玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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G40ガンダムが気に食わないので松尾衡監督に嫌われるかも

 ユーチューブで見たけど。
 あのさあ・・・。これ、誰向けなの?
www.gundam.info

 ガンダムファースト世代の大人向けだとしたら馬鹿にしているし、子供向けにしては全然面白くない。


 まず、ファーストカット。リメイクしたっぽいサイド7が地球に近すぎる。一瞬、Gレコのアンダーナットかと思った。あのさあ・・・。ラグランジュ・ポイントを一から説明しないとダメか?そこからか?



 で、なんか工業デザイン?されたザクがスペースコロニーに侵入するんだよ。無重力空間から。うん。スペースコロニーの回転に沿ってなければスペースコロニーの中でも無重力飛行できるんだよ。でも、地下道から出てきて飛んでるザクの隣に滝があって水が落ちてるんだよ。回転が同期してるんだよ。駄目じゃん!


 で、侵入してきたザクに接近遭遇した電車の中の人、ノーリアクション。
 ザクに手を振る無邪気な子供がいる。その上でザクが施設を破壊している。ギャップだね。でも、それがコロニーの明かりが落ちたっていう説明にしかなってなくて劇になってないの。
 そのあと、暗くなったコロニーでなんか着飾った人たちがコロニーの中を飛ぶザク(もうミノフスキーフライトが実用された時期のザクということにしておく)の編隊を見る。止め絵。ノーリアクション。


 劇になってないんだよ!ザクが破壊活動するならコロニーの人はもっと逃げたり抵抗するべきだし、逆にザクの侵攻が政治的に許されたものであったらそれを歓迎するなり、劇を作れるでしょ?なぜそうしない!


 で、アムロがなんかカーディアス・ビストを混ぜたようなカマリア・レイに無理やりガンダムに乗せられるの。ガンダムがなんかママンの意志を宿したように逃げたアムロを追ってきて街を壊すの。
 は?アムロガンダムに乗ったのは民間人を虐殺するザクに対する純粋な義憤で正義の怒りを燃やした結果なのだが?そんなママンに強制されたリクレイマーのお坊ちゃんみたいなモヤシではないのだが?アムロはメインパイロットと連絡が取れないくらいでゴタゴタしている地球連邦軍の段取り臭さにもブチ切れて「じゃあ、おれがやったらぁ!」ってガンダムを動かす能動的なオタクなのだが?
 スーパー解釈違いなのだが。


 まあ、解釈違いじゃなくても劇になっていないし、所詮はパイロットフィルムというレベルなのがわかるのが、わりとカット頭が止まっていて、止絵が多くて、セガサターンの特典アニメかよ!というレベルの予算のケチり方をやるんじゃないよ!

 「カットが切り替わる編集点で、新しいカットの1コマ目、2コマ目は必ず違う画になっている」ということだ。「人物が歩き出す」「身を乗り出す」などの所作の途中、あるいは「モビルスーツがビームを発射する」などアクションの途中では、本来3コマ打ち、2コマ打ちで続いていく作画の頭だけ、1コマになるよう切ってある。これは、分かりやすい例だ。さらに被写体が一見止まっているように見えるカットでも、「宇宙戦艦のトメに背景だけ動いている」「室内にいるトメの人物にカメラワークがついている」「立ち止まって会話しているキャラの背後に別のキャラがスライドで忍び寄ってくる」「雷光などエフェクトが加わる」などなど、とにかく「あの手この手」で、カット頭は「必ず何かが動いている画」にしている。

anime.eiga.com

 氷川竜介先生を持ち出して権威主義っぽくするのはオタクとしては情けないのだが、もう、今回のG40、ツギハギで一年戦争をダイジェストにするとかいう以前の問題で、動画として躍動感がない。劇的になっていない。つまりつまらない。
 CGで自在に動かせるというアクションカットもあったのだが、セガサターンのゲームでもこれくらい動くって感じだったし、メカの動きに重さと運動エネルギーが感じられないんだよ!

