玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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映画、機動戦士ガンダム #閃光のハサウェイ 意外と面白かった

 まあ、当然ネタバレするけど。徐々に。
 無料公開されていた最初の15分は、ハイジャック犯が類型的な映画らしいハイジャック犯だったし、ギギ・アンダルシアのセリフの拾い方も原作と違っていて、ケネスとギギの会話の曖昧としたところがカットされて直接的になりすぎていたし、ギギがハイジャック犯を挑発しているようにもなっていて違うなーって思った。ハサウェイがハイジャック犯を制圧するところも、微妙にハサウェイが負けそうになってて違うなーって思った。
 小説ではハサウェイとバーテンダーとの会話が小説らしかったけど、それがカットされてハリウッド映画っぽいハイジャック襲撃というありきたりな展開から始まっていたし、取り押さえられた後のハイジャック犯の反地球連邦運動家らしい反骨的なリアクションも描かれずに、なんだかあんまり面白そうじゃなかった。
 なので、かなり期待値を下げていったのだが。


 意外にもそこそこ楽しめた。まあ、1万5千円もする特典満載のブルーレイディスクセットを買うほどではなかったし、プラモデルも大型モビルスーツは基本的に邪魔っぽいので買わんかったが。(せっかくショッピングモールに来たので5年前に買ったタブレットでデレステが動かなくなったのでiPadを買いました。コロナだし、外出はまとめて)


 冒頭15分が35点くらいだとしたら映画は75点くらいの及第点超えだと思った。普段はあんまり映画に点数をつけないけど。まあ、及第点を超えてそこそこ楽しめたという程度の意味です。


 ところで、この映画のタイトルは初代ガンダムの劇場版と同じくナンバリングもサブタイトルもないんだな。三部作で決定しているらしいが。ゲン担ぎか?
機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(1) (角川コミックス・エース)


  • 良かったところ

 とりあえず、褒める所からいっておこうか。実際には良かったところと悪かったところを思い出しながら同時に列挙していくけど。
 ネタバレをしていく。


 冒頭15分のラストで、ハサウェイが空港で刑事警察機構のハンドリー・ヨクサンとゲイス・H・ヒューゲストと会話するところは、座ってテーブル越しに会話していた原作とは違って立ち話であったので、ハサウェイが苛立ち混じりにジンジャエールをストローをつかわずに飲んだら動かしたグラスの向こうにギギを見つけた、という芝居ができなくなっているようで残念だったのだが。冒頭15分の配信ではここで終わるのだが。
 アニメでは立ち話が済んだ後にハサウェイが一度窓の外を見て、振り向きながらジンジャエールを飲むために頭を傾けたら、視界の端にギギが居た、というアレンジになっていた。
 警察と立ち話をするのがいいのか、ソファに腰掛けてするのがいいのかという疑問はあるものの、まあ、アニメだと立ってる人物のほうが書きやすいというのはあるのかもなー。
 とりあえず、ギギが印象深く目に留まる、という原作のエッセンスを違う形で描写しようという工夫が良かったので、ここで冒頭15分の減点気分を反省した。


 あと、まあギギが基本的に可愛い。もちろん、原作よりはもっと強い女というか、ズバズバいう感じになっていたのだが。アニメは内面も文字で描ける小説と違って声に出すか動作にするかしないといけないので、必然的に要素を拾おうとしたらアクションが小説より大きくなってしまうのだが。
 それでもかなりセリフが削られてテンポアップしている。というか、アニメのガンダムを富野監督が小説にするときに解説をいれるというか描写を補完するようなところがある。(全然変えるときもある)
 それの逆バージョンなのでアニメは描写を減らされてる。僕は原作を読んでるからわかるけど、原作を読んでない人にはちょっと唐突な場面もあったかもしれないとか思ったり。アニメではよくわからなかった部分は原作小説の新装版を買いましょう!(宣伝)
小説 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(上) 新装版 (角川コミックス・エース)


 とりあえず、ハイジャック犯に対して挑発するようだったギギだけども、ハサウェイに釘を差されたときに取り乱したりするとか、単なる強いエキセントリックな女というわけでもなく、それなりに恐怖心とか用心深さも残しているようで、そこは可愛い。


 あと、海に面した豪華ホテルのデザインが良かった。閃光のハサウェイを読み終わったときに一番心に残ったのは南国の抜けるような青空と海と、そこを飛ぶモビルスーツだったので。
 ただ、CG作画の海の波がちょっとコピペの連続のように見えて、要改善かなあ。


