玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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ベルリの殺人考察第2部第13話A 弱ったベルリと嘘

 ガンダム Gのレコンギスタ本放送の時、13話は箸休めだと思っていた。演出的にスタンダードなので大して変な内容がないと思ってしまった。
 トミノアニメブロガーナイトでこの殺人考察コラムシリーズの元になったベルリの戦闘シーン解説でも、13話は戦闘シーンがあっさりしているので省略したくらい。キンプリ好きだけど菱田正和監督を舐めた感じで申し訳ない。
 しかし、今回、殺人考察を深く取り組み、また、最終回まで見てシリーズ全体の問題を意識するようになったので本放送の時とは視点が変わってきました。

  • 前回の殺人考察

nuryouguda.hatenablog.com
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 本放送の時の感想↓

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今回は演出が分かりやすかったけど、わかりやすいシーン運びで異常事態をスルーさせようという演出かもしれないので、やっぱり油断できないんだなあ。

 140枚もスクショ取ってしまった。
 画像が多すぎるのでAパートBパートに分けます。今回は殺人シーンが少ないので殺人考察はあっさりにできると思ったんだけどなー。
 しかし、主人公であるベルリの印象が薄いことは、逆説的にベルリ以外の要素を濃くするということだ。また、ベルリの印象を薄くさせるための演出に注目すると、これはこれでなかなか技巧的だと思い直したのだった。

  • 今回のテーマは「嘘と記憶」

 でもテーマごとにまとめるのがめんどくさいので時系列順に見ながら書いていきます。



  • 前回の予告



 共同戦線を張ったのにベルリは主人公として活躍するというよりも圧倒されるって言う。

  • 登場!ドレット艦隊



MS部隊

艦隊

でかい旗艦ギニアビサウ
 という流れが分かりやすい。あと機動戦士ガンダムのオープニングのジオン軍っぽさ。


 前回吹っ飛ばされたアメリア軍の補給艦ガビアル。

 爆発四散していなくて、中途半端に生き残ってそうなのが逆にグロい。


 脅せと命令したのはドレット将軍ではなく、左の艦長。

 呆れるノウトウ・ドレット将軍。これが彼のファーストセリフだが、最期まで見ていると徹頭徹尾、ノウトウ・ドレット将軍がこういう人だと最初から示されてるってわかって感動しますねえ!
 金星編で出てくるラ・グー総裁と違って明らかに老化していて、老い先短いことを自覚しているのに、自分が死んだ100年後の人材育成の政治のことも考えている。まあ、ドレット家の世襲制もあるので、自分が個人ではなく家制度を受け継ぐパーツの一つだと思っているのかも。個人的にうっ憤を晴らすことが多い富野ガンダムの敵幹部にしてはかなり珍しい思考パターン。∀ガンダムのクワウトル王などの文脈の老人としての富野監督の投影の一つなんだろうなあ。
 で、ドレット将軍の人となりと同時にいきなり出てきたトワサンガ軍もまだ産業革命が始まってから成熟していない組織だ、と言うことを一言で示す。うまい。
 また、Gレコは多様な視点が描かれることが多いアニメだが、前回、ベルリとミック・ジャックは撃たれるガビアルを見て「殺意があるならザンクト・ポルトが狙撃されるはずなので、ガビアルが撃たれたのは警告だ」と言ったのだが、撃った方のトワサンガ艦隊にしてみれば「脅しにも失敗してしまった」という齟齬。こういう人や国同士の認識の違いとか、それを利用した嘘とか、かなりクリティカルな批評性を持っているGレコ。一発のビームと一つの台詞でここまで意味を付加するとかなかなか・・・。

  • 女に主導権を取られるベルリ

 主人公だろ!
 最近、評判がいいけど見てない劇場版の出来がいいということで話題のマジンガーZの兜甲児、実は衝撃!Z編くらいしかまともに見てないのだが、もうちょっと自分からアクションを起こしていたような…。1話のアムロは自分からガンダムに乗りに走るし、カミーユは息をするように人を殴ったり女の子に鎌をかけたりするのに。

 今回、最初に走り出したのはラライヤで、ベルリはそれを追っている。ベルリ単独だったら聖餐室のモニターの前で母と法皇と一緒に硬直してただけかもしれない。(クリムはいつの間にかMSにすでに乗り込んでいるので、天才は動きが滅茶苦茶早い)

