Gのレコンギスタ劇場版 第4部「激闘に叫ぶ愛」の長文感想ブログを書くには、もうちょっとテレビ版と比較したり第三部の絵コンテ残り200ページを読んだりしてまとめないといけないんだけど。
ちょっと小ネタを書きます。小ネタで宗教の話をするのはちょっと良くないけど。
- ダンテの神曲を模したロザリオ・テン
劇場版4部でヘルメスの薔薇のレリーフが純白(というか太陽光を浴びていろいろな色合いを反射するので全体的には白く見える)に変更されてたけど、アイーダさんが
「旧世紀のままの意味なら…」って絶句してたけど、ダンテの神曲かな?
たしかにGレコは「そしてー、月天金星天恒星天さーらーなーるー」っていう、少女革命ウテナのバーチャルスター発生学みたいに地球から宇宙を上昇していくアニメなので。
Gのレコンギスタってタイトルからしてスペインを中心にしたイベリア半島のキリスト教国によるイスラム教に対する数百年続いた再征服戦争のレコンキスタを借用しているので、宗教的な意味合いはあるけど、富野監督は宗教的にもめるのはめんどいので「単に語感を借りただけ」みたいなことを言っているけど…。
あの、煉獄山のような軌道エレベーターを登り切って、そこからクレッセント・シップで太陽に近い金星のオーシャンリングに行って、そこにヘルメスの薔薇の象徴である薔薇のレリーフがあって、それの色が白に変更されていて、おまけにアイーダさんが「旧世紀のままの意味なら…」って絶句するのって明らかにキリスト教文化を意識してるだろ!
劇場版のGのレコンギスタって映画館で買えるサウンドトラックの曲名を「青いヒヤシンスの花言葉」にしてるくらい、花について意識的ですよ!(まあ、そもそも7年くらいかけた企画段階の途中では岡田磨里さん原案のクンタラによるフラワー革命が主軸だった時もあるし、フラワーは重要)
ダンテの神曲くらい高校生の時に学校の図書館で読んだよ!(エヴァンゲリオンのオタクの中二病だったので)
金星の近くのオーシャンリングのロザリオ・テンにあるヘルメスの薔薇のレリーフがテレビの赤から、劇場版 Gレコで、ダンテの神曲の神の象徴である白薔薇に変更されてて、旧世紀時代のままの意味なら、クンパ大佐の
「神にでもなれる方だったのですかな?」という第2話のセリフがカーヒルを飛び越して、地球から金星のラ・グーに向けた超遠回しな嫌味になってて、おじいさんBLじゃん!
やばいな。
そもそも、カーヒル・セイントって名前の時点でキリスト教的にヤバいんですけど。セイントって…。(アッバース朝の第19代カリフのカーヒルとの関係はめんどくさいので考えたくない)
で、ビーナス・グロゥブのオーシャン・リングでラ・グーに対して20年前に弱肉強食を主張して造反した「ピアニ・カルータ事件」の主犯で、トワサンガでもキャピタル・アーミィでも暗躍していたクンパ・ルシータ大佐がアイーダさんが語るカーヒル・セイント大尉に対して「神にでもなれるような方だったのですかな?」と言ってアイーダさんを絶句させていたけど。
金星のラ・グー総裁を演じている子安武人さんは幸福の科学の大川隆法総裁先生の前世に声が似ているらしく(じゃあなんで現世の大川隆法さんの声は子安じゃねーんだよ)、大川隆法総裁の前世である最高神エル・カンターレとかが登場する「仏陀再誕」とかのアニメに出演しているんですが。幸福の科学が作ったヘルメス神のアニメの声も子安さんが当ててる。(新興宗教への信仰はともかく、ギャラがいいので割と声優が豪華で面白いことは面白い)
まあ、金星と言う磁気嵐と硫酸の雨がひどくて住むことができない惑星の近くのオーシャン・リングという過酷な環境の巨大スペース・コロニーに人類を永遠に生き延びさせるために働いて住んでいる人たちの心をまとめるためには、ラ・グー総裁は200歳近く生きて神を自称してロザリオ・テンには神の薔薇のレリーフを飾ったり、旧世紀の悪徳(ジオンのザク)を退治する像や宇宙世紀以前の西暦世紀の宗教的絵画や彫刻など美術品を収集して権威付けをするのも必要なんだろうな、と視聴者としては分かるけど。
幾多の戦いを潜り抜けて金星に到達したアイーダさんがその頂上で純白に光り輝く薔薇を見て「旧世紀のままの意味なら…」って絶句するのは明らかにダンテの神曲を読んでるという描写だよね?まあ、ロボットアニメなので宗教的にクレームをつける人はGレコをあんまり見ないと思うけど。映画の公開から一週間たったけど、ツイッターでも「ヘルメスの薔薇ってダンテの神曲じゃん」って突っ込んでいる人が僕以外にいなかった。いや、めっちゃもろに神の薔薇をデカデカと映してただろ!