  • 工業デザイン何するものぞ

 まあ、今回は工業的デザイン()のガンダムのプラモデルを売っていこうという企画ものフィルムなのでアニメや物語としてつまらないのはしょうがないんだけど。
(いや〜〜〜それにしても富野監督がアムロとクェスとハサウェイの関係性を新訳Z直前にリライトしたGUNDAM EVOLVEは最高でしたねー。高機動故に被弾を想定しない極限まで装甲が削ぎ落とされたνガンダムのCGデザインとアルパ・アジールのアッと驚くギミックが最高)
GUNDAM EVOLVE PLUS (ガンダムイボルブプラス) [DVD]

機動戦士ガンダム40周年プロジェクト」の一環として、世界的工業デザイナー・奥山清行氏率いるKEN OKUYAMA DESIGNが本気で検証しデザインした「ガンダム」のプラモデル「HG ガンダムG40(Industrial Design Ver.)」が、好評発売中だ。

工業製品としてデザインされた「ガンダム」のプラモデルは、本物視点の機構や構造を組み立てながら解釈していくことで、“想像を超えたすごいもの”をつくる感覚、プラモデルの未来の可能性も体感できる一品となっている。

 ということらしい。ビームサーベルがコンパクトになるとか、コアファイタークロスボーン・ガンダムクラスタガンダム式になるとか、そういうレベルで褒められているらしいけど。


 あのさあ・・・。当時の富野監督、安彦良和先生、大河原邦男先生がガンダムのデザインを本気で検証してなかったとでも言いたいのか・・・?それは罰当たりでしょう!


 いや、僕の通っていた大学も工業デザイン学科があって、僕も度々そこに出入りしていた(当時はデザイン学科にしか高性能の画像処理ソフトがなかったので)のだが、デッサンをそれっぽく整える程度の工業デザインは大学生にもできるんだよ。その程度をもてはやしても…。関節の綺麗さとか、そういうのは実際のロボットというより、プラモデルのレベルだと思ったなあ。


 だいたいさあ、、、今回のG40、工業デザインって言っても工学的な問題が一切考慮されれていない動画だった。
 まず、富野監督の初期構想ではガンダムは地上では重力と強度の関係で運用できない。でも、まあ、そこは活劇にするため、ということで誤魔化した(それがその後のガンダムシリーズの広がりを産んだのだが)。(バイファムって真面目に見てないんですが、ラウンドバーニアンって地上で運用されたシーンはありました?)
 バイファムはともかく、ガンダムを本気で検証するんなら、あんな重みの感じられない地上でのザクとの格闘編にはならないだろう!
 富野監督ですら実寸大ガンダムに影響を受けてGレコの劇場版の演出と美術を変えてG-セルフに瞳を入れたんだぞ!
 工学的に真剣に検証するなら、ガンダムがジャンプして着地する時に、その整合性を考える程度のアイディアは欲しかったわけ。ホバーを一瞬吹かすとか、その程度でも全然印象が変わるんです。(GレコのモビルスーツモンテーロG-アルケインのレベルでミノフスキーフライトがわりとよく実装されているので、飛べない機体でも自重を軽くしたりはしてそう。Gレコの企画書にはキャピタルタワーの反重力の話もあったし。)


 で、工業的に考えると強度の次は動力です。そこ、今回のG40ガンダムは端折っていると感じた。結局昔のザクのまんまの動力パイプだし、ガンダムの関節がモーターなのか油圧なのかもよくわかんなかった。基本的に球体関節らしいが、それはどう動くの?ポリマーリンゲル液とか士郎正宗のランドメイトやFSSのMHやGTM程度の問題意識もなく工業デザインを名乗っちゃうのか?


 その点、昨年末に逝去したシド・ミードさんの∀ガンダムの「Iフィールドビーム駆動の見えないエネルギーの釣り糸で機体があやつり人形のように操作されているので、機械的な動力システムはない」というアイディアはすごかった。これが本当の工学的思考から発展するSFやぞ!もう20年前のアイディアやぞ!


 まあ、今回のG40、後ろにふっとばされるガンダムがバーニアを重心に対して吹かす描写くらいかなあ・・・。工学的っぽいの。
 でも、その直後にファーストガンダムシャアザク戦をなぞったような芝居をしてしまうので、工学的考察に基づく新しいメカ描写とも言えない。


 で、でもさあ、工学的にガンダムを刷新して本気で検証した、って言うのに、なんで「旧機動戦士ガンダムの名場面と同じような動きやレイアウト」をするの?
 結局ノスタルジーで権威付けで歴史オタクだと分かってしまったなあ!


