2クールアニメですので、ほぼ前半のクライマックスです。
なんと、ワンピースが10年もかかっているというのに、たったの10話で、出港してから5話程度で宝島に到着します。
毎回、舞台の状況が変わっていてスピード感があるなあ。
人さらいと戦ったり、敵の海賊と砲撃戦をしたり、反乱があったり裏切りが相次いだり、SFでもないのにいろんなシチュエーションでのバトルが毎回繰り広げられていて毎回ワクワク感があるねえ。
宝島についてからの音楽の壮大さも良いなあ。
第9話 奴隷みなとの人さらい 脚本:篠崎好 絵コンテ:さきまくら
第10話 リンゴ樽の中で聞いた! 脚本:篠崎好 絵コンテ:さきまくら
第11話 宝島で何かが始まる!? 脚本:山崎晴哉 絵コンテ:紺屋行男
第12話 出た!ジャングルの怪物 脚本:山崎晴哉 絵コンテ:今切洗
- とりあえずいつもの
映像の原則的なパワーバランスで言うと、11話のラストでシルバーが大男の海坊主を殺害する所。
上手にいるシルバーに下手から海坊主が体当たりするが、シルバーがよけて上下が入れ替わって、海坊主が上手に逃げていこうとするが、その動きはのろく感じられ、それを上回る圧倒的スピードでシルバーが攻撃して、殺害した所でシルバーが再度上手や画面上部に映って、高笑いする所など、シルバーの圧倒的な脅威が感じられますねー。
シルバーが平気で人を殺す人物だという事実が演出的にも盛り上げられてます。
あと、12話でジムが逃げ惑ったりする所や砲撃線や銃撃戦も、人物の移動と射線が映像の原則でパワーバランスの躍動が感じられて面白いのです。
昔のアニメはたしかに作画密度や映像劇な美麗さは21世紀のアニメには劣るのだが、映像の原則らしい手法を細かく使ってレイアウトの変化で演出してくる手練手管の技術は70年代の方が充実してる印象はある。
ていうか富野と出崎統。
最近はレイアウトのパターンが割と決まってる感じがあるけど、まあ、それでも俺のわからん所で技巧が細分化されてたり高度化してたり新しい技法が生まれたりと言う事はあるので、やっぱり最新アニメも見ますけど。でも、どうやら僕の人生の残り時間は少ないので、新作をたくさん見るよりは見たかった昔のアニメを見ることで後顧の憂いを断ちたい。というわけで宝島だ。
ネタバレ
- 出崎ドリーム
10話の宝島を目前にしたジムが2回宝島に母親を案内する夢を見ている。これ、
また劇場版AIR以降、出崎の頭を渦巻いている
「夢」を使った構造・演出も健在
母を失った時から見続ける夢に
代わりに藤壺が出てくる
これはまさに劇場版クラナドの手法
「見続ける夢」を使った告白
劇AIR以前にこういうギミックを使った事はなかったわけで
AIR・クラナドでの「見続ける夢」というモチーフは
出崎に訴えるものがあったのでしょう
【出崎統】源氏物語千年紀 Genji 1話 春と夢 - まっつねのアニメとか作画とか
まっつねさんが解説した通り、出崎統らしい「夢」というモチーフだ。
1回目はジムと母親だけなんだが、2回目にはシルバーが出てきて、ジムが母にシルバーを紹介するという夢になってる。2回だけですけど、源氏物語千年紀 Genjiや劇場版AIRやCLANNADと同じく「何度も見る夢」を使ってジムのシルバーに対する深い気持ちを表現している。
ジムは実の父親を亡くしてからこの時点で3カ月くらいなのだが、ジョン・シルバーを義理の父親のように感じているという事がこの夢で表現されてる。
出崎統は「夢の中では正直」みたいな描き方をするね。
ビリー・ボーンズ船長という老いた義理の父の死があったり、シルバーと一緒に漁に出たり、人さらいに捕まった所をシルバーに命がけで助けてもらったり、という経験をする事でシルバーを一番の男の中の男だと認定したということだろう。
