玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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#ガンダム誕生秘話 の危うさ

 俺はガンダムが好きなのであるが。
 ちょうど昼夜逆転なので先程放送されたNHKガンダム誕生秘話を見た。4月から始まるガンダムTHE ORIGINの太鼓持ち番組である。
 再放送もあるぞ



 富野監督、安彦良和作画監督大河原邦男メカデザイナーサンライズ資料室の飯塚正夫さん、アニメーターの板野一郎さん、脚本の松崎健一さん、俳優の古谷徹さん池田秀一さん潘恵子さん、ガンプラビルダーの川口名人など、テレビにあまり出ない人も出てきて、なかなか密度の濃い番組だった。まあ、「ガンダム者」と「ガンダムの現場から」と「ガンダム神話」を読んでいたら割りとクェス・パラヤみたいに全部知ってた気分になる感じだったが、安彦良和先生の妙な生々しさの記録としてはちょっとすごかった。さすが風と木の詩の監督だぜ。BLも行ける。
ガンダム者―ガンダムを創った男たち
ガンダムの現場から―富野由悠季発言集 (キネ旬ムック)
ガンダム神話
富野語録―富野由悠季インタビュー集 (ラポートデラックス)




 僕が寄付金をネットで集めて富野監督の喜寿に贈った花もテレビに映って気持ちが良かった。

 僕はまあ、闇のオタクだし富野監督から見たら嫌われるような人間だと思うけど、お花の出資者の方の半分くらいは女性だったし、富野監督が喜んでくれてよかったです。



 要約すると富野監督が中心になって、テレビ局や玩具会社の突き上げやアニメーターの安彦良和さんの急病や番組打ち切りなどの試練を経て、頑張って作った作品がファンの支持を獲得し、劇場版を成功させたというサクセスストーリーである。


 わかりやすい。良かったねって思う。だが、それでいいのか?ガンダムってそういう話か、というか富野由悠季の人生ってそうなのか?


 サクセスストーリーはわかりやすいし、テレビ番組として映える。しかし、テレビ屋さんの文法でわかりやすくしすぎたのではないかという危険性を感じた。



 おりしも、先日、Gのレコンギスタオフィシャルガイドブックの富野宇野対談を精読して、富野監督が宮﨑駿監督の「風立ちぬ」について

あえてタイトルを出すと宮﨑駿さんの『風立ちぬ』(中略)は、”過去論”なんですよね。思い出話だからああいう形でいいけれど、アニメというのは実写じゃないんだから、今更思い出話をやる必要はないだろうとも思うわけ。だから『Gレコ』はこの方向性で間違ってなかった。


宇野「でも富野さんは、ああやって(風立ちぬのラストのように)きれいな嘘をついて死んでいくのは嫌なわけですよね」
富野「僕にはあれはできませんよ。僕には宮崎さんほど、学識とか能力がないから。つまり、とても怖いことがあって、才能とか能力のある人の力が発揮されてるのはどの部分かって考えると、過去をどのようにきれいに語るかってところに才能は行使されてるんじゃないかって思うんです。僕にはそういう基礎学力がないから、それはできない。だからこうやって訳の分かんない1000年後とか2000年後の世界を考えるところに行っちゃうんだよね。これ、劣等生の遠吠えです(笑)。」
https://nuryouguda.hatenablog.com/entry/2019/02/13/075147

 と、おっしゃっているのを読んだりした。


 先日はショーケンやチャコさんが亡くなったりして、美空ひばり手塚治虫先生がなくなった昭和の終わりのような平成の終わりを感じるのだが。過去に思いを馳せるような気分もある。しかし、ガンダムが40年前に作られて成功しました、今でも大人気です、よかったですね、それでいいのか?




 富野由悠季の世界という展示が今年開催されて、富野監督は今まさにガンダム Gのレコンギスタを地べたをはいずりながら作っているわけです。富野監督は生きているんだよ!過去ではないんだ!今、いま、イマ、イマジネーション!

https://www.tomino-exhibition.com/



 そういう意味で、ガンダムが過去のものになるのは時が未来に進む物理現象としては仕方がないんだけど、それを美しいもののように語り直してしまうのは危険なのではないかと思う。というか、歴史修正主義というか、好きなものが好きだと言って好きなものは全部いいもので構成されていると思ってしまうのは能天気で危険だと思うし、それがガンダムじゃないのかって思うのよ。ガンダムっていうかGレコかもしれないけど。