 で、ラライヤが走り出したのは本放送の時点では謎だったが、続きを見たら、ラライヤはドレット家と敵対しているレジスタンスにYG-111に乗せられたスパイ少女だったので、ドレット艦隊を見て記憶が刺激されて「やべーよ!」ってなったからなんだろうけど。
 ここでアイーダが「トワサンガ」について引っ掛かりを感じてるのも、よくよく見ると彼女の幼年期の記憶なのかもしれない…って言うことが60回目の視聴にしてやっとわかってきた。



 で、ベルリは自分で何をしていいのかわからないので、アイーダさんに「グシオン総監と何の話をしていたんですか?」と前回のエンディングから13話が始まるまでの隙間に何があったのかを聞いたり、その間にラライヤの雰囲気に息をのんだりして、あんまり意志が強そうに見えない。
 というか、前回ベルリが中途半端にアサルトパックを使ったせいで無駄に戦線を拡大させて凄惨な戦場を目撃してしまって、ショックを受けたところに、ガビアルが狙撃されたので人類全体を守りたいと思っている平和主義者のベルリ君はまだメンタルが落ち着いてないんだろうな。


 Gレコは基本的にベルリ君が頑張るたびにひどいことが起きて、リア充公務員志望エリート学生だったベルリ君が心に深い傷を負って行って社会からドロップアウトするまでの過程を描いたアニメですからね。ベルリ君の最初のメンタルの位置エネルギーが高くて、彼の性格や行動パターンが明るいのでGレコのアニメの印象は明るいんだけど、ベルリから見るととにかくひどい目に遭いまくる地獄の連続です。だいたいZガンダムと同じです。

 拡大作画を禁止しているGレコのギリギリの全裸シーン。こんなまるちょんの顔なのにアイーダさんの首のラインが艶めかしい…。



 ここで、ちょっと高い位置にいるケルベスが解説してくれるのが結構親切。




 アメリア軍としてガビアルがやられたことへ報復しようとするグシオンに対して、ウィルミット・ゼナム長官は「ここでの戦争はタブー中のタブーです!」とキレるんだが、それを嗜めようとベルリが「母さん…」って言うと、その手が振りほどかれて「私はクラウンの運行長官です!」ってウィルが言っちゃうの、ベルリとしては地味に「まあ、ボク、本当の子供じゃないから」って傷つくよな…。短いシーンだけど可哀想。
 グシオン・スルガン総監がアイーダ・スルガンに「アルケインは使えるのだな?」と、親視点なのか軍人視点なのかちょっと微妙なことを言って、アイーダは「みんなもいるから大丈夫」と答えるのだが。
 そのスルガン親子のカットを挟んで、ウィル長官が一度振りほどいたベルリの手を撫でて謝るようなカットが一瞬映るんだが、法皇様が来るのでウィルの視線はベルリから離れる。ここらへんの義理の親子の関係がなー。ブレンパワードプリティーリズムでエグい家族の話をした富野由悠季菱田正和の闇が一瞬見えてキツイ。一瞬だけだからあんまり視聴者の印象に残りにくいんだが、何回も見たり、親に愛されなかった経験のある人が見たら、結構ぞっとする。
 やっぱりウィルミット長官はベルリの母であるより先にキャピタル・タワーの運行長官と言う自意識なんだな。それは子供のベルリからするとつらい。ウィルもそれに気づいて謝っているようだが、それはそれで気を使われるのもつらい。キャリア・ウーマンの過程や子育てとの両立のロールモデルは21世紀になってもどれが正しいのか、僕はわからないのだが…。



 ここで、さりげなく法皇を人質にしようとするグシオンなんだが、G-セルフが縛られていることもあり、この一連のシーンでなんとなくベルリのやる気や主導権が他のキャラクターに押さえつけられている暗示がある。
 ベルリは主人公なんだけど、群像劇だしみんなが自分の判断で生きてるGレコなので、ベルリも油断してたらすぐにモブキャラに降格しそうになる。





