兵庫県立美術館の超・大河原邦男展 レジェンド・オブ・メカデザイン を見てきました。
5月19日で終了。
やはり、目を引いた目当ては実寸大スコープドッグ鉄像であった。前から見たかったが初めて見た。
写真を撮れたし、人との対比も面白く、インスピレーションが沸いた。やはり人間との関係性が感じられる道具や武器としてのロボットの雰囲気が感じられて良かった。人型一人乗り戦車って感じだった。最近は戦車映画をちゃんと見てないからガールズアンドパンツァーと頭の中で比較した。ミリタリーパワーは一応見たけど。
ATは車高が高いから戦車からは的になりそうだった。座席周りの装甲も薄くてすぐに死ぬ最低野郎らしい。(この薄さで宇宙に行くのがすごい)
足裏のターンピックやローラーダッシュは重量に比較したら小さい感じだったのでスピードや機動力も出せるか心配だった。
座席の隣にいきなり腕が生えていて鎖骨も肩甲骨もないからフレームも貧弱だし、モーターが入るスペースも小さくパワーも出なさそう。
だが未来のロボットがそんな間抜けな設計のわけないだろ。ちゃんと計算されてる。ポリマーリンゲル液濃度とか。
未来のロボットだからきっとすごいパワーがあるんだよ!
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また、大河原邦男先生の半生を一気に眺める事ができたのも私の経験として有益だった。画風の変遷がよくわかった。タツノコプロに入社したガッチャマンやゴーダムの頃の設定画から、最近のガンダムエースのイラストやボトムズなどのDVDのパッケージ画、マスコットキャラのデザインまで見れた。
(物品は実寸大スコタコや玩具のみで、大河原ファクトリーで御自身が製作した金属製品がなかったのはやや残念)
画風の変遷で一番印象的だったのは1985年のレイズナーの設定画だった。
なぜかと言うと、この年から明らかにメカから発せられるパワーが減っているからだ。具体的なフォルムの変化としては上腕が華奢になっていて弱そうになっている。
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しかし、1985年を境に大河原邦男の主役メカは細っちょろくなってしまいZ以後のガンダムも貧弱めいたものになってしまった。
これは何でかと、じっくりと原画を鑑賞して分かったのだが、筆致の違いがそのままデザインの違いになっている。
1983年の装甲騎兵ボトムズまでは設定画も鉛筆書きであり、設定画なのに筆運びに強弱があり、筆のように線に濃淡や強弱があった。それでいて線に迷いがなく一本の線が輪郭として長い。
そのため、線の力強さがそのままロボットのフォルムの強さになっている。マッシブなプロポーションとして現れている。
これは大河原邦男氏の最初のロボットデザインがゴワッパー5ゴーダムのガッシリしたシルエットが原形だと見れる。続くダイターン3も大胆な体形だし、タツノコのガッチャマン、ポリマー、タイムボカンシリーズも大味な変形をするプリミティブなものでずんぐりむっくりしたものである。
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機動戦士ガンダムF91は鉛筆ではなくペン原画だ。なので、なおさら硬い印象を受ける。
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また、大河原邦男氏自身のリアルバージョンガンダムのイラストやMSVの模型展開でリアルロボットものが流行し、より線が細かい物が「リアル」だという風潮が広まった。その延長線上で超時空要塞マクロスの河森正治氏や1984年の重戦機エルガイムで永野護氏がデビューして繊細で細かい筆致のメカデザインで一世を風靡した。河森氏や永野護氏やカトキハジメ氏の神経質な面もあるディテールの細かいメカデザインが流行した。
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レイズナー自体も航空機がモチーフだから、戦車の延長のボトムズや宇宙の戦士がモチーフのガンダムより細く薄い。
また、永野護のエルガイムの影響だけでない。元々大河原氏自身が服飾デザイナーだったからかデザインには重みが少ない、薄い。ダイターン3やガッチャマンやポリマーの変形は素材の強度や重みを考慮していないからこそ出来たものだ。(玩具としての立体感は考慮されているが、実体はない)(対して、永野護氏は非常に神経質なデザインをするが、素材の質感にも神経質にこだわっている)
大河原デザインはアニメの二次元デザインとしての重みの少なさを、線とシルエットの強さで補っていたとも見えるが、線が細かくなるとフォルム自体が軽く見える様になってしまった。
