玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。旧玖足手帖から記事・ブクマを引き継ぎました。


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富野信者解釈違い! 機動戦士ガンダムTHE ORIGIN TV(最終回)

 なにがTHE ORIGINよ!私は富野信者だ!私こそがガンダムをわかっているニュータイプだ!なぜなら私こそが富野アニメを傍観し続けてきた男だからだ!正統たる富野監督から離れた安彦良和に私の何がわかる!40年前の富野喜幸の幻影から逃れられない男が!私は常に富野由悠季を護り続けてきた!その私に対して自分がガンダムのオリジンだと!ええぃ!富野由悠季が今も生きているということをしれぇえええええっ!私はニュータイプのはずだ!


 と、言うのは冗談で。へへっ。


 Gのレコンギスタの劇場版が最優先課題なのでGレコの記事を1つ書かないと他の記事を書いてはいけないという念能力の縛りをつけたので、テレビでただで見れる機動戦士ガンダムTHE ORIGIN前夜 赤い彗星の感想は2週分の第12話「赤い彗星のシャア」、第13話「一年戦争」をまとめて書いてしまう。OVA版から端折られた部分があるということは受け付けない!それを覚悟でテレビにしたんだろうが!


 というか、日曜日にオリジンがテレビでも最終回になったということで、グーグル先生に目をつけられて過去のオリジンのマンガ版の最終回の感想の記事のアクセスが伸びた。

nuryouguda.hatenablog.com

安彦良和さんは常々、「アニメのニュータイプ思想への路線変更はガンダムらしくない」とか「スポンサーの都合でガンダムらしさがゆがめられた」「だから本当のガンダムを僕がリアルに描く」と発言していた。だから、すっごく楽しみだった。どれくらい楽しみにしていたか、具体的に言うと、創刊号から表紙込みで、ガンダム・ジ・オリジンを全部切り抜いて保存していて、愛蔵版を買わないで済んでいたくらい。
安彦良和原画展に行って原画集も買ったしサインも貰ったし、原画展の隅っこで車待ちをしている先生に偶然会って10分くらい直撃で創作の秘訣を聞いたりした。(その節は本当にご迷惑をおかけしました。)
やっぱり安彦良和先生の絵は芸術だと思うし、単行本や愛蔵版より雑誌版の大きいカラーで保存したくて毎号購入して切り抜いていたんですよ。最初から最後まで!

 と成れば、当然アニメ版オリジンの最終回にも早々に決着をつけねばならんが、Gレコがあるのでな。日曜日のアニメの感想が木曜日になるのも致し方ないというものさ。最新作が常に最高傑作。それが富野由悠季というアニメ監督だ!
 なので、安彦良和監督のオリジンには、いささか解釈違いがあるので、それを書いていきたいのだが、そういうネガティブなことを書くことに生産性はあるのか?と悩みながらとりあえず書庫からオリジンの雑誌切り抜きを引っ張り出してきて、オリジンの過去編ラストと第1話からガルマが死ぬまでと、とララァが死んでからラストまでを読み返してみた。
機動戦士ガンダム THE ORIGIN(14) (角川コミックス・エース)

 っていうか、これ、萬画版オリジンの1話にもつながらないじゃん。どうーすんのさ。萬画版オリジンのアムロは1話から留守がちなテム・レイの書斎に侵入してザクやガンダムの図面をハッキングしてたのだが。
 オリジンのラストのアニオリのアムロは一週間戦争終了後くらいの時期にサイド7の実験区画に特に計略もなく侵入しようとしてガンダムを知っているとバレてめっちゃ怒られた上に、自宅のコンピューターをごっそり没収される。



 アムロの家はオタクが一人で生活している家なので、クソみたいに散らかってたのだが、その殆どが更地になるくらい地球連邦軍に没収されてる。
 でも、萬画版オリジンの最初のアムロの部屋はやっぱりクソみたいに散らかってた上に、コンピューターもめっちゃある。
 つながらないじゃん。


