脚本:星山博之 絵コンテ:山崎和男 演出:藤原良二 作画監督:やしろかずお
あんまり名無しA一郎さんの評価が高くないし、よくわからん内容なんだが、とりあえずあらすじ。
コマンダー・ラディックによりキッザ山の登山客が次々と拉致されていく。彼の目的は表ではメガノイド用の人材を確保する事だが、実は彼、大の音楽好きで、自慢の曲で人々を誘い、最強のオーケストラを作ろうという目的があるのだ。自分とオーケストラによる曲はコロスへ捧げるつもりなのである。
http://higecom.web.fc2.com/nichirin/story/story21.html
このね、池田秀一さんの演じるコマンダー・ラディックの音楽キチガイブリが最高なんですよ!
多分若い名無しA一郎さんにはわからないと思うけど、この話は1978年のテレビ放送アニメで60年代のヒッピー文化をパロディーにしたのがイケてるんですよ!
コマンダー・ラディックは山の中で車に乗った若者を自分の音楽で誘い込んで拉致するんですが。
この拉致される若者が思いっきりヒッピーなんですよ。ジープに小汚い格好で男女が乗ってギターとか弾きながら歌いながら山を行くの。そこに、コマンダー・ラディックの音楽がかかって誘惑されるんですが。
この音楽がピンク・フロイドの神秘とかモアとか、キング・クリムゾンの宮殿みたいなっぽいのが良い。オルガンがメインっぽいんですが、オルガンが微妙にシンセサイザーっぽくてレトロプログレロックっぽいんですよ。ハープとかメロトロンやフルートが混じるし。
この、池田秀一さんが声優デビューで演じたコマンダー・ラディックがインテリ音楽芸術家として、すごく神経質で回りくどい戦法で万丈を攻める。
インテリキチガイ音楽家って言うと建築学校出身のピンクフロイドっぽいんですよ。
ちなみに、ピンク・フロイドがサントラを務めたモアって言う映画はこういうヒッピーな感じ。
http://movie.walkerplus.com/mv12130/
ヒッピー!セックス!ドラッグ!耽美!
このモアっていう映画の前にピンク・フロイドはスタンリー・キューブリックの2001年宇宙の旅の音楽をオファーされて断ってるんですが。ダイターン3はスタンリー・キューブリック作品からの引用が非常に多い。
また、富野監督はピンク・フロイドの原子心母が好きって言うのをネットで見たことがある(ソースは2ちゃんねるの旧シャア専用板)。
そういわれてみれば、今回のコマンダー・ラディックの容貌の髪の毛がチリチリで神経質そうなイケメンの雰囲気はピンク・フロイドの初期中心メンバーのシド・バレットの若いころに似ていなくもない。(モアのころにはシドはアスペルガー障害がLSDで悪化してバンドを脱退していたが)
ラディックが自分の理想のバンドを作るために、メガボーグ化させた女たちの演奏が気に入らないと処刑して入れ替える所などもキチガイ音楽家と言う感じ。
しかし、池田秀一さんはこれが声優デビュー作なんだが、子役時代の「次郎物語」の実写キャリアもあり、声優初挑戦という緊張感やぎこちなさは微塵も感じさせず、自信満々のキチガイを演じている。ガルマ・ザビを殺害した時のシャアのような高笑いが、ほぼ全編にわたって池田秀一ボイスで発せられていてイケメンボイス力がすごい。高笑いをするだけでセクシー&狂気。(まあ、デビューした時はキチガイの役の方が演じやすいって言う役者の傾向もある)
本質的にシャアもキチガイなんですけど、振る舞いや雰囲気が上品なんですよね。そういう原点が今回のコマンダー・ラディックの高笑いにも象徴されてると思うし、それがピンク・フロイドともリンクしているとなるとめっちゃカッコいいわけですよ。
また、コマンダー・ラディックのピンク色のスーツとかパイプオルガンを兵器の入力装置にするのは「ルパン三世 ルパンVS複製人間」の紫色のスーツのマモーに超似ている。特に説明もなくラディックの顔が割れて中から緑色の本体が出てくるのもマモーっぽい。
ルパンVS複製人間の公開日が1978年12月16日で、この第21話「音楽は万丈を征す」の放送日は同年11月4日なので、実はダイターン3の方がちょい先。
富野やダイターン3スタッフがマモーの企画を裏から知ってパクったのかどうかは謎なんですが。78年の流行だったんですかね?パイプオルガンを弾きながら攻撃する奴。なんかの映画で元ネタがあるのかなあ?
1992年のアニメの天地無用・魎皇鬼の神我人もオルガンを弾いてましたね。なんででしょうね。
なんかそういう決まりがあるのか?VS複製人間もサイケデリックな感じの70年代アニメでしたね。
あと、ピンク・フロイドと言えばジョジョの奇妙な冒険第4部なわけですけど。
今回、万丈がコマンダー・ラディックに接近すると周囲が異空間になって彼の城が浮かび上がってくるんですが。思いっきりスタンド能力。しかもラディックをやっつけると異空間が解除されて城がガラクタの車の山に戻るとか、ジョジョ3部の物質同化型のストレングスみたいです。城自体がスタンドで作られた空間ってのはデス13とか、4部のスーパーフライみたいな感じがある(他にもこういうスタンドがあったかも)。
ここら辺の共通モチーフの趣味性みたいなのはカッコいいなーって思う。
特に説明もなく異空間の中でラディックが怪獣を出すってのもスタンド攻撃っぽい。また、特に脈絡や合理性もなく万丈の精神力のライトセイバーで怪獣がやっつけられる理不尽な感じも荒木飛呂彦先生のマンガっぽい。あ、あと、ライトセイバーで怪獣をやっつけるのは海のトリトンっぽくもあります。
あと、ラディックが万丈に怪獣をやっつけられるけど、逆に万丈の戦い方をみて「万丈のファンになった!私の創作意欲をかきたててくれる!」って逆に精神力(スタンドパワー)を高めて城の中で色んな罠を出すのもジョジョっぽい。罠のギロチンとかの理不尽な所も。
で、「万丈は仲間を助けに行くに違いない!」ってラディックが命じたら、実はその部下は万丈が変装したもので「それほど心優しい人間ではないのでね」って言ってラディックに銃を突き付けて脅迫して人質を助けさせるのも承太郎っぽい。ジョジョ3部はバビル2世を参考にしたらしいけど。
あ、あと、万丈がアシスタントの女子二人の命よりもメガボーグを一人でも殺害することを重視してるって性格もすごい。割とこれは一貫しているかもしれん。万丈、本当にメガノイド嫌いだよな。
巨大メガボーグになったラディックが何故かシンバルを叩く猿に成っているのは謎。そのシンバルから円盤のこぎりを発射するのも謎。
割とメガノイドって返信前はスマートで、巨大化したら野獣っぽくなるのが多いね。
でも、まあ、前半は色々と演出に凝ったりしていたけど、ロボットプロレスになるととくに理由もなくサン・アタックで勝つのでその点はひねりがない。
負けたラディックが「私のプライドを!」って言うのはシャアっぽいけどさー。
なので、60〜70年代のピンク・フロイドとかヒッピー文化とか映画の引用をしつつ、そういう芸術要素がロボットプロレスと微妙に噛み合ってない所がダイターン3の微妙なアレな感じです。
でも、シド・バレットの狂気とシャア・アズナブルの狂気は似た所があるかもしれないし、ピンク・フロイド好きで池田秀一好きの私はなかなか楽しく見ました。(シド・バレットは還暦過ぎまで生存してたけど)