玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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オーバーマンキングゲイナー2526 オーバーデビルの知恵 絶望は世界を教える

http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Brush/8398/king.htm#k25
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Brush/8398/king.htm#k26


はい、と、いうわけで、前項のとおり、ゲイナー君とシンシアはめでたく絶望し、コールドキングとコールドクイーンになりました。
でも、まあ、個人的に絶望する理由はこれでもかというくらいしっかり在ったけど、きっかけは明らかにオーバーデビルだということは間違いありません。では、オーバーデビルとは何か?
簡単に言ってしまえばスーパーコンピューターとインターネットを積んだ最終兵器。
情報化社会とテロリストの核兵器の融合。未来の萬画なのに、21世紀の時事ネタを入れてくるんだから。もう。


核兵器って言うのは、まあ、シベリアだかウラジオストクだかに住んでいる北の将軍さまとか、情報部上がりの指導者とか、巨大輸送産業社長という、(キャンベル星人とかに比べたら)スゴイ身近にいそうな人であるキッズ・ムントが隠し持っていたアガトの結晶の原子炉兼、世界中を脅迫するための破壊兵器という、オーバーデビルの側面です。
リマン・メガロポリスに居ながらにして、世界中を凍らせる力があるし。
おもしろいのはミサイルとかじゃなくて、世界中の鉄道のレールっていう生活インフラが破壊の輸送手段になっているって言うのが面白い。マルチナに教えて貰ってないロンドン・IMA中央政府はまさか生活インフラが兵器だとは思わないから、積極的に破壊できないって言う。軍事力だけの問題じゃなくて、経済と情報が抑止力権力兵器の使用法を巧みにしてる。邪悪な旋風寺舞人。
いろいろと暗示的ですな。インターネットもそういう側面があるのかも。


世界国家警察のセントレーガンは航空戦力が無いっぽい。オーバーマンは航続距離が短いようで、シベリア鉄道の不正に対して実力行使をするために、セント・レーガンはシベリア鉄道の列車を利用して出張して来ます。アホか。
で、オーバーフリーズ直撃。
防御も万全だ。
オーバーフリーズが無くてもシベ鉄の路線で侵入したら迎撃されまくるだろうが!素人か!
大変動のあと、オーバーマン以外が空を飛ぶ事がタブーに成ったりしたんだろーか?(たぶん、エコとかのため)
∀ガンダムの化石水素エンジン飛行機文化とは逆だなあ。
エウレカセブンは不思議粒子で弾道飛行だったナー。まあいい。
だから、ヤーパンの天井がレールを無視して旅をしていたのは、現代日本の僕にはよくわからんが、キンゲ世界の文化ではありえない事だったのかもしれん。
つか、ロンドンはアホだろ。道具に使われる大人の典型か?


閑話休題


えっと、放射能を出さない核兵器というか、抑止力示威兵器っぽさはそれとして、オーバーデビルはなんか独自の意思を持っているので、スーパーコンピューターでしょう。マイトガインみたいな超AIだか、オーバーマンの宇宙から来た異次元邪神かはちょっとわからんが、とりあえず、自分の意志がある。
どういう意思か?
オーバーデビルは人が創造した物です。道具です。道具の喜びは、機能を100%発現することです。それ以外にない。攻殻機動隊フチコマは「ネットを拡大したい」という欲望がメインらしいんだが、それは人間に近づきたいって言う欲望で、機械としてのアイデンティティとはちょっと違いますね。
というか、機械に個性や自我を持たせると言うのは、本当に恐ろしい!もともと人間とは体の作りがが全く違うものなんだから、理屈は通じませんよ。衣食住とか睡眠欲、性欲、食欲、自己実現欲とか、そんなのは機械にはありません。(アトムは息子に成りたがるって言う刷り込みが強くて本当に良かった)
で、機械の欲望は機能の発現として、それが核兵器の欲望となると、なんだろうか?
「私に爆発させろ」
オーバーデビルの場合は
「世界をカチンカチンに凍らせてやる」
です!
オーバーデビルはおそらく、地球温暖化対策のために、熱を別宇宙に逃がすアイシング・ゲート発生装置として作られたっぽいんですけど。なんか作った人の命令を200%遵守しようとして、大変動を起こした氷の力を発現しちゃって、全世界凍結。しかたなく、ちょっとだけ残った畑を残して、人間は田舎のドームポリスで人口冬眠的生活をして、中央政府に管理されるって言う。
んで、何千年か経ってそこら辺が落ち着いてきたらキッズ・ムントが掘り起こして、バラバラにしてアガトの結晶のエンジンと凍結兵器に流用。←今ココ


