玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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ベルリの殺人考察第4部第25話B ベルリの傲慢、マスクの殺意を呼ぶ

  • 放送当時の感想

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 第25話「死線を越えて」のAパートの考察です。

  • 目次

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  • 前回の殺人考察

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 ジット団とサラマンドラが戦っている間に、レイハントン家のG-セルフたちがガランデンに肉薄する。




 今まで激しく戦っていたガランデンを説得できると思うアイーダさん。これが彼女が旗艦の指揮官になって初めての命令。
 G-セルフの武力を見せれば黙らせられると思っているのか?それならジット団と大差ない。
 ベルリを送り出した彼女たちはGIT団の女戦士たちと戦う。



 メガファンネルのキャノンをビームソードとしてもビーム砲としても使いながらライフルも使うラライヤ。激戦!

 アイーダさんの言葉を聞くような連中ではない。



 G-セルフガランデンに接近すると…。



 ジーラッハのビーム・センチピードを受ける。

 マニィから攻撃されるということを否認するベルリ。


 しかし、クンタラカップルは心を一つにしてベルリを排除しようとする。



 ベルリのビームがジーラッハの右手首を吹き飛ばす。

 また、ジーラッハの攻撃を避けながら、カバカーリーのライフルをコピペシールドで防御すると、流れ弾がジーラッハの右腕に当たる。

  • ラクタービームの舐めプ






 個人的に第25話でいちばん大事なのは大気圏突入より、このトラクタービームだと思う。
 なぜなら、これがマスク大尉を完全に怒らせてベルリを殺そうと決意させたことだと思うからだ。



 「ふざけているのか?」はマスクの印象的なセリフ。では、どんな時に言うのか?

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 5話ではクリムのモンテーロが武器を持っていないように見えたエルフ・ブルックを侮って近づいてきたときにマスクは「ふざけているのか」と怒った。


 ここでマスクの性格描写なのだが、マスクは「勝ちたい」とか「得をしたい」とか「戦場で敵に見逃してもらって助かりたい」というより、「畏れられたい」という気持ちが強い。戦う理由もクンタラとして侮られてきたコンプレックスの裏返しで、褒められたくてたまらんから。(褒められたいのはベルリと同じだが、やり方が違う)なので、マスクは戦場で敵が自分を侮ったり自分から距離を取ったら、攻撃されなくて安心、とは思わない。むしろ、「もっと俺とちゃんと戦え!」「俺をもっと怖がれ!」「俺を尊敬しろ!」と敵にも求めている。こういう意欲は普通に勝つことよりも充たされにくい承認欲求なので、マスクの生き方は面倒くさいのだ。

 落下した戦闘しかできないグリモアを画面外上からの掃射で一瞬で撃破しても全く嬉しくない。勝つ上に、勝った相手に尊敬され周囲に畏れられたいという欲求があるので、雑魚を即死させても嬉しくないのだ。
 でも、戦意の無いように見える相手には「ふざけているのか!」とマジギレするし、無人のダミー風船には驚愕して必要以上に破壊する。マスクは感情で戦っているし、やっぱりなんだかんだ言って軍人として慣れてないし学生なんだよなあ。
 弱い味方や死んだ敵には興味がない。
 逆襲のシャアとかもそうなんだけど、結局マスクの「ちゃんとライバルに戦って俺に負けた上で俺を尊敬してほしい」というめんどくさい願望がすれ違い宇宙しちゃうのがGレコの裏の本筋としてはある。ホモじゃん。キンプリのプリズムショーバトルじゃん。でも、なんで腐女子はあんまり盛り上がってないんだろうね?やっぱり彼女がいるからか???キンプリのコウジくんにも彼女は居る。
 ダンバインのショウとバーン、逆襲のシャアもそうなんだけど、達観して世界を見ようとしてる主人公に「世界よりも俺にかまってくれよ。そして俺を尊敬しろ」って絡んでくるホモという体育会系のマウンティングみたいな関係図式が富野作品にはある。


