玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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ベルリの殺人考察第3部第21話B キアの最期を見るベルリ

  • 放送当時の感想

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  • 目次

「はじめたいキャピタルGの物語」・「ガンダム Gのレコンギスタ」感想目次 - 玖足手帖-アニメブログ-
Gレコ2周目の感想目次 殺人考察&劇場版(パリ) - 玖足手帖-アニメブログ-


  • 前回の殺人考察

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 今回はガンダム Gのレコンギスタ第21話「海の重さ」Bパートのキア・ムベッキ隊長が海の穴を塞ぐところまでを見ていきます。

  • 女子高生!ジット・ラボ制圧




 細かいところだけどノレド・ナグさん、ハロビーを先に囮にして潜入するとか、忍者の素質あるな。





 成人男性が手に握っている工具をパチンコ(スリングショット)で飛ばすとか、ノレドさん武闘派。






 ノレドさんは武闘派だけど、スリングショットでいきなり撃たれたというのに、ジット・ラボの作業員、ぬこを渡してもらったらあっさり和解。ジット団の構成員でも武闘派と穏健派の温度差があるようだ。チッカラやクンは武闘派だが。
 ここでノレドとマニィにG-ルシファーをあっさり渡してしまう団員はキア隊長のコンキュデベヌスにも、フルムーンシップに飛び込んでいくチッカラとローゼンタールにもついていかない人。行動力がないというか、戦闘するよりもMSの仕上げの仕事を優先する性格の人が残っていたのだろう。
 キア隊長やチッカラが出払っていて武闘派の団員がそっちに言って、ジット・ラボがほとんどカラになっていたのだろう。武闘派の団員が一人でも残っていたら、ノレドとマニィは即射殺されていた可能性があるので、Gレコはやっぱり運要素が強い。海に穴が開く事も含めて、最悪の結果と常に紙一重なところがある。それを視聴者が細かく見たらわかるけど、登場人物は自分の見たことしか体験してないので、最悪の結果の可能性をわかってなくて動くところがある。そこが元気さでもあるが。でもたまにサイコロの出目が悪かったら海の穴が開くとか、ユグドラシルの流れ弾やマズラスターの足が当たるとか、そういう最悪の結果もあるという、ゲームブックっぽさがある。(まあ、監督がサイコロを操作してるけど)
 キア隊長の19話のレトロフューチャー感のある銃もモデルガンだったような疑惑があるし。ジット・ラボは宇宙世紀のMSなどの武器は研究していたけど、歩兵戦とか銃撃戦とか拠点防衛とか、そういうリアルな戦争の作戦のことはわからない土地柄の金星人なのかも。
 数百年も地球から離れた小さな小惑星コロニーで暮らしていた人たちなので戦争ということを概念としても知らない人たちなのかも。怒りの感情とかを出すのも下手なのかも。ノレドさんにスリングショットで撃たれたのに、ぬこを抱いて「G-ルシファーだろ」とか「ほんとうに地球から来たのかよ」とか、フレンドリーに女子高生と話してメカを渡してしまう。
 ジット・ラボの中でもジット団として戦争やレコンギスタをしたい人と、純粋に機械いじりが好きでラボに就職しただけの人とか、温度差があるのかも。キア隊長自身も20話では戦闘より先に交渉しようとしていた。キア隊長よりもクン・スーンチッカラ・デュアルの方が先に攻撃と殺人をしていたし。ジットラボとジット団は組織として殺人や戦争についての意思統一とか方針の決定ができてないまま、クレッセントシップが早く来たので行動を起こさざるを得なかったのか。ジット・ラボの組み立て中のメカがほとんど地球人にパクられるのは最悪っぽいんだが、隊長が死んで、フルムーンシップも急遽出向して逃げたら、残された職員はとりあえずどこでもいいから納品してしまえ、って気持ちになったのか、ラ・グーに命令されたのか…。


 放水タワーをぶっ壊してオーブンで水蒸気爆発させて登場するコンキュデベヌス。キア隊長の行動がどんどん雑になっていっている。本来はインテリなんだろうけど、もうかなり追い詰められてますね。


 ページが重くなるので画像を載せないけど(いまさら?)コンキュデベヌスを映すときにカメラが普通にパンするんじゃなくて微妙にねじれた動きをするの、昔のスーパーロボットアニメの敵の見せ方みたいだな。凝ってる。

 近距離だしミノフスキー粒子を撒いてないっぽいので、会話が通じているのか?