 一週間戦争から、9月のシャアのサイド7襲来までの間にコンピューターを購入し直して、改めて散らかしたの?馬鹿なの?
 なんか、アニメにするからアムロの出番を出そうとして、雑に出した感じが否めない。ていうか、宇宙世紀の歴史を揺るがすほどの天才メカオタクの天パが連邦の下士官くらいに策で負けるとは考えがたい。つーか、そこで天パが大人しく引き下がっているのも主人公として弱すぎる。だって、天パの性格を考えると、コンピューターを没収された時点でブチ切れて、速攻ジャンク屋に行ってコンピューターを組み立てなおして、ネットにハッキングし直してクラウドに保存してた予備データをサルベージするくらいのことはするだろ。νガンダムを設計する男やぞ!あんな、ちょっと怒られたくらいでとぼとぼ帰るのはアムロの性格として解釈違いだなあ。殺人2回めでコックピット狙いする男やぞ!
 ていうか、そもそも、一週間戦争の時点でガンダムっていう単語を知っているのも、不用意に発言するのもおかしい。
 だいたいガンダム地球連邦軍の反攻作戦の要であり、メチャクチャ予算と会社が投入されているし、実際資料でもガンダムの部品の製作会社はバラバラなんですが。オリジンではアナハイム社で統一されてるのもどうかと思うねえ。ていうか、一週間戦争から南極条約会議の間にガンダムの基礎設計ができてるわけ無いだろ!(というのはTV版の設定で、オリジンでは一年戦争の前からテム・レイはほぼ独力でガンダム作ってたんだけど)(エンディングのスタッフは何者なんだ・・・)


 まあ、ガンダムの幻の正規パイロットのケンプ中尉を出したのはファンサービスと言えなくもないのだが、この時期にパイロットで内定してるってのもおかしい気がするし、そもそもケンプ中尉、オリジンの1話で顔も出ないまま2コマで死ぬ。


 あと、終盤にサイド7に集う人たちに「ホワイトベースで何何する」ってテロップが出るのがダサい。たしかに、仲間が集まるのは七人の侍みたいで面白い要素ではある。でも、エンディングの後、実体のホワイトベースが出る前にテロップでホワイトベースって単語を出しちゃうのは演出として、ぼかぁどうかと思うなあ。結局ガンダムを知ってる人の身内がターゲットの狭い歴史オタクの作品だということがわかってしまったなあ!

  • V作戦の解釈違い

 ドズル・ザビ中将が(キシリア機関とは独立して)地球連邦軍モビルスーツ開発計画のV作戦について情報を入手して、シャア・アズナブルを名乗るキャスバル・レム・ダイクンに「V作戦について調べろ」っていうのも、ちょっと解釈違い。
 TV版やオリジンの序盤を見ても、ドズル・ザビ中将が9月の時点で「V作戦」という単語を赤い彗星と共有しているのはわかるのだが。南極条約の時点でV作戦という単語が、果たして地球連邦軍にあったのかも怪しいし、それをドズルが何の前フリもなく知っているのもおかしい。キシリアから流されたのなら多少納得がいくのだが。
 まあ、この描写はオリジンのマンガ版からあったのだけど。TV版本編では地球連邦軍モビルスーツは9月まで作れてなくて、ガンタンクガンキャノンを含めてV作戦でガンダムと一緒に作ったわけです。でも、オリジンではガンタンクはクソみたいにでかいくせに十数年前に地球連邦軍の主力として配備されていて、ガンキャノンはミノフスキー博士亡命の時に月で旧ザクやMS-04にボロ負けしたわけです。地球連邦軍のMSは糞だなーって思うのが一年戦争時点でのジオンの認識だと思うのだが。


 ルゥム戦役で完勝したドズル・ザビ中将が独力で、何の前フリもなく「地球連邦軍ルウム戦役でMSの重要性に気づいたのだ」って言うの、おかしいと思う。ドズル・ザビはそんなに賢いキャラとして描写されてなかったじゃん。なんでいきなり賢くなるの?
 オリジンの原作版を読み返したけど、キシリア・ザビテム・レイアナハイム社の動きを調べてドズル・ザビに教えたという描写はない。
 しかも、TV版では「MSを作ってなかった連邦がMSを作る」ってだけですごい技術の飛躍だし、警戒するのは当然だけど、オリジンの連邦軍一年戦争の前にショボいMSのガンキャノンドズル・ザビの部下の試作型旧ザクに完敗しているので。普通の心の動きだと「どうせショボいやつしか作れなかった連邦だし、新型もショボいんじゃねえかな」と思うのでは?ガンダムルナ・チタニウムとかビームライフルとかビーム・サーベルとか教育型コンピューターとかの技術革新の塊だけど、オリジンではボコボコにされたガンキャノンを見ているドズル・ザビが、そういうガンダムパラダイムシフト技術を予見できたとは思えない。(つーか、実際にアナハイムとかのガンダム開発情報をキシリア機関とかが諜報できていたら、9月まで戦争が膠着状態になる前にガンダム破壊できただろ・・・)(TV版でもスパイのジュダックとエルラン中将がオリジンではキシリア機関と内通していたけど、テム・レイなどガンダム開発計画との絡みはなかったし)