 ゾンビ映画みたいな会話。クンパ大佐は敵のトワサンガの正体を知っているので「ザンクト・ポルトの中にいるのが一番安全」だと言いたいのだが、自分がトワサンガの事を知っていることは秘密なので言えない。言えないのでザンクト・ポルトから出て戦闘をしないと殺される!って思う人を止めない。もう、なんだこいつ。
 しかし、ウィルミット・ゼナム長官は本当にキャピタル・タワーの「運行」の責任者であって、何を運んでいるのか、運ぶものがどこからきているのか、フォトン・バッテリートワサンガから来ていることも知らないみたいだな。キャピタル・テリトリィは月と外交してないんだな…。
※追記


(そういえば、ウィルミット長官はメッタバルの国際会議でトワサンガの存在は知ってたんだな。実体は知らないみたいですが。指摘ありがとうございます。)


 まあ、そこらへんはスコード教が宗教だし、っていう所で描写をカットしてるんだけど。ウィルミット・ゼナムが運行長官に出世できたのもタブーや規則を守ることに厳格で現場指揮能力は高いけど、変にザンクト・ポルトの上のことに関心を持ったりしないし口も堅い、という所が評価されたのかもしれない。法皇様はトワサンガと外交しているようだけど、トワサンガが存在するということがウィル長官のレベルでも知らないくらいのタブーなので、スコード教のどの段階になると情報が解禁されるのか…。カルト組織なんだろうなあ。
 まあ、巨大組織の描写として、組織の中のことに詳しい人がその外のことになると全く興味もない無知、ということは現実の物流や会社組織としてもままある。鰻が不漁だけど、台湾から香港を経由して日本に密輸されている、みたいなことも事実かどうかわからんまま、みんな土用の丑の日に伝統行事だからと思考停止してスーパーのパサパサのウナギを食べてる。


 で、クンパが言える範囲のことでウィル長官にトワサンガヘルメス財団のことを説明して説得しようとしているのだが、その説明台詞をアイーダさんがぶった切る。

 世界の裏の組織の正体が!みたいに、ヴァルヴレイヴだと盛り上がるところなのに、アイーダさんがガン無視してMS行動を起こすので、視聴者は説明台詞を聞かせてもらえない。ひどいな。不親切な演出すぎる…。あとベルリが主人公なのにアイーダさんが先に「G-セルフを出しましょう」って言っちゃうのもやべーな。
 Gレコ、面白いんだけどこういう所で普通のアニメやゲームのテンプレートになりそうな説明台詞をぶっちぎるのが見難いアニメになる要因なんだろうなあ…。いや、クンパ大佐がせっかく説明してるんだから、聞いてやれよ!でも、クンパの説明より、アイーダの謎の行動力を描写するほうが重要だと作り手が判断したんだろう…。この第13話のラストでアイーダがいきなり月に行くとか言うのが唐突に感じられたんだが、見返して見ると小さい所からアイーダが地味に主導権を主張するような行動があるな。


 「私も出ます」と言うアイーダにベルリが「本隊と合流ですか」って言っちゃうのも後を知ってたら地味にヤバい。結局、ベルリは前回まで殺し合ってたマスク部隊と共同戦線をするクリム部隊の援護をするっていう滅茶苦茶な事態になるのだが、「アイーダさんが出るんならメガファウナラトルパイソンに合流するだけだろうなー」って思ってるのが泥沼にはまる一歩目なのでやばい。ベルリは基本的にガードの保守派なので、「そんなひどいことにはならないだろ」って思って予測を立てることが多い。それで何度も痛い目に合うのだが。保守派の割に実力がありすぎるので普通の保守の民衆よりもいつのまにか突出して最前線で痛い目に合うのがベルリなので、本当に可哀想なんだけど。