 また、マスクは実際の戦果よりも「相手に自分を畏れさせたい」「戦場でふざけないで自分の相手をしてほしい」という感情が先に来ているし、「クンタラの地位を向上させる!」というファンタジーな動機で戦争に突入している面がある。
 このような「戦争が起これば出世できる」というファンタジーファーストガンダムの1話でも描かれたが、現実のネトウヨや「理想は戦争」と言う人にもある。異世界転生系ファンタジーは富野監督もバイストン・ウェル系で書いているのだが。自衛隊憲法9条で縛られない異世界に行ったら無双できるのに!という願望、リーンの翼で描かれた在日朝鮮人や米軍に対する日本人の鬱屈した感情、現実では複雑に他者と利害関係が入り組んでいるが日本軍が本気を出したら皇軍が勝利して世界に認められるはず!という幻想がある。現実の戦争の火種も割とそういうファンタジーっぽい感情に根差したところがあるのだが、マスクはそれに対する批評でもある。しかし、マスクはマスクなりに(テキストの戦争の批評の道具としてだけでなく)彼自身の人生を頑張って歩いているのだが…。

 と、第8話のマスクの「ふざけているのか?」からの関連を出した。


 マスクがふざけていると思うのは「自分を怖がらない」ものに対して。なので、マニィに対しても口調はやや穏やかだが、「マスクがベルリを殺す怖い人間ではなく、ベルリと友だちになる優しい人間」だと思われると「ふざけているのか?」と言ってしまう。逆襲のシャアのナナイが「シャアは優しいアムロを許せない」と言っているようなものだが、マニィはナナイほど大人ではない。
 キャピタル・ガードの体育会系学校で主席になっても飛び級生のベルリより褒められなかったクンタラのルインとしては、普通に評価されるより「畏怖されたい」という気持ちがあって、畏怖しない人間はふざけていると思う。愛するマニィに対してもその気持ちを出してしまうルインである。


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 マスクが「ふざけているのか」と思う相手は、自分の脅威を感じないもの、自分と戦わないで撤退しようとするもの、自分に戦いをやめさせようとするもの。
 そして、その全部が「トラクタービーム」なのである。ベルリは殺さないように無力化した上で説得しようと善意で行動しているが、マスクからすれば完全な侮辱である。


 また、以前にマスクはベルリに対して移動のためのワイヤーガンを撃って「これが実弾だったらお前は即死だからG-セルフを渡せ」という舐めプをしていた。
 マスクは後輩のベルリを下に見ていて自分が舐めプするのはいいと思うけど、自分がベルリに舐めプされたら完全に激怒する。
 ルインが法皇を救出したのは英雄的行動だが、ベルリが金星まで行って、そこでヘルメス財団の関わるレイハントン家のものだと分かったら、マスクよりベルリのほうが英雄に見えるし、またマスクは自分がベルリの引き立て役になると思ってしまったのだろうか。





 トラクタービームでカバカーリーを捕まえているG-セルフジーラッハが攻撃しなかったのは謎だが。


 ベルリは姉に命令された「ガランデンの説得」として、マスクに停戦するように説教する。ベルリは和平を持ちかける。だが、その上から目線と圧倒的なパーフェクトバックパックの力がマスクの逆鱗に触れた!



 ベルリがマスクの正体がルインだと知っているかどうかがファンの間でも意見が分かれるところだ。
 しかし、次回の最終回で「トラクタービームは縛るのではなく繋げるもの」ということが判明するので、それを踏まえると、ここでベルリとルインは会話しているということになる。
 ルインはベルリに個人的な感情として「圧倒的な力をもらってぬくぬくとしてクンタラを見下す!」と本音をぶつける。対して、ベルリは「クンタラカニバリズムの殺し合いの歴史と、その非差別意識から戦争に参加して殺し合いで恨みを増幅させるのは良くない」と、個人の感情ではなく説教を言ってしまう。

