玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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空虚なるアイドルマスターゼノグラシア感想-後編

さて、後半は批判だ。なんか、今使ってるメール更新ソフトは5000字以下にしろって言うから分ける。

  • ダメだった所。

量産型ロボットのエピメテウスの動力については些細なことですから問題ではない。
もう、全然ダメ。
イデオンとかブレンパワードとかエヴァンゲリオンとかに憧れて、それっぽいのを作りたいっていう気持ちはわかりますけどね。データベース化しすぎ。というか、断片化しすぎ。
大富野教信者から見て、もう、完璧に似て非なる者。全然違う者より、ちょっと似ているけど違う者の方がプレコックス感。もうだめ。真似しようとして全然できてない。
流れが全然できていない。芝居になってない。

まずコミュニケーションが全然ダメ。カス。カス!カス!アニメばっかり見て作ってるんじゃないのよ!
花田先生の作風についてのid:str017さんが書いた上記のエントリ花田十輝氏の脚本の特徴について - TinyRainのブックマークコメントでのid:ike_tomoさんが書いてたけど、「キャラが相手を認めようとする言動が全くない」。まったくそうだよね。
「好きな人と一緒になる事ってそういうことじゃないよ。その人と同じになるんじゃない。千早さんはインベルを見なかった。それって、きっと愛じゃないもの!」って春閣下が雪ぽっぽに言ってたけど、千早さんが死ぬ前とか、千早粉を撃たれるに言え。それもコミュニケーションじゃないよね。閣下も自分の言いたい事を言ってるだけだねー。
しかし、それはそれで、上記エントリに書かれていたようなフラワー先生の作風のように「キャラクター本人の欲望に忠実」かどうかというと、それはそれでそうでもないような気がするのでござる。
たしかに、キャラクターの欲望に関しては、欲望に忠実なままにエキセントリックな行動をするキャラクターが登場しています。しかし、「そこで君がそれを欲望する必要性を、君は持っていない!」という気がするのだ。
具体的には、三浦あずさ主任が菊地真アイドルマスターの資格をはく奪されたときに一切のフォローをしないばかりか、人事的にも、同居人としても手続きをしないばかりか、敵対組織への真の無断転職を許す。いや、それはないだろう!セキュリティとか。まあ、裏切りとかあったら盛り上がりますけどね!
ご都合主義…。
どうも、キャラクターの欲望だという言い訳を使って、作劇上の不自然さを正当化させているように見える。
っていうか、おれさー、正直、作劇上の行動原理としての[狂気]って嫌いなんだよね。なんか、何でもありになっちゃうじゃん。
作劇の上でも、作品解釈の上でも、「この人は狂気に走った」とか、そう言うのが大っきらい。具体的には∀ガンダムで独断行動したミハエル・ゲルン大佐について「狂気」って書いた∀ガンダム記録全集とか、伝説巨神イデオンの終盤のシェリルさんが狂ってるというのが嫌い。あの状況では、シェリルさんがああするのは当然です。むしろ、まともな人がまともでない状況にいるからこそ、普通の反応として発狂する、という事が好きなの。狂気と正気は地続きなんですよ。その有機的な流れが大事なの。
そもそも、このアニメって狂人ばっかり出てるけど、「その程度の事で狂うのか?」っていうようなレベルの狂人が多くて萎える。なんだよ「ロボットに乗る事が自分の存在意義だから人を殺したり、同僚に事故を起こさせても良い」とか。アホか。お前、狂気をなめすぎ。「こいつはメンヘルやトラウマ持ちだから何をしてもいい」っていうのは、疎外感を感じる。メンヘルの本当のめんどくささは、たまに正気に戻ったり、正気が残ってる所という実感があります。また、その葛藤がドラマになるのだから、狂気を簡単に理由として使うのは作劇としてももったいない。
隕石除去に従事する公務員としての自覚が在る場面があったり、なかったり、キャラが一貫してない。
だから、キャラクターの狂気と言うより、作り手の狂気や都合の方が前面に見えてしまって、つまり、キャラクターが生きて見えないんですよ。
狂気のために人殺しをするテロ集団のトゥリアビータとかモンデンキントの裏組織もどうかなー。親の復讐で世界を滅ぼすとか言う石田彰の動機とか、浅い。
メインキャラ以外のモブキャラクターの組織までそういうのはどうかと思うなあ。というか、全体的に人殺しに対する生理的な嫌悪とか、忌避感覚とかの閾値が低い。なんだかなー。ベトナム戦争アンケートについて富野が言ってたけど、殺される事より殺すことの恐怖の方が強かったらしいですよ。普通の兵士には。
うーん。隕石で世界が滅ぶから、命が軽い世界観なのか?というと、アイドルマスターゼノグラシアはそこまで描き切れていなかったなあ。アイドルが普通に社会的インフラの一部として機能しているという描写があり、一般人にも隕石脅威は認知されているように見える。でも、わりとみんな普通に社会生活を営んでる。だから、ブレンパワードの世界みたいに、兵隊や政治家を含めた皆が地球を捨てたがる切実感がない。
秘密を知ってるエリート集団だけが、ティターンズジャミトフ・ハイマンのように絶望しているのか?というと、そう言う風でもない。なんか、トゥリアビータもザルっぽい組織だし。真がなんかテキトーに入隊できたし。基本的にアニメ本編以外の設定は知らん。
wikiによると、トゥリアビータは外宇宙へのワープをもくろんでいるというブレンパワードのオルファンのリクレイマーみたいな目的があったらしいが、そう言う描写も作中でもない。
それに、石田彰は外宇宙へのワープより、ちっさい親の復讐程度の動機だし。
リクレイマー達の地球や社会全体への憎しみや絶望に比べて、ゼノグラシアの悪役たちは全然動機が弱い。
イデオン発動篇でのドバ・アジバは「家族を壊された恨み」と言う面もありますが、でも、「ズオウ大帝の専制統治に対してオーメ財団と組んで民主的軍事政権クーデターを起こす」とか「娘を異民族に妊娠させられ、民族浄化されたと大衆に知られると権力を握れない」という、狂気以外の利害関係もあったのですよー。ドバ総帥はそこも本気でバッフ・クランの事を考えていたと思う。
ゼノグラシアでは、モンデンキント組織とかグランド・ロッヂの猫の経済的な感覚や大衆に対する対応も、中途半端だったなー。なんかそれっぽい事を言って、消えただけ。ウルトリウスとか最終兵器が派手に撃たれてたのに、それに対する大衆のリアクションが、イデオンの植民星の人に比べると全然弱い。
ラストのブレンパワードのパクリも、アウリンがオルファンさんに比べて全然キャラが弱いから思い入れも薄い。
富野作品ではイデとかオルファンとかニュータイプとかについて、作中の人物が分からない事を本気で「わからないんですけど!」って疑問を訴えるんですが、ゼノグラシアにはそれも無し。
びっくりさせるためなのだろうが、敵組織の存在とかアイドルにまつわる情報が全然共有されていない。みんなが分かってないのならともかく、事故が起こるまで素人の春香に上司が教えないとか、アホか。
素人も疑問に思ったり、情報を隠されたら怒ったりしろよ。
iDOLっていうマクガフィンがあるのは別に構わないの。ただ、それに対する疑問などの、起こるべき登場人物のリアクションがないのが気に食わない。
 