 
 場面は飛ぶが、モビルスーツの戦闘が怖いものだという見せ方も、色々と工夫があってよかった。


 夜間にマフティーのガウマンたちのMSメッサーがハサウェイに対するブラフも兼ねてホテルを襲撃するが、ケネスの素早い対応と、彼に活を入れられた地球連邦軍ダバオ基地空軍のグスタフ・カールの民間人を無視した荒っぽさで市街戦になるのだが。ハサウェイがギギを連れてモビルスーツの足元を逃げ惑うというのは映像として迫力があった。
 マフティー・ナビーユ・エリンであるハサウェイが要請した戦闘だが、泣いてしまうギギを見捨てられずに抱きしめるシーンはロマンチックだった。


 あと、アニメではF91のシーブックの父親の死因程度でしかあまり描かれてないが、ビームライフルやビームサーベルの飛散したビームの欠片も人間を殺す危険物なのだが。それが今回のアニメでは街中に細かい火災が連発するという描写で丁寧に映像化されていてよかった。


 特に、ギギが落としたハンドバッグがピンポイントで燃えるというアニオリが良かった。古典的な芝居だけど、戦場で女の子のハンドバッグが燃えてしまって男が「そんなの、今は気にするな」というのが、ガンダムらしからぬ乙女チックな可哀想描写で良かった。同時にハンドバックだけをピンポイントで燃やすようなメガ粒子の飛散が多発しているというのが普通に怖い。
 まあ、その後ちゃっかり新しいハンドバッグを着替えと一緒に調達してくるのもかわいい。


 いや、ガンダムでは「流れ弾で人が死ぬ」っていうのは割と定番だけど、そこを「お気に入りのハンドバッグが燃えちゃって凹む」という乙女チックな悲しみにアレンジする態度は嫌いではない。ギギが単なる超然とした女神というわけではなく、親近感を増す感じのアレンジ。



 ファッションと言えば、マフティーの組織のメンバーの若者たちも個性的な髪型や服装や人種をしていて、それがマフティーという組織の若々しさや自由さを感じさせていてよかった。
 敵地に居た時は気を張り続けていたハサウェイだが、そういう若い仲間たちの基地に戻った時の表情は、マフティーのリーダーではあるがリラックスして見えた。女子がトップレスかどうかは、やっぱり世界配信コードかなあ。それはあまり問題ではないが、ハサウェイを支えて続けていた女性のケリア・デースさんはショートカットにしろ、もうちょっと可愛く描いても良かったんじゃないかな〜。愛くるしい笑顔が特徴という原作だったけど、ちょっと大人っぽくなってる。早見沙織さんなのはいいけど。むしろメガネっ娘のミヘッシャ・ヘンスの方が可愛い。まあ、メガネを掛けたり帽子をかぶらせたり面白い髪型にしてみたり、キャラクターデザインで小説よりも描写を増やしてあって、その雰囲気はいい。スパイ物としての緊張感はあんまりなかったけど、フィリピンのおもしろい景色を転々とするのは良かったか。


 タクシーの運転手も面白い感じだった。ボートの少年ももうちょっと面白かったらもっと良かった。世間で生きている一般人。



 マフティーの南太平洋の基地のロドイセヤはマフティーの仕掛け人で元・地球連邦軍の将軍である謎の老人クワック・サルヴァーが軍籍をコンピューターベースから抹消した廃棄された基地の後だが。
 この小説が出た後のOVAの0083で一年戦争の最初のコロニー落としがオーストラリアに落ちたという後付がされたために、アニメのロドイセヤはコロニーの残骸がジャングルと同化しているような廃墟に作られたということになっている。
 アニメオリジナルだけどコロニーの残骸のメガストラクチャー感は好き。


 
 まあ、かなりの部分、ギギが可愛いというところでの加点であるが。


 すげーなって思ったのは、ガウマンが敗北した戦闘の後、ハサウェイにジャケットで包んでもらって寒さに泣いていたギギが、ケネスが来たのを見やるとハサウェイのジャケットをあっさり地面におっぽりだしてケネスに抱きついて甘えるところ。ここは小説でも、描写はあっさりめなのに、「この女…」という感じだったし、地面に捨てられたジャケットを着るハサウェイの描写は少ないがみじめな気持ちの強い場面。


 そこに逆襲のシャアでのクェス・パラヤがハサウェイの元を去ってシャアのところに行く回想シーンが挟まれてて「ただの予告編のサービスシーンだと思っていたけど、ここで使うのか!」と舌を巻いた。そこでハサウェイの顔が夜明け前の闇の中で真っ黒になるのもトラウマ感が出ていて味わい深かった。


