玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年8月 第8話 第9節

サブタイトル[禁断のロリコンオーディション] 
前書き:香港アクション編
  

  • 地下演芸ホール最下層

 その頃、最下層に残っていた小松は万一に備えて少女誘拐のデータを消したり、顧客リストなどの書類をを持てるだけ鞄に詰め込み、監視カメラで逃亡者を追い、今日のために雇って待機させていた数班のチーマーに有線電話で指示を出し、大急がしだった。脂汗がにじみ、肥満体に密着したワイシャツからは乳首が透けていた。
 と、3つのゴーストの斥力爆発で全ての明かりとモニターが消えた。
小松「う、わああああああああ!」
 テレビゲームで失敗した子供の様に叫んだ小松は、それでも大人を取り戻し、逃げだそうとライターの明かりを頼りに地上行きエレベーターに向かった。そこには、潰れたミートソースの缶詰となったエレベーターが落ちていた。
小松「あ」
 小松はテレビゲームのセーブデータが消えた子供のような気持ちになった。
 
 

  • 地下通路

ヤンチャ君「ちくしょう、わけわかんねえよ!」
社「私も貴様たちを殺すつもりはない。歩けない者は仲間に肩を貸してもらえ。B-4出口への階段で逃げるのがいい。左の壁伝いに進めばいけるはずだ」
ヤンチャ君「誰がてめえの言う事に従うかよ!」
 それでも彼らはもはや社に向かって行く気力はなく、社の声とは反対の方向へ散り散りになっていった。
社「私も急がなくてはな」
 
 
ヤンチャ君「おい、あっちに明かりがあんぞ!」
ヤンチャ君「向こうは停電してねえんだ」
ヤンチャ君「よっしゃああっ!」
 散り散りになったチーマーの内、1つのグループが見つけ、そちらへ駆けだした明かりは、地下演芸ホールを資料と共に焼き払うため、小松が放火した炎だった。まさに飛んで火に入る夏の虫。東京ドーム地下演芸ホールは今、季節外れの暖炉になっていた
  
  

  • A-2非常階段前

 暗闇の中を飛行するレイの腕の中のそらはまた退屈していた。
そら「どこまで行くのよ」
レイ「A棟2番目の非常階段から地上に出ます」
そら「もう周りに誰もいないし真っ暗なんだから、さっさとワープホールを使いなさい」
レイ「……。社さんとの待ち合わせはいかがいたしましょう」
そら「バカ!宇宙人!あんな仮面、どうなろうが知ったこっちゃないわよ。律義に約束まもる
理由なんてないでしょ?だからあんたはマニュアル宇宙人なのよ!」

ミイコ「そら様。もう、非常階段前に到着しました」
ミニコ「レイ。この扉を開ければ社との約束は果たされると解釈できる」
レイ「では、非常階段に入った所でワープいたします」
そら「さっさとやんなさい」
ミミコ「了解し、実行します」
 扉を開け、ミミコ、ミニコ、レイとそら、ミイコの順に地下と地上を結ぶ非常階段の長い角柱空間に出た。そこも停電しており、そらには何も見えなかったが、
 バガッバッ!ドォオオオオッ
 と、その暗闇を突然オレンジ色の閃光が塗りつぶした。そら達の2フロア上が爆発し、壁面を四角に囲む螺旋階段の一辺だった金属が落下する。鉄骨がものすごい音を反響させるが、宇宙人たちのバリアが間に合い、そらには熱さもショックもなかった。が、突然の眩しさにレイの胸に顔を押しつけながら、
そら「バカレイ!ワープ!」
レイ「爆発跡の穴から人間が来ます」
そら「見られるってこと?」
 ヒュ!バシュッ!ガァアアアン!
 空気がミミコを中心に突然弾け、ミミコの手にした拳銃が砕ける。
ミミコ「上からライフルで撃たれました。死んだふりをします」
 ライフルで狙撃されたなら、銃弾をバリアで防いでも、無傷でも、宇宙人だとばれてしまう。銃を持っていた右手を失い、胴にこぶし大の穴があき、空気が抜けてしまったミミコがばたりと倒れる。ミイコはそれを負ぶい、ミミコの中の宇宙人たちを自分の中に避難させ始める。
 ポッ…ボウン!
 今度は2フロア下で爆発。上からのグレネードランチャーで退路を断たれた。来た道を戻ろうとするも、上の爆発跡から銃撃を避け、残された4フロア分の階段を跳んで上り下りし、メイドと執事に扮した宇宙人は懐中のそらを守るだけになる。
そら「セブンセンサー!罠に気づいてなかったの?」
レイ「狙撃者の狙撃ライフルと爆発物の戦術的関連性を認識できておりませんでした」
そら「宇!宙!人!!」
レイ「今後の反省といたします」
 宇宙連邦は8つの依り代に分かれた氏族国家の連携で成り立っている。が、それは必ずしも柔軟な対応を実現してはいない。むしろ、地球人との戦闘という初めての事態において、彼らの官僚機構も混乱していた。だが、彼らの連邦は女王として特攻少女頭令そらを戴いているのだ。
そら「野球ゴースト!私がお前を投げるから鉄砲を潰しな!」
野球ゴースト「暴発の危険が有ります。我々は地球人を傷つけられません」
そら「撃たれてるのよ!だったら敵が一人のうちにあたしが殺すわ!」
 そらも初めて受ける銃撃に激怒していた。反響する着弾音と自分を振り回すレイは癇に障る。
ドパッ
 銃撃を避け、そら達が上に上がった時、二発目のグレネードで非常階段に入ってきたフロアとの間の階段が潰された。狙撃手も動き回る標的を追いこむように、移動している。
 