 あんたのことですよ!安彦良和先生!僕は、僕は安彦良和先生の授業を受けたこともあるし、画力は尊敬もしているけど、でも、ガンダムは過去じゃなくて未来のためのものだと言いたいんですよお!きっと40年前にヤマトからガンダムに行った安彦先生の気持ちとか、過労死しかけて死なないように頑張った先生のガッツとか、毎週御見舞に来てくれた富野監督との思い出とか、それをモチベーションにして劇場版でハッスルしたとか、その時のことはきっと彼にとって輝ける瞬間だったと思うんですが、それは他人の僕が口をだすことではない。


 でも、過去は美しいものだけではない。だってあんた、ΖガンダムF91作画監督してくれなくて自分の監督作品から萬画業界に逃げたじゃないの!そこには湖川友謙さんのビーボォー派閥との気持ちとか永野護と他のデザイナーとの葛藤とかテレビでハッキリ言えないドロドロした人間関係があって、その結果がガンダムの作品の良さでもあり味わいでもあり、毒でもある。そこからFSSや新世紀エヴァンゲリオンみたいなわけのわからない作品が生まれたり、なぜか少女革命ウテナやゲーム業界に影響を与えたりするわけで、そういうのが世界じゃないですか。


 安彦良和先生はガンダムの頃が富野監督の絶頂だと言うし、永野護∀ガンダムのデザインは糞とか言うけど、それでも富野はなんとかやってきているし、安彦良和先生も永野護も自分の連載は自分でなんとかしてきているじゃないですか。


  • わかりやすい悪役と味方を作ることの危険性について

 テレビ局の視聴率でテコ入れメカのGアーマーを出したというエピソードが番組で紹介された。

MG 1/100 Gファイター [ガンダム Ver.2.0用 V作戦モデル] (機動戦士ガンダム)

MG 1/100 Gファイター [ガンダム Ver.2.0用 V作戦モデル] (機動戦士ガンダム)

 俺はGアーマーのためにシールドを二枚にしましょうとパワポでプレゼンする調子こいたアムロに嫌気をさすカイ・シデンの気持ちのドラマとか好きなんですよ!そこからカイはミハルのところに行くし、ミハルのドラマは番組でも美化されてたけど、そこに至る「ほんと、嫌だねえ」という世界の事物の積み重ねって大事だと思う。
 あと、アムロが好きなセイラさんとタンデムして戦える気持ちがGアーマーにはあった。


 なので、クローバーは倒産したけど、安易にクローバーを悪役玩具会社にしたてるのは死体蹴りなのではないかとおもう。バンダイにおもねりやがって・・・。いや、バンダイは僕も好きですけどね!
 クローバーのガンダムは装飾過多だったけど、ダンバインはそれほど悪いプロポーションの玩具ではない。


ダンバイン ダイカスト 1/46スケール

ダンバイン ダイカスト 1/46スケール

ダンバインの放送中に、メインスポンサーのクローバーは倒産します。
これはダンバイン商品の不振のためだけではなく、同時期に複数の作品に手を広げすぎたことが原因とも言われているようです。
クローバーのサンライズロボット玩具は企画から生産までのすべてをタカラ工業に委託しており、その関係でタカラ系列のオリオンとセブンが廉価玩具を担当していました。
したがってクローバーの倒産とともにオリオン・セブンのサンライズロボット玩具も終了することになります。

クローバーのダンバイン玩具を改めて見直してみると造形自体は悪くないことに気づきます。
ただし関節可動に問題が多く、実際に手にしてみるとほとんどポーズをつけられなくてオモチャとしての楽しさが薄い印象があります。

クローバーはザブングルまでは変型・合体を売りにダイカストというシリーズ名で合金玩具を展開しましたが、ダンバインではSF FANTASY FIGUREと名称を変更しています。
変型や合体のないオーラバトラーの場合、関節可動こそが文字通りフィギュアとしての魅力になった筈ですが、当時の玩具業界では可動自体を売りにするのは企画面でも技術的にも時期尚早だったのかもしれません。

そうした中でジョイントダンバインだけは例外的な傑作になっています。
むしろジョイントモデルを塗装済みのメイン商品としてシリーズ展開していたら、また違う結果が出ていた可能性も考えられ、少し残念です。
ジョイントダンバインと同じ仕様で、ダーナオシーやドラムロなど他のオーラバトラーも見てみたかった と思います。

blogs.yahoo.co.jp


 テレビの怖さというのはこういうことで、クローバーは駄目な商品を出したかもしれないけど、ガンダムブームの後、そこそこいい商品も出していたわけで。悪い商品を出していた会社が倒産して、正しいガンプラを作っているバンダイが勝利した、っていうストーリーを作るのはバンダイにとっても緊張感をなくして駄目にする危険なことだと思う。