 それを上から見ている凡人のケルベス中尉が位置情報を整理してくれる。


 ご出陣なのだが、アイーダさんの尻を追いかけるようなベルリ。


 で、ベルリがG-セルフに乗るかと見せかけて、




 ラライヤが先にG-セルフに取りついていてベルリは教官に怒鳴られる…。動きが遅い。やっぱり前回のアサルトパックの失敗でモブ兵士に虐殺をさせたことを、相当ベルリは引きずってます。
 デレンセンを殺した後の7話冒頭とか、ベルリは一応行動はしてるんだけど、若干遅くなってたし、ラライヤに先にG-セルフに乗られる。今回もそれをなぞっているようだ。リアルは地獄なのでエリート主人公でもちょっとメンタルダメージで動きが遅くなるとガンダムを女にとられそうになる。きつい…。
 ベルリはメンタルが十全であれば頼まれもしないのに囚人のアイーダを空襲から助けようとしたり、メガファウナの部品のデータを調査したりアメリ宇宙艦隊を観測したり、滅茶苦茶行動力があるし動きが速い飛び級生です。
 しかし、回を重ねるごとにベルリには心の傷がたまる。Gレコはベルリが成長する話じゃなくて、最初から成長しきって、恵まれた環境で個性を伸ばして教育された有能なベルリがどんどん戦争によって心に傷を負っていく話なので。他の富野じゃない最近のガンダムみたいに分かりやすく身体障害者にはならないんだけど、ベルリは滅茶苦茶精神をやられて行っている。心の傷は視聴者から見えないから、「ベルリはサイコパス、独裁者」ってからかわれるけど、ちゃんと見たら滅茶苦茶傷ついてる。普通にかわいそう。
 ノレドはラライヤの介護をしていることが多いんだけど、もうちょっとベルリの心のケアもしてあげてほしい。そうしたらもっと美少女アニメとしてやわらかくなったのに。でも、富野アニメの女子って「告白したのに恋人扱いしてくれないベルリを慰めるノレド」なんてやってくれないわけで。まあ、さすがに6話ラストでは横にいてくれたけど。「自分の作戦行動のミスで戦死者を増やした」ということにショックを受けているベルリのことは、戦士ではないノレドはわかってくれないので、慰めてもくれない。つ・つらい・・・。
 しかも事態は個人の倫理的な後悔など関係なく戦争に突入するのです。ひどい。
 



 いつの間にかクリム・ニックが「敵の戦力は大きいが、大将を取れば勝ち目があるかも」とか大陸間戦争の戦術を宇宙戦争になんとなく当てはめて行動を起こしてハチャメチャになる。


 ハチャメチャになってるのに、ベルリは運行長官の息子だし平和主義の保守派なので、この期に及んでガンダムに乗りながら「軍事行動を止めよう」とか言ってる。憲法九条をめっちゃ守りながら最強のイージス艦に乗ってる自衛官くらい微妙な立場なんだが、ベルリはそこら辺の自省は薄いというか、事態に対応するだけで必死で自分の思想の整合性とか考える暇もないんだろうな。辛い…。
 まあ、ケルベス中尉が先任士官として多少状況を整理してくれるんだけど。



 ガランデンが出たとウィルミット長官が通信してきたのを、「長官はキャピタル・タワーの標準回線を使ってらっしゃる」って言ってハザードレベルを測るケルベス。ガードと微妙に敵対しているキャピタル・アーミィゴンドワン軍から借りてる宇宙戦艦スペース・ガランデンが143番ナットから出たという情報は確かにヤバいんだが。有線回線よりも標準回線はハザードレベルが低いんだろうな、と言うのがミノフスキー戦術。細かい…。




 ガランデンにはクンパ大佐が命令してるんだけど、アメリアのグシオンには動いてほしくないし不測の事態でザンクト・ポルトまで攻撃されてほしくはないし、巻き添えになりたくないクンパとしては共同戦線は嫌なのだろうか?天才クリムがクンパとは関係なくワイルドカードとして無茶苦茶やってる面もある。


 で、ドレット艦隊の使節団がMS部隊に護衛されつつボートでザンクト・ポルトに接近してきた。

 その警告を受けてやっとベルリのG-セルフは拘束を解くのだが、いまいち盛り上がらない。

 (巨大スクリーンの中のウィンドウに表示された敵MS部隊を見ているG-セルフたちMSという微妙に変な絵面)

どうにもベルリよりもラライヤの意識の方が先行していて、主人公らしく活躍できないベルリ。

「青少年に期待するか」と言ってフェードアウトするクンパ大佐。多分安全な区画に退避したんだろうけど、ベルリに期待しているのか、マスクに期待しているのか…。自分で正体を明かして地球と月の外交をスムーズにしよう、とは思ってないんだろうな…。人類に弱肉強食の戦争をさせたいって思っている危険思想の人だからなあ…。炎上プロデューサーだからなあ。しかも、危険思想に沿って数十年も行動しているので、危険思想で戦争を招くことがクンパ・ルシータ大佐の中では日常になってて、キャピタル・アーミィアメリア軍とドレット艦隊がザンクト・ポルトでファーストコンタクトというヤバい事態になっているのに、クンパ自身は動揺しないし、「まあいいか」って青少年に丸投げする。慣れは怖い。(まあ、だから死んじゃうんだけど。最期までクンパ大佐は自分が死ぬって思ってなかったって言うか、逆に何回殺されても仕方がないくらい悪いことを何十年もいろんなところでやり続けてたのに生き延びてたので感覚がマヒしてたんだろうな)