 巨大モビルアーマーコンキュデベヌスのビームソード、G-セルフビームライフルを弾く!強い!それが4本もある!


 しかし、ベルリ勇敢!圧倒的に大きさが違うビームソードにビームサーベルで打ち合う!


 ビームソードに打ち負けないG-セルフのサーベルとパワーがすごい!(微妙に打ち合う瞬間に体をシールドでガードしていたけど、反動でシールドの残った半分が吹き飛ばされている。芸コマ。でもこのあとにシールドが映っているシーンもあるので、作画ミスか、別カットのアニメーターに段取りが伝わってなかったのか)

「やられない!」
 G-セルフがすごいのは、巨大ビームソードをサーベルで受け切っただけでなく、逆にビームソードを振るったコンキュデベヌスの左下のアームを衝撃で破壊しているところ。(左下の装甲は不具合を起こして、沈むシーンで外れている)
 G-セルフ強すぎない?主人公メカが細かいところで異次元のパワーを見せつけるの好き。(メッチャ細かいけど)


 ジロッドにミサイルを撃ちまくらせながら、クン・スーンが来る。


 でもベルリはコンキュデベヌスに気を取られることなく、乱入してきたジロッドのミサイルを回避して、一発は切り払う。G-セルフの運動性ヤバい。早すぎてスクショできない。


 自分はいろいろと雑にやらかしているキア隊長だが、クンには「ミサイルは駄目だ!」って注意する。クン・スーンスペースコロニーの中でミサイルを使うとか駄目に決まってるのに「なんで?」とか言う。なんでも糞もあるか!アホかーっ!ジット団、技術力はあるけど技術メカを使った場合の被害の想像力が…。クン・スーンのテンションもおかしくなってるんだろう。
「海の底に穴が開いている事がわからんのか!」
 で、民間人の船とかボートがガンガン渦に流されているのが映る。船の中に人が乗っているのかは不明。まあ、乗ってた人もいるだろうけど、水死するモブを描きすぎるとザンボット3みたいな残虐アニメになってしまうので。



 ひえーってなる。




 キア隊長、自分では「コンキデでG-セルフを焼いてやる!」っていう戦闘気分で出てきたけど、G-セルフにサーベルで打ち負けたからか、クン・スーンが雑なミサイルを撃ったのを注意したときに海の渦に注意が移ったからか、G-セルフのことを忘れて「メディスペシーが全滅する!」と、やっと気づく。
 海の穴の被害について自分で気づけなくて、部下の暴走に注意したときに気づく。自分のミスは意識しにくいけど、部下を注意するときには客観的に周りが見えてしまう。こういうキア隊長の部下の前で格好つけているけど自分の行動は熱くなって雑になるっていう、管理職っぽい性格…。自分も暴走してたんだけど、カッコイイ上司を演じたいので部下を注意するときは客観的に周りが見える。
 富野監督はキア隊長の造形について、西村キヌさんにも中井和哉さんにも「カッコイイ人物です」とオーダーしたけど、格好つけようとしている30代後半くらいのインテリのエリートとしてのキア隊長、リアルなんだろうか…。自分の行動は熱くなって一直線で周りが見えないけど、部下を注意するときは客観的に周りが見える。富野監督も演出家として自分で作業もすると同時に、監督として指示出しや注意やリテイクをする人なので。自分でやってるときは自分のミスに気づきにくいけど、部下を注意したときに客観的になって逆に自分のミスに気づくという。僕は職歴がうんこなので管理職になったことはないんですが、管理職の人、どうですか?こういう行動はリアルでしょうか?