 しかし、ベルリはマスクの怒りの言葉から、マスクがルインだと分かって、ジーラッハに乗っているのもマニィだと気づく、というか、認める。


 この描写は大気圏突入直前ということもあり、逆襲のシャアのラストでアムロとシャアが口論していたことにも通じる。逆襲のシャアのラストの口論はクェスとララァについて、多少話題が合った。しかし、逆襲のシャアはその口論が打ち切られて終わる。 
 Gのレコンギスタはシャアとアムロの最後の口論に似たようなことをしても、それを超えて最終回で改めて戦うことになるのだ。あと、ルインは個人的な怒りをぶつけるが、ベルリは偉そうな概念的な道徳を言いルインの怒りに反応せず「大気圏突入に備えろ!」と命令してくる。
 完全にルインはナメられたと感じただろう。


 前回、ユグドラシル攻略戦で「ベルリは言い訳抜きで戦う覚悟を決めた」と述べた。しかし、ベルリは殺害を正当化するようになったのではない。第24話でためらいなくユグドラシルを撃破できたのは、ベルリがアイーダにカーヒル殺しを許されて、武器を使うことも許されて、敵が大量虐殺をする確実に悪だとわかるもので、それを排除するための武力なら許される、という感情だ。だから、ベルリは悪に対して正しい者として戦う覚悟は決まったが、自分のために戦う意識は出来ていない。さらに、金星まで一緒に旅をしたマニィが自分を攻撃するということは信じられなかったのだろう。だから、最初はジーラッハに攻撃されてもマニィではないと否認した。
 つまり、ベルリは「悪に正義の攻撃を加える正しい自分」を許せるようになったが、「自分が悪だと思われる」ということはまだ納得できていない。
 しかし、ルインとつながった会話で「ベルリのG-セルフ!」「いつも圧倒的な力をもらってぬくぬくとしてクンタラを見下す!」という言葉を聞いてカバカーリーパイロットのマスクがルインだと気づいたと思う。そしてそこからジーラッハパイロットもマニィだと気づいた。このときのベルリはなぜ自分がそこまで憎まれるのかは分かっていないと思うが、「自分が学校の先輩や一緒に旅をした女子高生に殺されかけるほど憎まれている」という事実は分かって、ショックだったと思う。
 逆に、マニィが自分を攻撃しているということを先にわかったとしても、マニィが自分を裏切るほど入れ込んでいるクンタラの男といえば、ルインしかいないわけで。どっちにしろベルリはカバカーリーパイロットがルインだと、不本意だろうとも分かってしまう。バカではないのだから。


 それで、ベルリは自分を攻撃してくる相手であろうとも、善意から「大気圏突入に備えろ!」とトラクタービームでいつでも圧勝抹殺できたのに、開放してやる。ベルリは高貴なる者の器量と善意でカバカーリーを助けてやったつもりだが、乗っているマスクにとっては完全に自分が無力化されているし、ナメられているし情けをかけられてプライドが傷つけられたと思って、殺意になる。ベルリは悪を断つために正義の側で戦う覚悟を決めたが、自分の善意が他人から憎まれる原因になる、ということまでは想像できていない。ベルリは戦いは悪だと思っているが、武器を持って戦う自分が相手から悪に見えるということは認めたくない。あくまで、自分は善人だというセルフイメージをベルリはまだ崩したくないのだ。

  • 大気圏突入準備


 クレッセント・シップからもらった耐熱コーティングはダーマとトリニティと一緒にロルッカたちからもらったのだろう。


 今回はサラマンドラの末路が間抜けだと印象的だが、天才クリムも大気圏突入の事は忘れて戦っていた様子。


 アイーダとジット団も、それぞれに船に戻って大気圏突入に備える。




 そして、ベルリはつながったルインの気持ちを理解することなく、圧倒的な力で重力に引かれるまで拘束して「大気圏突入に備えろ!」と偉そうに突き放す。





 ベルリから開放されたルインは、マニィが大気圏突入できず、ピンチになっているのを見る。ベルリのせいでマニィがピンチになっているとも言えるので、余計憎しみは深まる。




 ベルリはG-アルケインG-ルシファーをパーフェクトバックパックの超推力でメガファウナまで押してやって、武器を平和利用できたと喜ぶが…。



 技術のブランドやスペックだけを盲信してその仕組みを考えない頼りない大人として、サラマンドラは爆沈する。



 天才クリムは大気圏突入するつもりはなかったが、天才なのでやり方を見つける。

  • ルインとマニィの大気圏突入

 ガランデンクン・スーンから耐熱フィルムと大気圏突入の方法を教えてもらったのだろうか?カバカーリージーラッハでルインとマニィの二人は大気圏突入する。


 ギリギリの修羅場ではマスクもヘルメットも外す。大気圏突入なのでヘルメットはしていたほうがいい気がするが、Gレコのキャラクターは蒸れとかストレスを感じるのでピンチのときほどヘルメットを外す。