 そういう感情の動きの描写はとても良かった。やっぱり友達にもなっていないような行きずりの男女関係でも他の男の方に走っていかれると最悪だよな…。



 あと、かなりのセリフが削られていたけどガウマン・ノビルが津田健次郎さんということもあり、レーン・エイムとペーネロペーに同乗していたコントのような戦闘でもいい味を出していた。


 レーン・エイムを煽るハサウェイは富野節だねえ。Ξガンダムを起動させて、マフティーとしてグスタフ・カールのパイロットに宣言する所があればもっとヒーローっぽかったんだけど。やっぱり大人のガンダムはあんまり見栄を切らないのかなあ。



 大人のガンダムなのでエレベーターのホテルの男女が不倫してるっぽいのはまあ、原作通りだけどよくがんばった。


  • 悪かったところ

 冒頭15分で話題になった紫色のギャプラン。みんな、新作映画に昔のモビルスーツが出ると喜ぶよな……。
 戦術的に大気圏上層から降りてくるスペース・シップのハウンゼンを襲うためにブースターを装着できるギャプランを用いるのはいい。論理的だ。
 しかしなあ…。多分2カットしか出てこないからだと思うんだけど、CGで描くにしても汚しが足りない。新品に見える。原作だと払い下げられたベースジャバー(モビルスーツを乗せることができる飛行機、くらいの意味のメカ)で錆びついていて(宇宙世紀の超合金メカがなんで錆びるんだって気もするが)、フロントガラスも薄汚れている中古品という描写なんですけど。
 ハイジャック犯が汚れた中古払い下げのアンダーグラウンド流通のボロいベースジャバーを使うか、それとも小ぎれいな可変MSを使うかで、その組織の経済力の描写がまるで違ってしまうでしょうが。(原作とは違って偽マフティー組織もアニメでは強化されるのかもしれんけど)
 うーん。ギャプラン。割とメンテナンスが難しい試作機なんだよなあ…。(ロザミア機は強化人間用で、ヤザン機は死角が弱点だったし)25年もメンテナンスできるんだろうか?まあ、Zガンダムでレコアさんが乗ったゲルググとか逆襲のシャアのホビー・ハイザックのように中身は新型のレプリカという可能性もあるんだけど。
 しかし、2カットだけのギャプランにこれだけ文句をつける俺も気持ち悪いな。



 世界配信のためのコード規制なのかもしれないけど、ギギが全裸ではなかったのが中途半端でよくない。何をするために下着になっていたのかがよくわからない。中巻を読むとわかるがギギは自然児的なところがあるので全裸になりたがるのだが。ハサウェイはそれを咎める。そこが中途半端だなと言う気はした。




 モビルスーツの戦闘が恐ろしいものだ、という描写はある。また、市民を無作為に近い乱暴ぶりで拉致したり銃撃するマンハンターも恐ろしい。なので、対人有人機銃座を腰に装備したアニメオリジナルのマンハンター用ジェガンも恐ろしい。それはわかるんだが、そのジェガンだけがマンハントするのではなく、その足元には歩兵のマンハンターや車両もあって、普通に同士討ちの危険が気になるし、そもそもジェガンは大きすぎるので市街地を歩きながら銃撃するのはよくわからんと言うか、機銃の銃撃より、普通に建物を壊す効果のほうが大きいのでは?
 まあ、アニメ化するたびにジェガンは種類を増やす性質があるから仕方ないのかもしれないけど、ちょっと無理くりで運用が間抜けな気がした。同じデザイナーでもパトレイバーくらいのサイズならわかるんだけど、中途半端な運用をしやがって。
 しかも、モビルスーツを出してまでやってるマンハントと言う割に、案外あっさり引き上げてハサウェイもそこまでピンチという印象にはなってない。ハイエースみたいな車両でいきなり襲ってきて銃撃しながら人をさらってさっと帰るのはわかるけど、そこにモビルスーツはやっぱり大げさすぎるというか。このジェガンはあんまりジャンプしないで歩いているので機動力としてものろまな気がする。