 しかし、ベルリがコンキュデベヌスと戦いながら乱入してきたジロッドにも対処して間合いを取っているという、かなりマルチタスクをこなせる有能で若い天才なのに対して、キア隊長が目の前の一つ一つに熱くなったり、自分だけで人間爆弾などの作戦をしたりという、対比が残酷ではある。いろいろ気づいて反射神経が良くてマルチタスクできる若いベルリと、一直線な専門家の思考で動いてしまう視野が狭いおじさんのキア隊長。
 やっぱり、Gレコは子供に見せたいアニメで、メカオタクのおじさんのダメな部分が批判的に描かれているのかもしれないので。ガンダムのオタクのおじさんの僕としては、結構キツく感じる面もある。本当にベルリくんみたいな天才少年がたくさん育って世直しをしてくれたらいいんだけど。僕もウッソ世代で伊佐未勇世代だったのに、世直しができなかった…。子どもたちに申し訳無さがあるね。子どもたちはスマホクラウドもAIも使いこなしてグローバルに活躍してほしい…。





 キア隊長は最初はG-セルフを鹵獲するつもりだったのが、だんだん熱くなって胴体を切り落とすとか言いつつ、次は焼き殺すとか言って、装備を次々と投入してG-セルフを倒そうとしたのだが。ベルリは対照的に冷静で、G-セルフの現状戦力ではコンキュデベヌスみたいな巨大メカとジロッドを相手にするのは不利だと悟って、上手いこと距離を取って天井を盾にして様子見。こういう判断センスが若者には求められる。
 あと、宇宙用バックパックの後退用のブースターの噴射位置が結構面白い。G-セルフのデザインはガンダムにありがちな(いわゆるタコ足ザクのような)円錐形のバーニアがあんまりなくて、未来っぽいデザインになっているよね。

 ベルリの背後は宇宙でテン・ポリスが飛んでいる、という描写も憎い。(どうでもいいかもしれないけど、なんで天井が透明なんだろうね。ムタチオン宇宙線被爆で起こるんなら密閉型のほうがいいと思うけど。オーシャン・リングは小惑星を中心に回転しているので、天井の向こうは小惑星なので、太陽光の取り込みとしては非効率的な気もする(シー・デスクにはマクロス7みたいな蓋もあるけど))





 キア隊長は決して最初から穴を塞ぐためにコンキュデベヌスを持ち出したわけではなく、G-セルフを倒そうとして出してきたのだが。海の渦がひどいことになっている事に改めて気づいたのか、G-セルフに勝てないと悟って、失点を回復するために善行をしようとしたのか自沈を決意する。これもちょっと自己中心的な思いつきかもしれない。
 自己犠牲は尊いのかもしれないけど、事態を悪化させて敵にも勝てなかった男がせめてものプライドを守ろうとした行為なのかもしれない。そして、コンキュデベヌスには作業員がまだ取り残されていて、そういうキア隊長のコロコロ変わる行動に付き合わされる。うーん。





 優秀で地位もあって女にもモテるけど無茶苦茶な行動をするという点で、キア隊長の自沈はシャアやアムロアクシズ押しのラインかもしれない。富野作品の30代とはこういう感じなのか。



 G-セルフの攻撃で破損した箇所が外れる。コンキュデベヌスはガタガタ。そもそも組み立て中。

 コンキュデベヌスのパーツが破損したことで「意外と速い」とビビるキア隊長、死ぬ覚悟がどこの時点で発生したのか…。頭でっかちの作戦を立てる癖があるので、脱出できると思ってた面もあるんだろう。いや、地球人はクンたちが手なづけろって言っているので、死ぬつもりもあったのか…。



 コンキュデベヌスが自沈していくのを見るベルリだが、単に沈んでいくんじゃなくて穴を塞ぐと分かる。ニュータイプだからわかったのか、キア隊長の声を聞いたからか。ジャイオーンと前話で会話していたし、通信がまだ通っていたのだろうか。だとしたら、ベルリはクン・スーンと同時にキア隊長の死亡実況中継を聞いた可能性があるし、それはトラウマだろうなあ。