 オリジンのガルマ編を読み返したけど、あんな泣き虫のガルマが、ルウムのゲリラを虐殺して、8ヶ月かそこらでエッシェンバッハ元市長と政治戦をできるくらい圧倒的成長を遂げるのはやっぱりおかしい気がした。ドップも乗りこなせるようになるし。
 オリジンのガルマはエッシェンバッハが北米ゲリラと内通していることも知りながらパーティーをするような腹芸をできてたので、ちょっと成長が速すぎでは?と思うのだが。やっぱりイセリナに惚れてハッスルしたのかなあ・・・。
 赤い彗星からみたらガルマは士官学校の頃から無能だけど、実際の戦いでは、そこそこの度胸があるしホワイトベースを何回か追い詰めたので。過去編のガルマはちょっとマスコット扱いが過ぎる。
 細かいところだけど、人間を掃討する作戦だったらオリジンの序盤の腕や胸に機銃がついているバージョンのザクのほうが良かったかなーって思う。あと、全体的にザクのシールドが原作より細かったよね・・・。プラモデル寄り。

  • ドレンの解釈違い

 ドレン好きなんすよー!俺。
 やっぱね、スター・トレックのオタクとしては船の良さは副官で決まるという考えを持っています。なので、機動戦士ガンダム赤い彗星のシャアが武将としてバリバリMSでも戦いながら指揮をとるのをフォローする歴戦の叩き上げのおっさんのドレンという関係がすごく好きなんスよ。そして、赤い彗星がガルマに意地悪するのもなんとなく黙認するドレンとの共犯関係、萌えますよね。
 オリジンでもプールサイドでイセリナのことをちょっと小馬鹿にした感じで胸毛を強調しているドレンが赤い彗星に紹介するのもルパンと次元みたいで良かったんだけどさあー。
 やっぱり、マリガンみたいなモヤシでは赤い彗星の副官は務まらないんだよなあ。クワトロ・バジーナ大尉は自分が副官のポジションでのんびり反政府活動してるつもりが、暗殺とか身元バレと昔の女のせいでトップをやらされて、ダメダメな感じになった。ナナイは副官としても優秀なんだけど女を持ち出してきちゃったしなーーーー!(劇としては面白いんだけど)
 赤い彗星のシャアが人生で一番のびのび出来てたのはドレンと組んで各地を転戦して戦果を上げまくっていた頃だと思う。
 シャアが左遷された後にドレンがキャメル艦隊司令になって、久しぶりにシャアと木馬を迎撃できるってなったのに、アムロにドレンたちが虐殺されたの、シャアとしては凄く悲しかったと思う。ドレンは大事なんだよ!

第32話 強行突破作戦

第32話 強行突破作戦

 むしろ、ドレンのオタクとしては奇行に走りがちなシャアに軍人としての作法を教えたのがドレンだとすら思っている。(ドレンがいない時のシャアはジャブローに派手な服で侵入して失敗したり、ニュータイプ研究に没頭して女絡みで人生最大のトラウマを抱えたりしてしまうので)


 オリジンの過去編でもドレンの初登場が「ルウム戦役赤い彗星にはっきり文句を言う叩き上げの現場指揮官」として赤い彗星に認識されていた感じでよかったんだが。(TV版では省略されたけど)
 オリジンアニメの終盤でファルメルの艦長代理を拝命したドレンが、戦闘訓練くらいで顔芸を繰り出して怒鳴り散らすのは、ちょっと歴戦の叩き上げのドレンのイメージとは違う。
 まあ、赤い彗星がいきなり「私は大宇宙の戦士だ。どんな艦よりも速く自由に天駆ける戦士だ」とかトンチキなことを言ったので、引くのはわかるけど・・・。
 その後、脱出したレビル将軍を乗せたサラミスと遭遇した後、赤い彗星のほうが指揮官として落ち着いていてドレンがビビりまくりなのもどうかなーって。船のことはドレンが女房役としてドッシリ構えて支えている上で、赤い彗星通常の3倍でワンパクに暴れまくるっていうバッテリー感が好きだったんだけどなあ。
 なんか安彦良和先生の萬画、すぐ顔芸に頼るのでキャラが弱く見える時がある。


