玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年8月 第8話 第8節

サブタイトル[禁断のロリコンオーディション] 
前書き:ハリウッド脱出アクション編

  • 地下通路

社「宍戸隷司さん、メイドさん達も老人と女性にしては、なかなかの健脚ですね。おどろきです」
 頭令そらを抱えたレイを先頭に連れ込まれた時の通路を逆行し、オリンピック選手なみのスピードで駆け抜けている一行だが、社亜砂が付いて来ているために宇宙人的ワープが使えない。この男の仮面がデータを記録するものであるのならなおさらだ。
そら「あんたこそ異常なのよ!」
社「私は体育も教える家庭教師だからな」
そら「レイ、こいつの意識とか記憶とか、仮面の中のデータも吹っ飛ばしちゃえば?脳みそも物質でしょ
レイ「昨月使った催眠は行動にきっかけを与えるもので、比較的単純です。しかし記憶の消去は脳内物質の操作だけでなく、人間の幽子領域にも干渉する複雑なものです。また、このように移動中では標的が定まらず、非常に困難な条件となります。目的の物質以外を破壊した場合、社亜砂の脳に重大な後遺症を残します。我々は地球人を傷つける事ができません
そら「めんどくさいわねーっ!社!あんた、どっか行きなさいよ!でないと、私があんたの足を折る!」
社「物騒なことをいうものではない。それより、遠回りをしているようだが」
そら「来た道を戻ってるだけよ」
 そらは地下演芸ホールに呼ばれた時、小松に指示された道を通った。
ドッパパパパンッ!
タイガー「せやから先回りもできるんやな」
 突然開いた、通路わきの一室の扉から、タイガーが拳銃を連発してから言った。
 弾はレイの膝に当たり、メイドたちの胸を貫き、社の仮面に火花を散らして彼らを転倒させた。そらも転がって鞄を投げ出し、中の衣装と野球ボールゴーストとバスケットボールゴーストが転がり出た。
タイガー「ほら、そらちゃん、こっちに来」
 そらは爆弾の入ったカバンを無くしたと、余裕に思ったタイガーはそらの手を取ろうとするが、その時
ミミコ「あっ!うちどころがよかったです!!」
 胸に穴を開けて血を出す代わりにちょっと空気をもらしながら立ち上がるメイドたち。
そら「お前たちは合気道の達人だったな!」
ミニコ「そういえばそうでした」
 そらの機転で合気道を覚えていた事になったメイドたちは瞬時に合気道をセブンセンサーで検索し、マスターした。
 銃を構えたタイガーの手を取り、そのまま返して転がし、タイガーの背中に腰かけ、肩を決め、首を膝で抑えるダッチワイフのメイドのミイコ。タイガーの両足を、拳銃を奪ったミニコとミミコも抑え込む。
ミニコ「合気道なら傷つけずに拘束できますね」
ミイコ「そら様、これからどうしましょう」
そら「ちょっとまって、鞄にボールペンが入ってたから抑えててね」
タイガー「ちょっとー!目ですか?目ですかあああああ!」
 そらが転がった鞄を拾いに行くと、ちょうど3メートルくらい先の曲がり角にある扉が開き、そらといきなり相対したスネークが突撃してきた。
スネーク「そらちゃーん!つかまえるーっ!」
そら「ゲッ!デブ!」
スネーク「グゲッ!」
 だが、社がそらの頭上を飛び越え、かかと蹴りでスネークを昏倒させたときには、レイがそらをもう一度抱きかかえていた。
そら「あんた、撃たれてたじゃん。死になさいよ」
社「この仮面で弾が跳ねなければ即死だった」
 しかし、それは5番目に撃たれた社が弾道を読み、意図的にやったことである。
レイ「私もかすり傷で済みました」
 社はレイの膝(の手前のバリア)で拳銃弾が跳ねて壁にめり込んだ事に気づいていたが、口には出さない。
社「宍戸さん、頭令君が来た道を戻るのは危険に思えます」
レイ「そうかもしれません」
社「私が調べておいた非常階段があります。あなたもこちらに連れてこられるときに見たかもしれませんが」
 と、これは社の誘導会話。
レイ「たしかに、そちらを使った方が安全ですし、地上までの距離も近いです」
そら「あんた、知ってて黙ってたの?」
 レイたち宇宙人はセブンセンサーで地球上のすべての情報にアクセスできるのだから、この地下演芸ホールの構造も当然熟知していた。
レイ「それは、そら様に来た道を戻るように命令されたので、実行中でした」
そら「マニュアルバカ!」
レイ「すみません。そら様。しかし、社さん。それならエレベーターの方がいいのではないでしょうか?」
社「いや、エレベーターはおそらく小松の手下がもう抑えているでしょう」
タイガー「へっへっへ。そうや。ワシらだけがいると思ったら大間違いやで」
そら「あ、そうだ。ボールペンでおまえの目と声帯を突くんだった」
タイガー「やめてやめて!」
 
