玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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【地上波未公開】#富野由悠季 ×高橋杉雄 #終戦の日 対談見た



 それはネットにアップされているのだから見てくださいと言うだけなのですが。

  • 野垂れ死にしたくない富野監督

 今まで野垂れ死にしたいと言いながら81歳まで現役演出家として仕事をしていた人が今頃になって野垂れ死にしたくないと言い出したというのもちょっと面白い話。


 まあ、富野監督よりも若くして亡くなった多くのガンダム関係者のことを考えると胸が痛むのだが。


 文化功労者の富野監督が何を以って野垂れ死にと言うのかというのは「自分の主義主張が達成できないからと言っていつの間にか消えていくこと」だそうだ。
 しかし、同時に富野監督は自分の主義主張を押し付けてはいけないとも仰っているし、自分の主義主張を言った瞬間にオールドタイプのジジイとして野垂れ死にすると言っている。主義主張が達成されないからと言って消えるのではなく、達成されなくても世の中で言い続けることが大事と言いたいのかなあ。


  • 先進国から後進国への話

 アフリカの後進国、新興国に対しても「成り上がるために先進国の真似をしても(公害など?)先進国と同じような過ちをするからそれをやめろと言う。
 先進国に対しても先進国でのんべんだらりと暮らしていてはいけないという。(僕はだらけている)


 それについて、哲学とかの難しい話ではなく日常的な言葉遣いで伝えることができるようにすれば人類のインテリジェンスを一段上げることができるという。


 それに対して一番の障壁は「自分の生まれた土地にこだわる」ということ。
 僕も富野監督も根無し草のような引っ越しをしていて、地付きの人とは馴染めないなあと思っているようなところがある。


 しかし、多くの愛国者、郷土愛、宗教などは「自分の生まれた土地の文化だから」ということでそれを親から受け継いで自分のアイデンティティの縛りにする人が多い。


 偉大なるアメリカやロシアを取り戻すとか、ウクライナの国土とか、戦争当事者は大まじめにやっているので一方的に馬鹿にもできないのだが、でも、それは沢山の火薬や燃料を使って殺し合う動機として本当に足りるのだろうか?
 国境もないし天国も地獄もないと言ったジョン・レノンは殺されてしまった。人類の価値観を変えようとする人は殺されることもある。富野監督はいくらマジでやっていても「どうせアニメだから」ということで殺されなかったところはあるし、本人もそう書いたことがある。

  • 空気の話

 対談相手の高橋杉雄さんは防衛省防衛研究所政策研究部防衛政策研究室長である公務員だ。
 グローバル経済で地球がガチで有限ということがわかってしまった。東欧の穀倉地帯であるウクライナで戦争が起きて、ガンダムも戦ったことがあるオデーサの港が使えなくなるとアフリカ諸国で食糧難が起きるし、遠く離れた日本でも食糧の値段が上がる。(まあ、日本の様々な値上げは戦争以外にも色々な要因があって何でも値上がりしているんだけど)
 対するロシアも経済制裁に対抗して天然ガスの供給を絞っているとEUとかが困ったり日本でもガソリンとかが値上がりする。
 「化石燃料やレアメタルが枯渇する」っていう物理的にわかりやすい「有限の地球」ではなく、ちょっと揉め事が起きただけで世界中の生活や経済がめんどくさいことになる。
 そういう意味で、有限の地球とは資源が枯渇する前に今ある食糧とか燃料とかをグローバル経済でやりくりして諸国がやっていくしかないってことなんだろうけど。
 本当に村単位で薪を集めて農耕と狩猟をして~という産業革命以前の物流がそんなに良くなかった時代ももちろん飢饉とかで人は死んでるので、中世がいいとも言えない。グローバル経済で世界中から食材が庶民のスーパーにも集まってきて先進国でのんべんだらりと生きていくことができるけど、逆にグローバル経済は多くの国がかかわっているので、ちょっと数か国が戦争すると一気に他の戦争してない国もめんどくさくなる。
 人間ホモ・サピエンスの脳の構造や進化の歴史の認識範囲では数十億の人間と直径1万2700キロの地球を認識するのはほぼ無理。無理なんだけど、経済とか国際交流の歴史の積み重ねから結果的にグローバル経済という世界中のお仕事が密接に絡み合って、一部で戦争が起きると全体がめんどくさくなるようになってしまった。富野監督も世界経済の運営は人間には無理なんだけど、やるしかない、っておっしゃっている。