 クン・スーンがキア隊長を助けるために、これにつかまって!と、ボールを投下するジロッドだが。





 雑に激突して、悲壮感のあるシーンなのにギャグっぽい動きが出て、ひどい。


 コンキュデベヌスが穴に向かっているという方向をわかりやすくするためのガイドとして、破損したパーツが先に流れていく。コンキュデベヌスのパーツを破損させるのはG-セルフの強さの表現と同時に、こういう方向性を絵でわかりやすく見せる段取りなんだけど、段取りだと悟らせないようなアクションの見せ方が上手いですね。




 穴を塞いだキア。




 キア隊長が海底に到達したのだが、クン・スーンはレーダーのアラートが鳴ると反射的にG-セルフにミサイルを撃ってしまう。判断力とかが混乱している。



 2発のミサイルを迎撃しようとするG-セルフのサーベル、遠距離の飛翔体を破壊するためか、心持ちいつもよりビームの粒子が拡散気味になっている?






 一発は天井に穴を開けてしまい、ガンダム伝統の鳥もちで塞ぐ。オーシャン・リング内でのミサイル戦闘とか、想定外だと思うんだけど、なんで鳥もちが配備されてたんだろう。流星対策かなあ。



 クン・スーンG-セルフにミサイルを撃ったのは完全に無駄だし、なんでそんなことをしたのかわからんけど。キア隊長が沈んだことに対する怒りの表現だったのか?でも、結果的に天井に穴を開けてしまいクン・スーンは反省する。そして、キア隊長と一緒に自沈しようとする。
 第6話でデレンセンを倒したあとに、ベルリがクリム・ニックを助けたことに似ているのかもしれないけど、自分が悪いことをしたと思ったときに、「とりあえずの善行」で失点を自分の気持ちの中で解消しようというメンタリティがあるのかな。
 また、ドラマの段取りとしてもクン・スーンがキアを近くで看取るというドラマが必要だったので、ジロッドも自沈させるために、クン・スーンには暴走ミサイルを撃たせるのが必要だったのかなあ。ドラマの段取りと、感情の動きと、両方表現しようというのがメカの攻撃というロボットアニメらしい描写を通じて使われている。

  • キアの遺言





 床をどんどん蹴ってるキア隊長だが。漏電で操作系がぶっ壊れてハッチを人力で開けようとしてたけど・・・感電して・・・という。(R.C.のノーマルスーツがどれくらい電気に強いのかはわからんけど、凍死かもしれない)水漏れでハッチの電装系が壊れなくて、開いたら死なんですんだかもしれないのにね。(同乗した作業員はどうやって助かったんだろう)
 死ぬ覚悟はありつつ、最期まで脱出しようとしつつ、カッコイイ遺言をクン・スーンに言うので、生死の際の人間の行動はきつい・・・。
 今際の際なので「地球は楽しいところだ」と言うのは本音なのだろうけど。彼は一直線な専門家として頭でっかちで自分中心の作戦を立てて、ベルリたちの妨害で何度も失敗して暴力も振るったのだけど。本音としては「狭いコロニーでの生活が嫌で、地球で人生を楽しみたい」という進撃の巨人のアルミンみたいな少年の頃の夢が原点だったかもしれないので。(エルヴィン団長もそんなところがある)キア隊長はベルリに対して蹴りを入れて登場して、人間爆弾とかひどい作戦をする反逆者、みたいな悪印象を持たせるミスリードも入れている演出で見せてきたけど。死ぬときに人間臭さを炸裂させるので、本当にきつい。



 デザインではゴスパンク娘っぽかったクン・スーンだけど、どんどん可愛くなるな。恋する女って感じなんだよなー。クン・スーンはキア隊長の弱肉強食理論に乗っかって殺人しちゃったけど、それも恋愛感情だったかもしれないわけで―。



