玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

#水星の魔女 と富野由悠季と田中圭一とマスクと

 ふざけているので、マスクは関係ない。


 というわけで、昨晩書いた記事が燃えた。
nuryouguda.hatenablog.com


 まあ、アンチの意見は自分では見えない角度からの意見で参考になるので、僕の母親が自殺した時に揶揄してきたような悪意のあるアカウントはミュートしているけど、ある程度は目を通している。
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 それで、どうもブックマークコメントを見ると、SF的設定面や舞台背景のわかりにくさはGレコと水星の魔女は同程度にわかりにくいが、水星の魔女はキャラクターの行動原理が、少なくともそのキャラクターにスポットが当たっているときは分かりやすく、逆にGのレコンギスタはキャラクターの行動原理がわかりにくいし共感しにくいという意見が多かった。


 まあ、感情移入しやすい作風と、感情移入しにくい作風と、両方に違った利点がある。
 感情移入しやすい作風はどうしても視聴者の予測の範囲内に収まってしまうが、感情移入しにくい作風だと「その作品世界独自の価値観」を描くことができる。まあ、それでどちらが人気が出るのかどうかというのはまた作風のかじ取りの判断の問題だが。
 Gのレコンギスタは恐らく水星の魔女よりも現代の西暦2022年よりもはるかな未来なので、文化的背景やキャラクターの行動原理が現代の日本人とは変わっている方が当たり前な気がするけど、それは受けが悪いようだ。


 その他、コメントで、僕の書いたことになかば同意する形で、「水星の魔女の設定はその回でスポットが当たるキャラクターに合わせて開示されるけど、Gレコの場合は未来の世界の世界観やその時代での文明論を塊として見せてくるので、娯楽としてはあまり整理されていない」「細かい世界設定の用語を理解しないとキャラクターがその世界の中で何をやっているのか理解できないので疲れる」とか。
 まあ、富野由悠季監督はかなり現在の地球文明に危機感を持っているので、将来の子供世代が政治や経済の中心を担うときにGレコを思い出してほしい、みたいな啓蒙的な感じでGレコを作ったけど、水星の魔女はその時点のバンダイの商材として消費されていく娯楽として楽しく見れることを重視しているようで。富野由悠季監督は妙に責任感があるけど、水星の魔女はエンタメとして割り切っている。それはまあ、作風の違いで優劣はないのだけど。


  • 富野由悠季監督はずっと富野由悠季だけど

CONTINUE SPECIAL Gのレコンギスタ
 このコンティニューのGのレコンギスタ特集の最後の方に載っているマンガで、田中圭一先生が初代機動戦士ガンダムから聖戦士ダンバインまでを見て、衝撃を受けたことをまとめている。


 曰く、「その3、背景や設定の説明を極力省くことで視聴者を沼にはめる」。
 モビルスーツとかミノフスキー粒子の解説が劇中でほとんどないことで、ファンがあれこれと議論したり想像したり、ファン同士での交流が楽しめた。とのこと。
 考察でファンが楽しめるというのは、現代のインターネットでのオタク文化にも引き継がれている。


 まあ、ファンの考察にも善し悪しがあって、サイコフレームがあると時間を巻き戻せるとかドラえもんかよ、みたいな人もいる。
 それはそれとして、富野由悠季監督のアニメで設定の説明が省かれているのは、実は初代ガンダムだけでなく、ずーーーーっとそういう感じでやっている。


 また、設定だけでなくキャラクターの心情や内面も、富野作品では秘められていることが多い。
 神勝平や破嵐万丈のラストの気持ちとか、ララァやシャアとか、掟を無視するジロンとか、個人的な理由で虐殺をしてくる鉄仮面とかクラックス・ドゥガチとか。まあ、他にもよくわからん衝動的なキャラクターが多い。女性キャラだとセイラ・マスとかレコア・ロンドとかクェス・パラヤとか。Vガンダムのウッソ・エヴィンも自分が何をしているのかわからないと叫びながらガンダムに乗る。ジョナサンの気持ちは親子の間に入ると怒られるのでわかろうとしてはいけない。ディアナ様はコールドスリープを繰り返して千年も初恋(恋ではなく、初恋)を繰り返しているような女王で自分の親の記憶もあいまいになっている。迫水王は2回も異世界転生している。そんな奇人変人の多い富野作品でキャラクターの内面や考えを理解するのはかなり難しい。
 富野由悠季監督はアニメ界の最長老のような年齢のわりに、キモオタみたいに2次元キャラクターの実在を信じているというか、キャラクターを物語の駒として扱うというよりは、「僕はそのキャラクターではないので、その人が何を考えているのかはわからない」とか、最近のインタビューでも言ってたりする。