 また、WWIIでの大日本帝国軍が中国やら東南アジアやグアムやサイパンや色んなところに軍を展開してしまったけど、富野監督はそれで「土地勘を理解してなかったんじゃないか」と言う。具体的に言うと補給線の問題とかインパール作戦とかで現地のことを曖昧にしか理解してないのに軍隊を突っ込ませたりとか。



 それに対して、防衛省防衛研究所政策研究部防衛政策研究室長で国際政治学者の高橋杉雄さんは「政治学では哲学的にどう政治をするべきかというより、地政学的な事象を観察して、事実として分析する学問です。だから、政治学者も政治家も”有限の地球をどのように運営していくべきか”ということについて意識的に見ないようにしているので、富野監督の言葉は耳に痛かった」と答えた。


 専門家と言う人の考え方はいつも直線的で!


 まあ、日本国の防衛省の下部組織の防衛研究所の高橋杉雄さんはもちろん、日本の国益のために地政学リスクや戦争について考えて活動していると思う。多分、僕よりも頭もいいと思う。
 しかし、日本の国益のためにその場その場での対処的なことを政治学者も政治家もしていて全体をどうしていくべきかということから意識的に目を背けているというのは志が低いなあって思った。まあ、G20とかCOPとかでも共同声明がまとまらないことが通例だし、国連も上手く行ってない。


 ニュータイプのアムロ・レイは宇宙兵器のパイロットであるので感覚として太陽と月と地球と主な一等星の位置や距離を感覚として認識している。(アムロはあんまり計器に頼らないし、計器を無視して敵が移動する気がする位置に先にビームライフルを置いていく)それはガンダムのパイロットとして絶大な戦力になるのだが、地球の大きさを想像して実感できるGのレコンギスタの終盤の青年たちのような人にはそれをガバナンスや統治に活かしてほしいものだ。


(富野由悠季さんが唯一、本当に漫画原作を勤めた機動戦士クロスボーン・ガンダムでのトビア・アロナクスも宇宙漂流した時に感覚として惑星間空間で位置関係を認識していたニュータイプだ)


 で、今回のテレビ出演対談は敗戦記念日とウクライナ侵攻をきっかけにしているものなので、WWII時の日本軍やら戦争から何を学ぶかという話でもある。


 防衛省防衛研究所政策研究部防衛政策研究室長の高橋杉雄さんは「日本軍が間違っていたのは負けたから」と仰っている。じゃあ、勝って、(アメリカには勝てないのでグアムからは撤退して)大東亜共栄圏を東アジアに構築していれば良かったのか?
 もちろん、防衛省や軍人の目的は戦闘に勝つことで、負ける戦争は間違いとして認識されるのだが。じゃあ、正しく戦力を使って勝てば殺して奪ってもいいのか?