 最初に穴から海を通ったときに水漏れしていたのに、水没して自分が死亡決定するまで水漏れを気にしてない感じ、というか、熱くなって忘れていたっぽいキア隊長だが。熱くなっている自分の状況はわかってないのに、クン・スーンを諭すときは「宇宙兵器は水圧に弱い」と客観的に言う。やはり、自分のことは見えないし、楽観的というか自分の思い通りになる創造をしてしまって、裏切られるキア隊長だけど。部下のことは客観的に見えてしまう。そして、ジロッドが手足がないモビルアーマーではなく、水陸両用MSのズゴッキーでマニピュレーターがあったら、ジャイオーンのハッチを開けることができたかもしれない、というそういうモビルスーツの汎用性とか、ローゼンタールを引かせてしまった判断ミスとか、残酷な想像ができる。


 で、ジロッドも海底に穴を開けて外に出てしまう。


 宇宙空間にコックピットコアを脱出させるクンだが。



 脱出したコックピットコアがシー・デスクのフレームにギャグみたいにぶつかって転がる。ギャグみたいな動きなんだが、現実がキアとクンをあざ笑っているようにも見えるんだ。




 作画と音楽も相まって、非常に悲劇的なムード。




 ショートした箇所を直してなんとか助かろうという気持ちと、チッカラにも遺言を伝えたい気持ちがあって、キア隊長の死亡実況中継は本当にキツイ。



 そんなキア隊長の最期に寄り添おうとするクン・スーンのコックピットコアも、馬鹿みたいにぶつかって弾き飛ばされて転がって、バカにされているようだ。ギャグみたいに人が死ぬっていう、ひどい・・・。

  • 自己犠牲の価値は

 だが、本当にひどいのはこれだけではない。


 クン・スーンのコックピットコアが助けることも寄り添うこともできず、無残に転がって流れていった後ろから、ロザリオ・テンの警察とメンテナンス公社の所属であろう水陸宇宙両用汎用作業マシーンでもあるズゴッキーの部隊が来ている。

 前半で、既に海の穴についてオーシャン・リング公社のメンテナンス部門は緊急出動している。


・・・・・・。


 ひどいことを言うけど、


キア隊長が自分で開けた穴を塞ぐために死ななくても、公社のメンテナンス部隊が外から計画的に補修作業を行えば、穴は塞がったという可能性もある。


 つまり、ジット団が反乱したという自覚がキア隊長にあるし、キア隊長がなんでも自分の思いついた計画でやりたがる格好つけたがりの男だったので、コンキュデベヌスで自分で穴を塞いで死んじゃったけど。ジット団とロザリオ・テンのポリスや公社の専門部隊と連携して作業をすれば、死ぬ必要はなかったのでは?一瞬しかズゴッキー部隊が映らないし、演出的にも目立つコンキュデベヌスとキア隊長を中心に悲劇的に盛り上げて描くから、キア隊長の自己犠牲が「たったひとつの冴えたやりかた」に見えるけど、普通に組織的連携をすればよかったのでは?
 という解釈の可能性も残すズゴッキー部隊の描写です。天井の穴を塞ぐ装置はあるので、公社のズゴッキー部隊(及び、登場してないけど確実に存在するであろうメンテナンスのための宇宙船など)には海底を補修するノウハウがあって、キア隊長がそれを知らなかっただけかもしれない。数百年も宇宙に存在していたであろうオーシャンリングなので、補修技術もある可能性は高い。


 結局、弱肉強食で自分の力で行動しようとして、社会を信じられない男は優秀であったとしても周りが見えず、周りに頼れず、無為な死を遂げるのかもしれない。キア隊長は自分の計画が失敗続きだったので、むしろ善行をしながら自殺することでプライドを守りつつ、死に逃げた可能性すらある。
 という含みもある。いや、本当に公社のメンテナンス部門ではどうしようもなかったのかどうかは明かされないので、コンキュデベヌスで塞ぐしかなかったという可能性がある。でも、それもキア隊長という、戦闘の負けの連続の興奮から視野が狭くなっている男の自己判断に過ぎなかったので。
 Gレコは演出的にあまり「この価値観が正解」みたいに見せてくれないアニメなので、難しいところなのだが。とりあえず、キア隊長だけが穴を塞ごうとしたのではなく、ロザリオ・テンの行政組織や公社も穴を塞ごうとしていて、たまたま最後のズゴッキーまでカメラが映してなかっただけ、という事実はある。