 
だから、全然キャラクターも世界観も実体感が無いんですよ。
 
 

  • それでも良かった所。

全然実感が無いんですけど、かっこいいロボットが、それっぽい音楽で、それっぽい絵が、それっぽい構図で、それっぽい勢いの動きで、それっぽくかっこいいパンチを出して、可愛い女の子がそれっぽい綺麗な絵の中でそれっぽく涙するっていうラストは、動物的に胸を撃つものがあった。
っていうか、上でボロクソに書いたのに、ぶっ通して最終回を初めて見た時はなぜか感動して泣かされてしまった。
動物化?いいじゃない。
変な内容をノリで強引に乗せるのも演出手腕だし、一瞬でも心地好いなら、それはそれで。
また、id:pogeさんは空虚を愛すると公言している男だ。
だから、空虚で動機も社会性もなく、ただ女の子とロボットが騒ぎたてるだけ、という所は良かったのではないでしょうか。うん。
 
 
 
でも、イデオンに憧れた人がイデオンを作ろうとしてもイデオンに勝てるわけがないから、みんなふきとべーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!
中途半端にそれっぽいガジェットを用意して、それが整理しきれなかったんだろうなーと言う感じ。
それくらい、巨大ロボットや破壊兵器と言う者のインパクトは強いのですが、ストーリーの強度がそれに負けていた。
富野監督が渋谷アニメランドで語ったように「巨人と言う者を出すと、よっぽどしっかりしたドラマが出来ていないとロボットが動いているだけのものになってしまう」という問題意識が足りず、「成功例の要素を真似てみました」という所で留まってしまったように見える。
プラネテスくらい、デブリ破壊機械と女の子たちの人情、って言う程度のレベルに風呂敷を小さく整理したら良かったのに。
メカと美少女にしか興味が無いなら世界を語るな!美少女を貫いて見せろ!
と、世界や殺人にはちょっと過敏に反応する私であった。


その点ではAngel Beats!は「こまけぇこたぁ良いんだよ!」と潔かったな。


つか、私はアニメはイデオンが基準だしねー。イデオンナイトでイデオンを初めて劇場で見るの楽しみ!チケット取れるかな?
で、私が何故、イデオンなどの富野作品が好きかと言うと、構成や思想や演出もありますが、血が騒ぐからだよ!ゲイナー!