に車椅子を固定し、散髪を終えた、そら。文房具屋で200円程度で売ってるはさみでの素人散髪だが、4年位もやっているので、最近は兄の頭皮と耳がなます切りになることはなくなっている。
そら「あたしもちょっと切ろうかな」
おもむろに自らの前髪を左手で束ね、握りこぶしから飛び出しただけ、ジャッキリと切り落とすそら。風に髪が舞って散った。それ以外の髪は腰に届くまでに伸ばしっぱなしのそらは、ただ前髪を分ける事が面倒というだけで全く頓着をしない。今日もねずみ色をした男物のスーツの袖をグルグルとまくって、同じく成人男性用のスーツの裾を乱暴に切り落とした物を、ワイシャツにガムテープで取り付けてあるという異様な風体をしていた。
毎日、学校にも行かず、病院に入り浸る、かわいそうな植物人間の兄を持つ、頭のかわいそうな美少女を、周囲は生暖かく見守っていた。
そら「風もあったかくなってきたね。もう春だねー」
そら「ああ、桜も咲いてるわ。お兄ちゃん。きれいねえ〜。
♪
さーくーらー さーくーらー のーやーまーもー さーとーもー みーわーたーすー かーぎーりー かーすーみーかー くーもーかー あーさーひーにー にーおーうー さーくーらー さーくーらー はーなーざーかーりー
♪
さーくーらー さーくーらー やーよーいーのー そーらーはー みーわーたーすー かーぎーりー かーすーみーかー くーもーかー にーおーいーぞー いーずーるー いーざーやー いーざーやー みーにーゆーかーんー」
陽気の気持ちよさに、車椅子の後から兄に聞かせるように、歌いだしたそら。歌う気持ちよさに、目と口を大きく開いて、全身で歌う事だけとなる。その声は病院の敷地の空気を、放射状に貫通した。
気持ちよく歌うそらの声、その純真無垢な歌声は、そら自身の快楽に満たされているので、聞いた者にも快感を伝える。そう、まるで絶頂を迎える寸前の陰茎の震えが膣の奥の子宮口を叩くように、そらの声は、聞く者の外耳道をなぞりあげ、鼓膜を舐めまわす。そらの声には、そのような媚態が込められている。
証拠に、散歩をしていた入院患者、感冒で外来に来たものが4,5人、無意識に足を止め頬を高揚させてそらの歌いを凝視していたし、発作的に響くそらの歌に慣れている職員達でさえ仕事の間に聞こえてきた声を、幸運と受け取った。もちろん、それは肉体の細胞の発する始原的な喜びで、大脳新皮質理性においては皆、頭令そらは変な美少女であると認識していたが。
レイ「そら様。先ほど咲いているとおっしゃった植物は桃です」
淡々と歌い終わったそらを訂正する、レイ。地球人に対しては宍戸隷司と名乗り、背が高く白い髪と口ひげを持つ60代ほどの男に擬態しているが、宇宙人である。彼らもまたそらの声を好いてはいたが、微小かつ別宇宙の素幽子の本体が物質に寄生している群体生物である、彼ら個人の表情を伺う事は出来ない。そして真っ黒い帽子とコート、サングラスを着用した彼(彼ら)もまた、付き従う主である頭令兄妹と同じく無害だが異様な名物だ、と周囲の人間には認識されていた。
そら「あんたって、ホンットーーにバカよねっ!なんにも分かってないッ」
レイ「いえ、DNA分析を致しました所、当該植物は99.9999999%の確率でバラ科モモ属モモであるという報告が上がっております」
そら「あー、わかったわよ。つまりあんた次は、モモの歌が聞きたいって、そーいう訳ね?」
地球人の常識を持たないが、地球の情報収集に長け、くどいレイの説明を、そらが全て聞くことはほとんどない。知ったことではない。
レイ「そのようなご意見を差し上げた記録はございません」
そら「でーわーリクエストにお答えしてー
♪ もーっもたろっさん ももたろっさん おーっこしにー つーけたーっ きーびだーんごーっ♪」
中川「はっはっはっは。そらちゃんの歌はいつも元気だねえ」
そら「あ、中川先生。こんにちわ」
まるっきり頭の悪いそらの歌を誉めたのは脳神経外科に勤務している中川医師であった。兄が脳神経外科に入院しているとは言え、原因不明であるので中川医師のできることはない。それでも長期昏睡患者のデータは貴重であるし、また彼の息子よりも年下のそらに対しても興味と好意を持っていた。
中川「今日はお兄さんを散歩させてあげていた?毎日えらいねえ。」
そら「うん。散髪もしたんだよ。あたしも切ったよ」
中川「そうかー。そらちゃんはなんでもがんばる子だ。ごほうびにお昼ごはんをごちそうしてあげよう」
そら「あっ!もうお昼?あららら。ごめんなさいっ。あたし、用事があるんだった!