で、そんなダンテの神曲の神に自己投影しているようなラ・グー総裁に対して「人類は弱肉強食の戦いで強化するべきだ!」って言って地球に行ったピアニ・カルータは宗教的な意味合いがかなりある。そもそも、ラ・グーも富野監督が初めてロボットアニメの監督をした勇者ライディーンの古代の1万2千年前のムー大陸を統治していたラ・ムー王から来ているわけで。ムー帝国のムートロンエネルギーでの絶対平和支配は妖魔帝国という反動勢力を生み出した、みたいな話でもあるので。光あるところに影があり、ラ・グーがオーシャン・リングを人類の文明のアーカイブのように平和に統治していたらピアニ・カルータ事件が起きて、それに影響されたジット団がジャイオーン(G-アイオーン)やマズラスター(アフラ・マズダ)、G-ルシファー(堕天使)とかジーラッハ(魔女)とかダハック(魔龍)の名前を関したロボットを作ってレコンギスタに向けて決起したりする。
ダンテの神曲の至高天の薔薇を模した巨大なレリーフを飾ってヘルメス神を気取って人類をまとめようとしているラ・グー総裁に反旗を翻してトワサンガやキャピタル・テリトリィで暗躍していたクンパ・ルシータ大佐がカーヒル・セイント大尉について「神にでもなれるような、お方だったのですかな?」って極端なことを言うのは、カーヒルの恋人だったアイーダさんに対しての悪口と言うだけでなく、20年前に分かれて金星と地球に離れたラ・グー総裁に対する物凄い遠距離で遠回しなクンパ大佐の嫌味なのかもしれない。
めっちゃこじらせてるな、クンパ大佐。
クンパ大佐、自分でヘルメスの薔薇の設計図をばらまいて金や地位を手に入れて、地球で戦争が起きる火種を撒いておいて、キャピタル・アーミィが軍拡してると「地球人は絶滅してもいい動物の部類に入る」ってキレるから。自分で火種を撒いておいてなんでキレるの。めんどくせーおじさんだな。
- 富野監督とキリスト教
市川紗椰さんと富野監督の富野作品についての対談動画で、富野監督は聖戦士ダンバインを作ったときに「トールキンの指輪物語にかなわない」「日本人と西洋人では宗教観や紙についての感覚が全く違うと思い知らされた」とおっしゃっている。
まあ、そうなんですけど、富野監督はそのあと何作かバイストン・ウェルを舞台にした作品を作り、リーンの翼もアニメになった。リーンの翼では特攻兵だった迫水王が日本国天皇を求めていたけど、まあ、それも神道というか太陽神信仰ですね。
天皇陛下は一応、天照大御神の子孫と言うことになっている。アマテラスオオミカミは女神なので、天皇は別に女性でもいいような気がするけど、むしろエンプレスの方がエンペラーよりヤバいかもしれない。
富野監督は次回作は卑弥呼大和だっておっしゃってるけど…。まあ、太陽の巫女神をあがめる文化はあるよね。
あと、富野監督は西洋人の感覚と違うと言っているけど、娘婿の人は外国人らしいので、お孫さんも外国の血が入っていて、そこも含めてキリスト教の感覚は普通の日本人よりも身近かもしれない。まあだからといってロボットアニメにダンテの神曲のモチーフをぶち込む80歳というのはヤバいんですけど。
いや、マジンガーZの永井豪先生もダンテの神曲のマンガを描いていたので神にも悪魔にもなれるロボットとしてはキリスト教要素はあるのかなー?
- 太陽と地球
ヘルメス財団は地球という決定的に貴重な、生物のエネルギーに満ちた惑星を若い太陽系にワープ(というかむしろイデオンのデスドライブ)させることを目標に、地球より太陽に近い金星の空域で1,000年くらい太陽光発電でフォトン・バッテリーを充電していて、そのあと一万年くらいかけて月くらいの大きさのビーナス・グロゥブをフラーレン構造体のバッテリーで埋めてエネルギーを溜めたいらしい。
(太陽が燃え尽きるのと、ビーナス・グロゥブのフォトンバッテリーが充電完了するのと、地球のマントルの地熱が冷え切るのが、どっちが早いのかはよくわからないけど。太陽はたぶんまだ40億年くらいは核融合できると思うので、そんなに一万年程度の短いスパンで急いで脱出する必要はないと思うけど)
まあ、天文学や科学的なことはアニメとしてのGレコはあんまり厳密さを求められないのですが。(大統一理論の数式は厳密さを求められるのでなかなか解かれてない)
今回の映画のGレコ第四部でアイーダさんが沖浦啓之さんの作画で「触れるくらいのお星さまのおかげで…」って宇宙を眺めて言うんだけど。
つまり、恵みのエネルギーを与えてくれる太陽、大日如来に触れるくらい近い場所のハビタブルゾーン(生存可能領域)に地球があることで人類が生き延びられてきた、というニュアンスのシーンです。
これはキリスト教か神道かとか以前の素朴な太陽神信仰のことですけど。