 防衛省付きの公務員である高橋杉雄さんはもちろん、左翼の「反戦!」という声が嫌だと思ってそうだし、「戦争を単なる軍靴の響きとかで片付けてはいけない」「その時代の人間もそれなりに考えて悩んでいた」と仰っている。
(前回の記事で、富野監督が「反戦の声や戦争被害者の声が軍や政治のトップに届いたことは人類史上、一度もなかった」と言っている。つまり職業軍人や政治学者は自分の専門性や職能に邁進するために、民百姓とは分断されている)
nuryouguda.hatenablog.com


 富野監督が防衛省付きの官僚の人に「日本の都市が絨毯爆撃されたという痛みを政治家は感じていますか?」と言って「その時代の政策決定者も悩んでいた」という発言をさせたのは、割と挑発的だな。自分より30歳より年下でガンダムファンの官僚に「政治家と民百姓は分かり合えない」という話をするのは、本当にロックだ。


 また、富野監督が「もともと大日本帝国軍はアメリカに対して勝ち目がないことを知っていたはずだ」と言って山本五十六が開戦の時に「3カ月は持たせます」と言った故事を引用して、「なんでそういう開戦に踏み切ったのか?」と高橋杉雄さんに問うて、防衛省防衛研究所政策研究部防衛政策研究室長の高橋杉雄さんは「軍人は「負ける」とは言えないです。「三ヶ月は持たせます」、と言って、その後のことは言わない」と答えた。
 そんな軍人の性分について、富野監督は笑うだけだった。


 日本軍は空気で動いていたという説もある。今も日本人は(その場や自分の職場の)空気を読むことを重視して、大局的な現実を見ていない部分がある。
「空気」の研究 (文春文庫)



 浅田次郎先生の自衛隊を描いた小説もそうだし、戦後は名目上解体された財閥も結局戦後も大会社として今も存続しているし、僕の祖父も中野学校卒の憲兵として出征したけど戦後は戦争犯罪を逃れるためにクワトロ大尉みたいに戸籍を捏造して公安幹部をして憲兵戦友会ともつきあいがあり、晩年は叙勲された、というわけで、結局日本の中枢の政治や軍部は戦前から大して変わってないよ。ってこと。
 戦争の悲惨な体験が8月ではよくニュースになるけど、そういう民間人の個々の死や生活や苦しみは国家は勘案しません。政治家は政治家として官僚は官僚として自分の職域で全力を尽くしているのだから自分が正しいと思う。しかし、所詮人間なので全地球的な認識はできず、票田のことや出世くらいしか考えてない。「偉大な日本の神の国」というのも、実態ではない、単なる概念だ。
 僕の祖父も退職後は地元の小学生に剣道を教えていて地元の名士のような面をしていたが、僕の母親の自殺の遠因になるような虐待をするような奴だった。僕は喘息体質でアトピー性皮膚炎だったので剣道は小学一年生の時にやったけど、不潔な防具をつけて剣道をすることが苦痛で辞めてしまい、疎まれていた。(結核系文豪みたいだな…)
 


 そういう点で、高橋杉雄さんは宇宙戦艦ヤマトや機動戦士ガンダムのファンでいるし、僕とは9歳しか年も違わないのでアニメファンだとは思うけど、オールドタイプなんだろうなあって思う。
(僕は自分がニュータイプかはわからないけど、変な生き方をしているとは思う)


  • 鉄道の話

 戦争の話から少し脱線するのだが、最後に富野監督は「日本で一つだけ感心するところがある。それは数分間隔で運行する高速新幹線のメンテナンスをして、トンカチで叩いて材質を見ている鉄道マンだ。それには土下座するしかない」と仰っていた。


 高橋杉雄さんは「人気アニメでそういうシーンがあればみんなわかるけど、アニメではメンテナンスフリーの新兵器ばかり」と答えて、富野監督は「ガンダムではがんばって整備のシーンをいれたの!とても面倒だったけど」と言っていたので。高橋杉雄さんはガンダムをあんまりこまかく見てないのか?Vガンダムのリガ・ミリティアの民間工場とか…。


 Gのレコンギスタでもゲル状の謎素材をモビルスーツがトンカチで叩いたら宇宙船の装甲と一体化して気密できる、というシーンがあった。
 いや、トンカチで叩いたら装甲材と一体化する材質ってなんだよ…。謎過ぎるだろ…。とも思うけど、まあ、数千年先の未来なので、ポリパテとかエポキシパテみたいに混ぜたら固まる材、みたいなものが発明されててもおかしくないかもねーっていうんだと思う。(そもそもメガファウナもヘルメスの薔薇の設計図から3Dプリンターみたいに出力されたものなので、外装が金属とは限らない)


