僕は富野信者なので当然認めることはできないのですが、機動戦士ガンダム THE ORIGINは内容はともかく、作者の安彦良和先生がそう言い張っているので、そういうタイトルなのです。
いや、僕も安彦良和先生の画力は認めているしガンダムエースでORIGINが終わるまでは表紙とORIGINのページは全て切り抜いていた。大判のカラー画稿を保存したいし。(愛蔵版を買う金はない)展覧会にも3回ほど行った。というか、今でこそこういう感じだがORIGINの連載はランバ・ラル戦まではおもしろかった。
TV版と変更して、オデッサとジャブローの順序を変えてからつまらなくなったけど。
まあ、長々と不満を言っても仕方がないし、結局は連載終了後の感想から、アニメになってもスタンスは変わっていません。
というかORIGINのアニメ、見たことがなかったので。金を出す気にならなかったので。テレビ番組になってしまったので、もうしょうがねえなー。という気持ちで今回視聴に踏み切ったでゴンス。HDDの容量はギリギリだ!
というわけで、1話見た。作画いいじゃん!
しかし、まあ、編成の都合上、これが進撃の巨人第三シーズンの放送の直後に放送されてよかったと思いました。
つまりどういうことかというと、「ガンダムってタイトルがついてるけど、ガンダムだと思わないとそこそこ面白いよ」と、幾つかのアナザーガンダムが言われてきたことが、今回は安彦良和総監督作品に当てはまったというだけのことなのです。たまたま安彦良和先生は初代ガンダムのキャラクターデザインと作画監督をしたり、その後のガンダムで中途半端な関わり方をした人間で、それが描いた萬画で、THE ORIGINという仰々しいタイトルがついているけど、ガンダムだと思わなかったら面白かったです。
まあ、クランプやタチ中尉など1stTV版のファンから見ると、やっぱりノスタルジーを刺激される部分はあるんですが、(ORIGINも萬画はクラウレ・ハモンの復讐戦までは面白かったし、タチ中尉の掘り下げは良かったんだけど、ガンプラとか関連商品が売れ始めて調子に乗ってから失速したね)じゃあ、これがガンダムなのかというと、それは認めることはできない。
徳間書店の編集者に知り合いがいるのだが、「安彦良和先生の萬画は結局”顔芸”だよ」と言われていたような、そんなわかりやすい芝居がガンダムなわけないじゃない。というか、空気感がガンダムじゃないんですよ。
作画はいい。作画はいいけど、安彦良和先生は「富野由悠季は変わってしまった」みたいに言うけど、ORIGINの作画の雰囲気は1stTV版のフィルムの煤けた感じとは違う。あと、セルの塗りの雰囲気がのっぺりしている(デジタルなのに)ので、安彦良和の萬画の良さである水彩の雰囲気とも違う。(それをやると出崎統っぽい演出になる)
安彦良和先生は1stガンダム本編のアニメのリライトをしたいって未だに言っているけど、それはめぐりあいでしたでしょ!あれで満足しなさい!
ORIGINの萬画の作画の良さとアニメの作画の良さと機動戦士ガンダムの作画の良さはすべて質が違うのだから、いまさら機動戦士ガンダムにORIGINの作画を上塗りしても富野絵コンテや星山脚本の雰囲気とは齟齬を生じると思うのでやめてほしい。
そして、今の段階の富野絵コンテに合うのは安彦良和先生の画ではなくGのレコンギスタの画です。二人の道はもう違っているのです。
ORIGINのアニメの作画はいい。作画はいいしテンポもいいけど、「妹は可愛いし、猫ちゃんはいい子」みたいなわかりやすい価値観でランバ・ラルがあんな顔をするのがガンダムかっていうと、それは認めることはできない。富野由悠季の小説版のランバ・ラルを読んでいると、余計。
なので、ここで進撃の巨人の次の放送というのが救いになっているのです。
つまり、ガンダムとか未来の地球とか宇宙とかじゃなくて、サイド3ムンゾという壁に囲まれた架空の国で起きた架空の王子様と政敵をめぐるファンタジーとしては、そこそこ面白いと思えました。ガンダムだとは思えないけど。だから、機動戦士ガンダム THE ORIGINっていうタイトルだけど、そんなのは所詮記号だし、名付けた人の希望に過ぎないしアニメの作品の実態としては「ガンダムだと思わなかったらそこそこ面白かったよ」です。
ザビ家とラル家の確執も安彦良和先生のディフォルメや歴史感覚が入っているので、それを宇宙世紀の正史と無理やり接ぎ木するようなことはやめていただきたい。あくまでも一つの並行宇宙というかパロディアナザーガンダムのひとつとしてのファンタジーアニメにすぎない、というのが僕の印象だね。(歴史小説家と云うのは自分の感覚を正史と思い込みたがるが、人間の認識などバイアスでしかないんだ)
でも、この田中真弓の声の少年がシャア・アズナブルを殺害して、そのシャアのコスプレをしていくらしいです。でも、所詮それはコスプレレベルなんだよ!