劇場版第四部のエンディング主題歌の「カラーリング バイ G-レコ」でも「無限夢幻連なる銀河を」って言ってるけど、銀河の星々は遠く離れて触ることができないけど、太陽は充電できるくらい近くで地球の生命をはぐくんでくれたお星さまなんだよな。だから夢幻の宇宙の中で太陽と地球はとても貴重で奇跡的な関係なんだけど。
割と人類共通の素朴な太陽神信仰の延長線上として金星まで太陽に近づいて太陽光発電でフォトンバッテリーを何万年も充電しようという異常発想になるのがGのレコンギスタのちょっとヤバい所なんですけど。
なので、ヘルメスの薔薇のレリーフは明らかにキリスト教からの引用ですけど、太陽神の信仰としてはむしろ大日如来信仰の密教の要素もある。ジャポニズムアニメでは割と雑に東西の宗教を混ぜることがあるので。Fateとかの明らかに敵対している宗教勢力の英霊同士がカルデアで協力しているのもなんか日本ならではの雑さですね。
しかし、ダンテの神曲も大日如来信仰も、基本的には産業革命前の文明が未発達な頃の人類の物語だったけど。
Gのレコンギスタでは宇宙世紀という人類が宇宙でブイブイ言わせてた果てに滅びかけた歴史を乗り越えたうえでのリギルド・センチュリーであり、毎年普通にフォトンバッテリーを運搬するためにクレッセント・シップとカシーバ・ミコシは金星と地球、月とザンクト・ポルトの間を物理的に移動するし、キャピタル・タワーもそれでもらったフォトンバッテリーを地球に物理的に下ろして地球人の生活を支えている。
なので、昔の宗教ってまあ、大日如来もキリスト教での主も「絶対に触れることができない」という世界観なんですけど、Gのレコンギスタの文明レベルだと惑星間宇宙船も普通に運行しているし、太陽の恵みも物理的なバッテリーとして溜めることができるし、触れることができるくらい近いお星さまとして太陽がある。
神には触れることができないので神はすごいという時代があったけど、太陽にも普通に宇宙船を送れるし金星も開発できるくらいの未来文明の社会で、どういう宗教ができて、そこで暮らす人はどういう文化なのか、と言うことを考えるハードスペースSFとして側面も、Gのレコンギスタには確かにありますね。
- ムタチオンと即身仏
で、ラ・グー総裁はムタチオンして小人っぽいしガリガリにやせ細って、自分の体を機械の体のボディースーツで偽装して生活している。
テレビ版では「放射線が強い金星あたりの宇宙コロニーで長く暮らしていたら人間も突然変異して奇形が増えることもあるだろうなー」、という程度の感覚でしたけど。
劇場版第四部でキリスト教要素と大日如来要素が足されて、その上、ラ・グー総裁はアイーダさんに「ムタチオンも人類が宇宙に溶け込むためのものかもしれない」と教えていて、単に人類が宇宙で劣化して弱っていくというネガティブなだけではなく、ムタチオンも省エネ体質になるほうが宇宙生活に適応した「ニュータイプ」の一種なのでは?というテーゼを出している。
まあ、アイーダさんは身長が高くておっぱいが大きい人類の女性として健康な美女なので、いきなりガリガリに痩せろって言うのもどうかと思うけどな。
でも、ロザリオ・テンのヘルメスの薔薇のキリスト教要素が増された劇場版(テレビ版では宗教を扱うと放送できなかったのかも)で、しかも金星は地球よりも太陽、すなわち大日如来に近いという要素を足している。(浄土真宗では浄土で如来に近い方が救われやすいらしい)
そして、その宗教的文脈でムタチオンが宇宙(金剛界曼荼羅)に同化するためのものと言う要素が足されたら、ガリガリに痩せたラ・グー総裁は単に人類が太陽放射線で突然変異して劣化した、と言うだけでなく「即身仏」という要素も入ってきてしまうと思う。
ヤバいな。Gのレコンギスタ第4部ってもちろん、ベルリとマスクの死闘などのモビルスーツのロボットアクション戦闘の作画アニメとして話題になっているけど、こういうサラっと数秒の絵と一言二言のセリフで暗示される宗教要素もヤバい。
なので、今回のこの記事はGのレコンギスタ第四部の全体の感想ではなく、ちょっと宗教的要素について突っ込みを入れてみた、と言う程度だけど書くのに3時間かかった。
やっぱり宗教はヤバい。
でも僕は俗物なので酒を飲みながら書いていたし、とりあえずシャワーを浴びてストレッチして寝る。
- ほしい物リスト。
https://www.amazon.co.jp/registry/wishlist/6FXSDSAVKI1Z
↑グダちん用
著者へのプレゼントはこちら。
匿名で住所を伏せてプレゼントを送るための、つかいかた
nuryouguda.hatenablog.com
このブログは最後まで無料で読むことができますが、著者に物を送ることはできます。
note.com
noteでは金銭のサポートができます。
(この記事が良いと思ったら読者登録お願いします!)