レイ、お兄ちゃんを押してッ。戻らなくっちゃあ」
レイ「了解し、実行します。グダ様をベッドに再接続します」
そら「それじゃ、先生、さようならっ」
中川「いやあ、振られてしまった」
医師はバタバタとかけて行くそらを見送った。そらは言葉も明瞭、表情もゆたか、だが、振る舞いは異常で何かが違う。生存には不自由なさそうだが、一般常識を欠いた保護者の元で昏睡状態の兄を見舞うだけの生活をしている美少女。一時期は施設に入っていたらしいが、普通の学校に馴染めないから生活は黙認するようにと、病院関係者は養父の礼一郎氏から献金と共に言われている。
それでも、堂々と社会から孤立している頭令そらを当たり前に思いすぎていないか、と、中川医師は感じた。
次回予告
昨日、そらは恐ろしい悪夢を見た。
見知らぬDr.千葉と名乗る者に殺される夢を。
そして今日、そらはDr.千葉に出会ってしまう。
果たして、そらの悪夢は
現実と化してしまうのか!?
そしてそらの友人である影の薄いローラは、
一体どうするつもりなのか!
次回「そら、毒牙にかかる!?」
http://kairuna.hp.infoseek.co.jp/Ikinari.html
(こちらをやや改変しました)
幻視小説「夢兄妹寝物語」全目次 - 玖足手帖-アニメ&創作-
小説版「夢兄妹寝物語」 2003年3月 第3話 [反社会性ブラコン] - 玖足手帖-アニメ&創作-
創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年5月 第5話 [ナース演じ得る 姫草ローラ 地獄] - 玖足手帖-アニメ&創作-
今回の出演は
- 頭令そら(ZURYOU Sora)(instruction Nothing space)(11歳)
知的障害妹。属性魔法は虚夢。
すげえ声がでかい。
- 姫草ローラ(HIMEKUSA Ro-ra)(18歳)
魔法のナース。属性魔法はアダルトタッチ。
- 頭令倶雫(ZURYOU Guda)(instruction Nomean group)(20歳)
植物兄。属性魔法は昏迷。
- レイ(0)(平均客観個体年齢、12歳。平均主観情報年齢、数百億歳)
宇宙人。ゼロの使い魔。人形に寄生。属性魔法は幽闇。
-
- 頭令礼一郎(ZURYOU Reiichirou)(0.1)
偽造の戸籍上の養父。皮膚と骨格を変形させている。
-
- 宍戸隷侍(SISIDO Reiji)(0.2)
保護奴隷。顔は死体の皮。
- イの1号室(1)
宇宙人。1の使い魔。病室に寄生。
- 看護士長(40代)
女性。姫草の上司。
- 中川医師(Dr.NAKAGAWA)(40代)
脳外科勤務医。
- あと病院にいる人
でした。(森本レオ)
あとがき
オレは変態かなあ。これを書くのに、いろいろと酷い事になってるのはもう変態だなあ。
ところで、小説家になって負け組人生を一発逆転、なんてことは考えてません。
むしろ、自ら人生を粉砕する勢いですね!わっはー!
書きたいから書く、というよりは、なぜか書く事になったので書く。
っていうか、晴明神社の80歳超えの陰陽師にも「グダちんの小説は売れないし、グダちんは社会に出れないし、自殺もできないよ。グダちんは出家するよ」
って言われた。wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
悪霊退散・悪霊退散
超常現象、困ったときは
ドーマンセーマン・ドーマンセーマン
祓って貰おう陰陽師 レッツゴー!
悪霊退散・悪霊退散
呪い呪われ、困ったときは
ドーマンセーマン・ドーマンセーマン
相談しましょう陰陽師 レッツゴー!
やっぱり頼れる陰陽師 レッツゴー!
みんなのヒーロー陰陽師 !!!!!!!!!!!!!!!!!!
っていうか、おれ、脳内妹が大学を出て、女医になって開業したら、出家して、妹に養ってもらって、妹の病院の隣で寺をやる予定です!!!!!!
宗派は仏教系宗教法人大富野教新興宗教オレ宗!開祖、オレ!ご本尊、妹!法名は玖足!
さすが、陰陽師!お見通しですネッ!!!!!
中二病をこじらせると死ぬこともある。
乙女の感想♡
妹「ほんと、お兄ちゃんは変態だねえ〜〜。でも、お兄ちゃんは今まで色んなものから逃げてきました。私からも逃げたら、もうお兄ちゃんはどうしようもないので、私を逃げるな!って言いたい」