 安彦良和監督は「一番悪いのはキシリア」という風に作劇の伏線をしている。そして、女と戦うのは女、という風に改変して、アルテイシアがシャリア・ブルが乗ってないシムス中尉が乗ってる2代目のブラウ・ブロをやっつけたり、アルテイシアを応援するジオン兵がア・バオア・クーでギレンを殺したキシリアに急遽反乱したり、ってしていた。(結局、ドラマツルギーとしてはアルテイシアアムロの居場所をモニターで見るキッカケ、くらいにしか働かなかったけど。アルテイシア派・・・)


 まあ、キシリア・ザビは悪いんですけど。
 オリジンではキシリアデギン・ソド・ザビ公王がゲルドルバ線に行けと言われて、ギレン・ザビソーラレイで殺されて、キシリアが自分が手引したのにギレンが悪いって言ってギレンを殺したのですが。


 ルウム戦役で捕虜になったレビル将軍が「ジオンに兵なし」って演説したのが、オリジンでは謎だった。まあ、そもそも謎発言なのですが。小説版ガンダムではどうやってレビル将軍がジオンから生還したのかは謎なんですが、一応レビル将軍なりにジオンの国情を視察した上での「ジオンに兵なし」です。
 オリジンでは、レビル将軍、ずっと捕虜ルームに雪隠詰めで、脱出もキシリア機関と、それと内通したエルラン中将の手引によるものだった。ジオンの国情を全く見てないのです。むしろ、ルウム戦役でジオン脅威のメカニズムのMSにボコボコにされて、脱出もジオンのキシリア機関に従っただけ。むしろ、ジオンに翻弄されっぱなしだったのがレビル将軍です。それについて恨みに思ったから戦争継続のために「ジオンに兵なし」と言ったようでもない。そういう感情的な人ではない。一年戦争でのレビル将軍の描写を見ても、戦争をしたがるだけの人物でもない。
 ソーラレイで死ぬ前の2009年10月号の「星一号作戦」会議において、レビル将軍ブライト・ノアに「『ニュータイプの時代』が現実に訪れるなら、それは、戦争なぞしないですむ時代だと私は思いたい」と、テレビ本編と似た発言をしている。なんで戦争継続したのか・・・。
 (まあ、オリジンではキャラクターのブレがひどいんですが)コードギアスだったら、ギアスを掛けられて戦争継続って言えたのだが、そういう萬画でもない。キシリア機関に言えと言われたわけでもないし、戦争継続を望むキシリアマ・クベに恩義を感じたわけでもない。むしろ、ルウム戦役で負けた時に「ジオンおそるべし」って思ってたので。
 謎。


 まあ、百歩譲って、「ジオンに兵なし」の根拠が(萬画版やアニメで描かれてないところで)あったとして、ドラマツルギーとして弱い。
「ジオンに兵なし」は有名だし小説版設定だし、定説として出さないと盛り上がらない、という面もあるので、仕方なく出した感がある。(コアポッドもそうだよね)
 ただ、問題なのはこのアニメは赤い彗星が主役のアニメなのです。オリジンの萬画版としても、過去編の主役は赤い彗星。その赤い彗星がラストにレビル将軍を一旦拿捕するのに、「最高の政治ショーをだいなしにするところだった」と言って引き下がるの、主人公としては、政治ショーに参加している南極条約会議に臨むマ・クベキシリアより格落ちに見えないか?
 まあ、安彦良和先生は歴史の人なので、切った張ったより「政治ショー」を描きたかったのかもしれないけど。事情を知らないキャスバルがレビルを逃したら戦争が続く、と考えるのは思考が飛躍し過ぎに見える。
 赤い彗星ピカレスクロマンとして描くのなら、これがオリジンアニメや赤い彗星の過去編のラストの主人公の行動としては弱い。見ようによっては逃げてるわけだし。


 赤い彗星のヤバさを強調するなら、赤い彗星と出会ったレビル将軍ニュータイプ的な直感で「戦争を継続してでもこの男を殺さなければならない!」と思うようなドラマ運びをしたほうが単純に僕は興奮できたかなーって思う。なんか、赤い彗星が気取ってそれっぽいことを言ってるだけじゃんって見えてしまった。
 それで、ラストにホワイトベースを出されても、なんか尻すぼみっぽい終わりに見えてしまった。のだけど、オリジンは萬画としては面白いんだけど、じゃあオリジンをベースに一年戦争をアニメーションでやり直すのが正しいのかって言うと、結構矛盾や脱線も多い萬画なので、それには賛成できかねるなあ。作画は修正するとしても斧谷稔絵コンテはいじってほしくない。