道具を使うキッズ総裁みたいな人間には政治的な意味がありますね、「オーバーフリーズや核攻撃を受けたくなかったら従え」っていう。そういう風に使われると核兵器様は欲求不満を起こします。
デビルガンダムは地球を綺麗に!って言われたら汚い人類を殲滅するまで仕事をやめないし、オーバーデビルはオーバーフリーズがしたくてしたくてたまらんです。
だって!氷の女王だった母さんが!私をそういう風に産んだんだ!そういうデビルだから、オーバーフリーズしているときが一番楽しいんだ!血が騒ぐんだよ!
そういう所が、シンシアと共鳴したのかも。
オーバーデビルも家系の因縁に縛られていた?
そう考えると、あのデビルのブタ面やお腹の大陰唇丸出し妊婦構造も女の悲しみを表してるのかと思っていじらしく見えてきますね。見えませんか?まあ、デビルだしな。


で、サタンゲイナーとサタンシンシアはその意思をもって行動するんです。
まあ、デビルに洗脳されなくてもガンダムSEEDムルタ・アズラエル みたいに
「核は持ってりゃ嬉しい、ただのコレクションじゃあない、強力な兵器なんですよ?兵器は使わなきゃ…高い金かけて 作ったのは使うためでしょ?さ、 さっさと撃って、さっさと終わらせて下さい…こんな戦争は。」
っていうアニメも在りましたねー。
機動戦士ガンダムSEEDの偉い人は富野アニメの高校生レベル。
リーンの翼の浪利と金本はほんとうに憎憎しいけど同世代として共感できました。
デジタル世代?
大人の人が政治で作った核兵器を「爆発物なら爆発するのが自然じゃないですか」って短絡して思う世代です。注意して、なるべく核兵器のボタンを押す仕事には就職しないようにします。
つまり、サタンの申し子や科学技術社会の申し子って言うのは、機械に踊らされてる世代って言うことかもね。
新型ケータイでは音楽がダウンロードできるよ!ゲームもできるよ!
wiiで勉強できるよ!ダイエットできるよ!
と、言われたら何だかやらなくちゃいけないような、買わなくちゃいけないような気持ちになります。
そんなに必死こいてゲームしなきゃいけないほど暇なのか!お前は!
何千円もする狭い液晶画面に字を書くほうが、100円のノートに字を書くよりも頭に入るのか!お前は!
っていう。道具批判。
(いや、僕はもってないひがみです。携帯音楽機で音楽を聞いてないと怖くて人ごみに行けないし)
まあ、わりと富野キャリアの序盤、少なくともガンダムの頃からやってるんですけどね。21世紀より前から。
もしかしたら、未来が読めるって言う機能に振り回された鉄腕アトムの初シナリオのロボット・ヒューチャーの頃からかも?


あと、オーバーデビルの機能としましては、演算の他にも情報収集能力もすごい。
ブリュンヒルデと同じく、昔の記録もたくさんある。シンシアはいつのまにか氷の女王の事を知った。(あるいはアスハムに聞いた?)
しかも、全世界のレールを通じてアガトの結晶から情報収集を行なっていたかもしれないし、オーバーフリーズした人間の情報並列化もできる。
ゲイナーはそれで五賢人がゲイナーの両親を殺させた事を確信したっぽい。ウルグスクではシベリア鉄道の情報規制で外の世界の事を何も知らなかったのに、コールドゲイナーはモンゴル方面の路線の事を知り、リマン・メガロポリスを映像で見ることが出来ている。
シンシアはガウリがゲイナーの親を殺したって聞いてないのに(まあ、ゲイナーが「両親を忍者に殺させた」とは言ってたけど)「親殺し」って分かっちゃったみたい。あ、親殺しといえば、シンシアがキッズを殺害したことについての本人の自覚はどうなんだ?というと、シンシアはヒューズ・ガウリについて「親殺しなんて許せないよね」ってゲイナーに言う。
どうやら、キッズのことはどうでもよくなったみたい。
シンシアの母親がキッズによる十数年前のアイシングゲート事故によって死んだことをオーバーデビルに教えられ、キッズを敵だと認識したようだ。もしかしたらシンシアの本当の父親を殺したのもキッズ・ムントだったのかもしれない。
だから親の振りをしていたキッズを親殺しとして屠ってよし。
つまり、オーバーデビルは絶望したものに世界の真相を知らしめる装置だと言える。


