玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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オーバーマンキングゲイナー16 奮戦、アデット隊

脚本 大河内一楼 演出絵コンテ笹木信作 作画監督中田栄治橋本誠一
いい話である。
うまいところとまずいところがあった。
うまいところ。
アデット・キスラー先生が大人に目覚めるところ。
そもそも、アデットという人は任務に失敗して組織に戻れず、男ともすれ違い、公務員を脱走してアル中になってたダメ女である。その前は権力をかさにきる悪人だった。
ほんで、まあ、いろいろとあってエキデンしたり先生になってゲイナー・サンガの家に転がり込んで、一応の居場所は確保したのだけど、アナ姫がアスハムにさらわれたりしててもダラダラ寝てたりというダメ人間だったわけだ。本当にやる気が欠如している。前回もゲイナー君の恋愛ゲームを見て遊んでるだけだったのだが。
そういう彼女だったのだが、心がものすごく広いメガネ男子のゲイナー君は文句を言いながら住まわせてくれて、アデットを見捨てない。まあ、ゲイナー自身も親を殺されていてさびしいっていうのはあるにはあるんだけど。アデット的にはうれしかったんじゃないかなー。
前回、ゲイナー君が命がけでマグマと戦い、今回の冒頭で過労になってもヤーパンの天井のために思いっきり働いている。すげえ男になってるのだ。ゲイナーはエクソダス反対派で両親を推進派に殺されてるというのに、それでもみんなのために働いてるのだ。
そしたら、アデットは「いい男に育ててやる!」って大見得を切って居候ニートをしていたのに、ゲイナーが勝手にスペシャルイケメンになってしまった!ということで立場がないと思って、「あたしも大人を逃げちゃダメだ!」と。
つまり、ゲイナーが「大人がちゃんとしてない分、僕がきちんとするぞ」という美学がアデットに飛び火して、アデットを無茶な戦いに駆り立ててしまう。
美学のないケジナンと美学のあるアデットが戦った場合、美学のあるほうが負ける。
アデットは最初は「大人だからやれるんだろ!」って言いながら人が乗ってる車をキングゲイナーに投げつけるような美学のかけらもない外道だったのだが。
ただし、美学とオーバースキルのあるキングゲイナーは勝つ。こういう少年パワーアップとしてのスーパーロボット感覚はイカス。


こういう前話との有機的な心情のつながりはうまいと思う。
あと、ガンガランのピープルはキングゲイナーシベ鉄の諍いのためにドームポリスを失って難民になったという経緯があるので、ゲイナーには良い感情を持っていないはず。彼らが独自の自警団を組織してヤーパンの天井でウルグスクのヤーパンと対立しそうになってたはず。(やり場のない思いを抱えていたっていうけど、結局は民族紛争だろう)
それでどうなるか?と前回のカシマルの計略を見て思ったのだが、アデットもカシマルの狙いがわかっていたのか、ヤーパンの天井のよそ者同士接近したのか、ガンガランのピープルが荒れそうになっていたのを見たら、それ以上の荒れ狂いっぷりで従えてしまった!すげー!
こういう行間でめんどくさい描写を省略してしまうテクニックはうまいな。
でも、次回、結局ガンガランの難民とは紛争を起こすのだが・・・。大河内脚本ってテクニカルに上手い部分とテクニックを見せるために流れをぶった切るところも無きにしも非ず。


まずいところ。
ガンガランのアデット隊がアデット先生の今まで伏線にもなってなかった「家族想い属性」過去を台詞で説明するだけの記号キャラで、ぜんぜん奮戦してない。なんだよ!それ!奮戦しろ!
ゲイナーがオーバーマン キングゲイナーで基地に戻るんだけど、アデット隊はずっと体育すわりをしていたのか?奮戦しろ!
ゲイナーが男を見せるっていうのはかっこいいんだけど、幻をキンゲの超スピードが斬るって言うアイディアも良いんだけど、俺がアデット隊の人だったらゲイナーだけには任せたくないぜ。ドーベックアデット隊の一斉射撃で、なれないながらもゲイナーをアシストするって言うハヤト・コバヤシ描写があったらもっと自然で、厚みが出たと思う。
同じことはゲイン・ビジョウが11話「涙は盗めない」で寝ていただけのアデット・キスラーのようにすねていて、最後にゲイナーを双眼鏡で覗きながら「おそろいっていいよな」とネタ台詞を吐いただけで、キャラがもったいない。
奮闘!アデット先生では同じようにアデットとゲイナーの共闘だったけど、ゲインは最後に長距離射撃で良い所をさらってった。そういう風になんかなかったのか?サラもゲイナーをほっといてたし。手伝えガウリ隊!
うーん。キンゲって、こう、みんなで何かしようぜーっ!うわぉーっ!っていうグラフィティー感覚が大事だと思うんだけど、今回はゲイナーの成長を見せるために他のキャラクターを意図的にオミットしたような作為が見えますね。いや、尺とかもあるんだろうけど。
うーん。一人でもゲイナーがやっていけるっていうんなら、アデットとゲイナーが二人っきりで戦うって言うよりは、ゲイナーがアデットの面倒を見るところをゲインにもアデット隊にも見せ付けるって言うほうがもっとかっこいいと思った。
カミーユ×ファのサエグサ実況中継とかみたいな。共同体感覚。
まー、それは次回のゲイナー×サラの告白中継でやるのだろうか?