 オリジンはアメリカで売るために作画のいいガンダムを作る、という企画で始まったわけだけど、萬画を15年ぶりくらいに読み返してみると、本当にアメリカで売れるのかなあって思った。いや、実際の売上は調べてないんですけど。

参考
www.itmedia.co.jp

Mobile Suit Gundam: THE ORIGIN volume 1: Activation

Mobile Suit Gundam: THE ORIGIN volume 1: Activation

Mobile Suit Gundam: THE ORIGIN, Volume 8: Operation Odessa

Mobile Suit Gundam: THE ORIGIN, Volume 8: Operation Odessa



 安彦良和先生はたしかに絵はうまいんですけど、萬画としては結構、読むのが難しい。萬画というよりむしろモーションコミックなので、視線誘導を頼りに、2pに渡ってセリフや擬音なしで、画力だけを頼りに戦闘シーンが描かれたりしてる。雰囲気としては高度だしいいんだけど、僕がマンガを読み慣れてる日本人だから読み取れているだけで、アメリカ人に売れるのかはちょっとよくわからない。アメコミやバンドデシネの作法とも違う気がするし。漫画家の経歴としても安彦良和先生は生粋の漫画家というわけではないからなあ・・・。
 吹き出しじゃなくて直接背景にセリフのネームの文字を貼り付けたりという演出も多いし。(その演出効果の批評をするほどマンガに詳しくはないのですが・・・)
機動戦士ガンダム THE ORIGIN(1) (角川コミックス・エース)


 あと、久しぶりにオリジンの序盤を読み返したけど、ガンダムがザクと結構、無言で組み手して戦う描写が序盤には多い。これはアクションとしては(読み取れたら)面白い。(省略気味の線の作画で説明もなくガンダムの肩からミサイルが出てきたりするので、ミサイルか、単なる丸い線に見えるかで印象が違うんですが)
 でも、序盤は一対一でモビルスーツが組み手するのが面白かったのだが、終盤でモビルスーツの数が戦場で増えると、高速機動兵器のくせに密集しすぎでアホみたいに見えるジャブロー戦とかア・バオア・クー戦になってしまい、うーん。アニメだと速度が表現できるけど、マンガだと速度が出にくいから物量で表現してしまうのだろうか・・・。


 なんか漫画の演出の話にそれてしまったのだが、「ジオンに兵なし」の根拠が曖昧だし、ドラマツルギーとしても盛り上がらないって感じがしたということです。
 ちなみに、小説版ガンダムの「ジオンに兵なし」演説は1巻の140Pから2ページ半に渡って怒濤の富野節でワーーーーッ!っとまくし立ててます。富野喜幸監督も若かったし初めて書いた小説なので、レビル将軍の考えなのか、富野監督のその当時の哲学なのか、なんか混じってる感じで、これはこれで微妙というか、変な独特の味わいがあります。ただ、小説版のほうが、オリジンより、ジオンに兵なしの論拠が宇宙観とか人間観とか人類の哲学とかも絡めてまくしたてられている(富野小説の特徴だが)ので、多少説得力がある。長いけど。
機動戦士ガンダム〈1〉 (角川文庫―スニーカー文庫)

 小説版のレビル将軍の演説はジャブローから南極に対して送られたもので、ルナツーから放送されたオリジンとはちょっと違う。あと、小説版では地球からジオンに帰国したギレンに南極の会議を任されたキシリアは「ジオンに兵なし」演説を聞いて怒ってテーブルを蹴り倒したらしいので、オリジンで戦争継続のシナリオを書いたキシリアの思惑が正反対に描かれている。なんでだろうね。


  • 歴史と宗教の解釈違い

 これが一番デリケートなんですけど。TV版では萬画版から細かくセリフをカットされているんですが。
 デギン・ソド・ザビ公王はルウム戦役の勝利の後ギレンに「早期講話」と言っていて、ギレンに反論されて、「そういうことを言って誤ったのだ!ナポレオンもヒトラーもトージョーも!」と言ったんですけど、東條英機大将はポリコレに配慮してアニメ版では省略された。あと、デギンがギレンを評してキシリアに「ダイクンの無念が悪魔に変じてあれに憑いたのだ」も割りと重要そうなワードなのに省略。