 弱肉強食で勝ち残った優秀な人材が1人で行動するより、社会的協調性が大事なのですよ、という訓話なのかもしれない。でも、クン・スーンたち残されたジット団のフルムーンシップの乗組員たちはそういうことはあんまり考えずに、死んだキア隊長を祭り上げて地球まで暴走していく。(Gレコはシン・ゴジラの1,2年前のアニメなんですよね)


  • 傷つくベルリ

 まあ、キア隊長が死んでいくアクションシーンなどを細かく画像で見てきたけど、この記事の本筋は「ベルリの殺人考察」であり、「自分の周りで人が死んでいくのを見ていくベルリの心の動き」が大事なんです。




(シールドがあるのは作画ミスなのか、拾ったのか)
 天井にいたベルリだけど、アイーダさんと合流するためか、海面近くに降りてきている。そして、アイーダさんに「海の中まで追えるわけないでしょう!」ってベルリは注意されている。
 ベルリも優秀な技術者でもある。そして、キア隊長の死亡実況中継を聞いてしまった可能性がある。なので、ベルリも主人公として責任を感じてオーシャン・リングやキアたちを救おうとして入水しようとした可能性がある。そこを、戦闘せずに冷静に侵入して周りが見えているアイーダさんに止められたんじゃなかろうか。ジット団のコロニー内ミサイルについても、敵なのにベルリがフォローするようなところがあったし。
 ベルリ少年は優しいし、戦闘能力は高いけど、本来はキャピタル・ガードの保守点検業務の公務員志望で、本質的には戦士ではない。クリム・ニックのような戦闘文化圏で自分を鍛えてきた男ではない。戦った相手であっても、恨みに思ったり、死ぬのを喜んだりする性格でもない。なので、ベルリがキアを助けようと思ったとしても、それは不思議ではないかもしれない。(あと、コア・ファイターがあるからかG-セルフは水漏れを起こしていない)


 20話の前に「殺人をするのが何故つらいのかというと、死ぬ人間と自分との共通点を見出して、自分が死ぬことを想起させられて、ストレスを感じるからだ」みたいな話を書きました。
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 キア・ムベッキは優秀な技術者という点や、自分で解決したがる点など、ベルリとの共通点がある。その男が死ぬ実況中継を聞いてしまったベルリは非常に傷ついただろう。(デレンセン大尉など、ベルリが殺したことを深く印象付けられてしまう相手は、どこかベルリに共通点がある)
 もしかしたら、ベルリが終盤で一人でクレイジーと言われる大気圏再突入したのは、このキア・ムベッキの自己犠牲に影響されたからかもしれない。

 そういうふうに傷ついたベルリは、やはり今までの殺人考察で見てきたように、体を伸ばしたり、パイロットスーツをはだけたりして、ストレスを感じたことを表現する。愚痴ったりはしないけど。


 そして、これが今回の肝なのですが。
「宇宙にこんなものがあるのがおかしくないか?」
 です。


 オーシャン・リングに到達する前は、ベルリはクレッセントシップの艦長に「姉さんには、宇宙にある海の夢と言ったものを見つけ出してほしいんです!」とかなり気合を入れて訴えたのだが。
 オーシャン・リングを体験したベルリは、「海の夢」を否定して「こんなものがあるのがおかしくないか?」と考えが裏返ってしまう。つらい。
 キャピタル・テリトリィ出身のベルリにとって、ビーナス・グロゥブは「スコード教の大事なものであるフォトン・バッテリーを作っていて、宇宙に海を作れるくらい高度な文明のある土地で、キャピタルタワーの天辺のザンクト・ポルト以上の聖地」という認識だったはずだが。「こんなものがあるのがおかしい」という気持ちになってしまう。