 そういうわけで、女性たち、大人たち、クンパみたいなヤバい奴に主導権を握られて状況に流されているベルリは表立って殺人行動をしてないけど、やっぱり流されることも、それはそれで、ヤバい。


  • 開戦の序曲

 ドレット艦隊の優秀なMSパイロットのロックパイ・ゲティがMSモランの優秀な複合センサーでクリム達のMSの動きを察知して「バリアーを張る必要がありますか?」と聞くのだが、

ターボ・ブロッキンなどのトワサンガ人は舐めプしている。差別意識もあるんだろうな。差別はGレコの大きなテーマなので。クンタラだけでなく、割とすべての人が自分以外の身分や所属の人をなんとなく見下していることが多い。そういう憎しみが金星までの人類社会を覆っているっていう辛さがある。


 で、我らがベルリ君だが。ちょっとスクショを取りすぎてもアレなので飛ばすけど、
 G-アルケインとケルベスのレックスノーが先にザンクト・ポルトの桟橋から宇宙空間に出ていて、気づいたらガランデンサラマンドラの共同戦線に参加するように言われるベルリ。

 主人公なのに状況がライバル達に作られてしまっている。


 そういう状況にアイーダの方が先に受け入れている。

 ベルリはルアンがバッテリーを交換してくれたという些細な事に「ありあとあした」と体育会系のお礼を言ってて、大局が見えてない。
「なんとなく気にかけてくれる人は味方だろー」
 くらいのふわっとした人間関係の認識で戦争に突入する天才学生、かわいそうとしか言いようがない。
 まあ、スコード教の信者だったベルリにとっての世界の果てである宇宙エレベーターのてっぺんのザンクト・ポルトにいるだけでも精神が不安定になるのに、女子どもを抱えてガンダムの操縦をして未知の敵に対応しないと行けないって言う状況なので、めちゃくちゃ精神に負荷がかかってる。


 ベルリは必死に真正面を見て操縦をしているのだが、後ろで呑気に守ってもらっているノレドの方が状況を整理しようとしている。まあ、記憶力がいいというノレドも誰から聞いたのかあやふやなので、やっぱり彼女も緊張しているんだろうけど。ベルリはG-セルフを動かすだけで必死。
 それでも、ベルリは目を見開いてG-セルフの観測データとかガランデンや敵部隊の位置とかを観察しようとしているのだが、凡人のケルベスのレックスノーが先にガランデンに向かって飛び出す。

 おまえ!11話でキャピタル・アーミィのマスクに羽交い絞めにされて殺害されそうになっただろうが!ケルベスーっ!!!!馬鹿なのかーっ!ケルベスもザンクト・ポルトに来てはしゃいでいるというかアドレナリンが出まくって記憶がおかしくなっているのかもしれない。認識力はガンダムのテーマの一つだが、それが状況でグチャグチャになるのを描いているのもGレコなのでやばい。
 しかし、教官殿がそういうことをしたらベルリ生徒としては追従するしかない。体育会系のなあなあで組織を動かしている雰囲気で生きている組織が暴走していくのを、ベルリのような個人的なエリートは止められない、って言う全体主義のやばさなのかもしれない。ヒットラーみたいな独裁者が居なくても、電通の社員みたいなパワハラ営業で経済を回す愚民どもの社会はナチスよりも全体主義なのかも。

 一方そのころガランデンでは。

 ガランデントワサンガの艦隊と敵対するというのはクンパ大佐からの要請らしい。(要請が出た時点が分からないので、クリムの出撃を受けての指示なのか、クンパはガランデンだけをドレットにぶつけたかったのか、本来の意図はわかりにくい)
 当然、ゴンドワン人のガランデン艦長は混乱する。