思春期前期の少年らしい甘えだなー。リブシー医師も教養と頼りがいのある人物でジムと仲が良い紳士なのだが、10話でジムは海賊の反乱疑惑をリブシーさんよりも先にシルバーに相談している。これは物語の構成上の必要なイベントでもあるが、ジムとシルバーの心の結びつきがここで最高に達しているという事を示している。
そのあと、シルバーの本性がバレる所で、上げて落とすというドラマチックさだ。
また、ジムがリンゴ樽の中でシルバーの正体を知る時、半分ジムが夢見心地だったというのも、夢演出だ。夢の中での信頼感が、現実によって夢が侵略されるという感触でもあり、衝撃が心に直接響くようなショッキングさの上手い演出だ。そこに畳みかけるように宝島到着と言う。テンション(緊張感)が高い。
11話はさきまくらコンテではないが、ジムが夢の中でシルバーを脅威に思っているという夢が挿入されている。
あと、3話で死んでいくビリー・ボーンズ船長も夢の中で死んでいったなあ。
宝島 第三話「振りおろされた松葉杖」ビリーと出崎統が死んだ。 - 玖足手帖-アニメ&創作-
出崎統は生涯夢っぽい作品を作っていたなあ。ウルトラヴァイオレット:044も夢だったし。おにいさまへ・・・のサン・ジュストさまのドリームもすごかったなあ。
- 出崎統海
あと、やっぱり出崎は海。
本性がジムにばれる直前、海に沈む夕日をシルバーとジムが見て、シルバーが夕日の美しさと自分の勇気について語るシーンが出崎統ポエムで非常に出崎統。
これはシルバーの強い野心を示しているが、同時に13歳の子供にこういう自分の思想を語っちゃうシルバーの意外な繊細さも匂わせていて美しい。出崎はヤッパ太陽で光る海だよなー。
- シルバーとジムの恋の行方は
中年男性のシルバーと13歳のジムなんだが、まあ、この関係性は完全に恋だよね。
シルバーの強さと知性と美学などにジムが頼りがいを感じて、何度も助けられて、夢の中で義父にしても良いとさえ思うほど深く思っていたのに(ホモじゃなくて義父にしたいというのが、またプラトニックじゃないですか)、
彼の正体を知って深く裏切られた感じになるとか、渚カヲルと碇シンジの関係に近くもある。
シルバーの方もジムにはいろいろと打ち明け話をしていたり、11話で宝島に上陸する時(既にジムはシルバーの素性を知っているので、距離を置いている)に「島の探検なら一緒に行こうぜ」と寂しそうに言ってたりしてる。シルバーもジムを好いているよな。他の海賊にジムへの手出しを禁じてるし。
12話現在、シルバーはジムに裏切りを知られた事に対する心理的なリアクションはしていないんだが、今後どうなるのか、気になる。13話冒頭ではジムとシルバーが戦場で相まみえるんだろうなー。
シルバーは一本足の海賊として、手下の海賊を操ったり殺したり、すごい男なんだが、シルバーの手下の海賊はシルバーを割と簡単に裏切るし、弱肉強食でいつ寝首をかかれるかわからない冷たい人間関係なんだよなー。そんなわけで、強いのに孤独な男性として、シルバーも心を許せる相手としてジムを求めてるんだろうなあ。
12話の孤島の住人が「人と離せなかったのが一番つらかった」って言ってジムと会えた事を喜んでるのも、その伏線なんだろうね。
で、ジムは正直だからシルバーが海賊と知った後は一言も口を聞かないし、表面的に仲良くするそぶりすらない。現在の宝島中盤ではジムとシルバーの関係は冷え切っているのだが、さて、今後どうなるのか・・・。
あと、残り14話もあるのに、もう宝島に到着してしまって、どうなってしまうのか・・・。何が起こるのか・・・。
ガンバの冒険のノロイ島編みたいな?
グレーはモブキャラだったのに、ドクターキリコっぽい感じで急にイケメンに・・・。これもガンバっぽい。出崎だ・・・。
たった数人の同士だけで戦うというのは七人の侍とかでもあるし、原作からでもあるだろうし、名作アクションっぽいよなー。
- 作者: R.L.スティーヴンスン,Robert Louis Stevenson,海保眞夫
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