 というわけで、田中圭一先生が言う世界の設定も、キャラクターの内面も、富野由悠季作品ではかなり訳が分からないし、説明も少ない。
 そもそも初代ガンダムのアムロとララァですら、「ニュータイプになると人同士の心がわかりあえる」と思わせて、「深いところで交流しても結局、破局する」という断絶の話なので。テレパシーみたいなのが使えるニュータイプ同士ですら感情が理解しあえないので、画面の表面を見ている視聴者がキャラクターの内面までわかるわけないだろ、みたいな突き放した態度が多い。
 まあ、そういうユーザーフレンドリーな面を著しく欠いているわりに富野由悠季監督の作品は長期的なファンを獲得していて、それはすごいのだけど。


 で、富野監督はずっと昔から、現代にいたるまで継続して、よくわからない新しい世界設定を考えて、その世界の中の常識で生きていて現代人と感覚や内面が違うキャラクターを造形し続けている。
 富野監督はもう、そういう人なので、ずっと同じようにそういう感じの作風なのだが。


 初代機動戦士ガンダムや伝説巨神イデオンは(まあ、テレビ版は打ち切りになったんだけど)、「オリジナルな世界の設定が明かされないこと」でファンに衝撃を与えてブームになって現代まで支持されている。と、田中圭一先生のマンガで当時の風潮として記載されている。
 今年劇場版が完結したGのレコンギスタも「オリジナルな世界の設定がほとんど明かされていない」作風ではある。オリジナルな世界に生きるキャラクターは過去の富野作品と同じく現代人とは別の常識を持っていて、内面もよくわからない。


 ただ、初代ガンダムやイデオンは現代にいたるまで語り草になっているし、その初代ガンダムに似せたオリジナルアニメ作品や他人が描いた宇宙世紀作品もアナザーガンダムとしてバンダイの大きな収入源になっている。


 対して、最新作のGのレコンギスタは「説明不足で、情報が整理されてなくて、わかりにくい」という悪評が多い。そして、オリジナルな世界の独自の価値観を持っているGのレコンギスタよりも「学園もの、決闘」という定型に沿った水星の魔女のほうが「わかりやすい」、と言われる。


 田中圭一先生のマンガを見ても、初代ガンダムからダンバインまでの衝撃について書いていて、F91以降はあんまり見てないんじゃないかな。先日のテレビ番組の「マツコの知らない世界」でも「黒歴史」が∀ガンダムの用語だったと知らなかったってマツコ・デラックスさんが驚いていたけど、マツコ・デラックスさんは2年前に「夜の巷を徘徊する」で富野監督のスタジオを見学したのに、∀ガンダムのことを知らないっていうのは失礼すぎないか?いや、見とけよ。


 大半の大人にとってみれば(まあ、僕も40歳になってしまったが)機動戦士ガンダムの富野喜幸監督はせいぜい逆襲のシャアくらいで止まっていて、それ以降の泥くさい鬱病との闘いやブレンパワードやキングゲイナーなどの新機軸や、∀ガンダムやリーンの翼での寓話的な部分は知らない人が多いのでは?
 ファーストガンダムで衝撃を受けた人の大半の印象では、富野監督は今も現役なのに「若いころにハマっていたアニメの人」という過去のものになっていないか?


 僕個人としては、富野由悠季監督は「ロボット・ヒューチャー」から、ずっと富野喜幸で、新しい世界観を常に提示して、その中でのキャラクターの心情を描いていたのは一貫して続いていたと思うのだが。世界の全貌がわからない作風なのは一貫していたと思う。
 それが1980年代までは受けたのに、現在では「わけが分からないので信者向けになった」とむしろ邪魔くさい感じに言われる。
 同じ人が同じようなものを一貫して作っているのに、顧客の反応が変わっていく。
 そして、「オリジナルで訳が分からない作品より、学園モノのお約束に沿っているものや、現代人の視聴者の感覚に寄せた作品の方が評価できる」という風になっている。

  • ※追記 権威について

一晩経って追記しますが、Gのレコンギスタの放送初期に岡田斗司夫さんなどが「Gのレコンギスタは富野監督が勘違いして作った」とか批判したことがある。
 岡田斗司夫さんは「富野監督のことが好きなら富野監督の作品作りを止めろ」とまで言った。
 僕は富野監督が変なことをするのは昔から一貫していると思うが、周りから権威を持つ重鎮と見做されるようになったと思う。そういうわけで、「権威のある富野由悠季に文句を言うオレかっこいい」みたいに言われることもあるのではないか?
追記終わり


 これは文化論としても、商業戦略としても、SF的なものの社会の浸透度としても、文学的アイディアの陳腐化としても、アニメのオタク層から一般への推移としても、世代論としても、アニメ史としても、割と興味深い事例だと思う。


 僕はめんどくさいのでやらないけど、文学部の学生さんとかユリイカのライターとかが考えるネタにはなるのではないでしょうか。


  • ほしい物リスト。

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↑グダちん用


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