玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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勇者ライディーン3クール目の富野コンテ後編 36話はエヴァとラーゼフォンの元ネタ

地獄の射手マダンガー
脚本:五武冬史 絵コンテ:斧谷稔
ラーゼフォン第19楽章 ブルーフレンド- Ticket to Nowhere - 脚本:高山文彦 絵コンテ:京田知己 演出、作画監督:入江泰浩
の元ネタ、オマージュ元として有名な今回!


以下、ネタバレ!!!
主人公ひびき洸の学校に美少女の「岬百合香」が転校してきた!だが、彼女は敵の怪獣のコアだった!怪獣を攻撃すれば、怪獣とシンクロしている彼女が傷つく!ライディーンはピンチ!その時、ユリカのとった行動は!
と言うあらすじ。完全にラーゼフォン。あと、怪獣にシンクロして痛みを受ける美少女ってのが、新世紀エヴァンゲリオン。というか、アスカ・レイ、マリって言うのはエヴァのパイロットの名前だけど、それはライディーンの明日香麗と桜野マリから来てるし。
今回のゲストのユリカから機動戦艦ナデシコになったりは、してないだろうか?


で、今回、ラーゼフォンの19話を見なおして比べてみた。
ラーゼフォンって作画綺麗ですね。これはこれで感動できる。また今度ちゃんと見よう。
ただ、ラーゼフォンは全体の流れの中で怪獣と繋がっている女子を殺して、それが後々の因縁に繋がるけど、ライディーンは単発ドラマとしてまとまってる。
それと、ラーゼフォンはポストエヴァンゲリオンという流れでの作品なので、ちょっとライディーンより暗いし、センチメンタル。すれちがいとか、届かないメッセージが視聴者にだけ見えるってのは、それはそれで切なくて美しい。だけど、70年代のライディーンはもっと直球だなーと。叙述トリックとかはあんまり使ってない。
ラーゼフォンではドーレムと同調していた朝比奈浩子の電光掲示板のメッセージや手紙はファンタジックで映像美と言う感じだけど、ちょっと作り込みが過ぎる気がする。朝比奈を守ろうとした神名綾人がメッセージに気付かないでラーゼフォンで敵ドーレムを一方的に殺してしまうっていうのは悲劇としてわかりやすいが、ちょっとお膳立てが多いかな。二人の逃避行、って言うのもドラマとして二人の世界を作りすぎかなーと。
もちろん、お膳立てとしての朝比奈のモノローグの演出とかも上手かったし、劇場版のラーゼフォンでも、このエピソードは好きだったんだけど。もう9年も前の話なんだ。今見ても作画綺麗だよね。


ライディーンの方が明るい。そして、富野喜幸斧谷稔)が絵コンテを描いてる。
しかし、富野の恋愛描写は面白いな。脚本の五武さんもなかなかエネルギッシュな話を作る人だけど。

美少女が転校してきたら、洸がこのはしゃぎっぷりです。「おれはー洸よー♪」とか歌う。そしてマリは嫉妬。洸はイケメンサッカー部キャプテンだから早速美少女にアプローチだぜ!

そして、彼女のマリに肘鉄を喰らう。美少年なのに、ギャグだー。そして、富野コンテは恋愛が1対1、二人の世界に閉じないで、こういう風に周りとの関係を一枚の画面で見せるのが上手いと思う。そこは彼の思想もあるし。

でもイケメンだから放課後は下校の時に自分専用の通学用スーパーバイクで海に連れ出してデートして即座にキスですよ!モテすぎだろ!!!!イケメンサッカー部キャプテンで人類の唯一の希望だからやりたい放題ですよ!!!!

だが、美少女とのデートは敵の幹部・豪雷巨烈に監視されていた!ユリカは幼いころに妖魔帝国に誘拐されて巨烈獣の部品として改造された悪い女だったのだ!そして今回は帝国に記憶を消されて送りこまれたのだ!記憶を消されて、普通の女の子としてであったので、イケメンの洸をすぐに好きになったのだ!
いろいろと可哀そうな人生だ。
しかし、普通の女の子ならだれでも洸に惚れてデートするっていう自信に満ちたシナリオがすごいですね。洸すげー。洸も美少女が大好き!!!


まー、そんなデートをしてたら怪獣が来るわけで、怪獣を攻撃したらユリカが苦しむ。

富野のSM趣味っぷりが良いですね!!!あと、安彦良和のキャラデザインも非常に美少女らしい記号で良いです。ユリカが苦しむけど、コアがユリカなので、怪獣は何度攻撃しても元に戻ってやっつけられない。


豪雷はわざわざ「ユリカが怪獣の心臓だ!」って教えてからいったん引き揚げます。「コアが別の場所にあるから倒せない」という利点よりも、「ライディーンの洸がユリカの事を気にして攻撃できない」という事の方を優先した模様。



で、気絶してるゆりかを精密検査。
おっぱい。
それはそうと、病院でユリカがやっぱり怪獣の心臓だということが判明する。で、仲間たちが「この女を殺せるのか?」っていう話になる。洸は「殺せるわけがない。マリ、お前はどう思う?」と、ユリカに嫉妬しているマリに話を振る。

この「女の顔」が富野コンテらしいですね!!!
「マリは女としてはユリカにいなくなって欲しいけど、怪獣と戦うという理由で殺すというのは人道的によくないけど、やっぱりいなくなって欲しいし、困る」
という女心です!
というか、洸もそういう意地悪な質問を振るなよ。イケメンは罪作りだなー。
で、マリは案の定答えられないで黙っていると、洸は「そうだ、誰だってユリカさんを殺すなんて事は出来ないんだ!」って自分で答えを出しちゃう。

その洸の言葉を聞いてるマリの表情が実に良いですね!!!斧谷稔コンテ!!!