セカイ系ですね。個人と世界を情報と破壊力で直結させるっていう。
で、世界のヒエラルキーに弾かれたオタクと不思議少女がその玉座に座る。ここ10年来のアニメっぽい構造でもあり、社会に汚れ訳として必要とされてきた兵士や賎民の反乱っていうんなら、昔っからフィクションでも現実でもよく在る。

そもそも近代において、「わたし」という存在は世界との対立に生ずる存在であるがゆえに、「わたし」にとって世界は本来的に異物であり、耐え難い。しかし「世界」は「わたし」に対して圧倒的であり、ゆえに「わたし」は世界に馴致されるか、世界からはじき出されるか、世界の周辺において従属するほかなくなる。だが、世界にあえて抗うとき、「わたし」はテロリストとなる。そのテロルは世界を滅却するかに見え、実態としては自己滅却へとつながっていくタナトスの発露だ。あえて大胆にいうならば、伊藤計劃の作品のほとんどは、その理路にそって作られている。


http://d.hatena.ne.jp/crow_henmi/20081219/1229673790

貧乏暇なしで伊藤計劃氏は私は読んでいませんが、こちらの文言が分かりやすかったので無断引用。
キングゲイナーもだいたいそんな感じ。あと、コードギアスも。
こっちのほうは世界とわたしをオーバースキルやギアスによって釣り合わせて戦わせる感じか。
「アベニールをさがして」では巨大ロボットの名前がアートマンブラフマーを合わせてアラフマーンだしな。インド大好き。


で、世界を知ったゲイナー君は「僕ら細かいことわからなくなりましたから、お任せしますよ。」ってデビル忍者やデビルサラに細かい邪魔者の相手をさせる。
世界と言う大きなものに囚われて、細かいことを切り捨てるのが、まさに絶望です。
情報化社会の弊害ですね。
フランスで粒子加速器LHCが出来たと報道で知って、ブラックホールができると悲観して自殺しちゃった人が居ました。
機動戦士ガンダム00などの竹田菁滋プロデューサーアニメも世界にはこんなに歪みがある!っていう雰囲気。
そりゃ、世の中にはいろいろ在りますし、最終的には地球も滅びるし、みんな死ぬ。大局を見ると絶望に直結するんです。シャア・アズナブル総帥とか。



ただ、世界を知る能力を使って、ゲイナーとシンシアが気にしたのは「自分の親を殺したのは誰だったのか」という個人的な事だったりする。
それから、「自分の人生はそういう人殺しの居る社会に利用されていた作り物の人生だ」って言う問題。
そういう個人的な悲しみの原因を世界に直結させて、それだけに囚われて残り全部は「細かい事は分からなくなった」「世界中がオーバーフリーズするね!」「そうされなければ、世界はおのれの愚かさに気づかないんだよね」と、言うのがすごいセカイ系だな。
やっぱ、個人の人生を破壊された人にとっては、それ以外の世界は全て自分を壊すものと一絡げに認識しちゃうから、やられる前に世界を止めなくてはいけないと思うのも在り得る話です。
っていうか、オレがそんな感じ。いやー、僕は体育が苦手で本当に良かったです。


なんつーか、オーバーマン キングゲイナーって痛快ロボットアニメのふりをして、犯罪被害者とかレイプサバイバーとかの心理とか、情報化社会とか抑止力論とか人と機械の付き合いについて、濃厚に盛り込んでいる。
むしろ、濃厚すぎる題材だから痛快ロボットアニメにしないと飲み込めない。


薄めたらコードギアス 反逆のルルーシュとかになります。って、薄めてルルーシュかよ!くどい、くどいよ!豚骨ラーメンより!


次回は、大局を見る黒い王子シャルレ・フェリーベと白い騎士アスハム・ブーンの決闘について語ります。あと、徹底的に大局を見ないシベ鉄三バカトリオについてもちょっと書く。