あと、変だな、と思ったところは、今までアデットがゲイナーを家族だと言ったことは一言もないのに、ゲイナーが「家族だと思ってくれてるんなら、あなたは僕にとっても家族なんですっ!」と、これまでの積み重ねのない名台詞を言ったせいで、良い台詞なのに、ちょっと残念。
とってつけた良い台詞を書けば視聴者が感動すると思ったら大間違いだ。
いや、あの、ゲイナーとアデットが家族って言う展開自体はすごくいいと思うし、感動もしたのよ?ただ、台詞って言うのはひとつの座標上のフラグだけじゃなくって、それまでの展開から続く波の相であるわけだ。それがひとつだけ浮いてる波があったら音楽的に美しくない。
いや、まあ、流れをぶった切って個々の描写の気持ちよさだけで、スタジオジブリやハリウッドがバカ売れしてるんで、ジブリっぽい富野作品のキングゲイナーはそれでも良いのかもしれないけど!機動戦士ガンダムが売れたのはロボット物に続きものの人間ドラマを持ち込んだからでもある、という夢を見たいのが大富野教信者としての私。
トミノアニメの女の価値観だったら「誰が家族だって言った!」ってアデットはツンツンするのが自然かなーとかも思った。アデットがなんか弱い女って言う感じになっちゃって、お前、アニメのヒロインかよ!って思った。
ちなみに、鬼畜エロマンガ家の胃之上奇嘉郎こと中村嘉宏先生のマンガ版での「アデット・キスラー先生だ!」はアニメ版よりも女子プロレスラー体型になっててゲイナーの家族って言うことにこだわらなくても低学年クラスの子供たちが懐いているジャングルジムのような逞しい母性を発揮して、暴虐の限りを尽くす独自の魅力を見せてくれています。超強い。


てなわけで、ゲイナーが「あなたが家族だと思ってくれてるなら、」って言う説明台詞を削って「あなたは僕の家に住んでる女だから、俺が守る!」「俺が疲れたらおかゆを作れ!カリカリでも食ってやる!」ってこれくらい問答無用マッチョに言ってしまってもいいんじゃないでしょーか。
今回は金髪美女のアデットが「私のほうがお姉さんだから(母親っぽく)面倒を見る」って、上の立場から生意気なことを言う話だから、「俺は子供だけどロボットに乗ったら大人よりも強いぜ」っていうスーパーロボット主人公のゲイナーが「いや、俺が面倒を見てやる!」ってさらに上の立場に立つ話だもんな。
ゲイナーは「大人のことは関係ない」「大人がきちんとしろ」「自分は子供だ」と言いながら、その実、大人よりもツエーというイケメンにサクセスストーリーしていくのがわくわくする。
俺は主人公厨なので、主人公が超強かったらいいと思います。
そして、主人公の超強さを褒めるために脇役もがんばれ。


今回はアスハム・ブーンがジャボリ・マリエーラを地位と美形でたらしこんだり、醜男のケジナン・ダットが卑怯な脅迫でアデットに求婚したり、という駄目な男が対比としてあった。

「セントレーガンに迎えてやろう」というアスハムより、「助けてほしくば俺の嫁になれ!」というケジナンよりも「お前は俺の家族ですよ!まずくてもおかゆは食ってやる!」というゲイナーの超直球求婚(天然なので男女の自覚はないが!)がかっこいい!
だから、ゲイナーの真実の愛というかオーバースキル「面倒見の良さ」が引き立ったのは面白かったけど、アデット個人とのつながりに小さくまとまったかなー。
主人公ならアデット隊もホワイトベースもみんなまとめて面倒を見よう。
そういう主人公を見たら守られてるだけのアデット隊も立ち上がれ。


それはそれとして、最近、バイカル湖の氷の割れ目を避けたり、永久凍土が溶けた泥沼から抜けたり、崖のトラップ前でぎりぎりブレーキをかけたりといったベロー・コリッシュのシルエットマンモス運転技術が地味にかっこいい。もっと評価されるべき。なあ、エリザベス。




あと、今回はキッズ・ムント(シベリア鉄道総裁)、カシマル・バーレ(シベリア鉄道氷の運行部長)アスハム・ブーン(ロンドンIMA直属セントレーガン特務大尉)という縦割り社会の派閥社会の中で宮仕えをしているシンシア・レーンが「仕事のせいで髪の毛のオーバーマンと戦えない」って性欲みたいな戦闘欲求不満を募らせていって、アスハムが「キッズは最強のオーバーマン(オーバーデビル)を隠している」という言葉を聴いて「乗せられてあげるわ」と言う。
ゲイナーとかかわった女は組織を抜けて変わらざるを得ないのかーっ!これはおもしろい。


ロンドンIMAもちょろっとゴレーム部隊を出すだけで本格介入をしてこない。Vガンダムのころの地球連邦くらい安定しすぎてやる気のない給料泥棒の集団かも。それならアスハムみたいな私怨で動いてるやつが出世して暴走する構造なのかな。
シンシアもキッズへの離反フラグが立ってるし。組織が崩壊してるなー。


そうすると、アデット隊の隊員がなんとなく言った「先だっての戦争」って何だよ!戦争とか起こる世界観でしたっけ?
アデットの家族が怪我したのってモンゴルの馬賊に襲われたとかでもいいじゃん。
前回の奮闘!アデット先生なら「シベ鉄は盗賊に襲われるから警備隊が必要なんだよ」と言ってたのに。
戦争とか過去話のだしに使うためにホイホイ作っていい設定じゃないと思うけどなー。