玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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ブレンパワード小説について

ブレンパワード〈1〉深海より発して (ハルキ文庫)

ブレンパワード〈2〉カーテンの向こうで (ハルキ文庫)

ブレンパワード〈3〉記憶への旅立ち (ハルキ文庫)
いつもの富野由悠季による、大幅な改変を伴うノベライズと違い、富野監督の構成に沿って脚本家の一人である、面出明美さんがアニメに忠実に、1章=1話で書いてます。
面出明美さんはヤダモンも書いてて、その小説版も持ってます。ヤダモンのお母さんが、ボクの脳内彼女の元になった一人と言うか、もう、いい女なんだ。
読んでませんけど。
こないだDVDが出たので、それを見るときに同時並行で読もうかな。と。
で、ブレンパワードの小説も、1章ずつ、感想を書く前に読んでるんですけどね。
とてもおもしろい。
トミノの筆ではないので面白いかどうか不安だったのだが、面白い。
アニメに忠実ではあるのだが、退屈な感じはせず、むしろ心理描写や背景説明などの小説の得意分野で掘り下げていってあるので、楽しい。わかりやすい。
伊佐未勇が宇都宮比瑪にキスしたあたりの気持ちとか。
女性作家から見て、あんなキスをする勇をどう書くのかと思ったし、キスされても流したように見える比瑪がよく視聴者から電波だと言われているのだが。再会と戦闘の興奮と思春期の感覚がキスと抱擁になったと言う流れがたった1ページで描写されてるのが良い。
2回目のキスをする勇は、少女漫画に出てくるような強引でいたずらっぽいイケメンな感じで、比瑪(女性)から見ると訳がわからないけど気になるって言うフラグの立ち方がしていてときめく。
それで、キスについて船の中で初めてケンカしても、ブレンパワードの機嫌がいいから比瑪が勇を許す所もなかなかいい流れだ。少女漫画っぽくて良いな。
そこら辺の感覚が欲しくて、トミノブレンパワードで女性作家を起用し、小説も任せたのだろうか?海のトリトンの時代から、女性的な感覚を手に入れたいと言ってたしな。
それに、アニメではあまり動かないし気付きにくいブレンパワードの表情が咀嚼されている。
ヒギンズが赴任してきた時、ブレンパワード達は誰も乗っていないのに、ヒギンズに対して好奇心の眼差しを向けていたのだとか。他にもいい描写がたくさん、感情とイメージの意味付けが出来て嬉しい。
また、トミーノの筆ではないのだが、P170の

ソード・エクステンションがカナン・グランチャーに振りこまれれば、その勢いに、カナンは防戦にまわるしかない。

という「〜れば、・・・しかない」調の文体はおハゲ様独特な物だと思う。
普通、「れば(ば)」は「仮定」の意味で使われて、辞書でも「1、仮定の条件をあらわす。2、ある条件の元で決まった事が起こる事を表す。3、並列を表す」と書いてある。
1なら、「〜ならば・・・かもしれない」2なら、「〜れば・・・する」3なら「・・・もすれば〜もする」
富野の場合はどれとも違い、あえて言えば2番の用法に近いのだが、条件説明ではなくてアクション描写に使う。
それが、違和感をかんじさせもするのだが、慣れてくると「条件となる行動が発生した時点で、受け手のリアクションが瞬時に決まってしまうようなスピード感」を感じさせてくれて、富野の言葉の使い方、イエスだね!
(まあ、ここらへんがいつまで経っても馴染めないオールドタイプ趣味の人も居るんですけど、その程度の文体で富野を嫌うには惜しいぞ。)
福井晴敏先生は富野小説のファンらしいのだが、機動戦士ガンダムユニコーンはこのような文体のリズムやスピード感がなく、描写が冗長で、長い。読みにくい。時間がかかる。途中で飽きる。作品内キャラクターの体感時間と読み手の読書時間に差が生じて気持ち悪い。
まあ、ここら編のリズム感は、文字媒体出身で郄村薫を参考にしてる作家と、秒数が決まった絵コンテ職人との違いでもあるわけだから致し方なし。
機動戦士ガンダムUCは読みにくいのでまだ2話の途中しか読んでない。話が動き出したら面白いか?)
御大自身も、富野語が特異だと言われた時に「単にアニメの短い秒数に無理やり情報を詰め込んだだけです。それが変なのは僕の力量の無さです」と謙遜しているのだが、富野が詰め込むのは説明だけではなくてキャラクターの性格や気分までも詰め込まれているのだし、芝居としては自然だし情感が豊かだと思える。
キャラクターのセリフがストーリーを進めるコマだとしか思えなければ、富野語は変なだけなのだが、よく訓練された大富野教信者にとってはそれを自分の脳で租借することが喜び。
つか、最近のアニメの説明セリフは気持ち悪い。人間があんなに設定書どおりに喋る物かよ。
と、いうわけで、御大の筆ではないのだが、御大の良く使う文体が出てくるので、大雑把な下書きは御大自身が書いたのだろうか?と言う訳でワクワク。
それから、今のところはトミノ独特のオノマトペアはないな。バッフーン!

あと、重田敦司さんの鉛筆画の挿絵も美しいのでページをめくるのが楽しいです。
それから、気になったのは、アンチボディ(抗体の意味、大きな人型をした金属生命体)を数える時に、この小説では「何人」と数えているんだよね。地の文でもセリフでも。
アニメ本編では「何機」。
小説版では、アニメの動きにも表れないブレンの表情やリアクションが掬い取られているし、こういう数え方を見ても、ブレンを人間のように扱っていると言う事が判る。それはオーガニック的だ。




ブレンパワード 全4巻 杉崎ゆきる/画・富野由悠季/作

んで、クロスボーンガンダムから、キングゲイナーリーンの翼のコミカライズがとても良かったので、トミノ萬画原作の才能もあると思う。読むべきか?
それと、∀ガンダムの小説は2種類ともそろえてあるのだが、ビデオ再見と、どういうペースで読むべきか?
と、悩むのも楽しい。