 これは戦争とはあんまり関係ないような話題なんだけど。そもそも日清戦争日露戦争は中国での満州鉄道などの利権問題から発展しているので、鉄道とか輸送路と言うのは軍事にも直結しているんですよね。日常的な交通手段でもあるけど。
 実際、ウクライナ侵攻の影響でオデーサでコンテナ輸送が止まったら世界中が迷惑したので、兵站とか輸送手段はマジで大事。


 そういうわけで、富野監督は「新幹線を毎日メンテナンスしている人」は日本の国力であり、日常的な交通手段であると同時に軍事やグローバル経済とも繋がっている。平和的で日常的でアナログなトンカチで新幹線の車輪や路線を維持している人のお仕事は仕事自体は地味だが、日本列島という割と大きなものにつながっていて、それは経済や軍事と同じくらいの重要性がある。
 ということを、富野監督は言いたかったんじゃないかな。


 オーバーマンキングゲイナーの終盤では鉄道の路線自体が世界を崩壊させる兵器になるというド直球のシベリア鉄道が描かれていたけど。鉄道の路線が全部兵器になるという発想はなかなか思いつかないな…。


 富野監督の最新作であるGのレコンギスタでもキャピタル・タワーという軌道エレベーター、っていうか縦になってる列車が描かれていたし、それとつながっている外宇宙の宇宙船とのエネルギーとか海水などの交易が作中の世界観の重要事項として描かれていた。
劇場版『Gのレコンギスタ Ⅴ』「死線を越えて」【Blu-ray特装限定版】


 なので、軍事や戦争の火種になると同時に日常を維持する交通手段という鉄道や輸送というのは、二面性を持ち、とても大事なんだよなあってことなんですけど。
 防衛研究所の軍事専門家はそういうところを意外と軽視しているのかもしれない。戦力を使って戦闘に勝つとかそういうことじゃなくて、日常にも軍事にも使える二面性を持った鉄道なり輸送なり排他的経済水域などの問題をなんとか平和的に運用してほしいものです。というのが僕の立場かなあ。
 平和的に運用されなくなると、僕は見境なくなる自信があるので、あんまり僕に口実を与えない方がいい…。


  • 振り返り

 なんか、富野監督の言ってることをなぞっただけのような記事だったけど、オタクとしては写経と言うか、富野監督の言葉を整理する文章を書くことでより一層、富野監督のアンチボディになっていく実感がある。
 富野監督も81歳だし、いつ亡くなってもおかしくないんですけど、富野監督のことは割と好きなので、富野監督っぽい感覚を自分の魂に刻み込んでいきたい。(キリストの使徒かな?)
 もちろん新作はご本人が作りたいと言っている間はどんな形の発表になっても期待しています!
(テレビ26話を8年もかけて劇場版五部作にしてむしろ描写を増やしたGのレコンギスタも、最初はガンダムエース100号お祝いに富野監督がぶち込んできた「僕の考えた新しいロボットの序盤の未完小説、はじめたいキャピタルGの物語」だったので。あの、バンダイとか角川書店の社長とか有名声優さんとかがガンダムエース100号に祝辞を送っているのに、一人だけガンダムとほとんど関係ない未完の小説と「僕の考えた新しい軌道エレベーターの図解」をぶち込んできたの、マジで原作者にしか許されない蛮行だからな!ガンダムエース発のプラモデルとかの利権で生活している人もいるのにガンダムの原作者の富野監督はガンダムエースを祝わなくて、自分の作品の構想をぶち込んでくるので、本当に箆棒(ベラボー)な人だなあ)



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