 原作では飛行能力を有するペーネロペーが初陣でガウマンのメッサーを擱坐させるのだが。いや、戦闘自体は2台のグスタフ・カールのビームサーベルで決着していて、ペーネロペーは最後にミノフスキークラフトモビルスーツとして浮遊しながらメッサーの頭を蹴って昏倒させるだけなのだが。
 ペーネロペーの怪獣的な飛行能力は強調されていたけど、萬画みたいなキックはやらないのかー。飛行するだけでなくホバリングして格闘できるっていうのもペーネロペーの特徴だと思うけど、今回のペーネロペーは戦闘する時間帯が夜ということもあり、あんまり全貌がはっきりしていなかった。
 まあ、視点がモビルスーツの足元を逃げ惑う人間なので、モビルスーツの戦闘ははっきりしていなかった。暗い中、巨人の足だけが炎に照らされてビームサーベルのスパークが視界を焼く感じで、リアルなんだけどよくわからないし、ヒーロー性はあんまりない。


 ラストのペーネロペーに対するクスィーガンダムの身代わりの術忍法も、暗くて速すぎたので、ペーネロペーのパイロットのレーン・エイムと同じく、視聴者も何が起きたのかよくわからんかった。一応言葉でハサウェイが後で説明するんだけど、小説を読んでないとわからないのでは?ハサウェイの技量を見せるトリック技だが、地味に終わってしまってちょっと残念。


 まあ、ヒーロー性はないんだけど、ガメラ3のイリスみたいな飛行怪獣っぽさは強調されてて、そこは良かったけど。


 ハサウェイのクスィーガンダムを空中で起動させるシーンはペーネロペーの襲来と海面落下とのタイムアタックであり、激震しているスペース・カーゴの中を移動して、クスィーガンダムによじ登るというのはクリフハンガー的で映像バエしそうだったのだけど、なんかカメラの揺れも少なくて、悠長にパイロットスーツを着替えていて、あんまりピンチっぽさの派手さはなかった。


 海面すれすれまで落ちるところとか見たかったんだけどなー。



 しかし、大人のガンダムということでモビルスーツの戦闘にヒーロー性を持たせない、という方針なのだとしても、モビルスーツが出てくると機動戦士ガンダムユニコーンの澤野弘之さんの派手な楽曲が鳴り響いて、ちょっと鬱陶しかった。人間ドラマパートの音楽が静かな分、「ここからはアクションシーンだよ!」って強調しすぎるような曲はちょっと浮いていた。その割にアクションにはヒーロー性があまりないし。うーん。
 ガウマンが敗北して連れ去られるところでも、小説ほどモビルスーツの擬人化はされていなかったし。ケネスの馬の印象のほうが強い。まあ、部下の恫喝などに乗馬鞭を使う理由付けとしてはわかりやすくなっている。



 ケネスが赴任したのでグスタフ・カールも市街地にミサイルをぶっ放すようになったのだが、彼のサディスティックな面は直接的にはガウマンを気絶させてペーネロペーに放り込む場面程度で、マフティーの情報を集めるために警察組織に「言うことを聞かないと爆弾をぶち込むぞ」と恐喝する場面はカットされてて、うーん。ケネスの紳士的な女性の扱いと暴力性の二面性は面白いんだけども。続編に期待か?


 メッサーのコックピットは別に頭である必要を感じなかったのだが。原作通りお腹で良かったのでは?むしろ原作よりスタンダードなお腹のデザインになっていたので、お腹にコックピットでよかったような。複座?あー、カーゴに乗り移るときの段取り優先だっけ?


追記※
 やっぱりマフティーの電波ジャックの声は肉声という感じで、YouTubeの宣伝配信よりは加工されてるけど、いっそのことボーカロイドにしたほうが良かったんじゃないのかって思ってる。

  • よくわからなかったところ

 出崎統作品のような謎ディスコ。原作ではギギはケネスとデートをしたものの意外に早くホテルの部屋に戻っていたという程度の描写だが。謎ディスコ。虐殺器官でも謎ディスコがあったっけ?謎…。


  • だいたい面白かったんだけど

 文句のほうが多いような文章になってしまった。いや、でも、鑑賞した気分としては「ツッコミどころも多いものの、映像鑑賞体験としては楽しかった」と言う感じで、悪い気はしなかったので。まあ、いいんじゃないですかねー。


 面白かったし褒めてるつもりだけど、文句も多いっていうのがガンダムのオタクの悪癖ですね。うん。ごめんよ…。



 しかし、映像では格好良く飛んでるふうに見えたΞガンダムとペーネロペーだけど、展示されていた模型を見たら、やっぱり翼のモチーフは各部にあるけど全体としては無理やり飛んでる感じはいなめないなあ、って思った。


HGUC 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ Ξガンダム(クスィーガンダム) 1/144スケール 色分け済みプラモデル 2530614

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