 音楽も相まって、感動的な場面だ。命の危機を恋人が二人の力で乗り越えるのは美しい。しかし、この命の危機自体が「ベルリにトラクタービームでギリギリまで引っ張られてガランデンに帰れなかった結果としての危機」だとしたら?ルインはマニィと力を合わせて命を拾ったが、それすらも「ベルリにやらされたこと」だと思ったらプライドはずたずただし、もう、そりゃあ、殺すしかないだろ…。
 ルイン一人が情けをかけられたのではなく、恋人のマニィも巻き込んで行動を指示された。女の前で恥をかかされたと思う。殺すしか無い。

  • ベルリ、クレイジー





 ダーマとトリニティ、ジーラッハカバカーリーが大気圏突入できるので注意すべきだと感じて、ベルリは単騎で警戒に出る。これは最終回でバッテリー切れを起こさせる伏線だが。同時に、ベルリの責任感がクレイジーになっているということ。前回、艦隊を全滅させたユグドラシルG-セルフが倒したが、ベルリは戦争の根っこになるものを取り除きたいし、最強のメカを持っている高貴な自分が戦局を左右させなければ、と思っているのか。それも傲慢なのだが。

  • クンパとブルジン




 クンパ大佐はブルジンを呼び戻したが、戦士やプレイヤーとしてブルジンに載って戦場に出るのではなく、俯瞰して観察したいという。クンパ大佐も戦場をナメている。というか、クンパ大佐はトワサンガビーナス・グロゥブで炎上事件を起こして、キャピタル・アーミィも炎上させて、それでも自分は生きているので、感覚が麻痺しているんだろう。


 「音速超えはしない!」と。この時点ではMSの数を揃えている戦艦はブルジンと見えるが…。

  • 大気圏に入る



 クリムが指揮をしていたサラマンドラが爆沈したが、クリムはそれほど部下の死に心を痛めていない。





 30代40代が戦争を面白がって雑な行動で死んだり攻撃するのを、10代のクリムやマスクが批判的に見るという構図が印象的。


 よけるメガファウナ


 大人の男たちがダメだというような展開が多いが10代の主人公たちを助け、20代くらいのクルーをまとめるドニエル艦長は良い大人なのだろうか?グラビアを椅子に印刷するようなおじさんだが。ラ・グー総裁にも意見していたしインテリでもある。女子シャワー室に入りたがるけど。チュチュミィをスッと出すような気の効かせ方もできる。







 ベルリはカバカーリーに「大気圏突入に備えろ!」と言ったし、クリムを殺すほど敵対もしていないので結局何のために単騎で大気圏突入したのかは謎だしベルリ自身も「何をやってるんだ!」とキレる。
 先行してガランデンカバカーリーを狙撃するポジションを取りたかったのか?

  • ヤンキー的なプライド







 血筋で差別されてきたルインにとって、血筋で優遇されるもののベルリが更に強くなって傲慢に世の中を支配するのは危険だ、という意見で大義名分でもある。
 が、同時に「俺の力をナメやがって、偉そうに命令しやがって!」という体育会系の先輩が後輩にナメられたとか、ヤンキー的な怒りに近いかもしれない。



 最終回も
 最強のガンダムは真っ白いパーフェクトパックで、地元に帰ってきた その日に先輩とケンカして たたき壊しました!ガンダムの主人公なんてそれでいいんだよ。

 だし、Gレコはヤンキーっぽさがある。というか、男のプライドのぶつかり合いとサクセスの奪い合いなので。


 そして、次回、最終回。高貴なレイハントン家のベルリと差別されてきたクンタラのルインの互いのプライドを掛けた一騎打ち、そして同時に勃発する大規模戦闘…。

  • 最終回

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  • 布教活動


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