「そういう人々がいたからこのガランデンだって建造できたのです」って艦長に言うマスク、滅茶苦茶快感だっただろうな。
 クンタラとして差別されて、能力があるのにとにかく馬鹿にされて生きてきたルイン・リーとしては、マスクの力でクンパ大佐から直接色んな情報を教えてもらって、違う地方出身者のゴンドワン人や情報弱者にドヤ顔できる、っていう今の立場は快感なんだろうなー。スカッとジャパンならぬ、スカッとクンタラ。マスクの下でマスクは笑いが止まらなかっただろうな。
 差別されてきたクンタラのマスクは「差別がよくない!」って言うんじゃなくて、「俺もチャンスがあったら誰かをバカにしたいぜー」って怨念を募らせるんだよなー。それが人間らしさなのかなー。邪悪ではある。被差別民族ってのが一方的な被害者にはならないっていう。人間は人間なんだよなあ…。まあ、それが「逆差別だ!」っていう人も結局は攻撃の名分を伺ってるだけで、人は憎しみ合うだけなのかもしれん。
 マスクはマスクで目を四つにして強化したという設定だが、クンパ大佐から他の人には言えない情報を貰ったりもしてそう。それで人を見下す。
 僕もたまたま富野アニメを見ることが得意と言うか、子供の頃からこれだけは続けているのでブログ長文を書いて「君の名は。」好きの大衆を見下してるけど、それも現実社会で抑圧されていることの怨念返しに過ぎないのかもしれないんだよなあ。



 ガランデンのMSデッキにレックスノー、グリモアG-セルフG-アルケインが収容されるのだが、女牢名主みたいに振る舞うバララも、人を見下して楽しそう。人を見下すのは楽しい!

 颯爽と部下に指示を出すマスクも楽しそう。(すごくどうでもいいけど、宇宙服の圧縮空気で移動するの、プリズムジャンプは心の飛躍って感じだな。菱田回だし。強化マスクは心の飛躍)





 めっちゃ暗躍って感じのマスク。クリムは本気でドレットを討つつもりのようだが、マスクはそういうクリムを利用しつつ排除を狙うようだ。トワサンガの艦隊の実力については、やはりクンパからマスクのマスクに情報が提供されたんだろうなあ。戦争では他人が持ってない情報を持っていると有利だし、他人を見下す道具にもなる。
 で、バララとヘルメットをくっつけて密談しているのは宇宙ならではなんだけど、同時に男女の密談という距離感にもなっている。やっぱりバララとマスクは男女の関係だと思う。
 しかし、ルインにはマニィという彼女がいるのになんでバララと愛人関係になるの?って思うのだが、やっぱり男としては自分の邪悪な部分を見せられる女性が欲しい、と言う気分もある。
 ルインに取ってマニィは優しく明るくかわいい日常の平和の象徴、帰るべき家庭のパートナーという理想の女性だと思っている部分があると思う。でも、マスクはクンタラとして馬鹿にされながら養成学校の主席にまでなったので、やっぱりかなりストレスがかかってただろうし、その反動で他人に怨念返しをしたり見下したり暗躍したり邪悪なことをしたいという衝動を抱えていたんだろう。そういう闇の部分をルインは理想の彼女であるマニィには見せられないけど、マスクとしてバララには自分の汚い部分も見せたいし共有したいし分かってほしいと思うので、それはやっぱり愛人になっちゃうんだろうなあ。
 これは男として汚いんだけど、自分の汚い部分を愛人の女に見せたいっていう気持ちと、本命の女の子にはきれいなままでいてほしいという気持ちと、両方あるのが男なんですわ。女性の視聴者にはちょっと嫌がられそうなんだけど。


 あと、Gレコは企画に7年もかけた無茶苦茶なアニメなのだけど、その紆余曲折の間にクンパ大佐が仮面のキャラだ、という案もあった。

ガンダム Gのレコンギスタ キャラクターデザインワークス
 んで、今回のクンパの要請や情報提供を受けて行動端末として動くマスクは、ひょっとしたらこのままいったら、クンパの後継ぎとして人類を強化する危険思想の後継者になったかもしれない。最終回で浄化されてよかった。
 クンパ大佐はマスクを利用してるんだと思うが、老人のクンパにとってマスクの若い行動力は自分の拡張身体として機能してるっぽい。
 マスクはマスクで組織を利用しつつ暗躍するクンパは、この時点では彼の手本になってるのかもしれない。
 ベルリとアイーダが初期案では双子で、二人で一つって言う「君の名は。」みたいな感じだったんだが、本編ではあまりレイハントン姉弟はコンビ感が薄かった。しかし、その裏で、クンパとマスクが二人で一つ、って言う面もあったのかもしれない。シスの暗黒卿の師弟みたいな感じもある。