 

  • 非常階段上方

 そらたちを狙撃しているのはタイガーと組んでいる中国人のドラゴンである。彼は地下演芸ホールの数階上の隠し部屋で、下を抑える位置にいた。彼は他の不良たちのように、そらを凌辱したりその家族を殺す仕事には興味が無かった。むしろ、元人民解放軍軍人のドラゴンは、そら達の不穏さを日頃から感じていたから、包囲の上方を固める事に専念した。
ドラゴン(タイガーが一攫千金を狙うと、詰めが甘いからな……)
 その予感が図に当たり、彼はそらが反乱してからは社交界の専属警備員とは別に小松が雇った不良たちをまとめて下に送る指示を出したが、ゴースト3体がライフラインを破壊して停電した時、エレベーターで下に向かおうとした雇われ不良が籠ごと落下して死ぬ音響を聞いた。
 地下で突然爆発が起こり、通信も明かりもなくなれば、ドラゴンは騒ぐだけの不良から離れた。用心深い彼は自前の暗視装備と火器をいつもトランクに持っている。そういう戦いではただの不良など足手まといでしかない。
 標的が地下演芸ホールからエレベーター以外で出るなら、非常階段しかない。何本かの階段のうち、待ち伏せにA-2階段を選んだのは、他の用心棒たちが向かう可能性が一番低いからである。出あうなら良し、出くわさないのなら自分以外の者が何とかするだろう。万全を期すが、入れこまないのがドラゴンのやり方だ。
 そうして、ミミコが非常階段に侵入する音を聴診器で聞いた瞬間に非常階段に面する部屋の壁を爆破し、そこから狙撃を始めた。だが、最初の女以外には紙一重で弾を当てられず、グレネードを二発も使ってしまった。
ドラゴン(女と爺相手にっ)
 ここまで無駄遣いを強いられる相手だとは、とイラついた時、また人間が非常階段に入ってくる。タイガーではない。
ドラゴン(停電前に監視モニターで見た、赤いジャケットの男!)
 
 

  • 非常階段下方

社「頭令!私の反対側に行け!私が撃たれれば、貴様は撃たれない!」
 通路を走りながら銃撃音を既に聞いていた社は、非常階段の空間に入るなり、そう叫んだ。その足元の鉄板を割るライフル弾が火花を飛ばすが、社は横っ跳びでかわしている。
そら「あんた、もう追いついたの?」
 宇宙人に自分を飛ばさせ、ドラゴンを殺そうと決めたそらには、今の社は邪魔な目撃者にしか過ぎない。が、囮となって死んでくれれば楽だろうか?社が入ってきた入り口からそらへの階段はすでに潰されて、通れない。高さ5メートルに隔てられた二人。
そら「私の代わりに死んでくれる?!」
社「そうだ!だから最期に私へ唾を吐いてくれ!」
そら「はぁ?」
 自分を見上げる仮面に突然要求された変態行為に、そらは唇をゆがめた。
社「私はロリコンだ!最期の口づけが叶わぬなら!」
そら「下衆が!」
 ベッ!

 本気の気持ち悪さで、そらは唾を吐いた。ライフル弾に追い抜かれるより一瞬早く落ちたツバキを社は、恵みの雨を迎えるように差しのべた両掌で受け、嚥下した。
 グビリ
 

ブゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!
 
 
 美少女の虫唾を飲み込んだ次の瞬間、社の鼻から大量の血が噴き出した!突如、彼が跳躍した後に弾着するライフル弾で床の鉄板がめくれる。
 が、社は数十メートルの深さの縦坑を飛び越え、5メートルは離れた向こう側の螺旋階段手摺をつかんでバック転の要領で勢いづけ、さらに上に飛ぶ。
 
 
ボゥッツ!
 非常階段の遥か下のフロアーから、小松が焚きつけた炎が噴き出し、非常階段が一気に朱色に染められ、上昇気流が起こったのはその時だった。一気にそら達のいる場所を飛び越す社。
 ドラゴンのライフルのスコープでは、もはや社を追えない。めくら撃ちに連射するが、駆け上がる社の後を追う火花でしかない。草原を疾駆する獣より速く、炎の風を受け飛翔し、ジグザグに手すりを掴み、蹴り、跳び、鮮血をまきちらしながら昇る社はもはや獣と言うより、
  
 
ドラゴン(……!赤い彗星!!)
 ゴシャアッ!
 鼻血をロマンチックに形容した瞬間、ドラゴンは喉仏を蹴り上げられ意識を無くした。
 
 
そら「うわ……」
レイ「今の社は地球人の平均運動能力をはるかに超えています。野生の豹と同じくらいです」 
そら「あいつがあれだけ飛べたんなら、あんたもそこの穴、飛び越えちゃっても宇宙人だってバレないんじゃない?」
レイ「了解し、実行します」