 で、捕虜になったレビル将軍が唯一ジオンの内情を知ったといえるのが、デギン公王との牢屋での会話なのだが、これが宗教ぽい。ポリコレに配慮してアニメでは結構省略されてるのだが。

レビル「公王陛下のお気持ちはよく判りました。人類史上最悪のこの戦争はやめなければなりません。ジオン・ズム・ダイクンの教えを信じる者達を宇宙に棲む悪魔と思ってきた多くの地球市民は公王陛下のお考えを知るべきです


デギン「知らしめて貰えまいか。それを汎く世界に」


レビル「…………」


デギンカインとアベルの昔から人の反目と争いは絶えず。バベルの塔の崩壊このかた、人と人は判りあえずにいる……。神と人との契約の地がそうであるという理由から長い間、最も血腥い争乱の地となった。なげかわしいことだ。ジオン・ズム・ダイクンは宇宙移民の導き手の任を自覚した時にそうした呪縛からの解放を考えた」

 この後、スペースコロニーアメリカ新大陸になぞらえたような話をして、それが戦争の火種になったので嘆かわしいという話になる。
 アニメでは結構省略されたけど、かなり宗教色の強いことを言っている。それで、虜囚の身では何も出来ないと言うレビルに、デギンは「わかっている」と言い、二人で戦争を収めようと提案して、レビルの解放を匂わせた。



 それに対して、レビルは恩を仇で返すような「ジオンに兵なし」演説からの戦争継続を訴えてデギンを怒らせた。
 オリジンのその演説内容も、宗教色が強い。

地球圏の皆さん。

私は、ヨハン・イブラヒム・レビルです。

連邦宇宙軍大将として、友邦ルウム救出作戦を指揮しました。

結果は、大敗でありました。

司令官であった私の作戦と戦闘指揮が原因であります。

ご承知の通り私は負傷し、ジオン本国で捕虜となっていました。

今こうして友軍基地からお話ができているのは勇敢なる我が軍の将兵によって救出されたからであります。

数十万の将兵と多数の艦艇を失いました。

責任は全て、この私にあります。

私がその栄光と誇りを失わしめた友軍によって救出されたのは、神のご加護があったからです。

敗北による喪失と屈辱の汚名を注ぐべしという神の思し召しがあったからです!

もしも再び、その任を命ぜられることがあるならば、私は全身全霊をもって雪辱を期すでありましょう。

現在、南極において休戦条約の交渉が行われていることは知っております。

無論、私も平和を望んでいます。

しかし、現時点での休戦はなりません。

それは「休戦」ではありません!

「降伏」であります!!

それは、長き歴史と文化、文明を有するこの地球市民専制と独裁に屈するということであります。

 キシリアは悪いんですけど。人間の本質的な争いを聖書の時代から例えて、克服しようと、リベラルなことを言ったデギン公王に対して、このレビル将軍の演説は悪いキシリアにそそのかされて、開放された経緯にも嘘をついて神の思し召しだと言う地球至上主義のアラブ人の宗教家というニュアンスになっている。レビル将軍のフルネームはオリジンが初出なのだが。
 なんか、ここらへんが歴史漫画家の安彦良和先生という感じで、地球の旧世紀を引きずっている感じがして、未来社会を描いた富野監督とは方向性が違うなあという気がした。(まあ、テレビでも小説でもデギンはギレンにヒットラーの尻尾とか言うけどさあ)


 エルサレムパレスチナの紛争について嘆かわしいし止めようと言ったリベラルなデギンに対して、むしろ、宗教の話を持ち出されたレビルが内心で恨みに思って聖地の地球と神の意志を持ち出して戦争継続を望んだ、という風にも読めてしまって、ちょっと危険思想かなーって思ってしまった。(地球を聖地にするのはむしろジオン・ズム・ダイクンのエレズムやコントリズムの思想)
 その演説をキシリアの覇権意欲に利用されるのと、キャスバルが「これからは神のない時代(そしてニュータイプの時代になる)」と言うのにも絡んでいて、歴史漫画家の安彦良和先生の思想が良くも悪くも出たなあという気がする。まあ、オリジンの萬画のラストではニュータイプが神のように支配すべきっていうキャスバル・レム・ダイクンの思想もアムロに否定されて、マザコンファザコンをこじらせた兄、という描写になる。でもオリジンのアムロに固有の思想があるのかというと、それもあんまりなくて、劇場版のアニメの演出を引用してお茶を濁して終わった感じがある。