 で、マスクにとって「バララとは違って純粋でいてほしい」と思っているマニィ。そんなことはないのがGレコ女子。

 スペースガランデンのハッチが閉まって赤い警告灯から通常照明に変わって2秒くらいで普通に呼吸できるとか、空気の充填がちょっと速すぎる気がするんだけど、トワサンガのジェルカーテンみたいに静電気でデッキの中の空気をある程度は保持する機構とかがあるんだろうか?

 で、甲板兵士のリーダー格になっているマニィがノレドに気づく。


(ここでも微妙に出遅れるベルリ)

 微妙に嘘マニィ
 ノレドに「ルインは見つかったの?」と聞かれて


「ううん」

「あっマスク大尉だ」
嘘乙
 この辺のナチュラルに嘘を付いちゃう感じがすごいな。マニィはマニィで闇を抱えている。なので、終盤にマニィが闇堕ちしてしまうのは、ベルリにとってはひどいことなんだが、ルインにとっては闇を共有できた経験はカップルを熟成させる契機になったんだろうなあ。ベルリはすごいとばっちりなんだけど。


 で、ちょっと後のシーンでマニィがノレド達と別れる時に取って付けたかのように「じゃあね、元気でね」「ベルリも!」というの、夏色キセキでスフィアがずっ友なのを見てきたオタクとしては、すごく複雑な心境。

 アイーダを誰何(すいか)するマスク。



 アイーダはマスクが1話のルインだとは気づいていないんだけど、キャピタル・アーミィの制服ということで「そちらこそ私を攻撃してきました」と言ってて、微妙にあってるけどあってない会話の齟齬がむずむずする。
 ここでマニィやマスクが1話のクラウン襲撃事件の事を蒸し返すのは、第13話なので「全部で26話なので総集編で回想シーンを入れる余裕がないけど、一応1クール目をおさらいする」という意味合いがあるのかもしれない。
 んで、マスクに「宇宙海賊をやった当然の報いだ」とか罵られたアイーダだが、「やめましょう」と口論をやめて、共同戦線を進めようとする。アイーダは13話のラストでいきなり月に行くって言うので、唐突に感じたのだが、こういう会話のシーンで物事を進行させる働きをしている。
 ただ、やっぱりGレコはガンダムだしメカ戦闘がメインに見えてるので、アイーダがこういう会話のシーンで状況を進める行動をしても、いまいち印象に残りにくいというか、女王誕生の物語という富野監督のテーマがあんまり伝わってこない。でも、細かくセリフを追っていくと、一応アイーダが行動力を示す場面も置いてはある。敵対していたキャピタル・アーミィのマスクに「宇宙海賊の女だな!」って言われて、「やめましょう」と和解を提示できるアイーダの懐は広いと言える。しかし、演出に強調しているわけではないのでアイーダの器の大きさがいまいちわかりにくい。メカ戦闘はビジュアルで分かりやすいんだけど、アイーダという女性が恋人の死や戦争を呑み込んで女王に成長していく、という観念的な精神的な面はなかなかアニメでは表現が難しいと思う。




 で、マスクとアイーダは共同戦線をするのだが、アイーダが「そちらがクリム・ニック大尉におだてられたんでしょう?」と言うと

「私がそんなそそっかしい男に見えますか?」
 と返すマスク。
 いやいやいやいや。ヤバいでしょ。何回かMS越しに戦い合った相手だが、ほぼ初対面のマスク男が「私がそんなそそっかしい男に見えますか?」って言うの。ヤバい。そそっかしいかどうかじゃなくて、不審者にしか見えないんだけど…。どこから来るんだそのマスクの自信。マスクもちょっとクンパ大佐から情報面でアシストしてもらってるのでかなり調子に乗ってるな…。強化人間なのかもしれないけど、こういう細かい所で変な行動を挟んでくるGレコは油断できない。