 
 と、一行が足を止めている通路を塞ぐように、若い男たちが入ってきた。ほぼ全員が髪を染めてピアスをし、正社員の就職活動にふさわしくない格好をしたヤンチャ坊主たちだ。前に10人、後ろに15人。
ヤンチャ君「あれー、タイガーさん。つかまってんじゃないっすかー」
ヤンチャ君「俺ら、上で待ってたンすけどー。小松さんに降りて来いって言われてきたんすわー」
そら「エレベーターは抑えられてるって、こういうこと」
ヤンチャ君「タイガーさんが失敗したから呼ばれたんすね。マジ受けるwww」
 手に持った金属バットを床で叩いたり、ナイフをじゃらじゃら揺らしながら笑う。
ヤンチャ君「メイドさんにつかまるとか、マジ弱過ぎwww」
タイガー「うっさい!ヤンキー!さっさとガキを捕まえんかい!」
ヤンチャ君「あぁ゛?チャイナがでかい口叩いてんじゃねえぞゴラァ!」
 グボッキ! 
 タイガーと内輪もめを始めた長髪の青年は、す、と近づいた社の左腕の尺骨の端のハンマーに顎を外され昏倒した。
ヤンチャ君「オウブェ」
ヤンチャ君「げぼぁ」
 次の者の肋骨の左右合わせ目と内臓の間に革靴の先を打ち込んだ社は
社「フッ!すぅ、ヒュッ!」
 というように規則正しく呼吸しながら次々雇われチーマーを寝かし始めた。不良たちが数に任せて襲いかかる乱闘は、彼らの迷彩柄を多用したストリートファッションと、無駄のない一撃を続ける社の赤いスーツが、風にそよぐ一輪の薔薇の様なコントラストとなっていた。
社「宍戸さん!後ろは任せた!」
レイ「がんばります!」
 長身に合わせた大きめの燕尾服を脱いだレイはヤンキーの集団に猪突すると、古武術に見せかけた超重力フィールドで3人のヤンキーを燕尾服に押しこんで袖で縛った。その作業の間に他のヤンキー達に、レイは容赦なく金属バットや鉄パイプで幾度も殴られたが、宇宙人なので意に介さない。
レイ「あまり動かないでください!怪我をさせたくないのです!」
ヤンチャ君「なんだこいつもキメエ!」
ヤンチャ君「おれはせっかくだからスク水を選ぶぜ!」
 乱闘の標的がそらに向いたようだ。
 
 
そら「めんどくせえええええええ!ビー玉ゴースト!ピンポン球ゴースト!バレーボールゴースト!とりあえず爆発して停電させなさい!」
 乱闘を待っているせいで3分くらい壁にもたれかかり、飽きてしまっていたそらはゴーストに破壊工作を命令した。
ドガアアアアアアアアン!
 そらが来た道の隅、換気口の隙間などに残してきた残り3つのゴーストボールたちは電力ケーブルの集まる場所に瞬間移動し、斥力フィールドを急展開して粉砕した。
 そのあおりでワイヤーを切断されたエレベーターが落下し、待ち伏せしようと乗っていた別のチームのチーマーたちもろともにペッチャンコになった。ちょうどトマトミートソースの缶詰を叩き潰したような塩梅である。
 そら達がいる通路の電灯も切れ、真っ暗闇になるがどこからか流れてきた粉塵がヤンチャ君たちの目にしみる。
バレーボールゴースト「これは不幸な事故です」
ピンポンゴースト「想定外でした」
ビー玉ゴースト「人間たちの側の設計ミスです」
 自分に言い訳をする宇宙人たち。
 
 
レイ「そら様、エレベーターは使えなくなりました。非常階段を使う事に決定いたしました」
 レイが暗中でそらを抱きかかえ直しながら告げる。
そら「よし、じゃあ、そこから帰りましょ」
 闇を幸いと、レイはそらを抱えてヤンキーたちの頭上を飛び越え、メイドたちもタイガーを放し、後に続いて飛んだ。
 
 
ヤンチャ君「くっそ!なんだよごらぁ!」
タイガー「ゲホッごほっ。また爆弾使いよったんか」
ヤンチャ君「なんだ爆弾って!聞いてねえよ!ガキをいたぶるだけの仕事だって聞いてきたのによぉ」
ヤンチャ君「ケータイ!ケータイで明かりつけろって」
 光った待ち受け画面は伸びた社の左手に取り上げられ、次に右ストレートが持ち主の眉間を打ってKOした。その携帯電話はすぐに折りたたまれて社のジャケットの内ポケットに収まり、また闇に包まれる。暗い廊下に、社がチンピラどもの背、腹を殴りつける鈍い音だけが反響する。
社「宍戸さん!A−2の非常階段だ!私も片付けたら匂いをたどって後から行く!」
野球ゴースト「御助力感謝いたします。そこへ向かいます」
 社を観察して残っていた野球ゴーストが宍戸隷司の声を真似て答えたときには、そらを抱えたレイ達一行はすでにA棟に向けて50mは離れていた。