 それで、ガンダムとしてもむしろオリジンで安彦良和先生がこういうことを書いたので、福井晴敏先生がガンダムユニコーンでアラブ人の恨みを宇宙世紀に持ち込んだり「ニュータイプが神に等しい存在になる」とかいうオカルトを描いた元凶になってしまったのかなあ、とか思ってしまった。安彦良和先生と福井先生はケンカ別れしたけど、似た者同士なのかもなー。
 また、レビル将軍民族主義で宗教家だとすると、テレビ本編のリアリストなレビル将軍と性格設定が食い違ってくる気もする。(まあ、白人は日常的に神様の話をしたがるってだけかもしれないのだが)(あと、オリジンの作戦会議でレビル将軍レーニンの弱い環の話を引用してきたりもする)
 しかし、宗教的にレビル将軍デギンに対して怒っているとしたら、オリジン終盤での事実上の降伏を申し出てくるグレート・デギンとの会談の前に「公王は名誉を重んずる人だ」と、レビル将軍が尊敬の態度を見せるのもおかしく見える。
 あと、レビル将軍が地球至上主義というのも、まあ、本編のTV版では明言されてないけど、他のガンダムのゲームや小説に於いて、レビル将軍ティターンズの元になったようなアースノイド至上主義の軍閥勢力とは反目していてスペースノイドにも理解を示す人物、とされることが多いので、そこも違うな、と。
 うーん。
 まあ、この演説がどれくらい本心なのかもよくわからないし、単に安彦良和先生が一年戦争につなげるための方便として言わせただけかもしれんのだが。


 オリジンのアニメの演出としては宗教的なワードは言い流した感じで、そこまで強調していないのだが。でも、富野ガンダムだと、宇宙世紀未来社会で、前世紀の問題をリセットしたのに新しい差別や戦争や資源獲得競争やエゴやエコの問題が出てくる、という感じなので。
 富野ガンダムの宗教的にフラット、というか宗教的なワードをわざわざ言わないガンダムに慣れていると、ちょっと、うーん。と思ってしまった。
 まあ、ガンダムZZでムーンムーンの新興宗教とかアフリカ人の社会が描かれたり、Vガンダム新興宗教とか、ラストバトルで遺跡を映したりしているので富野ガンダムに全く宗教がないということも無いんですが。Gレコでは社会システムとしてのマナーの延長に近いスコード教が描かれましたが。Gのレコンギスタの終盤で地球人と金星人が互いに「歴史オタク」「戦争オタク」と罵り合っていたよね。


 やっぱり、キリストやジャンヌ・ダルク萬画を描いた安彦良和先生はそういう思想なのかなあー。
イエス (文春デジタル漫画館)
ジャンヌ (文春デジタル漫画館)


 機動武闘伝Gガンダムは逆に軽率にゴッドガンダムとかゼウスガンダムとかデビルガンダムとかマンダラガンダムとかお国ごとの宗教色の強いガンダムを繰り出して、逆に多神教になってたけど、(流派東方不敗はもともと仏教徒の護法武術)(そしてバーニングガンダムに名前が変わったりしたけど)まあ、それはオリジンとはあんまり関係ない。


 ちなみに僕の宗教は、クトゥルー神話の世界観をもとにしたグノーシス主義です。メンヘラがハマりやすいやつですね!でも内的な魂の修練を目指す信仰心の異端思想なので、多分、高価な壺を買ったり、何かを崇めたりはしないと思います。若い頃は人生に迷っていたのでキルケゴールを読んだり四国を巡礼して般若心経を唱えてきたのですが、神仏は結局「無」だなーって思いました。
(もしくは極大成功教)


「無」と「肉体」と「魂」について描いたガンダム
密会がオススメ!!!!
密会 アムロとララァ (角川スニーカー文庫)

(難しい話は、いつものオチでごまかすぞ)

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 お酒は本日、2ヶ月分のストロングゼロの補給を得たので、昼ごはんのプロテインが欲しいのですが、糖分を取らないと夕方にうつ病が悪化するよね・・・。でも、うつ病がもっとひどかった時期に夜中にラーメンを食べないと眠れない時期があったせいで太ったので痩せなければならないと思う。フォーマルな服の殆どが着られなくなったので・・・・。


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