実際、ペンタッチの違いが全く変わっている。この違いは印刷物ではよく分からなかったが、原画を目にしてわかった。使っている画材や線の違いがデザインのフォルムにも影響するという発見を得たのは面白い。
で、大河原邦男氏の画風の変化の中でフォルムの太さと線の細かさのバランスや、立体のリアル感が奇跡的に取れていたのがガンダムやボトムズの頃かな、と。
ただ、アニメーションにおいてメカデザイナー大河原邦男はあくまでも設定者にすぎなくて、実際のアニメーションは原画や動画を描く人は別の人だ。
アニメーターは安彦良和先生であったり佐野浩敏さんだったり大張正己さんだったり故・逢坂浩司さんだったり重田敦司さんだったりして、ここら辺の人は必ずしも設定画に忠実な絵を描く人ではない。むしろメカを有機的にアレンジして描いた。
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ただ、ガンプラはどうもアニメのイメージよりも設定画を優先してるみたいでガンダム系がジオン系より細っちょろくなってて気に食わない。(最近のマスターグレードバージョン2は割りとアニメに合わせた設計になっているから多少許せる)
これはアニメ制作と玩具製造の流れの違いも感じられる。
今回の展覧会では設定画だけでなく、それをもとにしたアニメーションのメカの変形シーンやアクションシーンを編集した映像や、玩具が展示されていたので、それらの違いやメカデザインの役割を感じられて良かった。(ガンプラは置いたらキリがないからクローバーのガンダムしか置いてなかった!しかし、ボトムズの玩具は放送当時とは思えない出来の良いフォルムとディテールでちゃんと降着変形してた)
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そして、08やW以降のガンダムは演出傾向も変わったし、アニメーションのガンダムも細く、軽く変わってしまったのだなあ。それでガンダムのファン層も女性主体になってしまったと言えるかもしれない。
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また、線の若さが減ってメカデザインが神経質になっていった時期以降でも、勇者シリーズやグランゾートやアイアンリーガーやGガンダムやマスコットキャラなど子供向けにフォルムのアイディアを出していく仕事には力強さがあった。
そういう事でバランスを取っていたのか。
パワフルな勇者王ガオガイガーも大河原邦男版のアイディアではどこか線が細い。藤田一己さんがクリンナップして、大張っぽくディフォルメしてガオガイガーらしくなってる。
まあ、大河原邦男氏の画は実は絵としてではなくて説明書に近い設定画だ。多少デッサンを歪ませて全体が見えるようにしている。(脇の下が見えたり)
だから、大河原デザインはそのまま絵にしてアニメとして動かすより、コンセプトデザインとして素材として使ってアニメなり立体にするなりするものなんだなあ。と。
ちなみに、設定画ではなくポスターやパッケージのカラーイラストも大河原邦男氏の大きな仕事の一つだ。
これはダイターン3の頃からボトムズ、近年のガンダムエースのイラストまで一貫してほとんどポスターカラーとエアブラシである。
で、不思議な事にこちらは設定画と違って絵柄が変化してない。設定画のペンタッチが鉛筆からシャーペンに変わって固く薄くなったのとは違い、筆による絵はずっと力強いままだ。
同じザクやジムのイラストでも、鉛筆画と違って筆で厚塗りしてある絵はフォルムがずっとガッシリしている。同じ時期のデザイン画とカラーイラストを比べると体形の絵柄が違う。
これはやはり、筆という画材の違いや手癖の違いだろうか。
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- 余談
また、図録のインタビューも非常に充実していた。本人だけでなく村上天皇やバンダイなどの玩具会社の関係者、高橋良輔監督や福田巳津夫監督などアニメーション関係者の個性溢れるインタビューであり、インタビュアーの五十嵐氏の知識の豊富さや話の聞きだし方にも感心した。
音声ナビゲーターの銀河万丈さんはガンダムにもボトムズにも出ているから、コーヒーは苦い
そういう訳で、やはり生原画を見て筆遣いから意図や時代背景を想像するのは楽しい体験だった。
そして、一番神懸かっていた絵はやはりガンダム様の決定稿だった!やはりガンダム様はシンプルイズベスト!
と思ったら安彦先生の絵だった!やっぱり筆遣いが違う!
安彦先生は神!富野ラフも!
というわけで、やっぱり大河原邦男先生の到達点はスコープドッグだなあ。
ギミックとデザインのバランスが一番いい。
あとヤッターワンとマグナムエース。
丸みがあるデザインが好きかなあ。種はちょっと角ばってた。