玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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女性管理職が動かす新しい組織モデル

http://d.hatena.ne.jp/nuryouguda/20070903/1188752969
↑で書いたが、
アニメ作品内での主人公の立ち位置の問題を描くのと同時平行して、
葛城ミサトが今回の新劇場版において篠原涼子的30代女性管理職として描かれるように微妙に改変されている。
これは、アニメ主人公だけでなく、F1ドラマ層への波及力を持たせようとした試みだと考えられる。
安野モヨコとの結婚も大きな影響だと思われ。
当時エヴァにはまった同人女性をまた呼び戻す共感材料でもある。
それはそうだが、ここもまた、単純に女性に共感されるハヤリのドラマのフォーマットを盛り込んだだけに留まっていない。


あまり見てないので大きなことは言えないが、ショムニハケンの品格肩ごしの恋人などを見ると、女性でありながら男性化した女性が描かれてるし、女性のキャリア化は男性化であった。
それで、男性以上に働いて力でねじ伏せて、結果として孤立していったり、
その反動として、自分より上位の男に愛されようとするモテ女、電車男のように自分より下位の男を愛させようとするエルメスアルテイシア(ハモンさんがキュイに乗ってると嘘をつくようなmixi女の方)が発生している。


だが、今回の葛城ミサトはそのどれでもないと感じられる。
その、結局のところ、女性はメスなので、組織の論理よりも自分の幸せが究極の問題となる。
だからキャリアウーマンは悩んじゃうわけだ。
前回のミサトは結局自分のためにセカンドインパクトの謎を追う事にいっぱいいっぱいになってた。なんとかシンジ君を最後に守ったが、それは仕事と言うよりは家族としてだな。
が、ミサトさんは今回組織のために率先して動いている。
(人類の切迫感が増したために、自分の生存と組織の目的達成がイコールになったためか?)
二佐になって権力も増したし、碇司令にも意見する。シンジを信じたのはその方が作戦が上手くいくと判断したからだろう。
じゃあ、結局男性化しただけじゃん?となるのだが、そうではない。


ミサトは女の武器をそれとなくシンジに対して使っている。
手を握ったり。
かと言って、それはセクシャルに誘惑したわけでもないし、第弐拾参話でさびしさを紛らわせようとしたのでも悪女が操っているのでもない。
もっと冷静に組織の潤滑油として自分の女性性を利用している感覚があるんだよな。
で、風呂上りにシンジを誉める前に一拍置いて緊張していたのは、ミサト自身の人付き合いの苦手さの名残でもあり、男性的な仕事を男性以上に自分の力だけでやってきた女が、人を誉めると言う事をやると言うことを何とかやってみようという演出。
まあ、ここらへんはマチルダさんやセイラさんがやってたおだてに近いのだが。
ミサトさんは管理職でもある。職場の雰囲気を明るくしたり末端の男を奮い立たせるだけではない。


シンジ君みたいな新入社員に組織の目的をおしえこむという、ブライトさん的アニキの地位をやってる。加持が登場する前に。
その試行錯誤が結構リアルというか段階を踏んでいる。
最初はシンジに「乗りなさい」しか言わず、乗ったらシンジを誉めてみて、失敗したらシンジに義務があることを言うがすれ違って自分に原を立て、シンジが父親に認められたいというのを利用してシンジの自由意志で残った形を取ってみたり、いろいろやってみる。
で、最後に命がかかってきたら組織の目的を果たすのは自分のためだけでもないし、お前に押し付けてるだけじゃないし、みんな一緒なんだ、という風に説得して納得させる。
共同体に取り込もうとするんだよね。
それでもシンジ君が拗ねると、「まあ、運命だから!」と笑うんだな。くそっ。いい笑顔だ。
これはアニキの役割でもあるんだが、女だ。
それで、手をぎゅっと握って、言葉以上に「死にたくない」と言うのを伝えるのも女だ。
ブライトさんが「貴様はシャアを越えられる奴だと思っていた。」と言って叱咤激励した役割を、フラウ・ボゥが「あたしガンダムに乗るわ。自分のやったことに自信を持てない人なんて嫌いよ。」と言った立場で行なっている。
ブライトとフラウ・ボゥを同時に一人でやってる。スゲエ。
そりゃあ。乗るわなあ。


それが、新入社員に対するミサトのスタンスなのだが、ミサトは上の上司に対してもアクションを行なう。
碇ゲンドウ赤木リツコは男性的論理のメタファーとして今回は描かれている。
ゲンドウがシンジを更迭したりとか、リツコがパイロットを徹底的にパーツとして扱ったりとか。
エヴァの後に流行ったグローバリズムやら成果主義を取り入れてるんだよな。
で、それを描写するだけで無く、その次のカウンターとして葛城ミサトは「初号機パイロットを信じます」という。
その前段階でも、洗脳したり、また旧エヴァンゲリオンのようにエヴァに乗らなければ承認しない、擬似家族が崩壊すると脅したり、するのではない。シンジの人格を認めて「説得」しようとしている。
これは女性的な振る舞いだと思った。
そういうわけで、ミサトを通じて組織の中で、女性であると言う事をポジティブに活かしていこうと言う描写だと感じた。
信じて見つめてやると言うのは女の人にして欲しいなあ。


まあ、「やってみせて 言って聞かせて やらせて見て ほめてやらねば 人は動かず」をやってるだけかもしれんが。
「苦しいこともあるだろう 言い度いこともあるだろう 不満なこともあるだろう 腹の立つこともあるだろう 泣き度いこともあるだろう これらをじっとこらえてゆくのが 男の修行である」を押し付けるだけではないのがいいと思う。
エヴァも普遍的な社会性ドラマになってきたんだなあ。


しかし、以前のミサトさんは年上のお姉さん属性を持たせるギリギリとして29歳設定されていたのだが、年齢が分からなくなって、おそらく30代になって権力も増した。
そしたら、序においては綾波以上のヒロイン性を持つようになったと思う。ミサトとシンジのふれあいがクローズアップされて、綾波はむしろシンジが心配してやってると言う位置に。
まあ、母親のクローンってキモイしかわいそうなので、ミサトの方が良いや。おれ、アヤナミストじゃなくてアスカ派だったし。
しかし、惣流・アスカ・ラングレーだけでなく新ヒロインや渚カヲルも登場するとなると、綾波洞木ヒカリは苦戦するなあ。
伊吹マヤの百合は今の方が人気出るかも?


うん。俺はまとめる気が0ですね。
余計くどくなった気がする。