 テレビは複雑怪奇な現実を数十分の映像でわかったように見せる。それは機能としては完全に否定するほどの悪ではない。YouTubeもリアルのように見えて政治主張動画とか、テレビ以上に過去を書き直そうとする機能を持った動画もある。しかし、過去を分かりやすく美しいものだとしてしまうのはガンダムの志とは違う、と、僕は気持悪い富野オタクとして思ってしまうんです。


 もちろん、過去は無視していいものではないのだから、思い出すきっかけとしてこういうテレビ番組はありです。だから富野監督も出演したのだと思うし。まあ、金はもらっただろうけど。
 でも、テレビで語られた過去が本当にそれが全てだと思うのは危険だと思ったし、やっぱりガンダムを好きな視聴者が自分で資料を集めたり、テレビに出てない話を聞きに行ったり、自分で物を考えることが大事だと思ったし、それがガンダム Gのレコンギスタのテーマだとぼくは思うのよ。


 だから、THE ORIGINというシャアの過去の下積み時代をアニメにした作品をNHKで放送するにあたって過去を美しく語る番組があるのはある意味仕方がないんだけど、Gのレコンギスタの劇場版上映前特番では、もっと前を向いた作品を作って欲しい。
 どうせシャアなんて安彦良和先生が過去を美しく語ったところで史実として本編の機動戦士ガンダムでは、アムロ様にボコボコにされて好きな女も妹も取られて逃げて、アクシズハマーンと傷を舐め合うような駄目な恋愛をして、しかも逃げて、さらに駄目な恋愛をして逃げて、キレて隕石を落とそうとしてアムロ様にやっぱりボコボコにされるような奴なので、そういう奴だよ!


 だから安彦良和先生には逆襲のシャアを見てないのに中途半端に「ララァが母」発言をORIGINに勝手に逆輸入するようなことはしてほしくなかった。せめて逆シャアくらい見ろ!ていうかF91のときにも見てくれてなかったんだ・・・・。
nuryouguda.hatenablog.com



 でも、それももはや過去!オリジンの萬画の最終回は8年前のこと!やってしまったことはもうどうしようもない!安彦良和先生も、富野監督も、色々業界や人間関係で駄目なことをやってしまったことはどうしようもない!過去っていうのは、黒歴史というのはどうしようもないものなんです。おれもどうしようもないやつですよ!どうしようもない黒歴史はいつか暴かれて世界はグダグダになるんです。


 それでも、それでも俺は本気が見たいんだよ!(突然の出崎統AIR



 しかし、Gレコ誕生秘話を劇場版の太鼓持ち番組で作るとして、エウレカセブンベイマックスを作りながら何年も拘束された吉田健一さんやコヤマシゲトさんや、富野監督にボロクソ言われながら頑張った各話コンテマン(普通のアニメだと監督級の人たち)はどういうふうに語るんですかねえ。本当にGレコは空前絶後の5部作とか、シン・ヱヴァンゲリヲンとタメを張る謎の作品だしどうしようもないと思う。


 サンライズやアニメ業界が貧しいのは安彦先生が過労死しかけた40年前と大して変わらなかもしれない。でもGレコの劇場版の仕事をしている富野監督の姿がこの番組で見れたし、スタッフさんは動いてはいる。うれしい。企画に7年かけたあと、劇場版まで4年もかけるとかどうしようもない作品だけど、俺は好きなんだよ。


 今、Gのレコンギスタ劇場版は誕生しようとしている。それを、それを大事にしたい。今、そして未来へ!Gレコは再び飛び立とうとしている!!!!
 頑張れサンライズ!頑張れバンダイ!頑張れスタッフ!頑張れ富野監督!
 でも体には気をつけて。


 僕もGレコのベルリの考察記事を頑張って書くぞ!とりあえずゼノサジ槍2本目をスキルマしてからスカサハ・スカディと岩窟王をスキルマしてから書きます・・・。いいだろ!永野護バーチャファイターしてたし三浦建太郎先生もアイマスしてるし!俺もアイマスするよ!!!俺はソシャゲ廃人でバンナムの犬だよ!



 ところで、劇場版のご祝儀の花輪ってスタジオか映画館か、どっちに送ったらいいんでしょう・・・。


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キングゲイナーの日が誕生日なのですが

水も20リットルくらいもらったので、しばらく餓死しにくいですヤッター!


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