 ベルリの旅路は「宇宙海賊のアイーダさんを助けよう→恋人のカーヒルを殺して怒られる」
アメリア艦隊や宇宙からの脅威を調べたら母の助けになる→デレンセン大尉を殺す」
「母やアイーダさんを守りたい→地元のキャピタル・アーミィと敵対」
「聖地のザンクトポルトに着いたぞ→つまらない公務員が運営しているコロニーに過ぎなかった」
「宇宙からの脅威のトワサンガに行くぞ→すぐに床に穴が空くようなショボい土地だった上に、失恋する」
 という、「ガッカリ感」の連続で、ほとんど罰ゲームみたいなもので、本当にかわいそう。しかも、その過程で本質的には戦士ではないのに殺人を何度もして手を汚してしまう。


 僕もそういうところがあるけど、ここまでがんばってるのに期待を裏切られまくっていると、下手をすると学習性無力感などの精神疾患になる可能性すらある。
 元気のGなんだけど、Gのレコンギスタって本当にベルリにとって過酷。ベルリはキャピタル・ガード候補生の飛び級性で調子に乗っていた頃がシャア・アズナブルのように全盛期だったかもしれない。キャピタル・ガード養成学校で鍛えられたベルリの耐久テストみたいな試練の連続なので、本当にかわいそうな話だと思う。


Gの閃光(アニメ「ガンダムGのレコンギスタ」エンディグテーマ)
 つかめプライドつかめサクセスっていう歌なんだけど、ベルリがつかもうとした希望がすり抜けていくつまらなくつらい連続でもあるので。
 なので、成長とか成功を物語に求める視聴者からすると、Gレコは見難い作品だったし、それが理解されにくい理由だったのかもしれない。
 ですが、僕みたいに人生失敗した人間からすると「親近感!」という感じがして、5年もたってもこうやって長文で解説してしまうくらい執着する作品になっている。
 なにしろ、僕は「ラブライブ!のどこが面白いのかわからん」と人様のブログのラブライブ!記事にコメントして、「グダちんさんの人生は過酷だったので、ラブライブ!の修羅場を修羅場と認識できてないだけでは」と言われるくらいハードモードで生きてる。シンジ君とか蓮城寺べるとかベルリくらい現実にいじめられて、ようやく「うんうん。これもまた人生だね」って思う。


 富野監督にしてみれば、僕みたいな人生失敗人間ではなく、女性ファンや優秀な青少年のファンを獲得して世直しの種を撒きたかったんでしょうけど。オタクのおじさんですみません…。俺はここで大槻唯のスターランクを増やすことしかできない。でも、青少年には青少年にしかできない青少年だからできる未来があるはずだ。


 というわけで、青少年をとりまく、僕達おじさんが作ってしまった世界は未だ厳しいし悪くなっていくのかもしれないけど、耐久テストみたいな人生に負けず、元気に生きてくれ。(僕は六本木ヒルズラブライブ!スクールアイドルフェスティバルの運営会社で過労になって精神障害者保健福祉手帳2級を取得しましたが)

  • 続くが

 今日は、前回の記事を書いた後熱を出してしまい、昼まで寝てたけど昼から午後九時過ぎまでぶっ通しで書いて記事が書けた。腰痛はコルセットとアルコールで誤魔化した。
 そんなふうに長時間Gレコの記事を書くという正気の沙汰ではないことをしたのですが。
 第21話のBパートのキア・ムベッキ隊長が死ぬまでの時間は、たった5分30秒の出来事なのです!ヤバい圧縮率のアニメだなー。のこり4分ちょいで衝撃の子安武人ラ・グー総裁がぶち込まれます。長くなりすぎたので、一旦切ります。
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「はじめたいキャピタルGの物語」・「ガンダム Gのレコンギスタ」感想目次 - 玖足手帖-アニメブログ-
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