 工学的に違うデザインで違う設計思想なら同じような動きをしたら、むしろダメだろ!
 ∀ガンダムのMSはコックピットを揺らさないで歩くんだぞ!(空想科学読本の影響にせよ)


 なんでそこで新しいアイディアが出てこないのかなあああああああ。本当にそういう狭苦しいノスタルジーとか懐古主義でガンダム40周年とかやるの、本当に貧乏くさい。
(ストーリーには賛否両論ある0083だけどスティメンが腕を伸ばすのはロボロボしくてよかったですね。オーキスにマウントしたまま撃てねーのかよってのはあるけど。)


 結局さあ、工学デザインのガンダムって言っても本質的には変わってないし、「おじさんたちが昔好きだったガンダムを現代の作画とCGできれいにリメイクしたらいいのに」っていうオトナ帝国なんだよなあ…。


 でも、きれいにリメイクしたらいいのかって言うと、そうでもなくて、やっぱりあの当時の安彦良和先生のアニメーティングはすごいし、今回のショートフィルムは作画の清潔感とか精密感はあるけど、止絵が多くてファーストガンダムよりむしろ貧相な印象がした。


 CGで自由自在に動かせるメカも結局昔の名場面のレイアウトを真似て…。そのくせロボットのくせにあんまりキビキビ動かないし…。(GレコのMSは1秒間に5動作くらいして格闘します)


 ガンダムを新しく刷新するっていう企画ならせめてGレコより面白いものを出してもらわんと。
 本当に頼むで。


 作画のガワだけきれいにしたら良いって、そういうヤマトリメイクが売れた成功体験をガンダムに持ち込むんじゃない。(最初の宇宙戦艦ヤマトTVシリーズのアニメーションはガチでヘナチョコだったのでリメイクしてもいいけど、続きすぎたのがダメだった作品を続けるというところまでリメイクしなくても)


安彦良和アニメーション原画集「機動戦士ガンダム」

 当時の安彦良和先生レベルの天才アニメーターはいないんだから、それを現代の小奇麗な線でトレースし直す、という程度のリメイクならやらないほうが。小奇麗にまとめちゃって元の良さを殺してしまうんじゃないかと。


 でも、ドラえもんルパン三世ウルトラマンゴジラも小奇麗に作り直してそこそこスタジオと版権ビジネスは回せていくようになっているので、富野監督が亡くなったらガンダムのリメイクはやるでしょうね。
 でも、それなら新しいアイディアがほしいと思うし、だったら一年戦争ガンダムじゃなくていいよね?十歩譲ってガンダムWガンダムSEEDと00とAGEと鉄血でいいやって思うんだけど、会社の営業的には現在富野監督が作っていて評価も定まっていない最新作のGレコよりも社会的に認知されているし評価もされているし実績があるけど一般層から「作画が古い」という低次元の課題で敬遠されているファーストガンダムのリライトはやりたいんだろうなあ。
(そもそもORIGINの萬画企画自体が海外向けに作画をきれいにし直してお出しするものを作り直すという角川の意向だったし)


 でも、今回のような新機軸なのか、名場面集をCGリライトしただけなのか、どっち付かずの志が見えにくいものをお出しされると、僕としては、こういうお気持ち表明を書いてしまう。
 ガンダムをリメイクするんなら、本気で全く新しい劇やSF描写にするか、絵柄だけ丁寧にして絵コンテと中割のタイミングは絶対に変えないか、どちらか。
(MSのCGは作画の手間が圧倒的に減るけど、ガンダムもキャラクターだということはヱヴァンゲリヲン新劇場版:序の時点の庵野監督ですらわかっていることなので)

  • 今回は

 DIS記事なので欲しいものリストは載せません。それほど子供じゃない。


 ていうか、新年一発目の記事がこういう雑なお気持ち表明って、本当に情けない。本当はシド・ミード追悼の意味も込めて富野由悠季の世界展の「絵画展覧会としての側面」を論述するつもりだったけど、元日はたくさんのソシャゲのイベントを消化するので手一杯!
 なので、こういう雑な記事はさっと書ける。駄目なオタクなので富野監督にも松尾監督にも怒られそー。


 デレステをちょっと触って寝る。


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