ていうか、シャアが面白くなるのはアムロに関わってプライドがずたずたにされ続ける人生なのであって、その「前夜」は所詮下積み時代というか。そして、そのシャアが積み重ねてきたものをぽっと出のアムロがボコボコに破壊して寝取っていくのがガンダムの良さなので。その本筋の前にシャアの生い立ちがどうだとか云々しても「はあ、そうっすかー。安彦さんはそう思うんですね。僕は違うけど。」くらいなのだし、そもそもORIGINのアニメ版はガンダム動かないしな!
だからガンダム関係ないし、ひとつのアニメ作品としては金をかけた分そこそこ面白いね。サンライズのスタッフさん頑張りましたね。というくらいの評価ですよ。
だけど、ひとつのアニメ作品としてはスペースコロニーの自治権要求とか、そもそもスペースコロニーとはどういうものかというのをほとんど絵として描いていない。初見で、このアニメの舞台が月の裏側にある直径6kmのシリンダーの内側だと分かる人は少ないんじゃないかなあ。(もちろん、そもそもこれはTV版ではなくもうちょっと長いOVAなので、TV版1話で宇宙が描かれてないにしても、今後描かれるかもだが。しかし、やはり冒頭で世界観があやふやなのは減点対象です。)
ファーストガンダムはアバンタイトルでかなり頑張ってキッズに向けて衛星軌道を図解で説明していたよな・・・。まあ、当時の宇宙開発ブームに下駄を履かされていた風潮だったとは思うが。
これは同じく壁の中の国を描いた進撃の巨人の冒頭と比べると圧倒的に雑な作り。進撃の巨人も謎の多い作品だが、少なくともその謎の一群の発端である壁と巨人は最初に描いていた。ORIGINはオープニングテーマの画で宇宙とかモビルスーツが描かれてはいたものの、本編では架空の国の架空の内戦が描かれるばかりで舞台背景がほとんど「機動戦士ガンダムの世界観を借りていることが前提」という甘ったれた作り方だ。
ガンダムを知っている僕もORIGINアニメをなあなあで見てしまって、そこそこ面白かったのだが、ガンダム関係ないと思ったら面白いけど、ガンダムを知ってる事が前提の作りなので、やっぱり歪な作品なんだよなあって思う。
宇宙コロニーで火炎瓶とか放水車は無いかな?と思う。水と空気がむちゃくちゃ大事な空間だから絶対そういう事はしないし、そもそも可燃性のものは徹底的に排除する気がする。荒ぶる群衆の描写っていえばそれまでなんだけど。
— ykod (@kmdgr) April 29, 2019
まあ火炎瓶は怒れる群衆描写で何とかなるのか分からんが宇宙港のロビーのその辺でタバコ吸ってたりする奴がいたりするのは流石に訳がわからんオリジン
— うっしー (@ushiichi) April 29, 2019
ここらへんも雑だし・・・
でも、こういう物がジオンのモビルスーツだからとかシャアのキャラクターグッズだからといって高齢ガノタに売れるノスタルジー現状があって、それは突破してくれよ!ガンダム Gのレコンギスタ!
っていうか、ガンダムって最初はノスタルジーとは対極の未来志向の物語だったはずなのに、結局子供時代や青春時代の自己肯定コンテンツになっちまってよお。情けねえ!
諸君らの未来の洞察力はどこへ行った!
密会こそ正典
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