 で、アイーダとマスクの会話に参加しようとしたベルリ、主人公なのにバララに押しのけられる。13話、なぜかベルリが劇に参加させてもらえないような場面が多くてかわいそうになる。意図的なんだろうけど。ベルリは有能なんだけど泥縄で後手に回ることが多くて、あんまり事態の主導権を握れないんだなあ。ここらへんはロボットアニメとして爽快感が薄いと言われる面かも知れない。まあ、ベルリはGレコの中では突出した穏健派だからなあ。というか他の人が戦争したがり過ぎ。なので平和主義のベルリは強いんだけどあんまり本気を発揮できない。
 マスクのコンプレックスとかクリムの出世欲とか、ドレット家の革新とか、クンパの邪悪さとか、キア隊長の熱意とか、そういう平和主義ではない気持ちで動く人の方が事態を動かしていく。ベルリは基本的にキャピタル・ガードの保守点検要員の候補生なので「1000年の平和がもっと続くといいなー」というほんわかしてる気持ちで行動している。じゃあ、邪悪でも事態を動かす人の方がいいのか、ずっと保守をしてるのがいいのか、なかなかどちらがいいのか判断できにくい作りになってるのがGレコなんだなあ。

  • どっち付かずのベルリ

「信じられます?」

 と、ベルリはもうガランデンに乗り込んでしまっているのに、まだサラマンドラガランデンが共同戦線を張ることに納得できてない。この期に及んで…。

 多分そんなに知能指数が高くない脇役のルアンはベルリほど悩まず、状況を見たまま、
「オレたちの機体の面倒だって見てくれてんだぜ」と現実観察から共同戦線を肯定する。
 で、結局ベルリも参加することになってしまう。そこで状況に流されるベルリにできることと言えば、自分が前に出てアイーダを後ろに置くことくらい。ベルリにとって一番最優先なのはアイーダを守ることなんだが、そのアイーダが進める共同戦線でアイーダたち女性を後ろに置いて自分が前に出て痛い目を見ることでしか、ベルリは目的を達成できない。ここがベルリの騎士としてのしんどい所だ。アイーダが作戦を進めているのに、アイーダに戦ってほしくないのがベルリの二律背反。男性で優れたパイロットだから、ベルリは自分がしんどくなることでしか人を助けられない。アイーダが男だったら、「お前が戦えよ!」ってなるんだけど、ここら辺の恋心も込みで、ジェンダーがな。



 とりあえず男パイロットに班分けをするくらいの行動力しか発揮できないベルリ。戦争行動自体を止める力量はない。うーん。なかなかしんどいなあ。




(ところで、ケルベスは「俺だってザンクトポルトには入ってみたいんだよ!」って言ってたけど、レックスノーで前半で桟橋に居たのは入ってないことなのかな…。まあ、後半で聖餐室まで入れるんだけど。)
(共同戦線で他のMSと混成部隊で戦える機会で「こういうのはめったにないからな!」と喜び勇んで戦いに出るルアンは根っからの戦士なんだろうなあ)

  • こういう所でAパートは終わる

 ・おしらせ
土曜日に富野ファンのオフ会に行くのでそれまでにGレコの殺人考察をせめて1クールは終えたかったのだが、精神と体調が悪化しているのでブログを書ける時間が非常に限られている。
 Bパートの考察が余ってしまったところでタイムアップ。どうにも中途半端ですまない。


 Gレコの劇場版が発表されたのかされてないのかよく分からないサンライズ公式サイトなんだが。
 殺人考察全26話、週一話で書き終わりたかったのだが、一年半かかっても半分しかできていないとは、どうにもまずい。劇場版Gレコよりも先にテレビ版の精査を終えたいのだが。
 労働だの精神疾患だので動ける時間が限られている。
 以前、とある人がオフ会で「グダちんさんが金に困ってブログを書けないようになったら、そんな社会を憎みますよ」と言ってくれたので、ツイッターで「憎んでくれ」って返したら、DMで「金が欲しいならいくら必要かはっきり言ってください。」って言われた。
 そんな、いくら必要かとか仕事じゃないんだから、計算できないですよ。社会ってホント残酷。
 働かないでアニメを語って過ごしたい。でも、アニメを見ても自律神経にストレスがかかるようなメンタルになってしまった。
 でも、終わるまでは終わらないよ。
 じゃあ、終わったらどうしよう。

  • 次回の殺人考察

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  • Gレコ感想目次

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  • タスケテ

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