とかなんとか、病院の中で言ってる間に、ちょっと目を離したすきにユリカが脱走した。
「私はさっきの戦いで自分が何者か思い出しました」「私は記憶を消されていました」「記憶があればあなたを好きでも近づかなかったでしょう」「私は改造された悪い人間です」「私の事は忘れて下さい」という置き手紙。
うわー!
ラーゼフォンの朝比奈の手紙は届かなかったけど、ライディーンの手紙はド直球で送られるわけだ。
ここらへんは、ラーゼフォンはムーリアンの謎の謎ときをドラマにするっていうエヴァンゲリオン風の構成だったから、ラーゼフォンでは朝比奈自身が自分がムーリアンになっていると自覚できなかったけど。ライディーンは謎ときよりも戦闘の方がメインだから、そういう妖魔帝国の裏設定とかはすぐにばらすぞ。
というか、切なさよりも、気の強さの方が先に立つのが富野の女だなー。男を待たないで行動するぞ!



盗んだボートで妖魔帝国の激怒巨烈の基地に入って幹部に直談判だ!富野ヒロインは行動的だなー。この、怪人とセーラー服の美少女と言う絵面が良いよね!
妖魔帝国が復活したのは劇中で1年も経ってないんじゃないのか?子供の頃に誘拐されていたってのはどういう事?という疑問はあるが、まあ、そこら辺は・・・。多分、地下の秘密結社的な感じでやってたんだよ!きっと!
この、富野ヒロインの「敵側に通じている謎の美少女だけど、主人公を守るために戦う」っていう女性像はフォウ・ムラサメとかミハル・ラトキエとかエルピー・プルに通じる感じで実に萌えます。女だけど、強い。むしろ、女の武器を積極的に生かして敵の幹部同士の抗争を利用するってのが上手い。ユリカは豪雷に送り込まれた女だけど、激怒に談判する。なぜなら激怒は豪雷と派閥抗争をしているからだ。こういう組織論がいいね。
あ、この美少女のユリカって髪型がエルピー・プルに似てますね!萌える。


で、ユリカは海の向こうに行ってしまったけど、探す暇もなくまた怪獣が来る。
で、ライディーンは戦う。

「ゆりかさん、すまない。斬らせてもらう!」やっぱり、富野コンテの時の洸は破嵐万丈みたいな感じで、女には優しいけど戦闘や世界の平和の方を優先するクールさがある。だから、涙は流すが、一人の女を傷つけても怪獣は倒す。カッコイイ!

「斬らせてもらうぞ!」と言ってから、よりにもよって股間から斬り裂く。富野絵コンテ・・・。SM趣味がスゴイ!


でも、いくら斬ってもやっつけられない。
「ここでゴッドバードになって、敵を粉々にすれば・・・」
「やっぱり俺にはできない!!!」

やっぱりできないのか!



「お前に洸は殺させない!」
そこへ現れる、激怒によって巨烈獣そのものに改造されたユリカ!
激怒は豪雷の巨烈獣の作戦を邪魔したいのだ。
そして、ユリカのエゴイスティックな愛情が混じった自己犠牲はララァ・スンみたいですね!
あと巨烈獣のデザインはマジンガーZローレライとラインX1(漫画版及び『真マジンガー 衝撃! Z編』ではドナウα1)みたいだなー。



で、マダンガーの矢を受けて死亡。コアを破壊されたのでマダンガーも消滅。

巨大な怪獣から美少女に戻って行く所のメタモルフォーゼが良いですね。


そして、ユリカはライディーンの掌の上で、洸に「これが・・・私の・・・本当の心です・・・」って言って息を引き取る。
運命に立ち向かって、自分の心を貫いて死ぬ女!強い!!!富野!
心の強さと、悲劇の悲しみを強調した、良い話だ。敵に改造されて人間ではない存在になってしまったという悲劇だけでなく、それを死を持ってでも乗り越えようという意志の強さ、自分自身であろうとする少女の美しさが感動するポイントなんだよ!!!


ラストカットは戦闘終結から20秒くらいしかないワンシーンでしかない。
だが、ユリカの十字架の墓前にたたずむ洸の「君の本当の名前はなんだったんだろう」というつぶやきだけで、美しくも悲しいドラマが完結・・・。うまい。きれいにまとまっている。
こういうセンチメンタリズムはサイボーグ009っぽさもあるかなー。

  • ■富野戦闘の面白さ

余談だが、やはり富野戦闘は一工夫があって面白い

太陽を背にして、上空に居て見えない敵に向かってミサイルを撃って、太陽の中から撃ち返されるというのが富野っぽいなー。
ファーストガンダムでも「敵の姿は見えないくらい遠いけど、ミサイルだけが飛んでくる」っていう遠距離狙撃の撃ち合いのスケール感が大きかった。そこら辺が好きだったなー。Z以降のガンダムではあんまりなくなったけど。ビームが主体になったからなー。
百式のメガバズーカランチャーとかVガンダムのザンネックはちょっと、そんな感じだったけど。



敵が狙っていて

海底のライディーンが岩を持ちあげて、

投げた岩をライディーンと間違えた敵が撃って、その隙に移動したライディーンがミサイルを背後から撃つってのが躍動的ですよね。